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第2章 アゼリアの狼
新たなる旅立ち
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第2章 アゼリアの狼
2 新たなる旅立ち
「直ぐにその者のところへ案内してはくれまいか。」
「だめですよヴォルフ伯父。まだ動ける身体じゃないでしょうに。」
結局アゼリア公ヴォルフ=ロジックが城の外に出歩けるところまで回復するのには2週間が必要だった。その間、ヴォルフは自ら礼に行くので若者を呼びに行くというレムスやロックの申し出を断りつづけた。
やっと動けるようになり、早速ヴォルフはレムスやロックを連れてドーバの住むダウンタウンへと来た。馬に乗って来られれば良かったのだが、それだけは周りが許さなかったので、ヴォルフとしては不本意ではあるが、馬車に乗っての行幸だった。
ドーバと若者には前もってヴォルフが行くことを伝えてあったので、二人は玄関先まで出迎えていた。
「これは公、ご災難でしたな。」
「ドーバ老師、お久しゅうごさいました。2年前にも助けていただいて、また今回はお弟子さんに救っていただき、なんとお礼申し上げてよいのやら。」
「公、ここではなんじゃ、中へお入り。」
一行はドーバの家に入った。特に変わっている家ではない。ダウンタウンにありがちな、ただ周りの家からすると多少大きく、広い家だ。太守であるヴォルフ一行を迎えるにはまったくもって不釣合いではあったが。
「君が私を魔道の術から救ってくれた若者かな。」
「そうです。助けたというのは、大袈裟ですが。」
「そうじゃよ、公。この者がやったことなど大したことではない。それよりも、あの術士を雇っていた人物が問題じゃ。」
「老師、なにかご存知なのですか。」
レムスが身を乗り出して訊いた。ヴォルフ公の命は助かったが、術を施した犯人は見当もつかなかったのだ。
「公、他の者達は外して二人で話ができんものかな。」
ドーバの申し出は侍従長であるレムスには了解できないものであったが、ヴォルフの命令もあり、二人を残して他の者達は別室へと控えた。
「君はなにか老師から聴いていないのかい?。」
「いいえ、老師は僕が戻ってからずっと一緒に居た筈なのですが、どこでそんな情報を得られたのか、僕にも不思議でなりません。」
ドーバと青年はこの2週間、ずっと一緒に修行をしていた。修行といっても瞑想が殆どで、精神を統一する術を教えて貰っただけだった。基本的なことはクローク老師のところで終えている、というのだ。
やがて再び中に呼ばれもどった者達が見たものは、元々好転に向かっているとは云え顔色は多少悪かったヴォルフの蒼白になった顔だった。
「公、一体どうされたのですか。」
「レムス、みんな、悪いが直ぐに城に戻ることにした。ドーバ老師、本当にお世話になりました。何かお礼をさせていただきたいのですが。」
「お礼など考えずともよいわ。それよりこの者の庇護者になってくれまいかの。」
「そう云えば君は何という名であったか。訊いておらなかった。」
「申し訳ございません、ヴォルフ公。僕は名前が無いのです。と云うのか、全く自分が誰なのか覚えていないのだす。」
「自分が判らないというのか。不思議なことがあるものだ。すると、名前は今は無いというのか。それでは、ドーバ老師の申し出もあることでもあるし、我が性を名乗るが良い。名前は、そう『ルーク』でどうだ。武王マークと忘却の神ルーズを併せた名だ。ルーク=ロジック、いい響きではないか。」
「公、そんな大切なことを軽々しくお決めになっては。」
「口出しするな、レムス。儂が決めたことだ。彼の者がおらなんだら儂の命は無かったかも知れないのだぞ。今後ルークは城に出入り自由とし、我が息子として扱うよう家臣たちにも申し付けておくように。」
「ヴォルフ伯父、良い判断でしたね。彼なら大丈夫です。十分その役割を果たしてくれるでしょう。」
ロックが当惑しているレムスの代わりに返事をした。
「何を考えておるのか知らんが、ロックよ、儂の言った意味はそれ以外何も含んでおらん。勘違いするでない。」
頭の回転の速いロックは話が多少見えてしまって勇み足のようなことを言ってしまった。レムスの立場もヴォルフ公が大切な侍従長を心配させたくない気持ちも意識していない、不用意な発言だったのかも知れない。
「すいません、公。僕が言いたかったのは、彼は剣の腕も人間も確かなので、ヴォルフ伯父の正式の養子としてもなんの問題も無いと思われる、と云うことです。」
「わかればよい、正式な養子としての話は後日追って考えることにして、とりあえず、ルークにはその名前を名乗ることと、儂の息子として扱われることを承知してもらわなければ。」
「申し訳ありません、公。そんな大それた事はとても承知できるお話ではないです。」
青年はもはや何が何だか判らなくなっていた。自分がアゼリア州太守であるヴォルフ=ロジック公の名前を貰って『ルーク=ロジック』と名乗るだけでも畏れ多いことなのに公の息子として扱われることに至っては、想像もつかないことだった。
「お前は何も逆らわずに公の云う通りにすればよいのじゃ。それが儂の意志でもある。儂にも公にも逆らうつもりかの。」
ドーバに世話になってから初めて真面目な眼差しで見つめられた青年は、とても逆らえないと思った。
「判りました。今から『ルーク=ロジック』と名乗ることにしましょう。ただ、僕の記憶が戻ったときには、二つの名前を名乗ることをお許しください。」
「勿論だとも、我が息子ルークよ。そなたがたとえ何処の誰であろうと、儂の息子には違いはない。儂の前だけでもルーク=ロジックで居てくれればそれでよいのだ。」
話はレムスにとって不本意な形でついてしまった。何処の誰かも判らない青年をロジックの性を名乗らせ、公の息子として遇しなければならない。城への出入りも自由とする。確かに公を救ってもらった借りはあるとしても、あまりにも性急な話だった。公には別の考えがあるのであろう、と自分を納得させたレムスだった。ロックは何か気付いているようだ。城に戻ってから問いただしてみようと思った。
とりあえず、ルークはドーバ老師の下で修行を続ける傍ら、城には数日に一度は訪れてヴォルフやロックの相手をする事になった。
ロックは暫く城に残ってヴォルフの側にいるつもりだった。仕掛けられた魔道は破られたが、何時また違う形でヴォルフの命が狙われるかも知れない。ロックにはヴォルフとドーバの態度で、ある考えが浮かんでいた。それは軽々しく口にできないことだった。レムスが訊きたそうにしているが、ヴォルフ公本人と相談してからでないと、侍従長であるレムスにも話せない内容なのだ。
