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運命の輪、再び
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「ーーで、結局、王子とはお知り合いになって、ミュゼリア嬢には嫌われた、と」
タイランは入学式前のドタバタを、楽しそうに聴いてくれた。
「うん、結局そうなりました」
「何やってんの?とは思うけど、実にユリアらしいね」
「私らしいってなによー」
「一生懸命頑張ってるのに、墓穴掘る感じとか?人の目を気にするくせに鈍感な所とか?」
「酷いっ、可愛い顔して容赦ないー」
「過ぎちゃったことは仕方ないよね、さ、切り替えて。次、頑張ろう」
ほいっと、差し出されたタイランの手を取った。
エスコートを受けてホールに向かいながら、二人で次の作戦を再確認する。
「入学式後の歓迎パーティーで、出会うのはイルミオだね?」
「ええ、私が誰のエスコートもなくパーティーに出席して、周りの令嬢達から冷笑されるの」
「そこに登場するのがイルミオ君だと」
「そう、そして彼とダンスを踊るんだけど、彼の婚約者でミュゼリア様の取り巻き令嬢でもあるカリーナ様のご不興を買うの」
「そりゃそうだよねー。朝、王子と仲良くしたかと思えば、夕方には自分の婚約者とイチャついてたらキレるよね」
傍から見ればその通りだ。
片っ端からイケメンに擦り寄って行っている様にしか見えない。
「だから、そういう衝突を避けるためにもタイランにエスコートを頼んだんじゃない。相手がいればイルミオの目に止まる事もないし、カリーナ様に睨まれる事もないでしょう」
「さて、どうだかね。ストーリー補正とやらが掛かるかもしれないんだよね?」
「そうなのよ!だから、一人にしないでね」
少しだけ背の高いタイランに視線を合わせると、ふいっとそっぽを向かれてしまった。
「ーーっ。この無自覚!そーいうところがダメなんでしょうが」
(バーカ、バーカ!その気もないのに、上目遣いで可愛いお願いとか、誤解させるでしょっ!あーもう、可愛いっ!!)
「え、何?」
「なんでもない!精々、迷子にならないように、ボクに引っ付いておくこと!」
「う、うん。分かってる」
「では…ユリア嬢、行こう」
丁度、話がひと段落した頃、ホールの入り口に到着した。
背筋を伸ばして、二人は会場に入る。
予定通り、あまり目立たない壁際に移動しようと進んだ時。
「お久しぶりです、タイラン様!」
「あらぁ?そちら、どなた?見かけない方ですわね」
「初めまして、タイラン様」
「タイラン様、覚えておいでですか?私、子爵家のーー」
あっという間に、タイランは女生徒たちに囲まれてしまう。
((え!?どういうコトー??))
タイランもユリアも、同じ気持ちでどんどん引き離される。
ーードンッ!
ユリアが弾き飛ばされ、尻餅をついた。
「大丈夫ですか?」
片膝をついて、手を差し伸べてくれる赤髪の男子生徒。
(何でこうなるかなぁ)
はぁっとため息を吐いて、ユリアはヤケクソの笑顔を浮かべた。
「ええ、問題ありません。イルミオ様、ありがとございます」
支えてもらいながら立ち上がる。
イルミオは、名を呼ばれたことに驚いた様子だった。
「俺の…いや、私の名前をご存知で?」
「知らない人の方が少ないんじゃないかしら、西の森の討伐で功績を残されたお話は有名じゃないですか」
「面と向かって言われると照れるな、貴女の名前を伺っても?」
「ユリア・ド・ドルチェラン、どうぞユリアとお呼びください」
「ドルチェラン、ああ、男爵家の」
「ええ、とにかく助かりました。本当にありがとうございました」
それでは!と、逃げようとしたが、呼び止められる。
「これも何かの縁です、一曲いかがですか?貴女のパートナーはまだ解放されそうにない」
「え?」
「ほら、お礼のかわりに」
気づくとほぼ抱えられる様にしてダンスに参加していた。
(あれぇ?イルミオってこんなに押しが強かったっけ?)
