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第2章 回り始める物語の章

第23話 ルスカナの街でセリスを連れ出した

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「やはり軟禁されておられるのですか?それはセリス様の意志に反して、ということではないのですか?」

 ジョシュアが畳掛ける。セリスの表情は硬い。

「私の意志で今ここに居ます。それは確かです。というのも他に特に行きたいところもございませんので。ただ」

「ただ?」

「結局父は私を政略の道具としてしか見ていません。そのことは変わらないのです。ケルン子爵との婚約がは気になった途端次の嫁ぎ先を探しておられます。様々な情報を集めてウォーレン家にとって一番有利な相手を見付けようとしておられるのです。」

 姉のシンシアに続き妹のセリスも政略結婚の道具にされようとしている。その立場は変わっていないのだ。

「それならば、お屋敷をお出になられる訳には行かないのですか?」

「そうは行かないのです。父は決して許しません。そういう意味では私は確かに軟禁されている状況にあります。自由にお屋敷どころかこの建物すら出られません。それにしてもよくお二人はここまでは行ってこられましたね。いつもお抱え魔法士の結界が張られていて侵入者は直ぐに捕まってしまいますのに」

 やはり普段は侵入が不可能なのだ。今日は何らかの理由で結界が張られていない。張ってあれば俺にも判る。前に来たときはまだ魔法も使えなかったので全く感じなかったが。

「今日は魔法士が居ないんじゃないでしょうか。それか何かの事情で手が離せないとか」

「あっ」

「どうなさいました?」

「確か少し前にワルトワ、ワルトワというのがお抱え魔法士の筆頭の方なのですが、そのワルトワの師匠に当たる方がお見えらなるかもしれないと聞いたことがあります。もしかしたら今日がその日であったかも知れませんね」

 お抱え魔法士の師匠?それはもしかしたら一番拙い日に来てしまったことにならないか?

「それは寧ろとても間の悪い日に来てしまった、ということでしょうか」

「それは判りません。でも簡単に侵入できたという事はワルトワの結界が解除されているということは間違いないと思います」

「それならお屋敷を出るなら今日しかないのではありませんか?」

 セリスは少し考えている。屋敷を出たくない訳ではないようだ。

「でもワルトワが屋敷を離れたとは聞いていません。いつ結界が復活するかも知れない中で上手くお屋敷を出られるでしょうか」

 それが一番の心配の種だ。

「結界が復活したらすぐに判るから、とりあえず出るなら早く出よう」

「えっ?コータロー様は魔法はお使いになられないのでは?」

「修行したんだよ、ルスカナに来てからな。大したもんだろ?」

「そうなのですね。全く魔法が使えない方が使えるようにはなにないとお聞きしていましたが、コータロー様みたいに使えるようになられることがあるのですね」

「俺の努力の賜物さ。褒めてくれてもいいぜ」

「要らぬ話で時間を取るな、出るなら早く出よう」

 ジョシュアが至極真っ当な提案をする。

「判りました。支度をしますので少しだけお待ちください」

 セリスが準備をしている間、俺たちは部屋の外に出て待っていた。結界は復活する様子はない。このまま出られればいいのだが。

「お待たせしました」

 セリスが出てきた。カバンを一つだけの軽装だ。お嬢様の荷物としたら少なすぎるのだろうが、そんなことも言ってはいられない。

「よし、行こう」

 ジョシュアが仕切るな、と思うが、まあここは立ててやることにする。

 1階に降りて建物を出た。森を抜ければ外に出られる。結界はまだ復活していない。

 森を三人で抜けようとした時だった。

「あと少しだ」

「上手くいきそうだな」

「もう抜けますね」

「それで急いで何処に行くんだい?」

「えっ?」

 四人目の声に三人は驚いて立ち止まってしまう。

「誰だ」

 四人目の姿は見えない。

「儂か?誰だろうかな」

 俺は隠蔽魔法の解除を試してみる。全く解除できない。

「ほほう、少しは魔法が使えるようだな」

 相手は魔法使いだ。ワルトワなら中級魔法士なので少しは相手になれるかも知れない。

「ちよっと待て、お前、そのマナの量は何事だ?」

 自ら隠蔽魔法を解いてその魔法士が現れた。

「何事って、マナの量がどうかしたのか?」

「とんでもない総量だぞ。お前は一体何者だ?」

「俺は駆け出し魔法使いだが、何か?」

 現れた魔法士は俺と歳は変わらなそうだ。そこそこの年齢という事は、そこそこの魔法使いということでもあるだろう。少なくても俺には相手の魔法解除が出来なかった。

「駆け出しでそのマナの量はありえん。まあいい、それでそのお嬢さんを連れて何処に行こうというのだ?」

 本題に入って来た。さて、ここを乗り切ることが出来るかどうかが分かれ目になりそうだ。 
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