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第3章 飛躍する物語の章
第38話 シルザールの街で情報を集めた
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「あの日の当番はハーメル・チェルリだった。あの爺さんは気に入らないが無能ではない。その護衛を掻い潜って、なおかつヴァルドア・サンザールが施した封印を解くなんて、特級でもなかなか難しい。僕なら出来るけどね」
さっきの独り言でマシューが犯人ではないと理解しているが、発言だけを聞いていると自白と取れなくもない。
「ではマシュー、君以外が犯人だとすると他に誰が考えられるんだ?」
「僕に匹敵するほどの魔法使いなんてシルザールには居ない。居る筈がない」
マシューの自尊心が心当たりがあっても口に出させないのかもしれない。
「いや、君には劣るが近い能力を持った魔法使いは誰も心当たりがないかい?」
「僕には劣るが、か。まあそうだな、エンタオ老は能力はあっても身体が最早付いては行かないだろう。マロンに至っては問題外だし」
マロン・シシドスの評価は低いのか。だとするとオメガはマロンに対抗心を持っていたくらいだから、こちらも論外か。
「他にシルザールには特級は何人居たかな」
オメガはマシューの頭からも消えているようだ。認識されていない、ということか。
「いや待てよ」
マシューが何かを思い出したようだ。
「確か、爵位を買ったワリス・ボワールという商人のところに特級が居たな」
「オメガ・サトリームならさっき一緒に来た。今はマロンのところにいる筈だ。同門で同年だと言っていた」
「オメガ・サトリーム?名前は憶えていないが、もしかしたら隠形魔法はアステア一だとほざいていた奴かな」
確かに俺の隠形魔法も簡単に見破れるほど熟練していた。第一人者っではあるはずだ。
「隠形魔法が得意ならハーメルの目を盗んで侵入し封印を解けるまで色々試せるかも知れないな」
確かに一度で成功しなくても何回もチャレンジすればいい。それで解除できればOKだ。
「他に数人特級がいるけど、該当する様な魔法使いは多分居ない。僕が知らない間にシルザールに来ている奴が居るかもしれないけど」
「とすると一番怪しいのは?」
「そのオメガという奴かも知れない」
何という事だ。オメガが犯人だと?俺は犯人と一緒に犯人を探していたのか。
「マロンのところに居ると言ったな。おい、直ぐに行くぞ」
そう言うとマシューは部屋を飛び出した。俺は慌ててついて行く。
「ちょっと待て。オメガも犯人なら俺を連れて城に来たりしないだろうに」
マシューが急停止する。
「なるほど、そうか。ヴァルドアと同じようなことだな」
「師匠程確信は無いがそういうことじゃないか?」
俺は息を切らしながらなんとかマシューに追いついた。体力は無い。年齢的に辛い。
「では他に犯人が居ると?」
「ここでは止めておかないか」
廊下で大声で話す内容ではない。
「判った、一度戻ろう」
マシューが短気で行動的なのは十分理解した。部屋に戻るとマシューが配下の魔法士を呼ぶ。
「どうしました、マシュー様。こちらの方は?」
案内もしていないのに部屋にいる俺に不審な眼差しを向ける。
「ダンテ、大丈夫だ。彼は僕の知人で、名は何だっけ?」
知人と言っているのに名前を知らない、というのは拙いだろうに。ダンテは余計に怪しんだようだ。
「サワタリ・コータローです。よろしく」
「そう、コータローだ。ん?コータロー?珍しい名前だな。出身は何処だ?」
「出身と言うか、元々いた街はケルンだよ」
「あの田舎街か。ケルンではその名前は有り触れているのか?」
「いや、多分俺一人だ。親類縁者も居ない」
「なんだ、天涯孤独と言うやつか。寂しい限りだな。まあ、そんなことはいい。ダンテ、シルザールに居る特級魔法士は何人だ?」
マシューの言い方から察するにダンテという、マシューとはそう変わらない歳に見える陰気な男は様々な情報に通じている、と見える。
「シルザールにいる特級魔法士ですか。確か城には4名様。リーズ侯爵様のところに1名。それとボワール伯爵様のところに1名。最後にサリア伯爵様のところに1名の合計7名がいらっしゃると思います。他には私と同じ上級魔法士が大勢いますが」
「いや、特級だけでいい。その特級魔法士の中で隠形魔法や封印魔法に長けた魔法士というと誰になる?」
「それは勿論マシュー様です」
「いや、僕以外で、だ」
「それならボワール家のオメガ・サトリーム様でしょうか」
「やはりそうなるか。その次となると誰だ?」
「その次となると少し落ちてしまいますが」
「差があるか」
「そうですね。とても長けているとは」
結局そのあたりで落ち着いてしまうのか。アプローチが間違っているのだろうか。
「となると」
「となると?」
「前提が間違っているということになる。ヴァルドアとオメガを容疑者から外す、という前提が」
拙い。話が変な方向に向かってしまいそうだ。
さっきの独り言でマシューが犯人ではないと理解しているが、発言だけを聞いていると自白と取れなくもない。
「ではマシュー、君以外が犯人だとすると他に誰が考えられるんだ?」
「僕に匹敵するほどの魔法使いなんてシルザールには居ない。居る筈がない」
マシューの自尊心が心当たりがあっても口に出させないのかもしれない。
「いや、君には劣るが近い能力を持った魔法使いは誰も心当たりがないかい?」
「僕には劣るが、か。まあそうだな、エンタオ老は能力はあっても身体が最早付いては行かないだろう。マロンに至っては問題外だし」
マロン・シシドスの評価は低いのか。だとするとオメガはマロンに対抗心を持っていたくらいだから、こちらも論外か。
「他にシルザールには特級は何人居たかな」
オメガはマシューの頭からも消えているようだ。認識されていない、ということか。
「いや待てよ」
マシューが何かを思い出したようだ。
「確か、爵位を買ったワリス・ボワールという商人のところに特級が居たな」
「オメガ・サトリームならさっき一緒に来た。今はマロンのところにいる筈だ。同門で同年だと言っていた」
「オメガ・サトリーム?名前は憶えていないが、もしかしたら隠形魔法はアステア一だとほざいていた奴かな」
確かに俺の隠形魔法も簡単に見破れるほど熟練していた。第一人者っではあるはずだ。
「隠形魔法が得意ならハーメルの目を盗んで侵入し封印を解けるまで色々試せるかも知れないな」
確かに一度で成功しなくても何回もチャレンジすればいい。それで解除できればOKだ。
「他に数人特級がいるけど、該当する様な魔法使いは多分居ない。僕が知らない間にシルザールに来ている奴が居るかもしれないけど」
「とすると一番怪しいのは?」
「そのオメガという奴かも知れない」
何という事だ。オメガが犯人だと?俺は犯人と一緒に犯人を探していたのか。
「マロンのところに居ると言ったな。おい、直ぐに行くぞ」
そう言うとマシューは部屋を飛び出した。俺は慌ててついて行く。
「ちょっと待て。オメガも犯人なら俺を連れて城に来たりしないだろうに」
マシューが急停止する。
「なるほど、そうか。ヴァルドアと同じようなことだな」
「師匠程確信は無いがそういうことじゃないか?」
俺は息を切らしながらなんとかマシューに追いついた。体力は無い。年齢的に辛い。
「では他に犯人が居ると?」
「ここでは止めておかないか」
廊下で大声で話す内容ではない。
「判った、一度戻ろう」
マシューが短気で行動的なのは十分理解した。部屋に戻るとマシューが配下の魔法士を呼ぶ。
「どうしました、マシュー様。こちらの方は?」
案内もしていないのに部屋にいる俺に不審な眼差しを向ける。
「ダンテ、大丈夫だ。彼は僕の知人で、名は何だっけ?」
知人と言っているのに名前を知らない、というのは拙いだろうに。ダンテは余計に怪しんだようだ。
「サワタリ・コータローです。よろしく」
「そう、コータローだ。ん?コータロー?珍しい名前だな。出身は何処だ?」
「出身と言うか、元々いた街はケルンだよ」
「あの田舎街か。ケルンではその名前は有り触れているのか?」
「いや、多分俺一人だ。親類縁者も居ない」
「なんだ、天涯孤独と言うやつか。寂しい限りだな。まあ、そんなことはいい。ダンテ、シルザールに居る特級魔法士は何人だ?」
マシューの言い方から察するにダンテという、マシューとはそう変わらない歳に見える陰気な男は様々な情報に通じている、と見える。
「シルザールにいる特級魔法士ですか。確か城には4名様。リーズ侯爵様のところに1名。それとボワール伯爵様のところに1名。最後にサリア伯爵様のところに1名の合計7名がいらっしゃると思います。他には私と同じ上級魔法士が大勢いますが」
「いや、特級だけでいい。その特級魔法士の中で隠形魔法や封印魔法に長けた魔法士というと誰になる?」
「それは勿論マシュー様です」
「いや、僕以外で、だ」
「それならボワール家のオメガ・サトリーム様でしょうか」
「やはりそうなるか。その次となると誰だ?」
「その次となると少し落ちてしまいますが」
「差があるか」
「そうですね。とても長けているとは」
結局そのあたりで落ち着いてしまうのか。アプローチが間違っているのだろうか。
「となると」
「となると?」
「前提が間違っているということになる。ヴァルドアとオメガを容疑者から外す、という前提が」
拙い。話が変な方向に向かってしまいそうだ。
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