一行の内数人は行きとは違い、とても重くなってしまった心を抱いて城に戻っていくのだった。
2 新たなる旅立ち②
ヴォルフ=ロジックが、命の恩人であり、自らが名付け親となって自分の性を名乗らすことになったルーク=ロジックを訪ねた翌日のことだった。気分が優れないヴォルフは気晴らしに城の中庭を散歩していた。
「ロックよ、詳しく御前試合のことを話してくれんか。」
ロック=レパードは城の中に居る間は、護衛としてヴォルフに付きっ切りだった。いつどんな形で命を狙われるか判らないからだ。
「いいですよ、本選の最初から話をしましょう。」
ヴォルフは剣の試合の話が何よりも好きだった。興奮して身体に障るといけないから、とレムス侍従長に止められていたので、いままで聞けていなかったのだ。ロックはシオン=イクスプロウドとの決勝戦までの経過を事細かに話した。
「そうか、あのガイアの息子がそこまでやるとはな。しかし、お前の腕なら余裕で勝てる筈だろうに。」
「いいえ、それがなんとか勝てたような、もしかしたら僕のほうが負けていたかもしれませんよ。」
謙遜ではなかった。御前試合に出るまではかなり自分の腕に自信を持っていたロックだった。事実、ヴォルフから見れば、シャロン公国内にロックに敵う者がいるとは想像できない程になっていたのだ。そう云えば、確か今はホーラの長官をやっているリードという青年はかなりの腕だった。ロックはそれと同等か、修行によってはリードを凌ぐであろう。少なくとも全盛期のヴォルフを超えているのは間違いない。
「一体どんな修行をしたのか。それを妹のレイラにさえ知られずにあのレベルに達っするには何をどうしたものか、想像も付きませんよ。」
「そうではあるな。お前の話はもっともだ。本人に問いただしてみたらどうだ?」
「セイクリッドに帰る途中にラースに寄ってみますよ。」
一頻り話が終ったとき、レムス侍従長がやってきた。
「ヴォルフ様、クォレル様がお戻りになられまして、お目通りを申し出られております。お体の具合はいかがでしょうか。」
「クォレルが戻ったのか。今、ロックに御前試合の話を聞いて調子はいい。呼んでくるがよい。」
クォレル=ロジックはヴォルフのたった一人の肉親である。両親を初め主な血縁の者は殆ど他界してしまった。ロジック家としては、ヴォルフが死んでしまったとしたら残るのはクォレルだけだ。
ロックも顔見知りなのでそのまま残っているところへクォレルが入ってきた。ヴォルフと年はかなり離れている。背丈はヴォルフはほぼ変わらないが、体重は今の痩せてしまったヴォルフと比べると優に2倍を超えるだろう。
ロックは、ヴォルフは剣の師匠でもあり尊敬もしているのでその弟を悪く思いたくは無かったのだが、クォレルについてあまりいい印象がなかった。使用人を鞭で打っている場面に出くわしたこともあった。
「今戻りました。お加減はよろしいのですか。おお、これはロック君だったか、御前試合で優勝したらしいね。さすが兄の弟子だけのことはある。」
一気に言いたいことだけを言って相手の返事は聞いていない。声が甲高い所為もあって軽薄な印象を他人に与える。ヴォルフとは到底兄弟には見えなかった。ロックは知らないことだったが、実は母親が違う兄弟だった。城の中でも限られた範囲の人間にしか知らされていないことだ。
「儂の代わりに御前試合に立会いに行ったお前が、ロックより遅く帰ってきたのは何処かに寄り道をしておったのか。」
「ええ、マゼランに行って、聖都騎士団の修行場を視察して参りました。とても参考になりましたので、我がアゼリア州騎士団にも取り入れたいと思っております。」
レムス侍従長は不思議に思った。騎士団のことなど全く興味が無かった筈なのだ。自らの快楽を求めつづけることだけに一生を捧げているかの様にしか見えなかったのに。マゼランに立ち寄って戻ることも、出発前には聞いていなかった。
ヴォルフの寝室で久しぶりに戻った弟との対面が行われていたとき、レイラ=イクスプロウドは暇を持て余していた。ロックはヴォルフにつきっきりだし、アドニスについてからほとんど何処にも出かけていなかったからだ。
実際、ヴォルフの病気というか魔道の呪いによる騒ぎもあって、観光して回る訳にも行かなかったのだ。侍女のフローリアと共に何もすることがなく城の中の花壇で覆われている中庭を散歩することが唯一の楽しみだったのだ。
そこへ、顔見知りの侍従に連れられて歩いているルークという青年をレイラが見つけた。
「ちょっと、あなた、確かルークとかいったわ。ヴォルフ伯父様のところに来たの?今は弟とかが帰ってきて会えないと思うわよ。ここで私の相手をしてくれない?」
「そうですか、いいですよ。ヴォルフ公の弟さんが帰ってこられたんですか。」
「そう。でも確か私と一緒で御前試合を見にセイクリッドに行っていた筈なのに、一度ラースに戻ってからアドニスに来た私達よりも遅く帰ってきたのは、何処かに寄り道でもしていたのかしら。」
2 新たなる旅立ち③
「なんでもマゼランにお立ち寄りになっておられたとか。」
侍従が説明をしてくれた。
「まぁ、マゼランにどんなご用事があったのかしら。確か、ヴォルフ公の弟は剣術のことなんかには興味はないって聞いてたけれど。」
クォレル=ロジックが男色に耽っていることは周知の事実だった。レイラ=イクスプロウドはアドニスに着いたときクォレルの不在を聞いて嬉しかったものだ。顔を遭わせたことは無かったのだか、他にも良い噂を聞かなかったからだ。
「マゼランはどんなところなんですか。」
ルーク=ロジックは記憶を無くしている。自分自身を見出すための鍵の一つとしてヴォルフ=ロジックに遭いに来てヴォルフを助けることになった。そして、ルーク=ロジックという名前とヴォルフの息子と同様という身分を得たのだった。しかし、それで記憶が戻った訳ではない。ルークには観る物、聞くものが総て興味を引くものだった。
「マゼランというのはちょっと変わった街よ。街の中心が聖都騎士団の訓練施設になっているの。各州の騎士団の幹部もそこで修行する慣わしになっているわ。その訓練施設の周りに広がった街なのよ。」
「ロックさんもそこで修行したんですかね。」
「いいえ、ロックはまだどの騎士団にも属していないもの。でもお父様が聖都騎士団の副団長でお兄様も聖都騎士団に入られたって聞いているから、多分ロックも聖都騎士団に入るんじゃないかしら。」
「そうですか、彼は相当な使い手ですから、騎士団でも重用されるでしょうね。」
ルークとレイラ、レイラの侍女フローリアは銀狼城の誇る南方独特の花が咲き乱れる庭園で暫しの会話を楽しんでいた。
「どうも虫が好かないんですよ。老公には身内を悪く言われたくはないと思いますけれど。」
「そう言うでない。儂も判って居るのだ。クォレルのあれは病気のようなものだと諦めないと仕方が無い。」
