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第一章 聖女の誕生と異端審問
(15)
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土の試練は生き埋めだった。
深く掘られた穴に落とされ、上から容赦なく土をかけられた。
腐敗臭のする土中、おそらくゴミ捨て場の様な不浄の場だろう。
ふと、この臭いで思い出した。
(牧場のウシ、爆発してたな)
夏場に病で倒れた牛を、そのまま牧場主が放置していたら、内臓が腐り、ガスが溜まって腹が爆発したのだ。
(このままじゃ圧死するだけだし、やってみるか)
ロッテンは手当たり次第に腐敗スキルを乱発し、土中にガスを充満させた。
そのガスをひと所に集めて、地上に向けて放出するイメージで放つ。
ーーバォオオオン!!
周囲に土塊を撒き散らしながら、ロッテンの上に青空がのぞいた。
「名付けて、ガスボム!」
へへへと笑って、成功の余韻に浸る。
あたりは臭気と砂埃で煙った。
枢機卿の誇り高き司教冠にも、砂礫が降り注いでいた。
この時はまだロッテンは気づいていないが、スキルボードに"ガスボムⅠ"が刻まれ、また、"異常耐性Ⅰ"も付与されたのだった。
次の試練は火の試練。
磔台にぐるぐる巻に縛られる。
足元に藁や枯れ枝で小山が築かれていく。
(や、流石にこれは…)
音を立てて燃える松明が小山に落とされた。
(待って、待ってくれぇー!!)
ゴアアッと勢い良く燃え始めた藁の炎、まだ足先を掠めただけなのに、あまりの熱さにチビりそうになる。
知らぬうちに、鼻水と汗と涙が顔面でグチャグチャに混ざり合っていた。
(な、なんかないか、なんかないか、なんかないか!?)
乾燥した木や藁が朽ちても火は消えないし、磔台から逃れた所で周囲は火の海だ。
ーー魔狼に育てられた子ども…魔王に…
断片的に、教皇の言葉が脳裏をよぎった。
(もう、なんでもいい!)
このまま炎に呑まれて死ぬのも悔しい。
焼けクソで心の中から叫ぶ。
背の高い枯れ枝に炎が燃え移り、その火の手がロッテンの体に迫っていた。
"魔獣召喚!"
「おい、なんだ?」
「え?わぁっ」
煙の先からおどろきの声が聞こえる。
ーードカッ!
涙で曇った目を凝らすと、骨だけの馬が炎を恐れる事なく飛び込んできた。
(腐食!)
磔台を朽ちさせて拘束から外れると、骨馬はロッテンの襟首を咥えて宙に投げ、器用に背中でキャッチすると、そのまま火を突き破りながら脱出をした。
(うおぉぉっ!怖ぇぇっ!!)
火の中を一瞬通った時は生きた心地がしなかった。
骨馬の首に、そっと手をやって撫でてみる。
(呼びかけに答えてくれて、ありがとうな)
「ブルフンッ!」
なんだか得意げに嘶いて、地面に膝を折ってロッテンを降ろすと、骨馬はガラガラと崩れて土に還っていった。
「お、おのれ…悪魔め、魔王め!次こそは!」
血圧高めのおかっぱジジイこと枢機卿がくるりと向きを変えて去っていく、青い祭服の背には立派な蹄の痕が見えた。
(あ、さっきのドカッ!て、あれかぁ)
痛そうだと思うと、急に足が痛み始めた。
一番熱に晒されていた足首の辺りが赤く爛れて水膨れもできていた。
(なんで、俺こんな目に遭ってるんだろう、マリアはどこに居るんだろう?)
力が涙と一緒に地面に吸い込まれていくようだった。
そんなロッテンの様子にも構わず、引きずる様にして司祭たちが次の試練へと誘う。
(子ども相手にこんな仕打ち…お前たちの方がよっぽど悪魔みたいだ)
薬の効果が抜けてきているのか、意識がはっきりとし始めた。
深く掘られた穴に落とされ、上から容赦なく土をかけられた。
腐敗臭のする土中、おそらくゴミ捨て場の様な不浄の場だろう。
ふと、この臭いで思い出した。
(牧場のウシ、爆発してたな)
夏場に病で倒れた牛を、そのまま牧場主が放置していたら、内臓が腐り、ガスが溜まって腹が爆発したのだ。
(このままじゃ圧死するだけだし、やってみるか)
ロッテンは手当たり次第に腐敗スキルを乱発し、土中にガスを充満させた。
そのガスをひと所に集めて、地上に向けて放出するイメージで放つ。
ーーバォオオオン!!
周囲に土塊を撒き散らしながら、ロッテンの上に青空がのぞいた。
「名付けて、ガスボム!」
へへへと笑って、成功の余韻に浸る。
あたりは臭気と砂埃で煙った。
枢機卿の誇り高き司教冠にも、砂礫が降り注いでいた。
この時はまだロッテンは気づいていないが、スキルボードに"ガスボムⅠ"が刻まれ、また、"異常耐性Ⅰ"も付与されたのだった。
次の試練は火の試練。
磔台にぐるぐる巻に縛られる。
足元に藁や枯れ枝で小山が築かれていく。
(や、流石にこれは…)
音を立てて燃える松明が小山に落とされた。
(待って、待ってくれぇー!!)
ゴアアッと勢い良く燃え始めた藁の炎、まだ足先を掠めただけなのに、あまりの熱さにチビりそうになる。
知らぬうちに、鼻水と汗と涙が顔面でグチャグチャに混ざり合っていた。
(な、なんかないか、なんかないか、なんかないか!?)
乾燥した木や藁が朽ちても火は消えないし、磔台から逃れた所で周囲は火の海だ。
ーー魔狼に育てられた子ども…魔王に…
断片的に、教皇の言葉が脳裏をよぎった。
(もう、なんでもいい!)
このまま炎に呑まれて死ぬのも悔しい。
焼けクソで心の中から叫ぶ。
背の高い枯れ枝に炎が燃え移り、その火の手がロッテンの体に迫っていた。
"魔獣召喚!"
「おい、なんだ?」
「え?わぁっ」
煙の先からおどろきの声が聞こえる。
ーードカッ!
涙で曇った目を凝らすと、骨だけの馬が炎を恐れる事なく飛び込んできた。
(腐食!)
磔台を朽ちさせて拘束から外れると、骨馬はロッテンの襟首を咥えて宙に投げ、器用に背中でキャッチすると、そのまま火を突き破りながら脱出をした。
(うおぉぉっ!怖ぇぇっ!!)
火の中を一瞬通った時は生きた心地がしなかった。
骨馬の首に、そっと手をやって撫でてみる。
(呼びかけに答えてくれて、ありがとうな)
「ブルフンッ!」
なんだか得意げに嘶いて、地面に膝を折ってロッテンを降ろすと、骨馬はガラガラと崩れて土に還っていった。
「お、おのれ…悪魔め、魔王め!次こそは!」
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(あ、さっきのドカッ!て、あれかぁ)
痛そうだと思うと、急に足が痛み始めた。
一番熱に晒されていた足首の辺りが赤く爛れて水膨れもできていた。
(なんで、俺こんな目に遭ってるんだろう、マリアはどこに居るんだろう?)
力が涙と一緒に地面に吸い込まれていくようだった。
そんなロッテンの様子にも構わず、引きずる様にして司祭たちが次の試練へと誘う。
(子ども相手にこんな仕打ち…お前たちの方がよっぽど悪魔みたいだ)
薬の効果が抜けてきているのか、意識がはっきりとし始めた。
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