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筋書きのない希望
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王宮では議員に緊急招集が掛かった。
議題は勿論、大地の龍に関しての報告と、これからの対応についてだ。
「まず、今回の地震の原因ですが、大地の龍にありました」
「なんと!」
「我が国に、ドラゴンが眠っていたとは!」
貴族議員たちが色めき立つ。
龍は災害級の破壊力を持つ危険な生物でありながら、その豊富な魔力量から大きな恩恵も得られる。
例えば今回は、地脈の活性化により鉱山資源が豊富にもたらされており、今後も龍が居る限り、資源が枯渇することはないと約束されているのだ。
「私は、スキル「念話」を用い、大地の龍と対話しました、そして、このままでは邪龍に堕ちてしまうと聞かされました」
「邪龍とは!」
「なぜそのような話になるんだ」
「かの龍が眠る土地の地脈を分断するように、我々は坑道を掘ってしまって居ました。そのせいでエネルギーが滞ってしまい、そこに邪気が溜まり始めたのです」
流石は公爵家の血筋を感じさせる、凛とした声で、リカルドは話を続けた。
「そして、その邪を含んだ気を大地の龍は取り込み続けた」
議員たちは固唾を飲んで報告に耳を傾けた。
「そして、力が暴走し始めたのです。先の地震は、自我を手放すまいと、かの龍が苦しみもがいた結果です」
「もし、このまま大地の龍が邪龍に堕ち、自我を手放したらどうなる?」
議員の一人の問いに、リカルドは残念そうに首を横に振った
「北の鉱山地帯は荒廃し、王都も無害とは行かないでしょうね」
「解決する手立てはないのか!」
その場がシンと静まり、リカルドの言葉を皆が待った。
「我が学園の生徒に、ギフト「聖女」を持った者がおります」
そんな者が居たか?誰だ?と、議員たちは互いに顔を見合わせる。
そんな中、王座近くから声が響いた。
「ユリア嬢のことですね」
アクシア王子の声に、一同が振り返った。
「ユリア嬢とは?どちらの御令嬢でしたか」
隣に並び立つアンドレ王子が口を開く。
「アンドレはデビュタントをまだ迎えてないから無理もないね。私の学友で、ドルチェラン男爵家の令嬢だよ」
彼らの会話を受けて、リカルドは続けた。
「その通り、大地の龍の浄化を出来るのはギフト「聖女」である彼女を置いて他には居ないでしょう。ギフト「空間転移」持ちのタイラン君といい、神はこの事を予見して彼らに力をお与え下さったのかも知れません」
「それは、そなたも含めてだな。我々は神に感謝をしなくては」
威厳のあるゆったりとした声が響く。
王は玉座で頬杖をついたまま、リカルドに問いかける。
「リカルドよ、ドルチェラン嬢に浄化を任せて、それからどうする?」
「龍の浄化と並行し、地属性の魔術師で地脈を整え直します。坑道の整備や龍の扱いなど、それ以降は辺境伯と議会で決めることかと」
「うむ、そうか。そなたは欲がないのだな…わかった、では、以降はこちらで預かろう。ただし、大地の龍との対話が必要な時は、協力をしてくれるな?」
「御意」
「では、北の地の扱いについて、一度休憩を挟んでから話し合おう」
一度、執務室へと戻った王は、振り返らずに言葉を発する。
「居るのであろう」
鳶色の髪、薄紫の瞳の青年がその背中に深く礼を取った。
「ドルチェランの娘について調査を」
「承知いたしました」
そのまま影に溶けるように彼は部屋から消える。
「いつもながら見事よの…」
椅子に深く掛け、机の上に目をやる。
"西の森に関する調査報告"
「聖女か…その力が本物であれば、こちらの件も解決の糸口が見えるかもしれんな」
手元の報告書をパラパラとめくる。