ロックは御前試合に出るまで、ヴォルフの元で修行していたときにクォレルに寝室にまで押しかけられ迫られたことがあった。武術家としてもかなりの腕前のロックにとって、ぶよぶよと太ってしまったクォレルの体をかわすことなど造作も無いことだが、クォレルは勢い余って壁に激突し、気を失ってしまった。ロックは直ぐに侍従を呼んでクォレルを自室に運ばせたのだが、翌朝クォレルは何事も無かったかのようにロックに朝の挨拶をしたのだった。不名誉なことなので自ら言い出す筈も無いのだが、ロックとしては何らかの因縁をつけて追い出されるかとも心配したのだがその後は殆ど口をきかないで出立の日を迎えられた。
「しかし、ヴォルフ公、クォレルさまの側付きの者たちは、公のお許しを得られるのならお暇を頂きたいと申しておるものが大勢居ることは確かでございます。一度公からお諭しいただけませんでしょうか。」
クォレルは自分の命令が即実行されないと不機嫌になり、側付きの者を鞭打ったりすることが多かった。最近では鞭打つためにひ弱そうな少年を態々選んで側付きにしているらしい。怯えて許しを乞う表情が堪らないのだった。
ひと時会話を楽しんでいたルークたちが居る庭園の外周廊下をクォレルとその侍従たちが進んできた。
「あのお方がクォレルさまでございます。」
ルークを案内してくれた侍従が教えてくれたときだった。クォレルが庭園に居るルークとレイラを見つけて、もともとは表情のない能面のような顔が、悪鬼のような形相となって二人を睨んだ。そして、暫く動かなくなってしまった。
「どうかしたんでしょうか。」
ルークはそんな顔で睨まれるような心当たりは無かった。
「この感じは、あのときと同じだ。」
急にルークが言った。
「なに、どういうことなの。」
「ヴォルフ公に施された魔道を返した時に実は魔道を掛けた術士とは違う者の悪意を感じたんです。間違いありません、あの人ですよ。」
とんでもない話だった。アゼリア州太守であるヴォルフ=ロジックの命を狙った事件の首謀者が、実弟であるクォレル=ロジックであった。自らが城を留守にしている間にヴォルフの命を奪い、死んだ後帰国するつもりだったのだ。それが、魔道の術をルークに返されてしまい、帰国が遅くなりすぎて疑われないうちに帰国したのだろう。
「本当なの。もし本当だとしたら大変なことよ。」
二人は声をひそめて話した。周りにはフローリアと侍従が一人だけだった。
「あなた達も誰にも云っては駄目よ。私とルークとロックとレムスさんで相談するから。」
若い侍従は蒼ざめてしまいレイラの話もよく聞いていなかった。
2 新たなる旅立ち④
「その話は誰にもしておらんだろうな。」
まさか、という思いとやはり、という思いが交錯している複雑な表情でヴォルフがルークに確認した。
「勿論です。知っているのは私とレイラ、レイラの侍女、そして老公の侍従の一人だけです。」
「あの弟君ならやりかねないな。」
「これ、滅多な事を言うではない。もし違っていたとしたら、ロック様でも恩義のあるルーク様でも許される話ではありませんぞ。」
レムス侍従長は一応ロックをたしなめてはいるがレムス自身もクォレルへの疑いは決定的なものになっていた。決して愚鈍でも暗愚でもなかった筈のクォレルが偉大すぎる兄を持った故に自らの才幹を発揮する場所を与えられなかった。本当のところはクォレルはクォレルなりにいくらでも才能を発揮する地位に就くことも可能だったのだが、それを太守
のみに限定して望んでしまったことで、兄の失政や失脚を望むようになってしまったのだった。
「いずれにしても証拠がないではありませんか。ルーク様の魔道に関しての腕前は充分承知してはおりますが、確たる証拠がないことには仮にも老公の弟君であるクォレル様を罪に問う訳には行きますまい。」
レムスのいうとおりだった。クォレルの罪を告発しても証拠を出せと言われればルークの証言しかないのだ。ヴォルフの恩人でありロジックの性を名乗ることを許された身とは言え、実の弟であるクォレルと比べることは出来ない。ただ、先だってドーバ老師には内密にそのことを伝えられていた。同じことを師匠と弟子が気づいたのだ。
「儂が直接クォレルと話そう。」
「そ、それは老公、お止めになられた方がよろしいのでは。」
「何故だ。」
「もし仮にクォレル様が罪をお認めになられなかったとしたらどうなさいます。老公に知られたと知ったらクォレル様は更に老公のお命を狙いかねませんでしょう。」
「なら儂はどうすればよいのだ。」
さすがに聡明なヴォルフもただ一人の肉親のことなので決断が着かないようだった。親はすでに無く、子も無く妻もない。縁者もない二人はこの世で立った二人の兄弟なのだ。
余談ではあるが、クォレルが妻を持たないのは、自らの趣味が男色である所為だが、ヴォルフが妻を持たなかったのはそうではない。若かりし頃、レイラの父であるガイア=イクスプロウドとレイラの母であるゼナ=イクスプロウドをめぐって争い、ゼナがガイアと結婚したのでヴォルフはその後、妻を迎えようとしなかった、という噂が同世代の者達の間
では囁かれていた。古い話なのでレイラやロックは知らないことであろう。若い頃のゼナに似てきているレイラをヴォルフが可愛がっているのはそのあたりのことが多少影響しているのでは、と不遜ながらレムス侍従長などは歯がゆく思ってているのだった。
2 新たなる旅立ち⑤
「やはり儂が会って直接確かめるしかないであろう。」
ヴォルフの決心は固かった。ロックたち説得は無駄なようだ。仕方無しに万全の警備の上で二人を会わせることにしたのだった。
クォレルは供も連れずに一人でやってきた。何も疚しいところはない、という意思表示なのだ。
「兄上、お加減はいかがですかな。おお、こちらのお嬢さんは?」
クォレル=ロジックはロック=レパードの顔を覚えていない筈は無いのだが、惚けて見せた。前にロックがヴォルフの元で剣術の指導を受けていたとき迫ってこっ酷く断られたことがあったのだ。そのロックを無視してレイラの事を尋ねたのは嫌がらせのつもりだろう。
「レイラ=イクスプロウドと申します。お見知りおきを。」
「おお、ではガイア公のご息女であられるか。それはそれは遠いところをよく参られた。当地はガリア州とは違い南国、気候もよろしい。存分にご滞在されるといい。」
「はい、ありがとうございます。」
クォレルはロックの方を見ずに、
「こちらの青年は?」
「ルーク=ロジックと申します。」
「ロジックだと?我がロジック家に縁のある者なのか?」
ルークがロジックの姓を名乗ることになった経緯をクォレルにはまだ伝えていなかった。そのことを伝えるにはヴォルフに向けられていた魔道の術の話から語らなければならないからだ。
