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第5章 南海道
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第5章 南海道
東へ①
レイラを説得するのは骨が折れる作業だった。ただ、ロックもルークも折れる訳にも行かなかった。二人に付いてくることは今後も様々な危険に晒されることと同義だからだ。
幸いヴェルナー=フランクが合流してきた。
「レイラ様、ここまでにしてくださいませ。」
ヴェルナーの言葉は兄シオンの言葉に等しい。ある程度は自由に振舞っていても真剣なヴェルナーの意見は聞かざるをえなかった。フローリアも安心したようだ。
「じゃ、ヴェルナー、お姫様の御守は頼んだぞ。」
「何よ、その言い方は。ロックこそルークと二人で大丈夫?やっぱり付いて行ってあげようか?」
「レイラ様、勘弁してください。」
「もう、判ったわよ。ラースに帰るわ。でも、ヴェルナー、戻ったらお父様とシオン兄さまに起こられないように、いい訳を考えてよね。」
「判りました、ヴェルナーにお任せください。」
こうしてレイラ、フローリアとヴェルナーの一行はガリア州都ラースに向けて出発して行った。
「行ったね。」
「やっとな。よし、これからどうしようか。」
「東に向かうんじゃなかった?」
「そうだな。海路ならサミア海を東へ、なら陸路なら南街道をキャラムに向かう、そのどちらかだな。」
「海路なら船を探さないとね。でも今のロスは壊滅状態だから無理なんじゃないかな。ギャロに頼む、とか。」
「あいつなら手配してくれそうだけど、今は忙しいだろうし、こっちは丸投げで出て行こうとしている身だからな。でも今更だがシプレック将軍も息子にギャロと名付けるなんてよほどギャロウに思い入れがあるみたいだ。」
「ギャロは海、ギャロウは海の男って意味だっけ。」
「大体そんな感じだ。シプレック将軍にはお会いしたことはないけど、実直で優秀な武人だと父が言っていた。但し、公弟が相手となると、どうだろう。ギャロは信用できるけどな。」
「ギャロに迷惑はかけられないとしたら陸路ってことでいい?」
(ようやく決まったようだな。)
「なんだよ今までどこに行っていたんだ?」
全く絡んでこなかったブラウン=ジェンキンが出てきた。
(我はちと忙しくしておったのだ。あのキスエル老師と話をしておった。)
「老師と?何を話していたんだ?」
(決まておるだろう、ルシアとかいう奴の居場所のことだ。)
「おお、それで老師は何と?」
(老師が言うには、その者はロスには居ない、とのことだった。陸路で東に向かったと。)
「そうか、ちょうど俺たちも陸路で東へ、と決めたところだ。やつらは先行して待ち伏せでもするつもりかも知れないな。」
「待ち伏せされていると判っていて東へ向かうの?」
「当り前だろ。」
「だと思った。」
(では、東へと向かうことにしようか。)
「なんでジェイが仕切ってるんだよ。」
二人と一匹は自らを待ち伏せているかも知れない一行を追って陸路キャラムへと旅立つのだった。
東へ②
本来急ぐ事はない旅路だったが、ルシアを追う、という目的が出来たので徒歩ではなく馬を調達した。次の宿場町までは急げば1日だ。キャラムにはサミア海沿いを走る南海道を十日ほどで付ける筈だった。
キャラムは街道沿いの大きな街だった。アゼリア州には属していたがロス同様独立心の高い住民が多く港街でもあるのでロスとは似ている。ただシャロン公国最南端の港街ロスとガーデニア州の州都でもありシャロン公国最大の港レントとの中間地なので少し小さ目の船が立ち寄る港、という立場でしか無かった。
二人は南街道を順調に進んでいた。前後に旅をするキャバンなどは見れなかった。ロスからの隊商は全く出ていなかったし、ロスの惨状が知らされているのでキャラムからの隊商も絶えていた所為だ。
先行しているルシア達にも追いつけてはいない。
「急いでも仕方ない、なるようになるさ。」
とロックが言うのでルークも納得して従っていた。特に急ぎもせず、特にのんびりともしない、という感じだ。
「そろそろ街に着きそうだ。今日はちゃんと宿が取れるな。」
「野宿は嫌じゃないけど、ちゃんとした寝床はありがたいね。」
(それとちゃんとした食事がな。)
「えっ、ジェイも食べるの?」
(我をなんだと思っておるのだ、普通に飲み食いするぞ。)
「いや、食事しているところなんて見たことないよ。」
「そういや、見てないな。何を食べるんだ?」
(お前たちと何も変わらん。変な虫とかを食べるとでも思っておったのか。)
「いや、そもそも食べると思ってなかったんだよ。精霊の類なら食事なんてしないもんかと。」
(我は精霊の類などではない。ただの魔道師だ。)
「ま、魔道師?動物にも魔道師が居るんだ。」
(まあ珍しくはあるがな。だからちゃんと実体が在る。食事もできる。)
「なるほどね、それは知らなかった。世の中にはまだまだ知らないことが沢山ありそうだ。」
「それを経験することが修行なんじゃないか。一つ利口になったな。」
「ロックも知らなかったくせに。」
「いや、俺はだな、もちろん知って、」
「知って?」
「なかった。」
二人と一匹は最初の街で宿を見つけて早々に食事を済ませ身体を休める為に早めに床につくのだった。
東へ③
田舎の街だ、夜は明かりすらない。住人は寝静まっているので物音はしない。虫の声、小川のせせらぎ、雑草を揺らす風の音。
そんな中で異音に気が付いたのはルークの眠りが常に浅かったからかも知れない。ルークは目をこすりながら身体を起こした。
最初は聞き間違いや気のせいだと思った。だが確かに何か聞こえる。間違いではなかった。ただ何の音かが判らない。
「ロック、ねぇロック、起きてよ。」
ロックはルークに揺り起こされた。時間は判らなかったが真夜中だ。
「なんだよルーク、寝てたんじゃないのか。」
「なんか外で変な音がするんだよ。」
「またか。誰かが俺たちを捕まえに来たのか。」
ロスの宿でも夜中に起こされた経験がある。
「違う。そんなんじゃないよ。もっと、こう、ああ、聞いてみてよ。」
ロックは仕方なしに外に聞き耳を立てた。最初は特に何も聞こえなかったが、慣れてくると小さいが確実に誰かの声が聞こえる。よく聞けば女性の声のようだが何を話しているのかは判らなかった。
「誰だろう?」
「判らないけどさっきからずっと何かを話し続けているみたいなんだ。」
「ずっと聞いてたのか?」
「目が覚めたらなんか聞こえてきて気になったから。でも言っていることは判らないし、ずっと聞こえてるんだよ。」
「ジェイ、起きてるか。」
ロックはジェイを呼んだ。
「出番だぞ、外を見てきてくれないか。」
