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第2章 回り始める物語の章
第18話 ルスカナの街で手紙を書いた
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「それで?」
ジョシュアの集めてきた情報を整理してみた。屋敷に奉公人は多い。毎日買い物も数人でていくし外の人間も数多く入って行くらしい。服屋や宝飾商、旅の一座まで種々雑多の人々が出入りしている。これなら何かに紛れて入り込むことも容易かも知れない。執事やメイドの顔見知りばかりだけではないだろうから。
「なるほど、そこは何とかなりそうだな。で、何かちゃんと当てはあるんたろうな?」
「勿論だ。寝具の業者に求人があったから応じておいた。明日から働くことになる。ここは領主の屋敷にも頻繁に出入りしている店だ。」
「抜かりないねぇ。で、俺の分は?」
「お前は歳が行き過ぎているから、ちょっとまだ当てがない。自分でなんとかしろ。」
「冷たいなぁ、お前の為にセリスを助けに行くんだぞ。」
「それはそうなんだが。」
「まあいい、とりあえずお前だけでも屋敷に入り込んで信頼を得ておくんだな。じゃ、行こうか。」
ジョシュアと二人、ロンの店に向かう。ロンは普通に店を開けていた。
「おい、説明してもらおうか。」
「お、え、何の話だ。それにしてもお前よく生きているな。」
「確実に殺したはずなのに、というのにな。手下の教育がなってないんじゃないか?」
「そんな訳あるか。あの血だぞ、死なない訳がない。」
それは確かに俺もそう思う。でも、ちょっとだけ心当たりがある。忘れたころに出てくる奴がうっとおしい。
「死んでないんだから仕方ないだろ。で、何で俺を殺そうとした?」
「言わないと今度はお前の命が無いと思え。」
ジョシュアが凄む。一応元プロだ。
「わっ、判った。言うよ。でも言ったら後で殺されるかも知れん。。」
「まあ、今死ぬか、少し後で死ぬか、だな。選べ。」
「判ったって。そういや、あんたたちケルンから来たって言ってたな。それは本当か?」
「本当だ。俺はケルンの守護隊騎士長の屋敷の居候だ。」
自慢できる身分ではない。
「そして、こいつは小間使いだ。」
「おい、俺の話はいい。さっさと話をしろ。」
「待て待て。話た後ケルンに逃げるからその騎士長様を紹介してくれないか?」
「紹介してもいいが、極悪人としての身元しか保証しないぞ。」
「それは流石に困る。一週間だけ滞在させてくれればいい。その間にどこかの商店に潜り込むから、一週間だ下寝泊まりできればいい。」
「判った、三日だな。」
「いや、一週間だって。」
「じゃあ五日だ。」
「仕方ない、五日で手を打とう。」
何か競りのようなことになってしまった。
「それで手紙を書いてやろう。で、全部話せよ。」
ロンの話は、それほど予想外なことは無かった。領民からの搾取、中央への徴税の隠蔽、横行する賄賂、それらは代々行われてきたことで、今の領主であるガルド・ウォーレンが始めたことではない。
時折中央からは隠密に巡検士の査察が入って追徴することが恒例化すらしている。それか数年に一度くらいはあるのだが、巡検士が不慮の事故で戻らない年もあるのだ。それが不慮なのか故意なのかは別として。そして、そのような場合は追徴を免れてしまう時もある。
ロンたちは巡検士のように領主のことを嗅ぎまわっている者を見付けると排除するよう言い遣っていた。報償は破格だ。俺はその巡検士に間違われたようだ。
「でもどうやって巡検士かどうかを見割れるんだ?」
「あいつらは身分証を持っているんだよ。それがあれば地方の領主は領内や屋敷内を自由に探らせなければならない。アステア国の紋章入りの身分証だよ。」
「俺はそんな物、持っていないぞ。」
「だろうな。吃驚して探せなかったが、普通は死体からそれだけを回収するんだ。巡検士は行方不明、ということになるようにな。」
「陰で色々とやってる領主様だな。でも、どこでもそんなものなのか。」
「どこでも大なり小なりあるだろう。でも、ここの領主様はちょっと他とは違う。」
「何が違うんだ?」
「使用人が消える話はしたんだったか?」
「ああ、新規で採用されても誰も出て行かない、とかなんとか。」
「それだ。屋敷には新しい使用人が何人も入るのに、実際に働いている使用人の数はほとんど変わらない。その意味が解るか?」
「さて、どこに行ったんだ、その使用人たちは。」
「どこにも行ってはいない。」
「というと。」
「屋敷の中で居なくなったんだよ、全員な。」
ちょっと何を言っているのか判らない。
「どういうことだ。」
「そういうことだよ。」
「だからちゃんと説明しろ、どういうことだと言うんだ。」
「屋敷の中でそれだけの人数が死んでいる、という訳さ。」
「死んでいるのか?」
「ああ、確かだ。墓を掘るのが大変だと愚痴っていた使用人が居たんだ。そいつも直ぐに居なくなってしまったがな。」
「なんで死ぬんだ、殺されているのか。」
「それは知らん。そこに入り込むと儂の命も危ないのでな。」