ヴォルフは周囲の者たち制し、自ら事の経緯を話した。黒幕は誰なのか、それだけを結論付けないままに。
「そんなことがあったとは、このクォレルがおりましたら兄上をそのような苦難に追い込んだ者を決して許しはしなかったものを、口惜しい限りですな。」
演技とすれば相当練習を重ねた演技であろうか、クォレルの表情からは自らが犯人であることを隠しているような様子は無かった。
クォレルの様子に逆に不審に思ったヴォルフはルークの方を見た。どういうことだ、とその目は語っていた。
「僕から説明しましょうか。」
この場を仕切るようなタイプには到底見えないルークの発言に少しクォレルは戸惑ったようだが、直ぐに思い直して、
「お前が何を説明してくれると言うのだ?」
クォレルには絶対の自信を持った表情が見て取れる。
「僕の目を見てください。」
そう言ってルークはクォレルの正面に立ち、自らもクォレルをじっと見つめた。
「今から公弟様に掛けられた魔道を解いてみます。よろしいですか。」
「儂に魔道が掛けられているというのか。面白い、やってみるがいい。」
ルークは両手で印を切りながら呪文を唱えだした。
「ヴォルフ公、弟君には自らが首謀者であることを忘却させる魔道が掛けられています。そのために絶対の自信を持ってこの部屋に赴いて来られたのでしょう。ただ、悲しいかなその忘却の魔道は、自らに忘却の魔道を掛けたことを含めて忘れさせてしまったのです。ですから、弟君は僕が魔道を解く、と言っても特に反対したり阻止しようとしたりはなさらないのです。」
ルークがヴォルフに説明をしている間、当人のクォレルは呆けたような表情を浮かべて椅子から落ちそうになっている。
「今から弟君の正気を戻します。もう一度老公から黒幕について心当たりが無いか聞いていただけますか、先程の反応とは違うはずですから。」
ルークが両手を叩くとクォレルは少し驚いたような表情になり、落ちかけていた椅子に座りなおした。巨体なので椅子が軋んでいる。
「クォレル、そなたは儂の命を狙う者に心当たりはないだろうか。」
そうヴォルフが問いかけるとクォレルは急におどおどとしだした。
「いっ、いや、あっ、兄上を、兄上の命を、ねっ、狙う者に、心当たりなどある筈が。」
そこまで言ってクォレルは床に倒れこんでしまった。ルークは本当のことを隠せないように魔道を掛けたのだ。逆らって嘘を吐くにはかなりの精神力が必要となる。
「あっ、兄上が妬ましかった。望むものは何でも手に入る、何でも持っている兄上が。兄上がいる限り儂は太守にはなれない。周りの者たちも儂より兄上を尊敬しておる。儂は城の誰よりも馬鹿にされているのだ。何が違うと言うのだ。同じロジック家の男子ではないか。たった2年早く生まれただけであろう。それなのに、兄上は公爵でアゼリア州太守。儂は子爵でアゼリア騎士団副団長。この違いは何なのだ。」
途中からクォレルは誰かに話している風ではなかった。独り言のように語り続けるだけだった。相当鬱積したものがあったらしい。容姿の違いから性癖の違いまでありとあらゆる違いを並べ立て、自己中心的に自らがヴォルフに劣っていないことを主張し続けた。誰もその語りかけに応える者は無かった。
衛兵がクォレルを連れて行った後は、ヴォルフの寝室は重苦しい空気で満たされていた。当分、いや一生幽閉されるであろうクォレルはヴォルフのただ一人の肉親なのだ。
「ルークよ、すまなかったな。」
「いいえ、老公こそ気を落とさないでくださいね。」
「そなたは、我がロジック家の養子となるのだ、城に住み儂を養父と呼んでもかまわないのだぞ、いやむしろそう呼んではくれぬだろうか。」
ヴォルフは肩を落としてそう言った。ただ一人の肉親を幽閉したのだ。寂寥感は想像もつかない程であろう。
「老公、いえ、養父上、そういう訳には行きません。確かに養父上に掛けられていた魔道を祓ったのは僕です。しかし、養父上のたったひとりの弟君を告発したのもまた僕なのです。その僕が何食わぬ顔で城に置いていただく訳には行きません。」
確たる物的証拠もなしに太守の弟を罪に問い、自らが太守の養子となったとすると、自らの利益のためにクォレルを陥れた、と言われかねないのだ。ヴォルフがいくら庇ったとしても、その声は静まらないであろう。
ルークの言いたいことはヴォルフには直ぐに理解できた。
「それなら、そなたはこれからどうするつもりなのだ。」
「修行の旅に出ようと思っています。人探しも兼ねて。」
「人探し?」
「ええ、ラグで師匠のクローク老師に言われたのです。老公に会い、オーガを探せと。」
「オーガとは、あのオーガか。」
「どのオーガかははっきりとは判りませんが伝説の魔道師オーガが今でも生きているのならぜひ会ってみたいと思います。」
二人の会話を聞いていたレムスは涙を堪えるのに苦労していた。ヴォルフの気持ちもよく判る。そのヴォルフに迷惑を掛けたくないルークの気持ちもまたよく判った。互いが互いを思いやり、結局離れ離れになるしかないのだ。つらい選択だろう。
「俺も一緒に付いていってもいいかな、その修行の旅、ってやつに。」
いままで黙っていたロック=レパードが口を挟んだ。老公兄弟の間には口を挟む機会が無かったが、ルークが修行を兼ねてオーガを探す旅に出る、となれば話は別だ。ロックは好奇心の塊なのだ。剣の修行になるのなら願ったりかなったりだ。駄目だと言われても付いていく、ロックの表情はそう物語っていた。
レイラも同行したそうだったが、こればかりは無理な相談だった。どんな危険が待っているか判らないのだ。ましてや女連れでは修行にならない。そう説得されてレイラとフローリアはレムスの手配したアゼリア騎士団に守られてガリア州に帰ることになった。
「旅の先々で困ったことがあればロジックの名を出すのだぞ。皆悪いようにはしない筈だ。」
そう言ってヴォルフは一振りの細剣をルークに手渡した。柄にはロジック家を象徴する狼を模った紋章が刻まれていた。
「この剣を持っていくがいい。儂がさる名工に特に頼んで作らせたものだ。」
「ありがとうございます、大切に使わせていただきます。」
「名残惜しいがいつまでもこうしておっても仕方が無い。ルークよ、ロックよ、心して就業の旅へと赴くがよい。」
「養父上もくれぐれもお体にお気をつけになられますように。」
「まあ、ルークのことは俺に任せて大丈夫だから。」
「ロック、確かにお前の剣は一流だがどうも性格に問題がありそうだな。お前は剣というよりは精神就業の旅と心得よ。」
「はいはい、判りました。」
「レムスさん、老公を頼みますね。」
「ルーク様もロック様もくれぐれも無茶はなさらないように。無事のお帰りをお待ちしております。」
「そろそろいくか、ルーク。」
「ええ、それじゃあ養父上、行って参ります。」
