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今年も新たな入学生が魔法学園の門を潜る頃、王宮では、北の鉱山地帯から衝撃的な知らせが入った。
地震による、坑道の沈下が起きたのだ。
報告によれば、その被害は甚大で、坑夫をメインに数千人の死傷者を出したという。
さらに、地下からの天然ガスの流出による火災のせいで、採掘に従事する者や鍛治師たち、その家族などが住処を追われた。
復旧させるには数年を要すると推定され、この地を捨てるかどうかという状況との事だった。
急遽招集された緊急議会は荒れた。
北の鉱山地帯は良質な鉄製品を産出することで国を潤わせ、また、軍備品の需要にも応えて来た重要な場所だ。
しかし、復旧までの数年間は使い物にならないどころか、復旧のために国庫から莫大な資金の投資が必要となる。
そうなると、各領地からの税収の吸い上げも増えることになるのだから、領地経営のためには増税を課すことになるだろうことが予想される。
他を助けるために、自分の領地経営が苦しくなる事を一部の領主達が嫌ったのだ。
国王は此処までの流れを踏まえて口を開いた。
「まずは、北部の詳しい状況を確認させよう。今後、地震が頻発するようであっては、復旧させるなど話にもならん」
これに続く様にアルセイン公爵が言葉を連ねた。
「左様、実情も分からず机上でのみ策を弄するは具の極み。陛下、調査団を向かわせるのであれば、我が息子、リカルドもお加え下さいませ、きっとお役に立ちましょう」
「ふむ、そうだな…あとは、今年デビュタントを迎えた伯爵家のギフト持ちの少年も加えるのはどうだろうか」
王の言葉に、宰相が頷く。
「クルセイン伯爵家の嫡男、タイラン・ル・クルセインでございますね。ギフト「空間転移」の力を見るのに良いでしょうな」
「そうだな、あとの人選は任せよう。出立は三日後を予定し、調整をする様に」
「御意!」
一堂に会した貴族議員たちは恭しく頭を下げ、国王の退出を見送った。
そろそろ学園へ登校しようと準備をしていた時だった。
家令から呼び出されたリタが、慌てた様子で部屋に舞い戻った。
「お嬢様!タイラン様がお越しです」
「え?なんで?とっ、取り敢えず客間にお通しして」
リタにタイランの案内を任せている間に、準備を済ませて客間に急ぐ。
「おまたせ、こんな朝早くからどうしたの?」
「いきなり押しかけてごめん、物語が変わったんだ。北で地震が起きた」
一瞬何を言われたのか分からず、瞬きを繰り返して、やっと飲み込めた。
「それって、前話してくれた私が死んだ後の?」
「そう。ボクは王命で明後日から調査団として派遣される、おそらくリカルド先生もだ」
「なんで物語がそんな風に変わったのかしら?」
「分からない、分からないからこそ調査に行ってくるよ。だから、今日からしばらくキミに会えない」
タイランは真剣な顔でユリアに告げる。
「四日後のロータスという男との出会いイベントの時、ボクは居ないんだ。だから、できれば街に行って欲しくない。それを伝えにきたんだよ」
「それだけのために来てくれたの?」
「それだけ。でも、五日後はいいとしても、その後はキミも覚悟がいるだろう?だから、なるべく早く伝えたかったんだ」
「覚悟?」
「ストーリー通りだと、地溝の底に大地の龍が居るはずだよ、きっと龍はキミを欲するはずさ。そうすればキミも北に呼ばれるだろ?」
そうだ、前回は死後の話だったけれど、今は生きている。
つまり、龍を救わなければならないのだ。
「私にできるかしら」
「分からない、前回には無かった展開だからね。だから、早く伝えなくちゃと思ったんだ」
言葉に詰まってしまったユリアの肩を優しく叩いて、タイランは言葉を続けた。
「まあ、一介の男爵家の小娘にそこまで国王様も期待しないと思うから、気軽にやれば良いと思うよ。さて、もう行かないと、隙を見て抜けてきたんだ、今頃、ボクの家、ボクが居ないって大騒ぎになってるかも」
そのままユリアの横を抜けてタイランは扉を押し開けた。
「それと、今日、お昼一緒に食べられなくなってごめんね。料理係さんにも、お弁当用意してくれただろうに、申し訳ないって伝えてね」
バイバイと手を振る背中を見て、ユリア我に帰って玄関まで付き添った。
「タイラン、気をつけて、絶対無事で居てね!」
馬車に消える背に声をかけて手を振った。
大地の龍の浄化、まだ魔法らしい魔法を使ったことのない自分にその大役が務まるだろうか?