それはそうだろう。そんな秘密を共有できる筈もない。
俺はロンにゼノン宛の手紙を書いてやり、ロンの店を辞した。
ジョシュアの集めてきた情報を整理してみた。屋敷に奉公人は多い。毎日買い物も数人でていくし外の人間も数多く入って行くらしい。服屋や宝飾商、旅の一座まで種々雑多の人々が出入りしている。これなら何かに紛れて入り込むことも容易かも知れない。執事やメイドの顔見知りばかりだけではないだろうから。
「なるほど、そこは何とかなりそうだな。で、何かちゃんと当てはあるんたろうな?」
「勿論だ。寝具の業者に求人があったから応じておいた。明日から働くことになる。ここは領主の屋敷にも頻繁に出入りしている店だ。」
「抜かりないねぇ。で、俺の分は?」
「お前は歳が行き過ぎているから、ちょっとまだ当てがない。自分でなんとかしろ。」
「冷たいなぁ、お前の為にセリスを助けに行くんだぞ。」
「それはそうなんだが。」
「まあいい、とりあえずお前だけでも屋敷に入り込んで信頼を得ておくんだな。じゃ、行こうか。」
ジョシュアと二人、ロンの店に向かう。ロンは普通に店を開けていた。
「おい、説明してもらおうか。」
「お、え、何の話だ。それにしてもお前よく生きているな。」
「確実に殺したはずなのに、というのにな。手下の教育がなってないんじゃないか?」
「そんな訳あるか。あの血だぞ、死なない訳がない。」
それは確かに俺もそう思う。でも、ちょっとだけ心当たりがある。忘れたころに出てくる奴がうっとおしい。
「死んでないんだから仕方ないだろ。で、何で俺を殺そうとした?」
「言わないと今度はお前の命が無いと思え。」
ジョシュアが凄む。一応元プロだ。
「わっ、判った。言うよ。でも言ったら後で殺されるかも知れん。。」
「まあ、今死ぬか、少し後で死ぬか、だな。選べ。」
「判ったって。そういや、あんたたちケルンから来たって言ってたな。それは本当か?」
「本当だ。俺はケルンの守護隊騎士長の屋敷の居候だ。」
自慢できる身分ではない。
「そして、こいつは小間使いだ。」
「おい、俺の話はいい。さっさと話をしろ。」
「待て待て。話た後ケルンに逃げるからその騎士長様を紹介してくれないか?」
「紹介してもいいが、極悪人としての身元しか保証しないぞ。」
「それは流石に困る。一週間だけ滞在させてくれればいい。その間にどこかの商店に潜り込むから、一週間だ下寝泊まりできればいい。」
「判った、三日だな。」
「いや、一週間だって。」
「じゃあ五日だ。」
「仕方ない、五日で手を打とう。」
何か競りのようなことになってしまった。
「それで手紙を書いてやろう。で、全部話せよ。」
ロンの話は、それほど予想外なことは無かった。領民からの搾取、中央への徴税の隠蔽、横行する賄賂、それらは代々行われてきたことで、今の領主であるガルド・ウォーレンが始めたことではない。
時折中央からは隠密に巡検士の査察が入って追徴することが恒例化すらしている。それか数年に一度くらいはあるのだが、巡検士が不慮の事故で戻らない年もあるのだ。それが不慮なのか故意なのかは別として。そして、そのような場合は追徴を免れてしまう時もある。
ロンたちは巡検士のように領主のことを嗅ぎまわっている者を見付けると排除するよう言い遣っていた。報償は破格だ。俺はその巡検士に間違われたようだ。
「でもどうやって巡検士かどうかを見割れるんだ?」
「あいつらは身分証を持っているんだよ。それがあれば地方の領主は領内や屋敷内を自由に探らせなければならない。アステア国の紋章入りの身分証だよ。」
「俺はそんな物、持っていないぞ。」
「だろうな。吃驚して探せなかったが、普通は死体からそれだけを回収するんだ。巡検士は行方不明、ということになるようにな。」
「陰で色々とやってる領主様だな。でも、どこでもそんなものなのか。」
「どこでも大なり小なりあるだろう。でも、ここの領主様はちょっと他とは違う。」
「何が違うんだ?」
「使用人が消える話はしたんだったか?」
「ああ、新規で採用されても誰も出て行かない、とかなんとか。」
「それだ。屋敷には新しい使用人が何人も入るのに、実際に働いている使用人の数はほとんど変わらない。その意味が解るか?」
「さて、どこに行ったんだ、その使用人たちは。」
「どこにも行ってはいない。」
「というと。」
「屋敷の中で居なくなったんだよ、全員な。」
ちょっと何を言っているのか判らない。
「どういうことだ。」
「そういうことだよ。」
「だからちゃんと説明しろ、どういうことだと言うんだ。」
「屋敷の中でそれだけの人数が死んでいる、という訳さ。」
「死んでいるのか?」
「ああ、確かだ。墓を掘るのが大変だと愚痴っていた使用人が居たんだ。そいつも直ぐに居なくなってしまったがな。」
「なんで死ぬんだ、殺されているのか。」
「それは知らん。そこに入り込むと儂の命も危ないのでな。」
それはそうだろう。そんな秘密を共有できる筈もない。
俺はロンにゼノン宛の手紙を書いてやり、ロンの店を辞した。
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