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第4章 雌伏の章
第49話 ロングウッドの森で若返りだ
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「あら、ナーザレス、久しぶりね。コータローを匿っていてくれてありがとう」
「久しぶりだな、20年振りくらいか。特に匿っていた訳ではないがルナジェールとヴァルドアの知り合いだと言うので、ここに連れてきたのだ」
「そんなに会ってなかった?そうかも知れないわね」
それから暫らくはお互いの近況を話し込んでいたが、20年間の出来事でも二人とも殆ど変化のない暮らしだったようで特段のエピソードは無いようだ。
「それでヴァルドアはシルザールに戻ったのか。犯人ではないことは確かなのだな」
クマさんも疑っているようだ。師匠ならやりかねないと。
「流石に無いでしょう。確かにヴァルドアのマナの量は年々減ってきてはいたけれど、まだまだ私よりは多いくらいだしね」
「それなら別に犯人が居るのか。下手な魔法使いが『赤い太陽の雫』を手に入れれば大変なことになるかも知れんぞ」
「犯人は判っています。オメガ・サトリームという特級魔法士が犯人です。多分今頃はオメガは手配されていると思います」
「なんだもう判っていたのか。それではヴァルドアも近くここに来るかも知れんな」
「それが、もしかしたら師匠とオメガが接触しているかも知れないんです。オメガは『赤い太陽の雫』の使用方法が判らないと言っていました。それを師匠に聞きたかったようでしたから」
「なんだ、お前は犯人とも会っていたのか。それで取り逃がしたと?」
ちょっと話が嫌な方向に向かいつつあるようだ。
「取り逃がすも何も特級魔法士に俺が敵う訳ないじゃないですか。その時オメガは俺には探知できないほどの高度な隠蔽魔法で姿を隠していましたから」
何一つ嘘は吐いていない。捕える気がなかったことは話さなかっただけだ。
「するとヴァルドアは今もそのオメガとやらと一緒に追われている可能性もありますね」
割と高い可能性だった。師匠ならなんとかオメガを騙して犯人として捕まえて『赤い太陽の雫』は手に入れる、とかを考えていそうだ。
それがバレなければ問題ないがバレれば今度は師匠が新たな犯人として追われる立場になってしまう。師匠のことだから逃げることは容易いだろうが、お尋ね者になってしまうのは問題だろう。
「もし逃げているのなら此処には来ないか、若しくは態とここに逃げ込むか」
「態と?」
「そう。厄介ごとを私やナーザレスに押し付けようといういう魂胆で態と逃げ込む、ということね」
確かに師匠ならあり得る。
「それにこの森なら沢山の魔法使いの結界が多重に張られていて迷宮の様になっているから高位の魔法使いでも発見することは困難だと思うわ」
なるほど、それで俺はクマさん以外の魔法使いには誰も会わなかったのか。俺は結界なんて張れないこととクマさんが道に迷ったことで出会えた、ということになるな。
「いずれにしても状況が判らないと何とも言えんな。お前、ちょっと行って確認して来い」
「俺がですか。俺はシルザールには戻れないんですけど」
「何故じゃ?」
俺は今置かれてている状況を話した。
「なるほどな。ヴァルドアとは別の事情で追われてここに来たのか」
「だからシルザールには戻れないんですよ」
「それなら問題ない。今からお前に若返りの魔法を施してやれば見た目が変わってもう捕まらないだろうて」
なるほど、今の見た目から若返れば確かにバレないな。だが俺と認識してくれる人が居なくなってしまわないか?