(なんで我がそのような使い走りみたいなことを)
「いや、使い魔だろうに。」
(それはそうではあるがお主の使い魔ではないわ。我は偉大なるギザイア=メイスンの縁者ステファニー様の使い魔である。まあ、仕方ない奴らじゃ、その頼み聞いてやろうかの。我が居ないと何もできんのか。)
ジェイは急に起こされて不機嫌ではあったが外に出るためにすぐ姿を消した。
しばらくしてジェイが戻って来た。
「どうだった?」
(それは、その、何というかだな。)
「なんだよ、歯切れが悪いな。外に何を見たんだ?」
ジェイは俯いて話し難そうにしている。
「誰がいたの?」
(外には若い女性が一人。一人と言っていいものかどうか。)
「どういう意味だ?」
(話すより見てもらった方が早い。二人とも出るがが良いわ。)
ジェイに促されて二人は外に出た。廊下には確かに若い女性がしゃがんでいる。その姿勢で何かを話しているのだが、独り言で相手はいない。内容は上手く聞き取れなかった。
そして、何よりその女性は少し透けていた。
東へ④
「あの、何をしているんですか?」
やっとの思いでルークが声を掛けた。二人とも状況をあまり把握できていない。
「あ、すいません、起こしてしまいましたか。」
女性に普通に応えられてしまった。
「一体どうしたんですか?」
話が通じると思ったら少し安心してきた。但し、女性は相変わらず少し透けている。
「実は昨日来た旅の人に何かの呪いを掛けられてしまったようなのです。」
「呪い?」
「呪いかどうかも判らないのですが、昨日から私はすこしづつ透けてきてしまって、それとここからあまり遠くへは移動できないようなのです。」
女性の話はこうだ。自分はこの宿で給仕を生業にしているのだが、昨日この部屋に泊まった三人連れの男の一人が何か呪文のようなものを唱えるとその時から自分では最初気が付かなかったほどに少しづつ透けて来たらしい。同僚に言われて初めて気が付いたとのことだ。
そして何故透けて来たのか判らないまま夕べ仕事を終えて自宅に戻ろうとしたら途中で進めなくなってしまって帰宅できなかったらしい。それで仕方なしにここに居続けている、というのだ。呪いをかけた男の風体を聞くとどうやらルシア=ミストのようだ。一日違いのところまで追いついていた。
「それは大変だな、どうだルーク、何かわかるか?」
「ちょっとまって。」
ルークは少し何かを唱えると女性の周りを一周した。
「うん、そうだね、確かに何かの魔道が掛けられているのは間違いないね。」
「何かの魔道?」
「そう。でもどんなものなのかは判らない。これを解除するのは掛けた本人でないと無理かも知れない。」
一日先行しているルシア達を追いかけて捕まえたうえで女性が動けないこの場所に戻ってこないといけない。中々難しいことだ。
「あと、もうつとつの可能性は。」
「他にもあるのか。」
「キスエル老師に頼る、って案。」
「そうか、その手か。老師ならなんとかできるかも知れない。」
「そうなると一度ロスに戻って老師にここに来ていただくことになる。」
「来ていただけるかな。」
「判らない。それとルシアとはかなり離れてしまう。」
「それだな。」
ルシア達はルークたちが追ってくると確信しているのだ。それで厄介ごとを起こして手を煩わすことで距離を稼いで逃げ切る算段だろう。
「でも、選択肢はないね。」
「判った、戻ろう。」
二人は女性と宿の主人に事情を説明しロスに一旦戻ってまた来るまで待っていて欲しい、と頼んだ。女性は否応もなかった。
臨時ではあるがルークの使い魔であるジェイも二人からはあまり距離を取れないので少しだけ先行してもらってキスエル老師と連絡を取ってもらうこととして、二人はロスへと引き返すのだった。
東へ⑤
キスエル老師はなかなか見つからなかった。ジェイがいくら探しても、どこにも痕跡がないのだ。グレデス教会の地下への階段も結局見つからない。
「どうしようか。」
「他に当てはないしな。ジェイ、老師の気配はどこにもないままか。」
(無いな。あの御仁は自らの存在自体を決して探らせないことが可能なのではないか。だからこそ、この地でずっと誰にも知れず眠っておったのであろうよ。)
「そうだね。僕たちも全然気が付かなかったし、索敵には長けていたはずのソニーも気が付いていなかったからね。」
「まあ、俺たち程度に気が付かれていては数字持ちの魔道士の名が廃るってことか。」
二人と1匹は途方に暮れていた。仕方ないので港湾局にギャロを訪ねることにした。
「あれ、お二人ともロスを出られたのではなかったですか?」
ギャロに不思議そうに見られても仕方ない。旅に出たのはほんの数日前だったのだ。
「キャラムに向けて旅に出たのはいいが、すぐの街でちょっと事件に巻き込まれてしまったんだよ。」
二人はギャロに事情を掻い摘んで話した。その都合でキスエル老師を捜していることも。
「なるほど、ルシア=ミストに嵌められましたね。」
やはりギャロは聡い、少し聞いただけで全てを理解していた。
「判りました、僕の方でも探してみますが、今まで老師がロスにいらっしゃること自体を存じ上げに無かったので探せるかどうか。老師には疫病を排除するのに多大なご助力をいただきましたので、こちらもちゃんとお礼を言いたかったのですが、すぐにどこかに消えてしまわれたので。グレデス教会の地下に部屋が在るのなら、それはなんとか探し出せるかも知れませんので、少しお待ちください。」
ギャロには地下を見つける方法に心当たりがあるようだった。
「一応ダンテ局長にも了解を得てからでないと人員を動かせないので取ってきますね。少しだけお時間をください。」
「ダンテ局長?」
「そうです、代理じゃなくなって正式に局長です。まあ他に選択肢がなかったので。」
何か一局員であるギャロ=シプレックが港湾局全体の責任者であるかのようだったが、彼なら十分それに耐えられるはずだ。彼は後にレークリッド王朝の前のハーミット王朝最後の宰相レリック=バレンタインの再来と呼ばれるようになるのだが、それはまた別の話。
ロックたちが少し待っていると、すぐにギャロが戻って来た。
「少し人を集めてから行きますので、先にグレデス教会に行っておいていただけますか。すぐに追いつきます。」
二人と1匹はさっきまでいたグレデス教会に戻るのだった。
東へ⑥
グレデス教会に戻ると先客がいた。五人ほどの男が大聖堂に入るのが見えた。信者には到底見えない男たちだった。
「誰だろう。ギャロが手配した人達かな?」
「いや違うだろ。ギャロの手配なら本人が連れてくるはずだ。」
「だよね。だったら何者だろう。」
「行って問い詰めるさ。」
「ロック、何でも剣で解決しようとするのは辞めた方がいいよ。」
