23 / 105
第2章 回り始める物語の章
第23話 ルスカナの街でセリスを連れ出した
しおりを挟む
「やはり軟禁されておられるのですか?それはセリス様の意志に反して、ということではないのですか?」
ジョシュアが畳掛ける。セリスの表情は硬い。
「私の意志で今ここに居ます。それは確かです。というのも他に特に行きたいところもございませんので。ただ」
「ただ?」
「結局父は私を政略の道具としてしか見ていません。そのことは変わらないのです。ケルン子爵との婚約がは気になった途端次の嫁ぎ先を探しておられます。様々な情報を集めてウォーレン家にとって一番有利な相手を見付けようとしておられるのです。」
姉のシンシアに続き妹のセリスも政略結婚の道具にされようとしている。その立場は変わっていないのだ。
「それならば、お屋敷をお出になられる訳には行かないのですか?」
「そうは行かないのです。父は決して許しません。そういう意味では私は確かに軟禁されている状況にあります。自由にお屋敷どころかこの建物すら出られません。それにしてもよくお二人はここまでは行ってこられましたね。いつもお抱え魔法士の結界が張られていて侵入者は直ぐに捕まってしまいますのに」
やはり普段は侵入が不可能なのだ。今日は何らかの理由で結界が張られていない。張ってあれば俺にも判る。前に来たときはまだ魔法も使えなかったので全く感じなかったが。
「今日は魔法士が居ないんじゃないでしょうか。それか何かの事情で手が離せないとか」
「あっ」
「どうなさいました?」
「確か少し前にワルトワ、ワルトワというのがお抱え魔法士の筆頭の方なのですが、そのワルトワの師匠に当たる方がお見えらなるかもしれないと聞いたことがあります。もしかしたら今日がその日であったかも知れませんね」
お抱え魔法士の師匠?それはもしかしたら一番拙い日に来てしまったことにならないか?
「それは寧ろとても間の悪い日に来てしまった、ということでしょうか」
「それは判りません。でも簡単に侵入できたという事はワルトワの結界が解除されているということは間違いないと思います」
「それならお屋敷を出るなら今日しかないのではありませんか?」
セリスは少し考えている。屋敷を出たくない訳ではないようだ。
「でもワルトワが屋敷を離れたとは聞いていません。いつ結界が復活するかも知れない中で上手くお屋敷を出られるでしょうか」
それが一番の心配の種だ。
「結界が復活したらすぐに判るから、とりあえず出るなら早く出よう」
「えっ?コータロー様は魔法はお使いになられないのでは?」
「修行したんだよ、ルスカナに来てからな。大したもんだろ?」
「そうなのですね。全く魔法が使えない方が使えるようにはなにないとお聞きしていましたが、コータロー様みたいに使えるようになられることがあるのですね」
「俺の努力の賜物さ。褒めてくれてもいいぜ」
「要らぬ話で時間を取るな、出るなら早く出よう」
ジョシュアが至極真っ当な提案をする。
「判りました。支度をしますので少しだけお待ちください」
セリスが準備をしている間、俺たちは部屋の外に出て待っていた。結界は復活する様子はない。このまま出られればいいのだが。
「お待たせしました」
セリスが出てきた。カバンを一つだけの軽装だ。お嬢様の荷物としたら少なすぎるのだろうが、そんなことも言ってはいられない。
「よし、行こう」
ジョシュアが仕切るな、と思うが、まあここは立ててやることにする。
1階に降りて建物を出た。森を抜ければ外に出られる。結界はまだ復活していない。
森を三人で抜けようとした時だった。
「あと少しだ」
「上手くいきそうだな」
「もう抜けますね」
「それで急いで何処に行くんだい?」
「えっ?」
四人目の声に三人は驚いて立ち止まってしまう。
「誰だ」
四人目の姿は見えない。
「儂か?誰だろうかな」
俺は隠蔽魔法の解除を試してみる。全く解除できない。
「ほほう、少しは魔法が使えるようだな」
相手は魔法使いだ。ワルトワなら中級魔法士なので少しは相手になれるかも知れない。
「ちよっと待て、お前、そのマナの量は何事だ?」
自ら隠蔽魔法を解いてその魔法士が現れた。
「何事って、マナの量がどうかしたのか?」
「とんでもない総量だぞ。お前は一体何者だ?」
「俺は駆け出し魔法使いだが、何か?」
現れた魔法士は俺と歳は変わらなそうだ。そこそこの年齢という事は、そこそこの魔法使いということでもあるだろう。少なくても俺には相手の魔法解除が出来なかった。
「駆け出しでそのマナの量はありえん。まあいい、それでそのお嬢さんを連れて何処に行こうというのだ?」