「判った、それで行こう」
どっちにしても若返りの魔法は掛けてもらうつもりだったので予定通りだ、問題ない。
「じゃあ私も手伝うわ、その方が早く終わるでしょう」
「うむ、それは助かる。早速準備に掛かるとしよう」
そう言うとクマさんは持ち帰った薬草や木の実を大量に出してきた。
「これを三日三晩煎じるのだ。これならお前にでもできるか。但し今から教える詠唱を唱えながら煎じるのだ」
「え、三日三晩ずっと?」
「なんじゃ、出来んのか?」
「三日間徹夜はちょっと無理かも」
「貧弱な奴じゃな。我なら1週間は大丈夫だと言うのに」
あんたが異常なんだよ、と言う言葉は勿論飲み込んだ。異常でないにしても特別ではあるな。
俺は教えてもらった詠唱をずっと続けている。その間にクマさんとルナは何やら祭壇のような物を作り始めた。人一人が横に成れるサイズの祭壇だ。あそこに俺が寝るのか?なんだか、下から火を点けられるようになってないか?
「クマさん大丈夫なんだろうな?」
「途切れさせるんじゃない。ずっと唱えておれ」
真剣な反応が面白くないし嫌だ。もっとフランクな関係だったはずなんだが。
「ルナジェールのマナも使わせてもらえるかの」
「いいけど、この子とあなたで十分じゃないの?」
「いや、それはそうなのじゃが、何だか少し妙なところもあるのでな。念のためじゃ」
妙なところ?そこんとこちゃんと突っ込んで聞いてくれよ、ルナ。俺は詠唱を途切れさせるわけには行かないんだから。
「何か変なところなんかあった?」
「うむ。ハッキリとは判らないんじゃが、違和感と言うのか、こいつが少し普通の人間ではない、というところが原因かも知れんな」
「普通の人間じゃない?」
「なんだ聞いてないのか。こやつは異世界からの転生者なんじゃ」
そう言えばルナには話したことなかったっけ?師匠からも聞いてなかったのか。
「そうなんだ、前に一度会ったことあるよね、転生者。確か名前はジョン・ドゥとか言ってた」
またあいつか。いつか絶対追いついてやる。
俺は詠唱を続け、クマさんとルナは別の詠唱を祭壇に向かって始める。二人(?)は交代で、俺は一人だ。おいおい、どっちか手伝ってくれよ。
そして儀式は三日三晩続くのだった。
「久しぶりだな、20年振りくらいか。特に匿っていた訳ではないがルナジェールとヴァルドアの知り合いだと言うので、ここに連れてきたのだ」
「そんなに会ってなかった?そうかも知れないわね」
それから暫らくはお互いの近況を話し込んでいたが、20年間の出来事でも二人とも殆ど変化のない暮らしだったようで特段のエピソードは無いようだ。
「それでヴァルドアはシルザールに戻ったのか。犯人ではないことは確かなのだな」
クマさんも疑っているようだ。師匠ならやりかねないと。
「流石に無いでしょう。確かにヴァルドアのマナの量は年々減ってきてはいたけれど、まだまだ私よりは多いくらいだしね」
「それなら別に犯人が居るのか。下手な魔法使いが『赤い太陽の雫』を手に入れれば大変なことになるかも知れんぞ」
「犯人は判っています。オメガ・サトリームという特級魔法士が犯人です。多分今頃はオメガは手配されていると思います」
「なんだもう判っていたのか。それではヴァルドアも近くここに来るかも知れんな」
「それが、もしかしたら師匠とオメガが接触しているかも知れないんです。オメガは『赤い太陽の雫』の使用方法が判らないと言っていました。それを師匠に聞きたかったようでしたから」
「なんだ、お前は犯人とも会っていたのか。それで取り逃がしたと?」
ちょっと話が嫌な方向に向かいつつあるようだ。
「取り逃がすも何も特級魔法士に俺が敵う訳ないじゃないですか。その時オメガは俺には探知できないほどの高度な隠蔽魔法で姿を隠していましたから」
何一つ嘘は吐いていない。捕える気がなかったことは話さなかっただけだ。
「するとヴァルドアは今もそのオメガとやらと一緒に追われている可能性もありますね」
