『絶対防御が結局最強』異世界転生って若い奴らの話じゃなかったのかよ、定年間近にはキツイぜ!

綾野祐介

文字の大きさ
上 下
38 / 105
第3章 飛躍する物語の章

第38話 シルザールの街で情報を集めた

しおりを挟む
「あの日の当番はハーメル・チェルリだった。あの爺さんは気に入らないが無能ではない。その護衛を掻い潜って、なおかつヴァルドア・サンザールが施した封印を解くなんて、特級でもなかなか難しい。僕なら出来るけどね」

 さっきの独り言でマシューが犯人ではないと理解しているが、発言だけを聞いていると自白と取れなくもない。

「ではマシュー、君以外が犯人だとすると他に誰が考えられるんだ?」

「僕に匹敵するほどの魔法使いなんてシルザールには居ない。居る筈がない」

 マシューの自尊心が心当たりがあっても口に出させないのかもしれない。

「いや、君には劣るが近い能力を持った魔法使いは誰も心当たりがないかい?」

「僕には劣るが、か。まあそうだな、エンタオ老は能力はあっても身体が最早付いては行かないだろう。マロンに至っては問題外だし」

 マロン・シシドスの評価は低いのか。だとするとオメガはマロンに対抗心を持っていたくらいだから、こちらも論外か。

「他にシルザールには特級は何人居たかな」

 オメガはマシューの頭からも消えているようだ。認識されていない、ということか。

「いや待てよ」

 マシューが何かを思い出したようだ。

「確か、爵位を買ったワリス・ボワールという商人のところに特級が居たな」

「オメガ・サトリームならさっき一緒に来た。今はマロンのところにいる筈だ。同門で同年だと言っていた」

「オメガ・サトリーム?名前は憶えていないが、もしかしたら隠形魔法はアステア一だとほざいていた奴かな」

 確かに俺の隠形魔法も簡単に見破れるほど熟練していた。第一人者っではあるはずだ。

「隠形魔法が得意ならハーメルの目を盗んで侵入し封印を解けるまで色々試せるかも知れないな」

 確かに一度で成功しなくても何回もチャレンジすればいい。それで解除できればOKだ。

「他に数人特級がいるけど、該当する様な魔法使いは多分居ない。僕が知らない間にシルザールに来ている奴が居るかもしれないけど」

「とすると一番怪しいのは?」

「そのオメガという奴かも知れない」

 何という事だ。オメガが犯人だと?俺は犯人と一緒に犯人を探していたのか。

「マロンのところに居ると言ったな。おい、直ぐに行くぞ」

 そう言うとマシューは部屋を飛び出した。俺は慌ててついて行く。

「ちょっと待て。オメガも犯人なら俺を連れて城に来たりしないだろうに」

 マシューが急停止する。

「なるほど、そうか。ヴァルドアと同じようなことだな」

「師匠程確信は無いがそういうことじゃないか?」

 俺は息を切らしながらなんとかマシューに追いついた。体力は無い。年齢的に辛い。

「では他に犯人が居ると?」

「ここでは止めておかないか」

 廊下で大声で話す内容ではない。

「判った、一度戻ろう」

 マシューが短気で行動的なのは十分理解した。部屋に戻るとマシューが配下の魔法士を呼ぶ。

「どうしました、マシュー様。こちらの方は?」

 案内もしていないのに部屋にいる俺に不審な眼差しを向ける。

「ダンテ、大丈夫だ。彼は僕の知人で、名は何だっけ?」

 知人と言っているのに名前を知らない、というのは拙いだろうに。ダンテは余計に怪しんだようだ。

「サワタリ・コータローです。よろしく」

「そう、コータローだ。ん?コータロー?珍しい名前だな。出身は何処だ?」

「出身と言うか、元々いた街はケルンだよ」

「あの田舎街か。ケルンではその名前は有り触れているのか?」

「いや、多分俺一人だ。親類縁者も居ない」

「なんだ、天涯孤独と言うやつか。寂しい限りだな。まあ、そんなことはいい。ダンテ、シルザールに居る特級魔法士は何人だ?」

 マシューの言い方から察するにダンテという、マシューとはそう変わらない歳に見える陰気な男は様々な情報に通じている、と見える。

「シルザールにいる特級魔法士ですか。確か城には4名様。リーズ侯爵様のところに1名。それとボワール伯爵様のところに1名。最後にサリア伯爵様のところに1名の合計7名がいらっしゃると思います。他には私と同じ上級魔法士が大勢いますが」

「いや、特級だけでいい。その特級魔法士の中で隠形魔法や封印魔法に長けた魔法士というと誰になる?」

「それは勿論マシュー様です」

「いや、僕以外で、だ」

「それならボワール家のオメガ・サトリーム様でしょうか」

「やはりそうなるか。その次となると誰だ?」

「その次となると少し落ちてしまいますが」

「差があるか」

「そうですね。とても長けているとは」

 結局そのあたりで落ち着いてしまうのか。アプローチが間違っているのだろうか。

「となると」

「となると?」

「前提が間違っているということになる。ヴァルドアとオメガを容疑者から外す、という前提が」

 拙い。話が変な方向に向かってしまいそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

『俺だけが知っている「隠しクラス」で無双した結果、女神に愛され続けた!』

ソコニ
ファンタジー
勇者パーティから「役立たず」として追放された冒険者レオン・グレイ。彼のクラスは「一般職」――この世界で最も弱く、平凡なクラスだった。 絶望の淵で彼が出会ったのは、青い髪を持つ美しき女神アステリア。彼女は驚くべき事実を告げる。 かつて「役立たず」と蔑まれた青年が、隠されたクラスの力で世界を救う英雄へと成長する物語。そして彼を導く女神の心には、ある特別な感情が芽生え始めていた……。 爽快バトル、秘められた世界の真実、そして禁断の恋。すべてが詰まった本格ファンタジー小説、ここに開幕!

モンスターが現れるようになった現代世界で悪魔として生きていく

モノノキ
ファンタジー
ある日、突如として引き起こった世界のアップデート。 これにより人類は様々な種族へと進化し、世界中にモンスターが解き放たれた。 モンスターだらけになってしまったことで、人類はそれぞれの地域の避難所に集まり生活することに。 そんな中、悪魔に進化してしまった佐藤ヒロキは避難に遅れてしまい1人で活動することになってしまう。 そうして眷属を増やしたり人を救ったりしているうちに何やら大事になっていく話。

ハズレ職〈召喚士〉がS級万能職に化けました〜無能と蔑まれた俺、伝説の召喚獣達に懐かれ力が覚醒したので世界最強です~

ヒツキノドカ
ファンタジー
 全ての冒険者は職業を持ち、その職業によって強さが決まる。  その中でも<召喚士>はハズレ職と蔑まれていた。  召喚の契約を行うには『召喚スポット』を探し当てる必要があるが、召喚スポットはあまりに発見が困難。  そのためほとんどの召喚士は召喚獣の一匹すら持っていない。  そんな召喚士のロイは依頼さえ受けさせてもらえず、冒険者ギルドの雑用としてこき使われる毎日を過ごしていた。  しかし、ある日を境にロイの人生は一変する。  ギルドに命じられたどぶさらいの途中で、ロイは偶然一つの召喚スポットを見つけたのだ。  そこで手に入ったのは――規格外のサーチ能力を持つ最強クラスの召喚武装、『導ノ剣』。  この『導ノ剣』はあらゆるものを見つけ出せる。  たとえそれまでどんな手段でも探知できないとされていた召喚スポットさえも。    ロイは『導ノ剣』の規格外なサーチ能力によって発見困難な召喚スポットをサクサク見つけ、強力な召喚獣や召喚武装と契約し、急激に成長していく。  これは底辺と蔑まれた『召喚士』が、圧倒的な成長速度で成り上がっていく痛快な物語。 ▽ いつも閲覧、感想等ありがとうございます! 執筆のモチベーションになっています! ※2021.4.24追記 更新は毎日12時過ぎにする予定です。調子が良ければ増えるかも? ※2021.4.25追記 お陰様でHOTランキング3位にランクインできました! ご愛読感謝! ※2021.4.25追記 冒頭三話が少し冗長だったので、二話にまとめました。ブクマがずれてしまった方すみません……!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

処理中です...