「そうか?手っ取り場合からな。」
それがいい時と悪い場合がある、とルークは思うのだがロックを積極的に止める気もなかった。
男たちに続いてロックが教会に入ると男たちの姿はどこにもなかった。
「消えた?」
「いや、彼らももしかしたら地下への降り口を捜しているんじゃないかな。」
「老師に用があると?」
「判らないけど、他にこの場所に用がある風には見えないから。」
「そうだな。もしそうならこっちにも都合がいい。奴らが地下に降りたら後を付けるとするか。」
とりあえず二人は隠形の魔道をかけて姿を消してから先に入った男たちを捜したがなかなか見つからない。
「ジェイ、見つからないか?」
(相手も隠形の魔道を使っておるようじゃな。教会に入る前は使っているようには見えなかったが、今は気配が無い。)
「そうか。向こうにも魔道師が居るってことか、これはちょっと手強いかも知れないな。」
相手の素性が知れないうちには迂闊に手を出せない。また相手の力量も図らないといけない。こんな時にソニーが居てくれたら、とルークは後悔した。ソニーの方がずっと索敵に長けているのだ。
(ギャロたちが来たぞ。)
ジェイが気が付いて伝える。ギャロが十人ほどの男を連れて追いついてきた。
「ルークさん、ロックさん、どこですか。」
何も知らないギャロは不用意に大声で名前を呼んだ。先に入った男たちにも聞こえたかもしれない。二人は隠形を解いてギャロの前に現れた。
「びっくりした、何かの魔道ですか、いきなり現れないでくださいよ。」
「すまない。でも五人ほどの男たちが先に教会に入っていったのが見えたのでルークが隠形の魔道を使って姿を消していたんだ。」
「男たち、ですか。何者です?」
「判らない。もしかしたら俺たちと同じ目的なのかも知れない。」
「地下の用があると?それなら先に見つけてもらえると荒事を使う必要が無いかも知れませんね。」
何をしようとして十人も連れて来たのか、かなり手荒なことを考えていたようだ。
「とりあえず全員で探そう。」
ロックたちは相手に気取られているという前提で大っぴらに捜索することにしたのだった。
東へ⑦
少し別の場所に話が移る。時も少しだけ進んでいる。ガーデニア州ディアック山の山裾にある洞窟の中。
「老師、今戻りました。」
「ソニーか、で、首尾は?」
「これに。」
「おお、確かに。流石じゃな。」
「苦労しましたよ、老師。アークにも本当のことは話さないで探していましたから。」
「で、どこにあった?」
「ロスです。もっと西まで行ったのですが、どうにも見付かりませんでしたので一旦ロスに戻った時にあの黒死病騒ぎに巻き込まれまして。」
「おお、大変じゃったらしいの。もう収まったとは聞いたが。」
「ええ、キスエル老師が収めてくださったのです。」
「キスエルじゃと。水のキスエルか。」
「そうです。ロスのグレデス教会の地下にいらっしゃったようで、黒死病を収めるために出て来てくださいました。」
「そうか、あの怠け者がの。自分の寝床が騒がしいのが気に入らなんだのじゃろう。でなければあの男が出張るはずがない。」
「そのキスエル老師の寝床にあったのです。」
「なるほどの、あ奴が隠し持っておったのか。というか、多分これの使い道も知らないで、ただ置いてあっただけかも知れんて。」
「そういうものですか。」
「この使い道は多分儂しか判らんじゃろう。もしかしたらアステアあたりも知っておるかも知れんが。」
ソニーの会話の相手も老師と呼ばれており、キスエル老師とも旧知の間柄のようだ。当然魔道士であろう。アステアとは鉄のアステアと呼ばれる数字持ちの魔道士序列第10位の高位魔道士だった。
「それで、本当にやるつもりなんじゃな。」
「当然です。その為に老師の言いつけ通りのものを見つけて来たのですから。」
「アーク=ライザーは知らない、ということじゃな。」
「当り前です。あの男は剣の腕は立ちますが生真面目すぎます。」
「お主の覇道には、いや破道と言い換えようか、お主の破道には邪魔か。」
「いいえ、役には立ってもらいますよ。ロスでロック=レパードに会いました。今年の御前試合の優勝者です。彼にはアークでは勝てないでしょう。ただ無傷では勝てない、と見ました。そこを狙わせてもらう、ということになります。」
「幼馴染の親友もただの駒か、お主もいい玉じゃな。」
「綺麗ごとでは私の目的は到底達成できませんから。」
「すべてはアストラッドのため、か。」
「いいえ、全ては私の目的のため、です。」
「どちらでもよい。儂はただ面白ければよいのじゃ。ただキスエルが出張ってくるとなると少々問題ではあるな。儂はあ奴とは相性が悪い。」
「老師にも苦手な方がいらっしゃるのですね。」
「苦手ではない、相性の問題じゃ。まともに争えば最後は儂が勝つわ。」
「では、儂もここを出てアストラッドに向かわねばなるまいな。」
「老師、よろしくお願いします。」
ソニー=アレスの話している相手は洞窟の中が暗いので判別し難いが、かなり身長が低い。子供の背丈くらいしかなく、ソニーの半分より少しだけ高い程度だった。暗さもあるが、なんだが存在自体が暗い、とでもいうかのようだった。
その者の名前はガルド、影のガルドと呼ばれ魔道士序列第6位の魔道士だった。
東へ⑧
(見つけたぞ。)
ジェイが先に入った男たちを見つけたようだ。巧妙に魔道で隠された地下に続く階段でもあるのかと思っていたら、どうも移動の魔道で直接地下に入るしかないようだった。それすら地下の存在を隠していたので中々見つからなかった。先に入った男たちの存在があったから見つけることが出来たのだ。
「ルーク、行けるか?」
「行ったことない場所は三次元座標が判らないと無理だよ。」
「座標?なんだ、それは。」
(それは我が何とかしよう。)
「なんだ、俺にもちゃんと説明しろよ。」
「ロックには後で説明するから。」
多分ロックに説明しても判らないだろうな、とルークは思った。途中で投げ出す確率が高い。
ジェイの指示によってルークの魔道で直接地下に移動する。一度に数人しか移動できないので、とりあえず地下で先行した男たちと出くわすことも考えてロックとルークが移動し、ルークが戻ってギャロを運ぶ、という訳だ。
ギャロが連れて来た人数は力づくで地下への通路を見つけるための人海戦術用だったので教会の1階で待機となった。本当は火薬で爆破して見つけるつもりだったのだ。ギャロは大胆すぎるのかも知れない。
ルーク、ロック、ギャロの三人が地下に入った。廊下が続いていて左右に扉がいくつかある。そのうちのどこかの部屋に先の男たちがいる筈だ。五人なら三人で十分御し得る。扉の中の気配をさぐりながら一つ一つ開けていった。
扉は全部で四つ。手前の左右の部屋には人の気配が無かった。奥の右の部屋。誰かが居る。