割と高い可能性だった。師匠ならなんとかオメガを騙して犯人として捕まえて『赤い太陽の雫』は手に入れる、とかを考えていそうだ。
それがバレなければ問題ないがバレれば今度は師匠が新たな犯人として追われる立場になってしまう。師匠のことだから逃げることは容易いだろうが、お尋ね者になってしまうのは問題だろう。
「もし逃げているのなら此処には来ないか、若しくは態とここに逃げ込むか」
「態と?」
「そう。厄介ごとを私やナーザレスに押し付けようといういう魂胆で態と逃げ込む、ということね」
確かに師匠ならあり得る。
「それにこの森なら沢山の魔法使いの結界が多重に張られていて迷宮の様になっているから高位の魔法使いでも発見することは困難だと思うわ」
なるほど、それで俺はクマさん以外の魔法使いには誰も会わなかったのか。俺は結界なんて張れないこととクマさんが道に迷ったことで出会えた、ということになるな。
「いずれにしても状況が判らないと何とも言えんな。お前、ちょっと行って確認して来い」
「俺がですか。俺はシルザールには戻れないんですけど」
「何故じゃ?」
俺は今置かれてている状況を話した。
「なるほどな。ヴァルドアとは別の事情で追われてここに来たのか」
「だからシルザールには戻れないんですよ」
「それなら問題ない。今からお前に若返りの魔法を施してやれば見た目が変わってもう捕まらないだろうて」
なるほど、今の見た目から若返れば確かにバレないな。だが俺と認識してくれる人が居なくなってしまわないか?
「判った、それで行こう」
どっちにしても若返りの魔法は掛けてもらうつもりだったので予定通りだ、問題ない。
「じゃあ私も手伝うわ、その方が早く終わるでしょう」
「うむ、それは助かる。早速準備に掛かるとしよう」
そう言うとクマさんは持ち帰った薬草や木の実を大量に出してきた。
「これを三日三晩煎じるのだ。これならお前にでもできるか。但し今から教える詠唱を唱えながら煎じるのだ」
「え、三日三晩ずっと?」
「なんじゃ、出来んのか?」
「三日間徹夜はちょっと無理かも」
「貧弱な奴じゃな。我なら1週間は大丈夫だと言うのに」
あんたが異常なんだよ、と言う言葉は勿論飲み込んだ。異常でないにしても特別ではあるな。
俺は教えてもらった詠唱をずっと続けている。その間にクマさんとルナは何やら祭壇のような物を作り始めた。人一人が横に成れるサイズの祭壇だ。あそこに俺が寝るのか?なんだか、下から火を点けられるようになってないか?
「クマさん大丈夫なんだろうな?」
「途切れさせるんじゃない。ずっと唱えておれ」
真剣な反応が面白くないし嫌だ。もっとフランクな関係だったはずなんだが。
「ルナジェールのマナも使わせてもらえるかの」
「いいけど、この子とあなたで十分じゃないの?」
「いや、それはそうなのじゃが、何だか少し妙なところもあるのでな。念のためじゃ」
妙なところ?そこんとこちゃんと突っ込んで聞いてくれよ、ルナ。俺は詠唱を途切れさせるわけには行かないんだから。
「何か変なところなんかあった?」
「うむ。ハッキリとは判らないんじゃが、違和感と言うのか、こいつが少し普通の人間ではない、というところが原因かも知れんな」
「普通の人間じゃない?」
「なんだ聞いてないのか。こやつは異世界からの転生者なんじゃ」
そう言えばルナには話したことなかったっけ?師匠からも聞いてなかったのか。
「そうなんだ、前に一度会ったことあるよね、転生者。確か名前はジョン・ドゥとか言ってた」
またあいつか。いつか絶対追いついてやる。
俺は詠唱を続け、クマさんとルナは別の詠唱を祭壇に向かって始める。二人(?)は交代で、俺は一人だ。おいおい、どっちか手伝ってくれよ。
そして儀式は三日三晩続くのだった。
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