(ふむ、男爵家であっても、国民の支持が厚ければ或いは…この件が片付いたら一度会ってみるのも良いか)
議題は勿論、大地の龍に関しての報告と、これからの対応についてだ。
「まず、今回の地震の原因ですが、大地の龍にありました」
「なんと!」
「我が国に、ドラゴンが眠っていたとは!」
貴族議員たちが色めき立つ。
龍は災害級の破壊力を持つ危険な生物でありながら、その豊富な魔力量から大きな恩恵も得られる。
例えば今回は、地脈の活性化により鉱山資源が豊富にもたらされており、今後も龍が居る限り、資源が枯渇することはないと約束されているのだ。
「私は、スキル「念話」を用い、大地の龍と対話しました、そして、このままでは邪龍に堕ちてしまうと聞かされました」
「邪龍とは!」
「なぜそのような話になるんだ」
「かの龍が眠る土地の地脈を分断するように、我々は坑道を掘ってしまって居ました。そのせいでエネルギーが滞ってしまい、そこに邪気が溜まり始めたのです」
流石は公爵家の血筋を感じさせる、凛とした声で、リカルドは話を続けた。
「そして、その邪を含んだ気を大地の龍は取り込み続けた」
議員たちは固唾を飲んで報告に耳を傾けた。
「そして、力が暴走し始めたのです。先の地震は、自我を手放すまいと、かの龍が苦しみもがいた結果です」
「もし、このまま大地の龍が邪龍に堕ち、自我を手放したらどうなる?」
議員の一人の問いに、リカルドは残念そうに首を横に振った
「北の鉱山地帯は荒廃し、王都も無害とは行かないでしょうね」
「解決する手立てはないのか!」
その場がシンと静まり、リカルドの言葉を皆が待った。
「我が学園の生徒に、ギフト「聖女」を持った者がおります」
そんな者が居たか?誰だ?と、議員たちは互いに顔を見合わせる。
そんな中、王座近くから声が響いた。
「ユリア嬢のことですね」
アクシア王子の声に、一同が振り返った。
「ユリア嬢とは?どちらの御令嬢でしたか」
隣に並び立つアンドレ王子が口を開く。
「アンドレはデビュタントをまだ迎えてないから無理もないね。私の学友で、ドルチェラン男爵家の令嬢だよ」
彼らの会話を受けて、リカルドは続けた。
「その通り、大地の龍の浄化を出来るのはギフト「聖女」である彼女を置いて他には居ないでしょう。ギフト「空間転移」持ちのタイラン君といい、神はこの事を予見して彼らに力をお与え下さったのかも知れません」
「それは、そなたも含めてだな。我々は神に感謝をしなくては」
威厳のあるゆったりとした声が響く。
王は玉座で頬杖をついたまま、リカルドに問いかける。
「リカルドよ、ドルチェラン嬢に浄化を任せて、それからどうする?」
「龍の浄化と並行し、地属性の魔術師で地脈を整え直します。坑道の整備や龍の扱いなど、それ以降は辺境伯と議会で決めることかと」
「うむ、そうか。そなたは欲がないのだな…わかった、では、以降はこちらで預かろう。ただし、大地の龍との対話が必要な時は、協力をしてくれるな?」
「御意」
「では、北の地の扱いについて、一度休憩を挟んでから話し合おう」
一度、執務室へと戻った王は、振り返らずに言葉を発する。
「居るのであろう」
鳶色の髪、薄紫の瞳の青年がその背中に深く礼を取った。
「ドルチェランの娘について調査を」
「承知いたしました」
そのまま影に溶けるように彼は部屋から消える。
「いつもながら見事よの…」
椅子に深く掛け、机の上に目をやる。
"西の森に関する調査報告"
「聖女か…その力が本物であれば、こちらの件も解決の糸口が見えるかもしれんな」
手元の報告書をパラパラとめくる。
(ふむ、男爵家であっても、国民の支持が厚ければ或いは…この件が片付いたら一度会ってみるのも良いか)
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