「開けるぞ、開けたらすぐに取り押さえる。」
「わかった。」
ロックがいきなり扉を開けて飛び込んだ。ルークとギャロも続く。入ってすぐに三人で四人を気絶させた。とりあえず一人残っていれば話が出来る。
「なっ、何者だ。」
こっちのセリフだった。
「お前たちこそ何者だ?ここで何をしていた?グレデス教会の関係者ではないだろう。」
「それはお前たちも同じだろう、ロック=レパードとルーク=ロジック、それと誰だ?」
こちらの情報を持っている。一体何者なのだろうか。
「何故俺たちを知っている。それとこいつは港湾局のギャロ=シプレックだ。」
「フィル=シプレックの息子か。」
「色々と知っているようだな、本当にお前は何者なんだ?」
「私は、言う必要は無いな。」
「ちゃんと話さないと港湾局で尋問することになるぞ。ここで何をしていた?」
「港湾局は関係ないだろう。教会関係者でもあるまいに。」
魔道士でも剣士でもなさそうな若い男はロックたちと同世代に見えた。どちらかと言うと文官に見えるが、頭は切れそうだった。
東へ⑨
「この四人の身柄も港湾局で預かりましょう。たっぷりと尋問してあげますよ。」
少し凄みを効かせてギャロが言った。但し相手は意に介していない様子だった。
「好きにすればいい。神の殉教者であるところの、この者たちが話が出来れば、な。」
途端、うめき声が聞こえた。
「しまった。」
四人は既にこと切れていた。どうやったかは判らないが自害したか、この男が全員を殺してしまったのた。捕まって尋問されるよりも死を選んだ、それが自らの意思に沿っていたのか反していたのかは判らないが。
「なんてことを。殺すことはないじゃないか。」
「私は殺していない。何か証拠でも有るのか?この者たちは自ら名誉ある死を選んだのだ。」
「名誉ある死?そんなものであるはずがない。お前が無理やり選ばせたのだろうに。」
「私が何かするのを見たのか?身動き一つしていない筈だが。」
確かに男は全く動く素振りすらしていなかった。
「何かの魔道を使ったのだろう。」
「その形跡があるのか?ルーク=ロジックなら判るだろう、私が何もしていない、ということが。」
確かにルークには男が魔道を使ったとは思えなかった。何も感じなかったのだ。単に修行が足りなくて気が付かなかった、ということもあり得るが、いずれにしてもルークには証拠が見つけられなかった。
「ロック、ごめん、この人の言う通り僕では魔道の痕跡を見つけられない。それがそのまま、この人が何もしていないことの証明になるとも思えないけど。」
(ここで何をしている。)
直接頭の中に声が響いた。キスエル老師だ。
「老師、お捜していたのです。戻られたのですね。老師、声を出してお話ししていただけますか。」
「うむ、そうであった。すぐに声を出すのを忘れてしまうわい。儂を捜しておっただと、何か用か。儂はエピタフの祠に行っておったのじゃ。」
「エピタフの祠ですか。するとステファニーさんに会いに?」
「そうじゃ、お前たちの使い魔を見て思い出したからの。あの御仁の方が薬の精製などには長けておるでな。」
「なるほど、それで。」
「教会に居ったものを何人か捕まえて祠で薬を作らせておる。儂一人でロス全部を治して回るには手間がかかりすぎるでな。」
多分面倒なだけだろう、とは思ったが誰も口には出さなかった。
東へ⑩
「ところで、もう一人おったやつは消えたが、よかったのか?」
「あっ。」
生き残りの一人の姿は既になかった。それはそうだ、地下に移動できるのだ、地上にもできるだろう。ただし、それをルークに悟られなかった、ということが問題だった。魔道士としてルークを上回っている、ということになる。そう感じさせないところが凄い。
「なんじゃ、あ奴にも用があったのか。それならそうと早く言うがよいわ。」
「老師、あいつがどこに行ったのか把握できますか。」
「ちょっと待て。」
そう言うとキスエル老師の姿が掻き消えた。次の瞬間、さっきの男を捕まえて老師が戻って来た。
「なっ、なんだ、そうかあなたが水のキスエルか。」
「儂の顔を知らなんだか。それでもここに立ち入ったということは儂に用があった訳でもないのか。」
「いえ、いいえ、あなたのご高名をお聞きしてどうしてもご指導を受けたいと。」
「思ったわけではない、よな。さっさと本当に事を言わないと老師は気が短いぞ。」
「なんでお主が仕切っておる。まあよい、どっちの用事も訊こうではないか。
「こっちの用事は一つです。南海道を東に向かった次の街で、なんというか場所に縛られてしまう魔道を掛けられた女性が居て徐々に存在が透けてきているのです。多分僕たちに手間を掛けさせて自分を追わせないようにというルシア=ミストの策だと思うのですが、僕たちの所為でそうなったとしたら放っておけないので何とか老師のお力をお借り出来ないかと。」
「なるほどの。あのなんとかという闇ギルドの男じゃな。まあよい、それは任せておくがよい。直ぐに飛んで行ってやろう。」
「お願いします。そして、こいつのことですが。」
「そうじゃな、お主、名は何と言う?」
キスエル老師に問われると正直に答えざるを得ない。男は観念せざるを得ない。ルークがクォレル=ロジックに掛けた魔道をもっと強くキスエル老師が掛けていた。
「私の名前は、名前は、」
それでも抵抗しようとしていたが無理だった。キスエル老師に抵抗することは至難の業だ。
「シェ、シェラック、シェラック=フィットだ。」
絞り出すように名前だけを答えた。まだなんとか抵抗しようとしている。
「それて゜、ここで何をしておったのだ。」
「あっ、あるものを探していたのだ。」
あるもの、という具体的なことを言わないのはこの男の最大限の抵抗だった。それを言うくらいなら死んでもいい、という覚悟での抵抗だ。
「あるもの、とはなんだ。」
「あるものは、あるものは、見つからなかった。誰かが既に持ち去っていたようだ。」
あるもの、以上の内容を話さない。ルークには判るがそれは相当な魔道力が必要だった。
「目的は果たせなかった、ということだな。それで、シェラックとやら、お主は何者だ?」
「私は、私は、、、、」
突然男が消えた。
「なんだ、どうした?老師、あいつが消えてしまった。何が起こったんですか。」
「うむ。」
ルークでは痕跡を追えない、高位の魔道士の仕業としか思えなかった。シェラック=フィット本人のものではない、誰が他の魔道士の力だ。それもキスエル老師と同格の。
「あやつか。あやつが後ろについておる、ということじゃな。」
「老師、あやつとは。」
「儂の眼を盗んでこんなことをする奴は、まあノルンあたりじゃろうて。あ奴がさつきの男の後ろ盾、というか魔道の師匠じゃろう。」