本題に入って来た。さて、ここを乗り切ることが出来るかどうかが分かれ目になりそうだ。
ジョシュアが畳掛ける。セリスの表情は硬い。
「私の意志で今ここに居ます。それは確かです。というのも他に特に行きたいところもございませんので。ただ」
「ただ?」
「結局父は私を政略の道具としてしか見ていません。そのことは変わらないのです。ケルン子爵との婚約がは気になった途端次の嫁ぎ先を探しておられます。様々な情報を集めてウォーレン家にとって一番有利な相手を見付けようとしておられるのです。」
姉のシンシアに続き妹のセリスも政略結婚の道具にされようとしている。その立場は変わっていないのだ。
「それならば、お屋敷をお出になられる訳には行かないのですか?」
「そうは行かないのです。父は決して許しません。そういう意味では私は確かに軟禁されている状況にあります。自由にお屋敷どころかこの建物すら出られません。それにしてもよくお二人はここまでは行ってこられましたね。いつもお抱え魔法士の結界が張られていて侵入者は直ぐに捕まってしまいますのに」
やはり普段は侵入が不可能なのだ。今日は何らかの理由で結界が張られていない。張ってあれば俺にも判る。前に来たときはまだ魔法も使えなかったので全く感じなかったが。
「今日は魔法士が居ないんじゃないでしょうか。それか何かの事情で手が離せないとか」
「あっ」
「どうなさいました?」
「確か少し前にワルトワ、ワルトワというのがお抱え魔法士の筆頭の方なのですが、そのワルトワの師匠に当たる方がお見えらなるかもしれないと聞いたことがあります。もしかしたら今日がその日であったかも知れませんね」
お抱え魔法士の師匠?それはもしかしたら一番拙い日に来てしまったことにならないか?
「それは寧ろとても間の悪い日に来てしまった、ということでしょうか」
「それは判りません。でも簡単に侵入できたという事はワルトワの結界が解除されているということは間違いないと思います」
「それならお屋敷を出るなら今日しかないのではありませんか?」
セリスは少し考えている。屋敷を出たくない訳ではないようだ。
「でもワルトワが屋敷を離れたとは聞いていません。いつ結界が復活するかも知れない中で上手くお屋敷を出られるでしょうか」
それが一番の心配の種だ。
「結界が復活したらすぐに判るから、とりあえず出るなら早く出よう」
「えっ?コータロー様は魔法はお使いになられないのでは?」
「修行したんだよ、ルスカナに来てからな。大したもんだろ?」
「そうなのですね。全く魔法が使えない方が使えるようにはなにないとお聞きしていましたが、コータロー様みたいに使えるようになられることがあるのですね」
「俺の努力の賜物さ。褒めてくれてもいいぜ」
「要らぬ話で時間を取るな、出るなら早く出よう」
ジョシュアが至極真っ当な提案をする。
「判りました。支度をしますので少しだけお待ちください」
セリスが準備をしている間、俺たちは部屋の外に出て待っていた。結界は復活する様子はない。このまま出られればいいのだが。
「お待たせしました」
セリスが出てきた。カバンを一つだけの軽装だ。お嬢様の荷物としたら少なすぎるのだろうが、そんなことも言ってはいられない。
「よし、行こう」
ジョシュアが仕切るな、と思うが、まあここは立ててやることにする。
1階に降りて建物を出た。森を抜ければ外に出られる。結界はまだ復活していない。
森を三人で抜けようとした時だった。
「あと少しだ」
「上手くいきそうだな」
「もう抜けますね」
「それで急いで何処に行くんだい?」
「えっ?」
四人目の声に三人は驚いて立ち止まってしまう。
「誰だ」
四人目の姿は見えない。
「儂か?誰だろうかな」
俺は隠蔽魔法の解除を試してみる。全く解除できない。
「ほほう、少しは魔法が使えるようだな」
相手は魔法使いだ。ワルトワなら中級魔法士なので少しは相手になれるかも知れない。
「ちよっと待て、お前、そのマナの量は何事だ?」
自ら隠蔽魔法を解いてその魔法士が現れた。
「何事って、マナの量がどうかしたのか?」
「とんでもない総量だぞ。お前は一体何者だ?」
「俺は駆け出し魔法使いだが、何か?」
現れた魔法士は俺と歳は変わらなそうだ。そこそこの年齢という事は、そこそこの魔法使いということでもあるだろう。少なくても俺には相手の魔法解除が出来なかった。
「駆け出しでそのマナの量はありえん。まあいい、それでそのお嬢さんを連れて何処に行こうというのだ?」
本題に入って来た。さて、ここを乗り切ることが出来るかどうかが分かれ目になりそうだ。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる