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第二章 神殿の魔王、魔塔の賢者

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火の部門長フレイル
水の部門長オーレリア
風の部門長アエラ
土の部門長ドルンスト
光の部門長エンヤ
と、順に会議場に並んだ面々を紹介され、とりあえず愛想笑いで会釈をしていく。
「そして、闇の部門長が私、レガリアです」
「あー、そうだよな。そんな気はしてた」
特に驚くこともないロッテンの様子に、レガリアは唇を尖らせて言う。
「ちょっとくらい驚いてくれても良かったんですよ?せっかく伏せてたのにー」
「ギルドの料理長が名前を記憶する位の、それも二つ名持ちの実力者で、出会った翌日には国王を動かせる権力者…伏せる気ないだろ!?」
「ロッテンくんは聡い子ですね、本当に6歳ですか」
「なんで6歳って知ってんだよ!」
「見えるので」
ニッと笑ったレガリアに、「何が見えるのか」と問う前に、フレイルと紹介された火の部門長の苛立った声が響いた。
40代と見られる男性で、褐色の肌に朱色の髪が映える。よく鍛えられた肉体をしており、火属性の魔力持ちに多い武人タイプだとうかがえる。
「漫談なら後でやってくれ!このクソ忙しい中で、こっちは時間を割いているんだ」
それに追従するのは風の部門長、アエラだ。こちらは中性的な顔立ちの20代半ばの青年で、腰まであるポニーテールは、美しい白金の滝のようだ。鮮やかな緑の瞳、細くしなやかな体つきも、物語に出てくるエルフを連想させる。
「腐属性っていうと、どうせ闇か土かの派生の属性だろうし、私やフレイル、エンヤには関係なさそうだ。その魔法の性能だけ確認したかったんだ、早くしてよ」
そんな二人を取りなすのは、水の部門長オーレリアだ。
「まあ、お二人ともそう言わずに。あの子が緊張しないように、少しは場に慣れてもらってから始められれば良いじゃない?緊張していると実力が出せないかもしれないわ」
ね?と、優しげに微笑むアクアマリンの瞳は吸い込まれそうだ。サラサラとストレートに流れる海色の髪も、正に水属性と言った感じだ。
女性にしては長身、体つきは妖艶で、子供のロッテンでさえ、目のやり場に困る。
直視できずに目線を逸らすと、光の部門長エンヤと目があった。
エンヤは直ぐにふいっと視線を逸らし、少し不機嫌そうにつぶやく。
「勿体ぶらないで早く始めなさいよ」
オーレリアとは真逆で、小柄なエンヤは子供に見える。
クセのある蜜色のツインテールに、印象的なピンクゴールドの瞳、黙っていれば天使のようだが、口から出るセリフは辛辣だ。
「エンヤよ、そう急かさずとも良かろう。先ずは新たな魔法に触れることを楽しもうぞ?」
孫をあやすように、最年長と思われる老齢の土の部門長、ドルンストがゆったりと語る。
白髪の混じった鳶色の髪とに金の瞳、身長はそこまで高くはなく、体格は太っては居ないが、どっしりと重厚な印象を受ける。面立ちは精悍で、若い頃はさぞモテただろう。
「はいはい、それでは、そろそろ本題に入りましょう」
レガリアが各部門長を見回して場を仕切る。
黒髪、褐色肌、暗いアメジストの瞳、闇の部門長、黒のと呼ばれるに相応しい見た目だ。
平均より少し高い身長、アエラほど細くはなく、フレイルのような武人の体つきではない。
化粧をすればオーレリアの美貌に並び立つのではと思う顔立ちの良さはある。
横顔を見ながらそんなことを思っていると、ロッテンを横からサルエルが突く。
「大丈夫かい?」
「うん、まあ、なんとか」
「ごめんよ、僕なにも出来なくて」
「神殿じゃないんだ、仕方ないって」
コソコソと囁き合っているところに、レガリアの声が飛んできた。
「ーーと、いうわけで、先ずは私のスキルで鑑定したロッテンくんのステータスについて確認させて貰います」
「鑑定?」
いきなり話題を振られて、聞き慣れない言葉に戸惑う。
「ええ、鑑定スキルです。あなたの名前がロッテンで、年齢が6才、属性が腐属性で使えるスキルが、腐食・腐敗・発酵、ガスボムに魔獣召喚、ここまでは宜しいですね?」
「なんだって?!ステータスボードの内容が見れるのか!」
ロッテンは驚きを隠せずに、隣に立つレガリアを見上げた。
「その反応だと、ちゃんと鑑定できてますね。そうです、一定の条件を満たせば、ステータスボードを見ることができます。それが鑑定スキルです」
「一定条件ってなんだ?」
「それはまた追々、さて、それぞれの魔法がどんな物かも気になりますが、まずは、称号の欄にある、腐神の権化ってのが気になりますね」
「これ称号なんだ…知らなかった、俺もよく知らないんだけど、神殿の教皇が言うには、魔王という意味なんだって」
ロッテンは、神殿で説明されたことや起きた事を洗いざらい話した。
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