「氷のノルン、ですか。」
氷のノルンは数字持ちの魔道士序列第9位の魔道士だった。
東へ①
レイラを説得するのは骨が折れる作業だった。ただ、ロックもルークも折れる訳にも行かなかった。二人に付いてくることは今後も様々な危険に晒されることと同義だからだ。
幸いヴェルナー=フランクが合流してきた。
「レイラ様、ここまでにしてくださいませ。」
ヴェルナーの言葉は兄シオンの言葉に等しい。ある程度は自由に振舞っていても真剣なヴェルナーの意見は聞かざるをえなかった。フローリアも安心したようだ。
「じゃ、ヴェルナー、お姫様の御守は頼んだぞ。」
「何よ、その言い方は。ロックこそルークと二人で大丈夫?やっぱり付いて行ってあげようか?」
「レイラ様、勘弁してください。」
「もう、判ったわよ。ラースに帰るわ。でも、ヴェルナー、戻ったらお父様とシオン兄さまに起こられないように、いい訳を考えてよね。」
「判りました、ヴェルナーにお任せください。」
こうしてレイラ、フローリアとヴェルナーの一行はガリア州都ラースに向けて出発して行った。
「行ったね。」
「やっとな。よし、これからどうしようか。」
「東に向かうんじゃなかった?」
「そうだな。海路ならサミア海を東へ、なら陸路なら南街道をキャラムに向かう、そのどちらかだな。」
「海路なら船を探さないとね。でも今のロスは壊滅状態だから無理なんじゃないかな。ギャロに頼む、とか。」
「あいつなら手配してくれそうだけど、今は忙しいだろうし、こっちは丸投げで出て行こうとしている身だからな。でも今更だがシプレック将軍も息子にギャロと名付けるなんてよほどギャロウに思い入れがあるみたいだ。」
「ギャロは海、ギャロウは海の男って意味だっけ。」
「大体そんな感じだ。シプレック将軍にはお会いしたことはないけど、実直で優秀な武人だと父が言っていた。但し、公弟が相手となると、どうだろう。ギャロは信用できるけどな。」
「ギャロに迷惑はかけられないとしたら陸路ってことでいい?」
(ようやく決まったようだな。)
「なんだよ今までどこに行っていたんだ?」
全く絡んでこなかったブラウン=ジェンキンが出てきた。
(我はちと忙しくしておったのだ。あのキスエル老師と話をしておった。)
「老師と?何を話していたんだ?」
(決まておるだろう、ルシアとかいう奴の居場所のことだ。)
「おお、それで老師は何と?」
(老師が言うには、その者はロスには居ない、とのことだった。陸路で東に向かったと。)
「そうか、ちょうど俺たちも陸路で東へ、と決めたところだ。やつらは先行して待ち伏せでもするつもりかも知れないな。」
「待ち伏せされていると判っていて東へ向かうの?」
「当り前だろ。」
「だと思った。」
(では、東へと向かうことにしようか。)
「なんでジェイが仕切ってるんだよ。」
二人と一匹は自らを待ち伏せているかも知れない一行を追って陸路キャラムへと旅立つのだった。
東へ②
本来急ぐ事はない旅路だったが、ルシアを追う、という目的が出来たので徒歩ではなく馬を調達した。次の宿場町までは急げば1日だ。キャラムにはサミア海沿いを走る南海道を十日ほどで付ける筈だった。
キャラムは街道沿いの大きな街だった。アゼリア州には属していたがロス同様独立心の高い住民が多く港街でもあるのでロスとは似ている。ただシャロン公国最南端の港街ロスとガーデニア州の州都でもありシャロン公国最大の港レントとの中間地なので少し小さ目の船が立ち寄る港、という立場でしか無かった。
二人は南街道を順調に進んでいた。前後に旅をするキャバンなどは見れなかった。ロスからの隊商は全く出ていなかったし、ロスの惨状が知らされているのでキャラムからの隊商も絶えていた所為だ。
先行しているルシア達にも追いつけてはいない。
「急いでも仕方ない、なるようになるさ。」
とロックが言うのでルークも納得して従っていた。特に急ぎもせず、特にのんびりともしない、という感じだ。
「そろそろ街に着きそうだ。今日はちゃんと宿が取れるな。」
「野宿は嫌じゃないけど、ちゃんとした寝床はありがたいね。」
(それとちゃんとした食事がな。)
「えっ、ジェイも食べるの?」
(我をなんだと思っておるのだ、普通に飲み食いするぞ。)
「いや、食事しているところなんて見たことないよ。」
「そういや、見てないな。何を食べるんだ?」
(お前たちと何も変わらん。変な虫とかを食べるとでも思っておったのか。)
「いや、そもそも食べると思ってなかったんだよ。精霊の類なら食事なんてしないもんかと。」
(我は精霊の類などではない。ただの魔道師だ。)
「ま、魔道師?動物にも魔道師が居るんだ。」
(まあ珍しくはあるがな。だからちゃんと実体が在る。食事もできる。)
「なるほどね、それは知らなかった。世の中にはまだまだ知らないことが沢山ありそうだ。」
「それを経験することが修行なんじゃないか。一つ利口になったな。」
「ロックも知らなかったくせに。」
「いや、俺はだな、もちろん知って、」
「知って?」
「なかった。」
二人と一匹は最初の街で宿を見つけて早々に食事を済ませ身体を休める為に早めに床につくのだった。
東へ③
田舎の街だ、夜は明かりすらない。住人は寝静まっているので物音はしない。虫の声、小川のせせらぎ、雑草を揺らす風の音。
そんな中で異音に気が付いたのはルークの眠りが常に浅かったからかも知れない。ルークは目をこすりながら身体を起こした。
最初は聞き間違いや気のせいだと思った。だが確かに何か聞こえる。間違いではなかった。ただ何の音かが判らない。
「ロック、ねぇロック、起きてよ。」
ロックはルークに揺り起こされた。時間は判らなかったが真夜中だ。
「なんだよルーク、寝てたんじゃないのか。」
「なんか外で変な音がするんだよ。」
「またか。誰かが俺たちを捕まえに来たのか。」
ロスの宿でも夜中に起こされた経験がある。
「違う。そんなんじゃないよ。もっと、こう、ああ、聞いてみてよ。」
ロックは仕方なしに外に聞き耳を立てた。最初は特に何も聞こえなかったが、慣れてくると小さいが確実に誰かの声が聞こえる。よく聞けば女性の声のようだが何を話しているのかは判らなかった。
「誰だろう?」
「判らないけどさっきからずっと何かを話し続けているみたいなんだ。」
「ずっと聞いてたのか?」
「目が覚めたらなんか聞こえてきて気になったから。でも言っていることは判らないし、ずっと聞こえてるんだよ。」
「ジェイ、起きてるか。」
ロックはジェイを呼んだ。
「出番だぞ、外を見てきてくれないか。」
(なんで我がそのような使い走りみたいなことを)
「いや、使い魔だろうに。」
