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第二章 神殿の魔王、魔塔の賢者
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故郷ヒスピリアを出てから半年が経ち、ロッテンは六芒星会の思想が根付く、南側の国サンカレドに逗留していた。
「新しい依頼を受けたよ、さあ!今日も張り切っていってみよう」
相変わらず、サルエルとの男二人暮らし。この国に来て、変わったことといえば、冒険者ギルドに登録したこと位だ。
「今日の依頼は?」
「ネズミ避けの野草採取、ミントかカプシウムを麻袋一杯で銅貨5枚」
「サルエルのは?」
「ホーンラビット討伐、一羽で銅貨10枚」
「そっちがいいなぁ…」
「だーめっ、お子様は採取系クエストからと相場が決まってます。Fランクでしょー?せめてEランクに上がってから交渉すんだね」
冒険者ギルドには6歳になったら登録ができる。
今までのゴタゴタで遅くなったが、サンカレドに来てようやく念願の登録を済ませた。
登録するとFランクからのスタート、真面目にクエストをこなせば、大体1~2年でEランクにはなれる。
Dランクからは魔物の巣穴や、ダンジョンと呼ばれる各地に点在する地下の迷宮に潜ることができ、それ以降は実力とギルドへの貢献度によってC、B、Aとランク付けされる。
最上位はSランクで頭打となるが、Aランカーでさえ、一つの街に一人いるかどうかという一握りしかいない実力者だ。
Sランクになれる人間は本当に稀有な存在であろう。
数ヶ月前に登録したロッテンはもちろんFランク。
サルエルは基本的に教会にいるにも関わらずDランクだ。
当然受けられるクエストが違うが、サルエルは、ロッテンの採取クエストに同行できるような案件だけ受注しているようだった。
神殿から旅立って最初の頃は、サルエルの手持ちの金に頼ってここまで来た。
それが心許なくなってきた様子で、最初はサルエル一人で稼ぎに出ようとしていたらしい。
子供に金稼ぎを手伝わせるなんてできないと初めは良い顔をしなかったが、最近では特に気に留めている様子は無くなっていた。
「さて、さっさと移動しような?日が暮れる前に終わらせんと」
「分かってるよ」
森へと向かい、適当な場所で採取を始める。
「ここ、ミントすごい蔓延ってるなぁ。これなら、今夜のおかずは一品多めにできるかも!」
ロッテンはプチプチと摘み取りながら、夕飯を想像してヨダレを拭う。
「あんまり調子に乗ってると、痛い目に遭うぞー?」
ニヤッと意地悪な微笑みを浮かべ、サルエルはロッテンに注意を促した。
「分かってるよ、目の届くところに居ればいいんだろー?あっ!」
サルエルを見上げた肩越しの小高い丘の上に、赤やオレンジの実をつけた低木が見て取れた。
「カプシウムかもっ!見てくるー」
「おーお、子供は元気ねえ。気をつけてなー?」
手を振って駆け出すロッテンを視界の端に入れつつ、サルエルは茂みの音に注意深く耳を澄ませる。
「イチ、ニィ、サンッーーボルトッ!」
ビシャン!と音を立てて、小さな雷が三方に落とされた。
ジジッと電流が流れる音と、煙、肉の焼けたような臭いが辺りに立ち込めた。
「あらぁ。一羽逃したか…まあいっか、さてと、回収、回収ー」
ポイポイと袋に獲物を詰め込む。
さて、次をと身構えた時だった。
「ぎぁああー!サルエル、助けてー!」
ロッテンが叫び声をあげて、こちらに向かってくるのが見えた。
「新しい依頼を受けたよ、さあ!今日も張り切っていってみよう」
相変わらず、サルエルとの男二人暮らし。この国に来て、変わったことといえば、冒険者ギルドに登録したこと位だ。
「今日の依頼は?」
「ネズミ避けの野草採取、ミントかカプシウムを麻袋一杯で銅貨5枚」
「サルエルのは?」
「ホーンラビット討伐、一羽で銅貨10枚」
「そっちがいいなぁ…」
「だーめっ、お子様は採取系クエストからと相場が決まってます。Fランクでしょー?せめてEランクに上がってから交渉すんだね」
冒険者ギルドには6歳になったら登録ができる。
今までのゴタゴタで遅くなったが、サンカレドに来てようやく念願の登録を済ませた。
登録するとFランクからのスタート、真面目にクエストをこなせば、大体1~2年でEランクにはなれる。
Dランクからは魔物の巣穴や、ダンジョンと呼ばれる各地に点在する地下の迷宮に潜ることができ、それ以降は実力とギルドへの貢献度によってC、B、Aとランク付けされる。
最上位はSランクで頭打となるが、Aランカーでさえ、一つの街に一人いるかどうかという一握りしかいない実力者だ。
Sランクになれる人間は本当に稀有な存在であろう。
数ヶ月前に登録したロッテンはもちろんFランク。
サルエルは基本的に教会にいるにも関わらずDランクだ。
当然受けられるクエストが違うが、サルエルは、ロッテンの採取クエストに同行できるような案件だけ受注しているようだった。
神殿から旅立って最初の頃は、サルエルの手持ちの金に頼ってここまで来た。
それが心許なくなってきた様子で、最初はサルエル一人で稼ぎに出ようとしていたらしい。
子供に金稼ぎを手伝わせるなんてできないと初めは良い顔をしなかったが、最近では特に気に留めている様子は無くなっていた。
「さて、さっさと移動しような?日が暮れる前に終わらせんと」
「分かってるよ」
森へと向かい、適当な場所で採取を始める。
「ここ、ミントすごい蔓延ってるなぁ。これなら、今夜のおかずは一品多めにできるかも!」
ロッテンはプチプチと摘み取りながら、夕飯を想像してヨダレを拭う。
「あんまり調子に乗ってると、痛い目に遭うぞー?」
ニヤッと意地悪な微笑みを浮かべ、サルエルはロッテンに注意を促した。
「分かってるよ、目の届くところに居ればいいんだろー?あっ!」
サルエルを見上げた肩越しの小高い丘の上に、赤やオレンジの実をつけた低木が見て取れた。
「カプシウムかもっ!見てくるー」
「おーお、子供は元気ねえ。気をつけてなー?」
手を振って駆け出すロッテンを視界の端に入れつつ、サルエルは茂みの音に注意深く耳を澄ませる。
「イチ、ニィ、サンッーーボルトッ!」
ビシャン!と音を立てて、小さな雷が三方に落とされた。
ジジッと電流が流れる音と、煙、肉の焼けたような臭いが辺りに立ち込めた。
「あらぁ。一羽逃したか…まあいっか、さてと、回収、回収ー」
ポイポイと袋に獲物を詰め込む。
さて、次をと身構えた時だった。
「ぎぁああー!サルエル、助けてー!」
ロッテンが叫び声をあげて、こちらに向かってくるのが見えた。
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