こうしてアゼリア州太守ヴォルフ=ロジックの養子となったルーク=ロジックとロック=レパードの旅は始まったのだった。
2 新たなる旅立ち
「直ぐにその者のところへ案内してはくれまいか。」
「だめですよヴォルフ伯父。まだ動ける身体じゃないでしょうに。」
結局アゼリア公ヴォルフ=ロジックが城の外に出歩けるところまで回復するのには2週間が必要だった。その間、ヴォルフは自ら礼に行くので若者を呼びに行くというレムスやロックの申し出を断りつづけた。
やっと動けるようになり、早速ヴォルフはレムスやロックを連れてドーバの住むダウンタウンへと来た。馬に乗って来られれば良かったのだが、それだけは周りが許さなかったので、ヴォルフとしては不本意ではあるが、馬車に乗っての行幸だった。
ドーバと若者には前もってヴォルフが行くことを伝えてあったので、二人は玄関先まで出迎えていた。
「これは公、ご災難でしたな。」
「ドーバ老師、お久しゅうごさいました。2年前にも助けていただいて、また今回はお弟子さんに救っていただき、なんとお礼申し上げてよいのやら。」
「公、ここではなんじゃ、中へお入り。」
一行はドーバの家に入った。特に変わっている家ではない。ダウンタウンにありがちな、ただ周りの家からすると多少大きく、広い家だ。太守であるヴォルフ一行を迎えるにはまったくもって不釣合いではあったが。
「君が私を魔道の術から救ってくれた若者かな。」
「そうです。助けたというのは、大袈裟ですが。」
「そうじゃよ、公。この者がやったことなど大したことではない。それよりも、あの術士を雇っていた人物が問題じゃ。」
「老師、なにかご存知なのですか。」
レムスが身を乗り出して訊いた。ヴォルフ公の命は助かったが、術を施した犯人は見当もつかなかったのだ。
「公、他の者達は外して二人で話ができんものかな。」
ドーバの申し出は侍従長であるレムスには了解できないものであったが、ヴォルフの命令もあり、二人を残して他の者達は別室へと控えた。
「君はなにか老師から聴いていないのかい?。」
「いいえ、老師は僕が戻ってからずっと一緒に居た筈なのですが、どこでそんな情報を得られたのか、僕にも不思議でなりません。」
ドーバと青年はこの2週間、ずっと一緒に修行をしていた。修行といっても瞑想が殆どで、精神を統一する術を教えて貰っただけだった。基本的なことはクローク老師のところで終えている、というのだ。
やがて再び中に呼ばれもどった者達が見たものは、元々好転に向かっているとは云え顔色は多少悪かったヴォルフの蒼白になった顔だった。
「公、一体どうされたのですか。」
「レムス、みんな、悪いが直ぐに城に戻ることにした。ドーバ老師、本当にお世話になりました。何かお礼をさせていただきたいのですが。」
「お礼など考えずともよいわ。それよりこの者の庇護者になってくれまいかの。」
「そう云えば君は何という名であったか。訊いておらなかった。」
「申し訳ございません、ヴォルフ公。僕は名前が無いのです。と云うのか、全く自分が誰なのか覚えていないのだす。」
「自分が判らないというのか。不思議なことがあるものだ。すると、名前は今は無いというのか。それでは、ドーバ老師の申し出もあることでもあるし、我が性を名乗るが良い。名前は、そう『ルーク』でどうだ。武王マークと忘却の神ルーズを併せた名だ。ルーク=ロジック、いい響きではないか。」
「公、そんな大切なことを軽々しくお決めになっては。」
「口出しするな、レムス。儂が決めたことだ。彼の者がおらなんだら儂の命は無かったかも知れないのだぞ。今後ルークは城に出入り自由とし、我が息子として扱うよう家臣たちにも申し付けておくように。」
「ヴォルフ伯父、良い判断でしたね。彼なら大丈夫です。十分その役割を果たしてくれるでしょう。」
ロックが当惑しているレムスの代わりに返事をした。
「何を考えておるのか知らんが、ロックよ、儂の言った意味はそれ以外何も含んでおらん。勘違いするでない。」
頭の回転の速いロックは話が多少見えてしまって勇み足のようなことを言ってしまった。レムスの立場もヴォルフ公が大切な侍従長を心配させたくない気持ちも意識していない、不用意な発言だったのかも知れない。
「すいません、公。僕が言いたかったのは、彼は剣の腕も人間も確かなので、ヴォルフ伯父の正式の養子としてもなんの問題も無いと思われる、と云うことです。」
「わかればよい、正式な養子としての話は後日追って考えることにして、とりあえず、ルークにはその名前を名乗ることと、儂の息子として扱われることを承知してもらわなければ。」
「申し訳ありません、公。そんな大それた事はとても承知できるお話ではないです。」
青年はもはや何が何だか判らなくなっていた。自分がアゼリア州太守であるヴォルフ=ロジック公の名前を貰って『ルーク=ロジック』と名乗るだけでも畏れ多いことなのに公の息子として扱われることに至っては、想像もつかないことだった。
「お前は何も逆らわずに公の云う通りにすればよいのじゃ。それが儂の意志でもある。儂にも公にも逆らうつもりかの。」
ドーバに世話になってから初めて真面目な眼差しで見つめられた青年は、とても逆らえないと思った。
「判りました。今から『ルーク=ロジック』と名乗ることにしましょう。ただ、僕の記憶が戻ったときには、二つの名前を名乗ることをお許しください。」
「勿論だとも、我が息子ルークよ。そなたがたとえ何処の誰であろうと、儂の息子には違いはない。儂の前だけでもルーク=ロジックで居てくれればそれでよいのだ。」
話はレムスにとって不本意な形でついてしまった。何処の誰かも判らない青年をロジックの性を名乗らせ、公の息子として遇しなければならない。城への出入りも自由とする。確かに公を救ってもらった借りはあるとしても、あまりにも性急な話だった。公には別の考えがあるのであろう、と自分を納得させたレムスだった。ロックは何か気付いているようだ。城に戻ってから問いただしてみようと思った。
とりあえず、ルークはドーバ老師の下で修行を続ける傍ら、城には数日に一度は訪れてヴォルフやロックの相手をする事になった。
ロックは暫く城に残ってヴォルフの側にいるつもりだった。仕掛けられた魔道は破られたが、何時また違う形でヴォルフの命が狙われるかも知れない。ロックにはヴォルフとドーバの態度で、ある考えが浮かんでいた。それは軽々しく口にできないことだった。レムスが訊きたそうにしているが、ヴォルフ公本人と相談してからでないと、侍従長であるレムスにも話せない内容なのだ。
一行の内数人は行きとは違い、とても重くなってしまった心を抱いて城に戻っていくのだった。
2 新たなる旅立ち②
ヴォルフ=ロジックが、命の恩人であり、自らが名付け親となって自分の性を名乗らすことになったルーク=ロジックを訪ねた翌日のことだった。気分が優れないヴォルフは気晴らしに城の中庭を散歩していた。
「ロックよ、詳しく御前試合のことを話してくれんか。」
ロック=レパードは城の中に居る間は、護衛としてヴォルフに付きっ切りだった。いつどんな形で命を狙われるか判らないからだ。
「いいですよ、本選の最初から話をしましょう。」
ヴォルフは剣の試合の話が何よりも好きだった。興奮して身体に障るといけないから、とレムス侍従長に止められていたので、いままで聞けていなかったのだ。ロックはシオン=イクスプロウドとの決勝戦までの経過を事細かに話した。
「そうか、あのガイアの息子がそこまでやるとはな。しかし、お前の腕なら余裕で勝てる筈だろうに。」
「いいえ、それがなんとか勝てたような、もしかしたら僕のほうが負けていたかもしれませんよ。」
謙遜ではなかった。御前試合に出るまではかなり自分の腕に自信を持っていたロックだった。事実、ヴォルフから見れば、シャロン公国内にロックに敵う者がいるとは想像できない程になっていたのだ。そう云えば、確か今はホーラの長官をやっているリードという青年はかなりの腕だった。ロックはそれと同等か、修行によってはリードを凌ぐであろう。少なくとも全盛期のヴォルフを超えているのは間違いない。
「一体どんな修行をしたのか。それを妹のレイラにさえ知られずにあのレベルに達っするには何をどうしたものか、想像も付きませんよ。」
「そうではあるな。お前の話はもっともだ。本人に問いただしてみたらどうだ?」
「セイクリッドに帰る途中にラースに寄ってみますよ。」
一頻り話が終ったとき、レムス侍従長がやってきた。
「ヴォルフ様、クォレル様がお戻りになられまして、お目通りを申し出られております。お体の具合はいかがでしょうか。」
「クォレルが戻ったのか。今、ロックに御前試合の話を聞いて調子はいい。呼んでくるがよい。」
クォレル=ロジックはヴォルフのたった一人の肉親である。両親を初め主な血縁の者は殆ど他界してしまった。ロジック家としては、ヴォルフが死んでしまったとしたら残るのはクォレルだけだ。
ロックも顔見知りなのでそのまま残っているところへクォレルが入ってきた。ヴォルフと年はかなり離れている。背丈はヴォルフはほぼ変わらないが、体重は今の痩せてしまったヴォルフと比べると優に2倍を超えるだろう。
ロックは、ヴォルフは剣の師匠でもあり尊敬もしているのでその弟を悪く思いたくは無かったのだが、クォレルについてあまりいい印象がなかった。使用人を鞭で打っている場面に出くわしたこともあった。
「今戻りました。お加減はよろしいのですか。おお、これはロック君だったか、御前試合で優勝したらしいね。さすが兄の弟子だけのことはある。」
一気に言いたいことだけを言って相手の返事は聞いていない。声が甲高い所為もあって軽薄な印象を他人に与える。ヴォルフとは到底兄弟には見えなかった。ロックは知らないことだったが、実は母親が違う兄弟だった。城の中でも限られた範囲の人間にしか知らされていないことだ。
「儂の代わりに御前試合に立会いに行ったお前が、ロックより遅く帰ってきたのは何処かに寄り道をしておったのか。」
「ええ、マゼランに行って、聖都騎士団の修行場を視察して参りました。とても参考になりましたので、我がアゼリア州騎士団にも取り入れたいと思っております。」
レムス侍従長は不思議に思った。騎士団のことなど全く興味が無かった筈なのだ。自らの快楽を求めつづけることだけに一生を捧げているかの様にしか見えなかったのに。マゼランに立ち寄って戻ることも、出発前には聞いていなかった。
ヴォルフの寝室で久しぶりに戻った弟との対面が行われていたとき、レイラ=イクスプロウドは暇を持て余していた。ロックはヴォルフにつきっきりだし、アドニスについてからほとんど何処にも出かけていなかったからだ。
実際、ヴォルフの病気というか魔道の呪いによる騒ぎもあって、観光して回る訳にも行かなかったのだ。侍女のフローリアと共に何もすることがなく城の中の花壇で覆われている中庭を散歩することが唯一の楽しみだったのだ。
そこへ、顔見知りの侍従に連れられて歩いているルークという青年をレイラが見つけた。
「ちょっと、あなた、確かルークとかいったわ。ヴォルフ伯父様のところに来たの?今は弟とかが帰ってきて会えないと思うわよ。ここで私の相手をしてくれない?」
「そうですか、いいですよ。ヴォルフ公の弟さんが帰ってこられたんですか。」
「そう。でも確か私と一緒で御前試合を見にセイクリッドに行っていた筈なのに、一度ラースに戻ってからアドニスに来た私達よりも遅く帰ってきたのは、何処かに寄り道でもしていたのかしら。」
2 新たなる旅立ち③
「なんでもマゼランにお立ち寄りになっておられたとか。」
侍従が説明をしてくれた。
「まぁ、マゼランにどんなご用事があったのかしら。確か、ヴォルフ公の弟は剣術のことなんかには興味はないって聞いてたけれど。」
クォレル=ロジックが男色に耽っていることは周知の事実だった。レイラ=イクスプロウドはアドニスに着いたときクォレルの不在を聞いて嬉しかったものだ。顔を遭わせたことは無かったのだか、他にも良い噂を聞かなかったからだ。
「マゼランはどんなところなんですか。」
ルーク=ロジックは記憶を無くしている。自分自身を見出すための鍵の一つとしてヴォルフ=ロジックに遭いに来てヴォルフを助けることになった。そして、ルーク=ロジックという名前とヴォルフの息子と同様という身分を得たのだった。しかし、それで記憶が戻った訳ではない。ルークには観る物、聞くものが総て興味を引くものだった。
「マゼランというのはちょっと変わった街よ。街の中心が聖都騎士団の訓練施設になっているの。各州の騎士団の幹部もそこで修行する慣わしになっているわ。その訓練施設の周りに広がった街なのよ。」
「ロックさんもそこで修行したんですかね。」
「いいえ、ロックはまだどの騎士団にも属していないもの。でもお父様が聖都騎士団の副団長でお兄様も聖都騎士団に入られたって聞いているから、多分ロックも聖都騎士団に入るんじゃないかしら。」
「そうですか、彼は相当な使い手ですから、騎士団でも重用されるでしょうね。」
ルークとレイラ、レイラの侍女フローリアは銀狼城の誇る南方独特の花が咲き乱れる庭園で暫しの会話を楽しんでいた。
「どうも虫が好かないんですよ。老公には身内を悪く言われたくはないと思いますけれど。」
「そう言うでない。儂も判って居るのだ。クォレルのあれは病気のようなものだと諦めないと仕方が無い。」