(それはそうではあるがお主の使い魔ではないわ。我は偉大なるギザイア=メイスンの縁者ステファニー様の使い魔である。まあ、仕方ない奴らじゃ、その頼み聞いてやろうかの。我が居ないと何もできんのか。)
ジェイは急に起こされて不機嫌ではあったが外に出るためにすぐ姿を消した。
しばらくしてジェイが戻って来た。
「どうだった?」
(それは、その、何というかだな。)
「なんだよ、歯切れが悪いな。外に何を見たんだ?」
ジェイは俯いて話し難そうにしている。
「誰がいたの?」
(外には若い女性が一人。一人と言っていいものかどうか。)
「どういう意味だ?」
(話すより見てもらった方が早い。二人とも出るがが良いわ。)
ジェイに促されて二人は外に出た。廊下には確かに若い女性がしゃがんでいる。その姿勢で何かを話しているのだが、独り言で相手はいない。内容は上手く聞き取れなかった。
そして、何よりその女性は少し透けていた。
東へ④
「あの、何をしているんですか?」
やっとの思いでルークが声を掛けた。二人とも状況をあまり把握できていない。
「あ、すいません、起こしてしまいましたか。」
女性に普通に応えられてしまった。
「一体どうしたんですか?」
話が通じると思ったら少し安心してきた。但し、女性は相変わらず少し透けている。
「実は昨日来た旅の人に何かの呪いを掛けられてしまったようなのです。」
「呪い?」
「呪いかどうかも判らないのですが、昨日から私はすこしづつ透けてきてしまって、それとここからあまり遠くへは移動できないようなのです。」
女性の話はこうだ。自分はこの宿で給仕を生業にしているのだが、昨日この部屋に泊まった三人連れの男の一人が何か呪文のようなものを唱えるとその時から自分では最初気が付かなかったほどに少しづつ透けて来たらしい。同僚に言われて初めて気が付いたとのことだ。
そして何故透けて来たのか判らないまま夕べ仕事を終えて自宅に戻ろうとしたら途中で進めなくなってしまって帰宅できなかったらしい。それで仕方なしにここに居続けている、というのだ。呪いをかけた男の風体を聞くとどうやらルシア=ミストのようだ。一日違いのところまで追いついていた。
「それは大変だな、どうだルーク、何かわかるか?」
「ちょっとまって。」
ルークは少し何かを唱えると女性の周りを一周した。
「うん、そうだね、確かに何かの魔道が掛けられているのは間違いないね。」
「何かの魔道?」
「そう。でもどんなものなのかは判らない。これを解除するのは掛けた本人でないと無理かも知れない。」
一日先行しているルシア達を追いかけて捕まえたうえで女性が動けないこの場所に戻ってこないといけない。中々難しいことだ。
「あと、もうつとつの可能性は。」
「他にもあるのか。」
「キスエル老師に頼る、って案。」
「そうか、その手か。老師ならなんとかできるかも知れない。」
「そうなると一度ロスに戻って老師にここに来ていただくことになる。」
「来ていただけるかな。」
「判らない。それとルシアとはかなり離れてしまう。」
「それだな。」
ルシア達はルークたちが追ってくると確信しているのだ。それで厄介ごとを起こして手を煩わすことで距離を稼いで逃げ切る算段だろう。
「でも、選択肢はないね。」
「判った、戻ろう。」
二人は女性と宿の主人に事情を説明しロスに一旦戻ってまた来るまで待っていて欲しい、と頼んだ。女性は否応もなかった。
臨時ではあるがルークの使い魔であるジェイも二人からはあまり距離を取れないので少しだけ先行してもらってキスエル老師と連絡を取ってもらうこととして、二人はロスへと引き返すのだった。
東へ⑤
キスエル老師はなかなか見つからなかった。ジェイがいくら探しても、どこにも痕跡がないのだ。グレデス教会の地下への階段も結局見つからない。
「どうしようか。」
「他に当てはないしな。ジェイ、老師の気配はどこにもないままか。」
(無いな。あの御仁は自らの存在自体を決して探らせないことが可能なのではないか。だからこそ、この地でずっと誰にも知れず眠っておったのであろうよ。)
「そうだね。僕たちも全然気が付かなかったし、索敵には長けていたはずのソニーも気が付いていなかったからね。」
「まあ、俺たち程度に気が付かれていては数字持ちの魔道士の名が廃るってことか。」
二人と1匹は途方に暮れていた。仕方ないので港湾局にギャロを訪ねることにした。
「あれ、お二人ともロスを出られたのではなかったですか?」
ギャロに不思議そうに見られても仕方ない。旅に出たのはほんの数日前だったのだ。
「キャラムに向けて旅に出たのはいいが、すぐの街でちょっと事件に巻き込まれてしまったんだよ。」
二人はギャロに事情を掻い摘んで話した。その都合でキスエル老師を捜していることも。
「なるほど、ルシア=ミストに嵌められましたね。」
やはりギャロは聡い、少し聞いただけで全てを理解していた。
「判りました、僕の方でも探してみますが、今まで老師がロスにいらっしゃること自体を存じ上げに無かったので探せるかどうか。老師には疫病を排除するのに多大なご助力をいただきましたので、こちらもちゃんとお礼を言いたかったのですが、すぐにどこかに消えてしまわれたので。グレデス教会の地下に部屋が在るのなら、それはなんとか探し出せるかも知れませんので、少しお待ちください。」
ギャロには地下を見つける方法に心当たりがあるようだった。
「一応ダンテ局長にも了解を得てからでないと人員を動かせないので取ってきますね。少しだけお時間をください。」
「ダンテ局長?」
「そうです、代理じゃなくなって正式に局長です。まあ他に選択肢がなかったので。」
何か一局員であるギャロ=シプレックが港湾局全体の責任者であるかのようだったが、彼なら十分それに耐えられるはずだ。彼は後にレークリッド王朝の前のハーミット王朝最後の宰相レリック=バレンタインの再来と呼ばれるようになるのだが、それはまた別の話。
ロックたちが少し待っていると、すぐにギャロが戻って来た。
「少し人を集めてから行きますので、先にグレデス教会に行っておいていただけますか。すぐに追いつきます。」
二人と1匹はさっきまでいたグレデス教会に戻るのだった。
東へ⑥
グレデス教会に戻ると先客がいた。五人ほどの男が大聖堂に入るのが見えた。信者には到底見えない男たちだった。
「誰だろう。ギャロが手配した人達かな?」
「いや違うだろ。ギャロの手配なら本人が連れてくるはずだ。」
「だよね。だったら何者だろう。」
「行って問い詰めるさ。」
「ロック、何でも剣で解決しようとするのは辞めた方がいいよ。」
「そうか?手っ取り場合からな。」
それがいい時と悪い場合がある、とルークは思うのだがロックを積極的に止める気もなかった。
男たちに続いてロックが教会に入ると男たちの姿はどこにもなかった。
