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北の地から

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ユリアへーー

まさか、キミから手紙が来るなんて思わなかったよ。
ボクにとっては嬉しい変化だ。
ミュゼリア嬢との間に何があったのか、すごく興味があるけど、それはまた帰ってから聞くとするね。

ボクの方は無事だよ。
リカルド先生と一緒に、元気に調査を進めているところ。
ただ、前回とは地脈の乱れがある場所が違うみたいなんだ。
そこまで行き着くのには瓦礫を退けたり、まだ時間がかかりそう。

これからいよいよ発見ともなれば、キミもこちらに来ることになるから、心の準備を忘れずに。

また、手紙をもらえると嬉しいな。

タイランより


お茶会が無事終わった夜、タイランからの手紙が届いた。
「早速、お返事書かなくちゃね」
お茶会を開いたこと、ミュゼリアが監修してくれた事などを書いて、ふとペンを止める。
「手紙と一緒に何か贈ってあげようかな」
そう思い立つと、なんだかワクワクしてきた。
「そうね、手紙だけだとつまらないもの、何を贈ろうかなぁ」
ベッドに落ち着いて、考えながら目を閉じる。

ーーそうだわ、明日の放課後、雑貨屋を見に行って決めよう。



「やあ、おはよう」
「アクシア殿下、ごきげんよう」
乙女ゲームの世界では既にテンプレ、隣の席が王子様という展開にももう慣れた。
話しかけられても余裕の受け答えができる。
「ミュゼリアから聞いたよ、昨日のお茶会は楽しかったかい?」
「はい!とても。ミュゼリア様がご指導下さったお陰です」
「ミュゼリアの指導はキツくなかったかい?私もダンスのレッスンを共にするが、彼女はなかなかに厳しいんだよ」
しいっ、と人差し指を口元にやって、秘密だよと笑う王子の顔は、本当に蕩けそうなほど甘い表現だ。
免疫がなければ心臓を掴まれていただろう。
「確かに厳しくはありますが、きちんとした根拠を元に指導して下さいますし、なによりも失敗させて恥をかかせないための、愛情の裏返しと心得ておりますので」
王子は意外そうな顔をして、それから再び微笑んだ。
「そうか、君はミュゼリアの良いところをしっかり理解しているんだね」
「ええ、ミュゼリア様は甘いだけではなく、厳しいからこそ優しいのですわ」
胸を張って、笑顔で答える。
なんとなく微笑みあっていると、件のミュゼリアが現れた。
「あら、お二人とも朝から楽しそうですわね」
「ユリア様、ちょっと王子殿下を相手にに馴れ馴れしいのでは?」
「身分を弁えなさい、男爵家の令嬢ごときが、気軽に話しかけて良い相手ではないわ」
取り巻き達が非難の声をあげるのを制したのは、王子ではなくミュゼリア自身だった。
「貴女がた、少し控えて。ここは格式高い式典の場でも、王宮内でも無いのです。それに、きっと今は、殿下からお声掛けなさったのでしょう。であれば、応えない方が不敬に当たるというものよ」
太鼓持ちに失敗した取り巻きは、明らかに動揺している様子だ。
「ですがミュゼリア様、明らかに見つめあって微笑んでましたわ」
「婚約者のいる男性に対して、距離が近すぎます」
「確かに私が先にユリア嬢に話しかけた。それで誤解が生まれたのなら、私が彼女に謝ろう。ミュゼリア、不快にさせて申し訳ない。ユリアも、すまなかったね」
取り巻きの言葉を受けて、すぐに動いたのは王子だった。
「と、とんでもございません!殿下が謝る必要などっ!」
「そうですよ、ミュゼリア様は優しいねって話してただけで、アクシア殿下が謝るんですか」
援護射撃とばかりに、ユリアも声を発する。
取り巻き達が押し黙ったところで、王子が再び口を開く。
「では、折角だしミュゼリアも含めて、話の続きをしようか」
「そうですね!それなら誤解されませんもんね」
「え?は、はい」
王子に近場の席を勧められて、ミュゼリアは素直に従う。
「そういえばユリア嬢、今朝は何だか楽しげだね」
「はい、昨日タイラン様からお手紙が届きまして」
「そうなんだ、タイラン君とは仲が良いんだね」
「偶然ですけど、そうですね。それで、返事のついでにプレゼントでも買いに行こうかと」
「それは良いね、学園生活もまだ満足に送っていないうちから、すぐに調査に駆り出されて大変だろうし…」
王子とユリアの間で交わされる言葉のほとんどが、耳から抜けて行く。
ミュゼリアの脳内は一つの考えでいっぱいだった。

ーー王子がユリアと私が優しいと会話した?なに?なんなの?凄~く気になる!!
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