ロックは御前試合に出るまで、ヴォルフの元で修行していたときにクォレルに寝室にまで押しかけられ迫られたことがあった。武術家としてもかなりの腕前のロックにとって、ぶよぶよと太ってしまったクォレルの体をかわすことなど造作も無いことだが、クォレルは勢い余って壁に激突し、気を失ってしまった。ロックは直ぐに侍従を呼んでクォレルを自室に運ばせたのだが、翌朝クォレルは何事も無かったかのようにロックに朝の挨拶をしたのだった。不名誉なことなので自ら言い出す筈も無いのだが、ロックとしては何らかの因縁をつけて追い出されるかとも心配したのだがその後は殆ど口をきかないで出立の日を迎えられた。
「しかし、ヴォルフ公、クォレルさまの側付きの者たちは、公のお許しを得られるのならお暇を頂きたいと申しておるものが大勢居ることは確かでございます。一度公からお諭しいただけませんでしょうか。」
クォレルは自分の命令が即実行されないと不機嫌になり、側付きの者を鞭打ったりすることが多かった。最近では鞭打つためにひ弱そうな少年を態々選んで側付きにしているらしい。怯えて許しを乞う表情が堪らないのだった。
ひと時会話を楽しんでいたルークたちが居る庭園の外周廊下をクォレルとその侍従たちが進んできた。
「あのお方がクォレルさまでございます。」
ルークを案内してくれた侍従が教えてくれたときだった。クォレルが庭園に居るルークとレイラを見つけて、もともとは表情のない能面のような顔が、悪鬼のような形相となって二人を睨んだ。そして、暫く動かなくなってしまった。
「どうかしたんでしょうか。」
ルークはそんな顔で睨まれるような心当たりは無かった。
「この感じは、あのときと同じだ。」
急にルークが言った。
「なに、どういうことなの。」
「ヴォルフ公に施された魔道を返した時に実は魔道を掛けた術士とは違う者の悪意を感じたんです。間違いありません、あの人ですよ。」
とんでもない話だった。アゼリア州太守であるヴォルフ=ロジックの命を狙った事件の首謀者が、実弟であるクォレル=ロジックであった。自らが城を留守にしている間にヴォルフの命を奪い、死んだ後帰国するつもりだったのだ。それが、魔道の術をルークに返されてしまい、帰国が遅くなりすぎて疑われないうちに帰国したのだろう。
「本当なの。もし本当だとしたら大変なことよ。」
二人は声をひそめて話した。周りにはフローリアと侍従が一人だけだった。
「あなた達も誰にも云っては駄目よ。私とルークとロックとレムスさんで相談するから。」
若い侍従は蒼ざめてしまいレイラの話もよく聞いていなかった。
2 新たなる旅立ち④
「その話は誰にもしておらんだろうな。」
まさか、という思いとやはり、という思いが交錯している複雑な表情でヴォルフがルークに確認した。
「勿論です。知っているのは私とレイラ、レイラの侍女、そして老公の侍従の一人だけです。」
「あの弟君ならやりかねないな。」
「これ、滅多な事を言うではない。もし違っていたとしたら、ロック様でも恩義のあるルーク様でも許される話ではありませんぞ。」
レムス侍従長は一応ロックをたしなめてはいるがレムス自身もクォレルへの疑いは決定的なものになっていた。決して愚鈍でも暗愚でもなかった筈のクォレルが偉大すぎる兄を持った故に自らの才幹を発揮する場所を与えられなかった。本当のところはクォレルはクォレルなりにいくらでも才能を発揮する地位に就くことも可能だったのだが、それを太守
のみに限定して望んでしまったことで、兄の失政や失脚を望むようになってしまったのだった。
「いずれにしても証拠がないではありませんか。ルーク様の魔道に関しての腕前は充分承知してはおりますが、確たる証拠がないことには仮にも老公の弟君であるクォレル様を罪に問う訳には行きますまい。」
レムスのいうとおりだった。クォレルの罪を告発しても証拠を出せと言われればルークの証言しかないのだ。ヴォルフの恩人でありロジックの性を名乗ることを許された身とは言え、実の弟であるクォレルと比べることは出来ない。ただ、先だってドーバ老師には内密にそのことを伝えられていた。同じことを師匠と弟子が気づいたのだ。
「儂が直接クォレルと話そう。」
「そ、それは老公、お止めになられた方がよろしいのでは。」
「何故だ。」
「もし仮にクォレル様が罪をお認めになられなかったとしたらどうなさいます。老公に知られたと知ったらクォレル様は更に老公のお命を狙いかねませんでしょう。」
「なら儂はどうすればよいのだ。」
さすがに聡明なヴォルフもただ一人の肉親のことなので決断が着かないようだった。親はすでに無く、子も無く妻もない。縁者もない二人はこの世で立った二人の兄弟なのだ。
余談ではあるが、クォレルが妻を持たないのは、自らの趣味が男色である所為だが、ヴォルフが妻を持たなかったのはそうではない。若かりし頃、レイラの父であるガイア=イクスプロウドとレイラの母であるゼナ=イクスプロウドをめぐって争い、ゼナがガイアと結婚したのでヴォルフはその後、妻を迎えようとしなかった、という噂が同世代の者達の間
では囁かれていた。古い話なのでレイラやロックは知らないことであろう。若い頃のゼナに似てきているレイラをヴォルフが可愛がっているのはそのあたりのことが多少影響しているのでは、と不遜ながらレムス侍従長などは歯がゆく思ってているのだった。
2 新たなる旅立ち⑤
「やはり儂が会って直接確かめるしかないであろう。」
ヴォルフの決心は固かった。ロックたち説得は無駄なようだ。仕方無しに万全の警備の上で二人を会わせることにしたのだった。
クォレルは供も連れずに一人でやってきた。何も疚しいところはない、という意思表示なのだ。
「兄上、お加減はいかがですかな。おお、こちらのお嬢さんは?」
クォレル=ロジックはロック=レパードの顔を覚えていない筈は無いのだが、惚けて見せた。前にロックがヴォルフの元で剣術の指導を受けていたとき迫ってこっ酷く断られたことがあったのだ。そのロックを無視してレイラの事を尋ねたのは嫌がらせのつもりだろう。
「レイラ=イクスプロウドと申します。お見知りおきを。」
「おお、ではガイア公のご息女であられるか。それはそれは遠いところをよく参られた。当地はガリア州とは違い南国、気候もよろしい。存分にご滞在されるといい。」
「はい、ありがとうございます。」
クォレルはロックの方を見ずに、
「こちらの青年は?」
「ルーク=ロジックと申します。」
「ロジックだと?我がロジック家に縁のある者なのか?」
ルークがロジックの姓を名乗ることになった経緯をクォレルにはまだ伝えていなかった。そのことを伝えるにはヴォルフに向けられていた魔道の術の話から語らなければならないからだ。
ヴォルフは周囲の者たち制し、自ら事の経緯を話した。黒幕は誰なのか、それだけを結論付けないままに。
「そんなことがあったとは、このクォレルがおりましたら兄上をそのような苦難に追い込んだ者を決して許しはしなかったものを、口惜しい限りですな。」