筋書きのない未来は久しぶりすぎて、漠然とした不安に心が揺れる。
ユリアは馬車が通りに消えていく様を、ずっと佇んで見送ることしかできないでいた。
地震による、坑道の沈下が起きたのだ。
報告によれば、その被害は甚大で、坑夫をメインに数千人の死傷者を出したという。
さらに、地下からの天然ガスの流出による火災のせいで、採掘に従事する者や鍛治師たち、その家族などが住処を追われた。
復旧させるには数年を要すると推定され、この地を捨てるかどうかという状況との事だった。
急遽招集された緊急議会は荒れた。
北の鉱山地帯は良質な鉄製品を産出することで国を潤わせ、また、軍備品の需要にも応えて来た重要な場所だ。
しかし、復旧までの数年間は使い物にならないどころか、復旧のために国庫から莫大な資金の投資が必要となる。
そうなると、各領地からの税収の吸い上げも増えることになるのだから、領地経営のためには増税を課すことになるだろうことが予想される。
他を助けるために、自分の領地経営が苦しくなる事を一部の領主達が嫌ったのだ。
国王は此処までの流れを踏まえて口を開いた。
「まずは、北部の詳しい状況を確認させよう。今後、地震が頻発するようであっては、復旧させるなど話にもならん」
これに続く様にアルセイン公爵が言葉を連ねた。
「左様、実情も分からず机上でのみ策を弄するは具の極み。陛下、調査団を向かわせるのであれば、我が息子、リカルドもお加え下さいませ、きっとお役に立ちましょう」
「ふむ、そうだな…あとは、今年デビュタントを迎えた伯爵家のギフト持ちの少年も加えるのはどうだろうか」
王の言葉に、宰相が頷く。
「クルセイン伯爵家の嫡男、タイラン・ル・クルセインでございますね。ギフト「空間転移」の力を見るのに良いでしょうな」
「そうだな、あとの人選は任せよう。出立は三日後を予定し、調整をする様に」
「御意!」
一堂に会した貴族議員たちは恭しく頭を下げ、国王の退出を見送った。
そろそろ学園へ登校しようと準備をしていた時だった。
家令から呼び出されたリタが、慌てた様子で部屋に舞い戻った。
「お嬢様!タイラン様がお越しです」
「え?なんで?とっ、取り敢えず客間にお通しして」
リタにタイランの案内を任せている間に、準備を済ませて客間に急ぐ。
「おまたせ、こんな朝早くからどうしたの?」
「いきなり押しかけてごめん、物語が変わったんだ。北で地震が起きた」
一瞬何を言われたのか分からず、瞬きを繰り返して、やっと飲み込めた。
「それって、前話してくれた私が死んだ後の?」
「そう。ボクは王命で明後日から調査団として派遣される、おそらくリカルド先生もだ」
「なんで物語がそんな風に変わったのかしら?」
「分からない、分からないからこそ調査に行ってくるよ。だから、今日からしばらくキミに会えない」
タイランは真剣な顔でユリアに告げる。
「四日後のロータスという男との出会いイベントの時、ボクは居ないんだ。だから、できれば街に行って欲しくない。それを伝えにきたんだよ」
「それだけのために来てくれたの?」
「それだけ。でも、五日後はいいとしても、その後はキミも覚悟がいるだろう?だから、なるべく早く伝えたかったんだ」
「覚悟?」
「ストーリー通りだと、地溝の底に大地の龍が居るはずだよ、きっと龍はキミを欲するはずさ。そうすればキミも北に呼ばれるだろ?」
そうだ、前回は死後の話だったけれど、今は生きている。
つまり、龍を救わなければならないのだ。
「私にできるかしら」
「分からない、前回には無かった展開だからね。だから、早く伝えなくちゃと思ったんだ」
言葉に詰まってしまったユリアの肩を優しく叩いて、タイランは言葉を続けた。
「まあ、一介の男爵家の小娘にそこまで国王様も期待しないと思うから、気軽にやれば良いと思うよ。さて、もう行かないと、隙を見て抜けてきたんだ、今頃、ボクの家、ボクが居ないって大騒ぎになってるかも」
そのままユリアの横を抜けてタイランは扉を押し開けた。
「それと、今日、お昼一緒に食べられなくなってごめんね。料理係さんにも、お弁当用意してくれただろうに、申し訳ないって伝えてね」
バイバイと手を振る背中を見て、ユリア我に帰って玄関まで付き添った。
「タイラン、気をつけて、絶対無事で居てね!」
馬車に消える背に声をかけて手を振った。
大地の龍の浄化、まだ魔法らしい魔法を使ったことのない自分にその大役が務まるだろうか?
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