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闇染の疑惑
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「また失敗だと!?」
手にしていた万年筆を怒りに任せて投げ付ける。
ペン先が会話相手の頬をかすめ、壁に突き刺さった。
「申し訳ありません、我が君」
「これ以上魔塔側に情報を嗅ぎ付けられては面倒だ。次で必ず始末しろ!失敗は許さない」
無言のまま頭を下げて退出する姿を睨みつけたまま見送る。
この好機を逃せば、いつ次の機会を得られるか分からない。
それまでにアクシアが立太子を済ませてしまえば次期国王の座が遠のいてしまう。
「私は、必ず王の座を奪ってみせる」
アンドレは硬く握りしめた拳を机に打ちつけた。
いつだって兄は優越的な立場を崩さない。
常人より秀でた頭脳を褒められる際も、「さすが、アクシア様の弟君!」
武術にしても「アクシア様に次ぐ武勇を納められるでしょうな!」
何をやっても兄が引き合いに出される。
婚約者もそうだ。
兄には公爵家の中でも一番の勢力を誇るアルセイン家の令嬢があてがわれ、令嬢には幼少より王妃教育が施されて来た。
一方、自身には未だ婚約者はいない。
他国に養子に出される事や、臣籍降下する場合を考えての処遇だ。
どうやっても兄に勝てないような環境に置かれている。
「王座につけぬ王子など、主役になれない役者と同じ。私は脇役に甘んじる人生など望まない」
この冬にはデビュタントを迎える。
それまでに、兄を失墜させるのだ。
「聖女共々消えてしまえ!」
ーーユリアへ
西の森での調査はどう?
危ない目に遭ったって聞いたけど、怪我とかはしてないかい?
こちらは元気だよ。
学園生活は退屈で、ボクもそっちに行きたいくらい。
そうしたらキミを守れるのに…
今回手紙を書いたのには理由があってね、一つ前世の記憶でキミに伝えてなかった事があったのを思い出したんだ。
アクシア王が目に矢を受けたあの戦争の事なんだけど、どうもアンドレ王子の派閥の貴族が敵に情報を売った事で裏をかかれたみたいだ。
で、その王弟派には誰がいるか、回帰してから密かに調べたんだけど…幾つかの候補の中でも、ブリス・フォン・ハインベル子爵が怪しいとボクは思ってる。
アルセイン家が北の鉱山を領地に持っているのは知ってるよね?
親戚筋でもあるハインベル子爵は、副官として、長年あの鉱山の管理を任されていたんだ。
つまり、坑道の採掘ルートの決定権が彼には有る。
今回の魔獣の暴走にもハインベル子爵が関わっているかもしれない。
王子にも気をつけるようにうまく伝えてね!
また、顔を見られる日を心待ちにしているよ。
タイランよりーー
手紙が届いたのは昨日のこと、猪のような魔獣を倒したことへの宴があり、テントに戻ったユリアに届けられたのだ。
久々の学友からの手紙だったが、ユリアの気は晴れないでいた。
アトルとタイランは、まだ面識がないはずだ。
熊のような魔獣が作為的に暴走したと調査結果が出たからこそ、アトルは龍の暴走も作為があったのではないかと言い出したのだ。
(貴方なぜ魔獣の暴走に何者かの作為があった事を知ってるの?それに、龍の暴走にも作為があったかの調査だって、表立って行われてないはずなのに)
そうであって欲しくないのに、思考は止まらない。
魔獣に過剰に瘴気を取り込ませるような術となると、恐らく闇属性魔法の使い手、それもかなり魔法の使い方をを熟知した手練れが施したはずだ。
それに、暴走した魔獣は闇のように黒く染まり、赤い瞳をしていた。
タイランの髪や瞳の色を連想してしまう。
(もしも、タイランがやったとしたら、この手紙は何を伝えたかった?)
手紙にはハインベル子爵についてしきりに記載して居るのを思い出した。
ーーそれが、貴方の伝えたかった事?