「消えた?」
「いや、彼らももしかしたら地下への降り口を捜しているんじゃないかな。」
「老師に用があると?」
「判らないけど、他にこの場所に用がある風には見えないから。」
「そうだな。もしそうならこっちにも都合がいい。奴らが地下に降りたら後を付けるとするか。」
とりあえず二人は隠形の魔道をかけて姿を消してから先に入った男たちを捜したがなかなか見つからない。
「ジェイ、見つからないか?」
(相手も隠形の魔道を使っておるようじゃな。教会に入る前は使っているようには見えなかったが、今は気配が無い。)
「そうか。向こうにも魔道師が居るってことか、これはちょっと手強いかも知れないな。」
相手の素性が知れないうちには迂闊に手を出せない。また相手の力量も図らないといけない。こんな時にソニーが居てくれたら、とルークは後悔した。ソニーの方がずっと索敵に長けているのだ。
(ギャロたちが来たぞ。)
ジェイが気が付いて伝える。ギャロが十人ほどの男を連れて追いついてきた。
「ルークさん、ロックさん、どこですか。」
何も知らないギャロは不用意に大声で名前を呼んだ。先に入った男たちにも聞こえたかもしれない。二人は隠形を解いてギャロの前に現れた。
「びっくりした、何かの魔道ですか、いきなり現れないでくださいよ。」
「すまない。でも五人ほどの男たちが先に教会に入っていったのが見えたのでルークが隠形の魔道を使って姿を消していたんだ。」
「男たち、ですか。何者です?」
「判らない。もしかしたら俺たちと同じ目的なのかも知れない。」
「地下の用があると?それなら先に見つけてもらえると荒事を使う必要が無いかも知れませんね。」
何をしようとして十人も連れて来たのか、かなり手荒なことを考えていたようだ。
「とりあえず全員で探そう。」
ロックたちは相手に気取られているという前提で大っぴらに捜索することにしたのだった。
東へ⑦
少し別の場所に話が移る。時も少しだけ進んでいる。ガーデニア州ディアック山の山裾にある洞窟の中。
「老師、今戻りました。」
「ソニーか、で、首尾は?」
「これに。」
「おお、確かに。流石じゃな。」
「苦労しましたよ、老師。アークにも本当のことは話さないで探していましたから。」
「で、どこにあった?」
「ロスです。もっと西まで行ったのですが、どうにも見付かりませんでしたので一旦ロスに戻った時にあの黒死病騒ぎに巻き込まれまして。」
「おお、大変じゃったらしいの。もう収まったとは聞いたが。」
「ええ、キスエル老師が収めてくださったのです。」
「キスエルじゃと。水のキスエルか。」
「そうです。ロスのグレデス教会の地下にいらっしゃったようで、黒死病を収めるために出て来てくださいました。」
「そうか、あの怠け者がの。自分の寝床が騒がしいのが気に入らなんだのじゃろう。でなければあの男が出張るはずがない。」
「そのキスエル老師の寝床にあったのです。」
「なるほどの、あ奴が隠し持っておったのか。というか、多分これの使い道も知らないで、ただ置いてあっただけかも知れんて。」
「そういうものですか。」
「この使い道は多分儂しか判らんじゃろう。もしかしたらアステアあたりも知っておるかも知れんが。」
ソニーの会話の相手も老師と呼ばれており、キスエル老師とも旧知の間柄のようだ。当然魔道士であろう。アステアとは鉄のアステアと呼ばれる数字持ちの魔道士序列第10位の高位魔道士だった。
「それで、本当にやるつもりなんじゃな。」
「当然です。その為に老師の言いつけ通りのものを見つけて来たのですから。」
「アーク=ライザーは知らない、ということじゃな。」
「当り前です。あの男は剣の腕は立ちますが生真面目すぎます。」
「お主の覇道には、いや破道と言い換えようか、お主の破道には邪魔か。」
「いいえ、役には立ってもらいますよ。ロスでロック=レパードに会いました。今年の御前試合の優勝者です。彼にはアークでは勝てないでしょう。ただ無傷では勝てない、と見ました。そこを狙わせてもらう、ということになります。」
「幼馴染の親友もただの駒か、お主もいい玉じゃな。」
「綺麗ごとでは私の目的は到底達成できませんから。」
「すべてはアストラッドのため、か。」
「いいえ、全ては私の目的のため、です。」
「どちらでもよい。儂はただ面白ければよいのじゃ。ただキスエルが出張ってくるとなると少々問題ではあるな。儂はあ奴とは相性が悪い。」
「老師にも苦手な方がいらっしゃるのですね。」
「苦手ではない、相性の問題じゃ。まともに争えば最後は儂が勝つわ。」
「では、儂もここを出てアストラッドに向かわねばなるまいな。」
「老師、よろしくお願いします。」
ソニー=アレスの話している相手は洞窟の中が暗いので判別し難いが、かなり身長が低い。子供の背丈くらいしかなく、ソニーの半分より少しだけ高い程度だった。暗さもあるが、なんだが存在自体が暗い、とでもいうかのようだった。
その者の名前はガルド、影のガルドと呼ばれ魔道士序列第6位の魔道士だった。
東へ⑧
(見つけたぞ。)
ジェイが先に入った男たちを見つけたようだ。巧妙に魔道で隠された地下に続く階段でもあるのかと思っていたら、どうも移動の魔道で直接地下に入るしかないようだった。それすら地下の存在を隠していたので中々見つからなかった。先に入った男たちの存在があったから見つけることが出来たのだ。
「ルーク、行けるか?」
「行ったことない場所は三次元座標が判らないと無理だよ。」
「座標?なんだ、それは。」
(それは我が何とかしよう。)
「なんだ、俺にもちゃんと説明しろよ。」
「ロックには後で説明するから。」
多分ロックに説明しても判らないだろうな、とルークは思った。途中で投げ出す確率が高い。
ジェイの指示によってルークの魔道で直接地下に移動する。一度に数人しか移動できないので、とりあえず地下で先行した男たちと出くわすことも考えてロックとルークが移動し、ルークが戻ってギャロを運ぶ、という訳だ。
ギャロが連れて来た人数は力づくで地下への通路を見つけるための人海戦術用だったので教会の1階で待機となった。本当は火薬で爆破して見つけるつもりだったのだ。ギャロは大胆すぎるのかも知れない。
ルーク、ロック、ギャロの三人が地下に入った。廊下が続いていて左右に扉がいくつかある。そのうちのどこかの部屋に先の男たちがいる筈だ。五人なら三人で十分御し得る。扉の中の気配をさぐりながら一つ一つ開けていった。
扉は全部で四つ。手前の左右の部屋には人の気配が無かった。奥の右の部屋。誰かが居る。
「開けるぞ、開けたらすぐに取り押さえる。」
「わかった。」
ロックがいきなり扉を開けて飛び込んだ。ルークとギャロも続く。入ってすぐに三人で四人を気絶させた。とりあえず一人残っていれば話が出来る。
