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龍の加護
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緑の髪には蔦を、褐色の肌には黄金色の紋様を絡ませて、爬虫類のような琥珀の瞳がこちらを見据えている。
肉感的な体型をした美しい女性体のそれは突如として語りかけてきた。
「大義であったな、聖女と呼ばれし子よ」
「ま、まさか、大地の龍?!」
「そうだが」
表情を一つも動かさず、肯定する姿に衝撃を受けた。
(女性?いや、雌?だったのー!?)
動揺するユリアの横で、リカルドが跪いて声を発した。
「大地の龍、ああ、本当に良かった。これで安心できます」
「我が同胞よ、お前も良く働いてくれた、お前を呼んで正解だったよ」
微笑み合う龍とリカルドを交互に見て、ユリアは呆けた質問を投げかける。
「ね、ねえ、なんで人間みたいな格好をしてるんですか?」
「この方が意思疎通しやすいでな」
「成程ぉ…」
「ぶはぁ!この娘、聖女とはどれだけ奢った人間かと思えば…面白い!礼も兼ねて、何かくれてやろう。何が良い?金か、銀か、宝石か?」
笑われた理由も分からないまま、ユリアは素直に返事をする。
「ここに来た時に、いっぱい貰いましたから、それで充分で…あ、そうだ、坑道!」
「なんじゃ、要らんかつまらん。ん?坑道がどうした?」
今回の事件の発端となったのは坑道を掘ったからだ、だからこそ、敢えて願い出るしかない。
「もう一度坑道を掘らせてもらえませんか?今度は地脈を傷つけないようにするので」
「私からも、お願いいたします。勝手ではありますが、人間の生活にとっては坑道が必要なのです。どうかお願いいたします」
リカルドが話の流れに乗って訴え掛ける。
「ふむ。あまり興の乗らぬ話よの」
少し嫌そうな顔をしていた大地の龍だが、跪き首を垂れるリカルドを見て何かを思いついたらしい。
にんまりと笑い、リカルドに指を突きつけた。
「そうじゃ、お前、私の加護を受けよ」
「私がですか?」
「そう、我が朽ちぬ限り続く加護じゃ。お前の血脈が代々受け継ぐが良い」
「なんと光栄な!」
リカルドは驚いて顔を上げる。
「そのかわり、お前が坑道を管理せい。此度の様な障りは、二度とは許さぬ」
「ーー畏まりました、謹んでお受けいたします」
それは龍の力を得る祝福でもあり、この地に彼とその末裔を縛りつける呪詛でもあった。
「ふん。さあ立て!加護をくれよう」
リカルドは立ち上がり、竜のそば近くへと寄る。
龍からの口づけを額に受け、そこに紋様が宿って消えた。
「これで、お前は私の力を受けた、気分はどうじゃ?」
「魔力が増大したのがわかります…体軽い」
ふんぞりかえって、上機嫌に大地の龍は言う。
「まだ今はほんの一部を渡したに過ぎん、一度に全ての加護を授けたら、壊れてしまうでな。また馴染んだ頃に、更なる力を渡そう。それから、聖女、お前にはこれを」
いつのまにか、掌に握られたものをユリアに突き出してくる。
手を差し伸べて受け取ると、そこには緑の毛玉が居た。
「これは?」
「ケセランパサランという、まあ、一種の精霊というところか。幸運の使い魔とでも思っておけ」
タンポポの綿毛にしては毛量もサイズも大きめの掌サイズ。
しばらくするとモコモコと動きだし、キョロリと瞳を開いた。
(こ、これは!まっくろ○ろすけの白バージョン?!)
雷で打たれた様に、この毛玉の可愛さのトリコになった?
「はっはっは!気に入った様じゃの、何よりじゃ」
こうして、ユリアたち浄化部隊は全工程を終えたのだった。
リカルドを含む修復部隊は、つなげた地脈に魔力を流して滞りが起きないか、漏れ出す部分はないかなど、もう少し細かい調整が必要なため、現地へ残ることとなり、また、タイランもそれに関わる移動に空間転移が必要となるので居残り組になった。
ユリアはハリアスたちと共に帰路に着く。
道程は問題なく進み、半分まで戻ったところで、意外な人物が待ち受けていた。
「イルミオ様と、貴方は…!!」
肉感的な体型をした美しい女性体のそれは突如として語りかけてきた。
「大義であったな、聖女と呼ばれし子よ」
「ま、まさか、大地の龍?!」
「そうだが」
表情を一つも動かさず、肯定する姿に衝撃を受けた。
(女性?いや、雌?だったのー!?)