ひとまず、それとなくハインベル子爵について王子に聞こう。
ユリアは今一度テントから出てアクシアの姿を探した。
手にしていた万年筆を怒りに任せて投げ付ける。
ペン先が会話相手の頬をかすめ、壁に突き刺さった。
「申し訳ありません、我が君」
「これ以上魔塔側に情報を嗅ぎ付けられては面倒だ。次で必ず始末しろ!失敗は許さない」
無言のまま頭を下げて退出する姿を睨みつけたまま見送る。
この好機を逃せば、いつ次の機会を得られるか分からない。
それまでにアクシアが立太子を済ませてしまえば次期国王の座が遠のいてしまう。
「私は、必ず王の座を奪ってみせる」
アンドレは硬く握りしめた拳を机に打ちつけた。
いつだって兄は優越的な立場を崩さない。
常人より秀でた頭脳を褒められる際も、「さすが、アクシア様の弟君!」
武術にしても「アクシア様に次ぐ武勇を納められるでしょうな!」
何をやっても兄が引き合いに出される。
婚約者もそうだ。
兄には公爵家の中でも一番の勢力を誇るアルセイン家の令嬢があてがわれ、令嬢には幼少より王妃教育が施されて来た。
一方、自身には未だ婚約者はいない。
他国に養子に出される事や、臣籍降下する場合を考えての処遇だ。
どうやっても兄に勝てないような環境に置かれている。
「王座につけぬ王子など、主役になれない役者と同じ。私は脇役に甘んじる人生など望まない」
この冬にはデビュタントを迎える。
それまでに、兄を失墜させるのだ。
「聖女共々消えてしまえ!」
ーーユリアへ
西の森での調査はどう?
危ない目に遭ったって聞いたけど、怪我とかはしてないかい?
こちらは元気だよ。
学園生活は退屈で、ボクもそっちに行きたいくらい。
そうしたらキミを守れるのに…
今回手紙を書いたのには理由があってね、一つ前世の記憶でキミに伝えてなかった事があったのを思い出したんだ。
アクシア王が目に矢を受けたあの戦争の事なんだけど、どうもアンドレ王子の派閥の貴族が敵に情報を売った事で裏をかかれたみたいだ。
で、その王弟派には誰がいるか、回帰してから密かに調べたんだけど…幾つかの候補の中でも、ブリス・フォン・ハインベル子爵が怪しいとボクは思ってる。
アルセイン家が北の鉱山を領地に持っているのは知ってるよね?
親戚筋でもあるハインベル子爵は、副官として、長年あの鉱山の管理を任されていたんだ。
つまり、坑道の採掘ルートの決定権が彼には有る。
今回の魔獣の暴走にもハインベル子爵が関わっているかもしれない。
王子にも気をつけるようにうまく伝えてね!
また、顔を見られる日を心待ちにしているよ。
タイランよりーー
手紙が届いたのは昨日のこと、猪のような魔獣を倒したことへの宴があり、テントに戻ったユリアに届けられたのだ。
久々の学友からの手紙だったが、ユリアの気は晴れないでいた。
アトルとタイランは、まだ面識がないはずだ。
熊のような魔獣が作為的に暴走したと調査結果が出たからこそ、アトルは龍の暴走も作為があったのではないかと言い出したのだ。
(貴方なぜ魔獣の暴走に何者かの作為があった事を知ってるの?それに、龍の暴走にも作為があったかの調査だって、表立って行われてないはずなのに)
そうであって欲しくないのに、思考は止まらない。
魔獣に過剰に瘴気を取り込ませるような術となると、恐らく闇属性魔法の使い手、それもかなり魔法の使い方をを熟知した手練れが施したはずだ。
それに、暴走した魔獣は闇のように黒く染まり、赤い瞳をしていた。
タイランの髪や瞳の色を連想してしまう。
(もしも、タイランがやったとしたら、この手紙は何を伝えたかった?)
手紙にはハインベル子爵についてしきりに記載して居るのを思い出した。
ーーそれが、貴方の伝えたかった事?
ひとまず、それとなくハインベル子爵について王子に聞こう。
ユリアは今一度テントから出てアクシアの姿を探した。
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