「なっ、何者だ。」
こっちのセリフだった。
「お前たちこそ何者だ?ここで何をしていた?グレデス教会の関係者ではないだろう。」
「それはお前たちも同じだろう、ロック=レパードとルーク=ロジック、それと誰だ?」
こちらの情報を持っている。一体何者なのだろうか。
「何故俺たちを知っている。それとこいつは港湾局のギャロ=シプレックだ。」
「フィル=シプレックの息子か。」
「色々と知っているようだな、本当にお前は何者なんだ?」
「私は、言う必要は無いな。」
「ちゃんと話さないと港湾局で尋問することになるぞ。ここで何をしていた?」
「港湾局は関係ないだろう。教会関係者でもあるまいに。」
魔道士でも剣士でもなさそうな若い男はロックたちと同世代に見えた。どちらかと言うと文官に見えるが、頭は切れそうだった。
東へ⑨
「この四人の身柄も港湾局で預かりましょう。たっぷりと尋問してあげますよ。」
少し凄みを効かせてギャロが言った。但し相手は意に介していない様子だった。
「好きにすればいい。神の殉教者であるところの、この者たちが話が出来れば、な。」
途端、うめき声が聞こえた。
「しまった。」
四人は既にこと切れていた。どうやったかは判らないが自害したか、この男が全員を殺してしまったのた。捕まって尋問されるよりも死を選んだ、それが自らの意思に沿っていたのか反していたのかは判らないが。
「なんてことを。殺すことはないじゃないか。」
「私は殺していない。何か証拠でも有るのか?この者たちは自ら名誉ある死を選んだのだ。」
「名誉ある死?そんなものであるはずがない。お前が無理やり選ばせたのだろうに。」
「私が何かするのを見たのか?身動き一つしていない筈だが。」
確かに男は全く動く素振りすらしていなかった。
「何かの魔道を使ったのだろう。」
「その形跡があるのか?ルーク=ロジックなら判るだろう、私が何もしていない、ということが。」
確かにルークには男が魔道を使ったとは思えなかった。何も感じなかったのだ。単に修行が足りなくて気が付かなかった、ということもあり得るが、いずれにしてもルークには証拠が見つけられなかった。
「ロック、ごめん、この人の言う通り僕では魔道の痕跡を見つけられない。それがそのまま、この人が何もしていないことの証明になるとも思えないけど。」
(ここで何をしている。)
直接頭の中に声が響いた。キスエル老師だ。
「老師、お捜していたのです。戻られたのですね。老師、声を出してお話ししていただけますか。」
「うむ、そうであった。すぐに声を出すのを忘れてしまうわい。儂を捜しておっただと、何か用か。儂はエピタフの祠に行っておったのじゃ。」
「エピタフの祠ですか。するとステファニーさんに会いに?」
「そうじゃ、お前たちの使い魔を見て思い出したからの。あの御仁の方が薬の精製などには長けておるでな。」
「なるほど、それで。」
「教会に居ったものを何人か捕まえて祠で薬を作らせておる。儂一人でロス全部を治して回るには手間がかかりすぎるでな。」
多分面倒なだけだろう、とは思ったが誰も口には出さなかった。
東へ⑩
「ところで、もう一人おったやつは消えたが、よかったのか?」
「あっ。」
生き残りの一人の姿は既になかった。それはそうだ、地下に移動できるのだ、地上にもできるだろう。ただし、それをルークに悟られなかった、ということが問題だった。魔道士としてルークを上回っている、ということになる。そう感じさせないところが凄い。
「なんじゃ、あ奴にも用があったのか。それならそうと早く言うがよいわ。」
「老師、あいつがどこに行ったのか把握できますか。」
「ちょっと待て。」
そう言うとキスエル老師の姿が掻き消えた。次の瞬間、さっきの男を捕まえて老師が戻って来た。
「なっ、なんだ、そうかあなたが水のキスエルか。」
「儂の顔を知らなんだか。それでもここに立ち入ったということは儂に用があった訳でもないのか。」
「いえ、いいえ、あなたのご高名をお聞きしてどうしてもご指導を受けたいと。」
「思ったわけではない、よな。さっさと本当に事を言わないと老師は気が短いぞ。」
「なんでお主が仕切っておる。まあよい、どっちの用事も訊こうではないか。
「こっちの用事は一つです。南海道を東に向かった次の街で、なんというか場所に縛られてしまう魔道を掛けられた女性が居て徐々に存在が透けてきているのです。多分僕たちに手間を掛けさせて自分を追わせないようにというルシア=ミストの策だと思うのですが、僕たちの所為でそうなったとしたら放っておけないので何とか老師のお力をお借り出来ないかと。」
「なるほどの。あのなんとかという闇ギルドの男じゃな。まあよい、それは任せておくがよい。直ぐに飛んで行ってやろう。」
「お願いします。そして、こいつのことですが。」
「そうじゃな、お主、名は何と言う?」
キスエル老師に問われると正直に答えざるを得ない。男は観念せざるを得ない。ルークがクォレル=ロジックに掛けた魔道をもっと強くキスエル老師が掛けていた。
「私の名前は、名前は、」
それでも抵抗しようとしていたが無理だった。キスエル老師に抵抗することは至難の業だ。
「シェ、シェラック、シェラック=フィットだ。」
絞り出すように名前だけを答えた。まだなんとか抵抗しようとしている。
「それて゜、ここで何をしておったのだ。」
「あっ、あるものを探していたのだ。」
あるもの、という具体的なことを言わないのはこの男の最大限の抵抗だった。それを言うくらいなら死んでもいい、という覚悟での抵抗だ。
「あるもの、とはなんだ。」
「あるものは、あるものは、見つからなかった。誰かが既に持ち去っていたようだ。」
あるもの、以上の内容を話さない。ルークには判るがそれは相当な魔道力が必要だった。
「目的は果たせなかった、ということだな。それで、シェラックとやら、お主は何者だ?」
「私は、私は、、、、」
突然男が消えた。
「なんだ、どうした?老師、あいつが消えてしまった。何が起こったんですか。」
「うむ。」
ルークでは痕跡を追えない、高位の魔道士の仕業としか思えなかった。シェラック=フィット本人のものではない、誰が他の魔道士の力だ。それもキスエル老師と同格の。
「あやつか。あやつが後ろについておる、ということじゃな。」
「老師、あやつとは。」
「儂の眼を盗んでこんなことをする奴は、まあノルンあたりじゃろうて。あ奴がさつきの男の後ろ盾、というか魔道の師匠じゃろう。」
「氷のノルン、ですか。」
氷のノルンは数字持ちの魔道士序列第9位の魔道士だった。
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