動揺するユリアの横で、リカルドが跪いて声を発した。
「大地の龍、ああ、本当に良かった。これで安心できます」
「我が同胞よ、お前も良く働いてくれた、お前を呼んで正解だったよ」
微笑み合う龍とリカルドを交互に見て、ユリアは呆けた質問を投げかける。
「ね、ねえ、なんで人間みたいな格好をしてるんですか?」
「この方が意思疎通しやすいでな」
「成程ぉ…」
「ぶはぁ!この娘、聖女とはどれだけ奢った人間かと思えば…面白い!礼も兼ねて、何かくれてやろう。何が良い?金か、銀か、宝石か?」
笑われた理由も分からないまま、ユリアは素直に返事をする。
「ここに来た時に、いっぱい貰いましたから、それで充分で…あ、そうだ、坑道!」
「なんじゃ、要らんかつまらん。ん?坑道がどうした?」
今回の事件の発端となったのは坑道を掘ったからだ、だからこそ、敢えて願い出るしかない。
「もう一度坑道を掘らせてもらえませんか?今度は地脈を傷つけないようにするので」
「私からも、お願いいたします。勝手ではありますが、人間の生活にとっては坑道が必要なのです。どうかお願いいたします」
リカルドが話の流れに乗って訴え掛ける。
「ふむ。あまり興の乗らぬ話よの」
少し嫌そうな顔をしていた大地の龍だが、跪き首を垂れるリカルドを見て何かを思いついたらしい。
にんまりと笑い、リカルドに指を突きつけた。
「そうじゃ、お前、私の加護を受けよ」
「私がですか?」
「そう、我が朽ちぬ限り続く加護じゃ。お前の血脈が代々受け継ぐが良い」
「なんと光栄な!」
リカルドは驚いて顔を上げる。
「そのかわり、お前が坑道を管理せい。此度の様な障りは、二度とは許さぬ」
「ーー畏まりました、謹んでお受けいたします」
それは龍の力を得る祝福でもあり、この地に彼とその末裔を縛りつける呪詛でもあった。
「ふん。さあ立て!加護をくれよう」
リカルドは立ち上がり、竜のそば近くへと寄る。
龍からの口づけを額に受け、そこに紋様が宿って消えた。
「これで、お前は私の力を受けた、気分はどうじゃ?」
「魔力が増大したのがわかります…体軽い」
ふんぞりかえって、上機嫌に大地の龍は言う。
「まだ今はほんの一部を渡したに過ぎん、一度に全ての加護を授けたら、壊れてしまうでな。また馴染んだ頃に、更なる力を渡そう。それから、聖女、お前にはこれを」
いつのまにか、掌に握られたものをユリアに突き出してくる。
手を差し伸べて受け取ると、そこには緑の毛玉が居た。
「これは?」
「ケセランパサランという、まあ、一種の精霊というところか。幸運の使い魔とでも思っておけ」
タンポポの綿毛にしては毛量もサイズも大きめの掌サイズ。
しばらくするとモコモコと動きだし、キョロリと瞳を開いた。
(こ、これは!まっくろ○ろすけの白バージョン?!)
雷で打たれた様に、この毛玉の可愛さのトリコになった?
「はっはっは!気に入った様じゃの、何よりじゃ」
こうして、ユリアたち浄化部隊は全工程を終えたのだった。
リカルドを含む修復部隊は、つなげた地脈に魔力を流して滞りが起きないか、漏れ出す部分はないかなど、もう少し細かい調整が必要なため、現地へ残ることとなり、また、タイランもそれに関わる移動に空間転移が必要となるので居残り組になった。
ユリアはハリアスたちと共に帰路に着く。
道程は問題なく進み、半分まで戻ったところで、意外な人物が待ち受けていた。
「イルミオ様と、貴方は…!!」
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