演技とすれば相当練習を重ねた演技であろうか、クォレルの表情からは自らが犯人であることを隠しているような様子は無かった。
クォレルの様子に逆に不審に思ったヴォルフはルークの方を見た。どういうことだ、とその目は語っていた。
「僕から説明しましょうか。」
この場を仕切るようなタイプには到底見えないルークの発言に少しクォレルは戸惑ったようだが、直ぐに思い直して、
「お前が何を説明してくれると言うのだ?」
クォレルには絶対の自信を持った表情が見て取れる。
「僕の目を見てください。」
そう言ってルークはクォレルの正面に立ち、自らもクォレルをじっと見つめた。
「今から公弟様に掛けられた魔道を解いてみます。よろしいですか。」
「儂に魔道が掛けられているというのか。面白い、やってみるがいい。」
ルークは両手で印を切りながら呪文を唱えだした。
「ヴォルフ公、弟君には自らが首謀者であることを忘却させる魔道が掛けられています。そのために絶対の自信を持ってこの部屋に赴いて来られたのでしょう。ただ、悲しいかなその忘却の魔道は、自らに忘却の魔道を掛けたことを含めて忘れさせてしまったのです。ですから、弟君は僕が魔道を解く、と言っても特に反対したり阻止しようとしたりはなさらないのです。」
ルークがヴォルフに説明をしている間、当人のクォレルは呆けたような表情を浮かべて椅子から落ちそうになっている。
「今から弟君の正気を戻します。もう一度老公から黒幕について心当たりが無いか聞いていただけますか、先程の反応とは違うはずですから。」
ルークが両手を叩くとクォレルは少し驚いたような表情になり、落ちかけていた椅子に座りなおした。巨体なので椅子が軋んでいる。
「クォレル、そなたは儂の命を狙う者に心当たりはないだろうか。」
そうヴォルフが問いかけるとクォレルは急におどおどとしだした。
「いっ、いや、あっ、兄上を、兄上の命を、ねっ、狙う者に、心当たりなどある筈が。」
そこまで言ってクォレルは床に倒れこんでしまった。ルークは本当のことを隠せないように魔道を掛けたのだ。逆らって嘘を吐くにはかなりの精神力が必要となる。
「あっ、兄上が妬ましかった。望むものは何でも手に入る、何でも持っている兄上が。兄上がいる限り儂は太守にはなれない。周りの者たちも儂より兄上を尊敬しておる。儂は城の誰よりも馬鹿にされているのだ。何が違うと言うのだ。同じロジック家の男子ではないか。たった2年早く生まれただけであろう。それなのに、兄上は公爵でアゼリア州太守。儂は子爵でアゼリア騎士団副団長。この違いは何なのだ。」
途中からクォレルは誰かに話している風ではなかった。独り言のように語り続けるだけだった。相当鬱積したものがあったらしい。容姿の違いから性癖の違いまでありとあらゆる違いを並べ立て、自己中心的に自らがヴォルフに劣っていないことを主張し続けた。誰もその語りかけに応える者は無かった。
衛兵がクォレルを連れて行った後は、ヴォルフの寝室は重苦しい空気で満たされていた。当分、いや一生幽閉されるであろうクォレルはヴォルフのただ一人の肉親なのだ。
「ルークよ、すまなかったな。」
「いいえ、老公こそ気を落とさないでくださいね。」
「そなたは、我がロジック家の養子となるのだ、城に住み儂を養父と呼んでもかまわないのだぞ、いやむしろそう呼んではくれぬだろうか。」
ヴォルフは肩を落としてそう言った。ただ一人の肉親を幽閉したのだ。寂寥感は想像もつかない程であろう。
「老公、いえ、養父上、そういう訳には行きません。確かに養父上に掛けられていた魔道を祓ったのは僕です。しかし、養父上のたったひとりの弟君を告発したのもまた僕なのです。その僕が何食わぬ顔で城に置いていただく訳には行きません。」
確たる物的証拠もなしに太守の弟を罪に問い、自らが太守の養子となったとすると、自らの利益のためにクォレルを陥れた、と言われかねないのだ。ヴォルフがいくら庇ったとしても、その声は静まらないであろう。
ルークの言いたいことはヴォルフには直ぐに理解できた。
「それなら、そなたはこれからどうするつもりなのだ。」
「修行の旅に出ようと思っています。人探しも兼ねて。」
「人探し?」
「ええ、ラグで師匠のクローク老師に言われたのです。老公に会い、オーガを探せと。」
「オーガとは、あのオーガか。」
「どのオーガかははっきりとは判りませんが伝説の魔道師オーガが今でも生きているのならぜひ会ってみたいと思います。」
二人の会話を聞いていたレムスは涙を堪えるのに苦労していた。ヴォルフの気持ちもよく判る。そのヴォルフに迷惑を掛けたくないルークの気持ちもまたよく判った。互いが互いを思いやり、結局離れ離れになるしかないのだ。つらい選択だろう。
「俺も一緒に付いていってもいいかな、その修行の旅、ってやつに。」
いままで黙っていたロック=レパードが口を挟んだ。老公兄弟の間には口を挟む機会が無かったが、ルークが修行を兼ねてオーガを探す旅に出る、となれば話は別だ。ロックは好奇心の塊なのだ。剣の修行になるのなら願ったりかなったりだ。駄目だと言われても付いていく、ロックの表情はそう物語っていた。
レイラも同行したそうだったが、こればかりは無理な相談だった。どんな危険が待っているか判らないのだ。ましてや女連れでは修行にならない。そう説得されてレイラとフローリアはレムスの手配したアゼリア騎士団に守られてガリア州に帰ることになった。
「旅の先々で困ったことがあればロジックの名を出すのだぞ。皆悪いようにはしない筈だ。」
そう言ってヴォルフは一振りの細剣をルークに手渡した。柄にはロジック家を象徴する狼を模った紋章が刻まれていた。
「この剣を持っていくがいい。儂がさる名工に特に頼んで作らせたものだ。」
「ありがとうございます、大切に使わせていただきます。」
「名残惜しいがいつまでもこうしておっても仕方が無い。ルークよ、ロックよ、心して就業の旅へと赴くがよい。」
「養父上もくれぐれもお体にお気をつけになられますように。」
「まあ、ルークのことは俺に任せて大丈夫だから。」
「ロック、確かにお前の剣は一流だがどうも性格に問題がありそうだな。お前は剣というよりは精神就業の旅と心得よ。」
「はいはい、判りました。」
「レムスさん、老公を頼みますね。」
「ルーク様もロック様もくれぐれも無茶はなさらないように。無事のお帰りをお待ちしております。」
「そろそろいくか、ルーク。」
「ええ、それじゃあ養父上、行って参ります。」
こうしてアゼリア州太守ヴォルフ=ロジックの養子となったルーク=ロジックとロック=レパードの旅は始まったのだった。
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