流されるままダンスを終える。
「お付き合いありがとう」
イルミオの声に、自分以外の言葉が返す。
「こちらこそ、礼を言います。ボクのパートナーの相手をしてくれて有難う。もう片付いたから、行こう、ユリア」
「タイラン?あ、えっと、失礼します」
お辞儀をして、なんとなく不機嫌そうなタイランの後を追った。
タイランは入学式前のドタバタを、楽しそうに聴いてくれた。
「うん、結局そうなりました」
「何やってんの?とは思うけど、実にユリアらしいね」
「私らしいってなによー」
「一生懸命頑張ってるのに、墓穴掘る感じとか?人の目を気にするくせに鈍感な所とか?」
「酷いっ、可愛い顔して容赦ないー」
「過ぎちゃったことは仕方ないよね、さ、切り替えて。次、頑張ろう」
ほいっと、差し出されたタイランの手を取った。
エスコートを受けてホールに向かいながら、二人で次の作戦を再確認する。
「入学式後の歓迎パーティーで、出会うのはイルミオだね?」
「ええ、私が誰のエスコートもなくパーティーに出席して、周りの令嬢達から冷笑されるの」
「そこに登場するのがイルミオ君だと」
「そう、そして彼とダンスを踊るんだけど、彼の婚約者でミュゼリア様の取り巻き令嬢でもあるカリーナ様のご不興を買うの」
「そりゃそうだよねー。朝、王子と仲良くしたかと思えば、夕方には自分の婚約者とイチャついてたらキレるよね」
傍から見ればその通りだ。
片っ端からイケメンに擦り寄って行っている様にしか見えない。
「だから、そういう衝突を避けるためにもタイランにエスコートを頼んだんじゃない。相手がいればイルミオの目に止まる事もないし、カリーナ様に睨まれる事もないでしょう」
「さて、どうだかね。ストーリー補正とやらが掛かるかもしれないんだよね?」
「そうなのよ!だから、一人にしないでね」
少しだけ背の高いタイランに視線を合わせると、ふいっとそっぽを向かれてしまった。
「ーーっ。この無自覚!そーいうところがダメなんでしょうが」
(バーカ、バーカ!その気もないのに、上目遣いで可愛いお願いとか、誤解させるでしょっ!あーもう、可愛いっ!!)
「え、何?」
「なんでもない!精々、迷子にならないように、ボクに引っ付いておくこと!」
「う、うん。分かってる」
「では…ユリア嬢、行こう」
丁度、話がひと段落した頃、ホールの入り口に到着した。
背筋を伸ばして、二人は会場に入る。
予定通り、あまり目立たない壁際に移動しようと進んだ時。
「お久しぶりです、タイラン様!」
「あらぁ?そちら、どなた?見かけない方ですわね」
「初めまして、タイラン様」
「タイラン様、覚えておいでですか?私、子爵家のーー」
あっという間に、タイランは女生徒たちに囲まれてしまう。
((え!?どういうコトー??))
タイランもユリアも、同じ気持ちでどんどん引き離される。
ーードンッ!
ユリアが弾き飛ばされ、尻餅をついた。
「大丈夫ですか?」
片膝をついて、手を差し伸べてくれる赤髪の男子生徒。
(何でこうなるかなぁ)
はぁっとため息を吐いて、ユリアはヤケクソの笑顔を浮かべた。
「ええ、問題ありません。イルミオ様、ありがとございます」
支えてもらいながら立ち上がる。
イルミオは、名を呼ばれたことに驚いた様子だった。
「俺の…いや、私の名前をご存知で?」
「知らない人の方が少ないんじゃないかしら、西の森の討伐で功績を残されたお話は有名じゃないですか」
「面と向かって言われると照れるな、貴女の名前を伺っても?」
「ユリア・ド・ドルチェラン、どうぞユリアとお呼びください」
「ドルチェラン、ああ、男爵家の」
「ええ、とにかく助かりました。本当にありがとうございました」
それでは!と、逃げようとしたが、呼び止められる。
「これも何かの縁です、一曲いかがですか?貴女のパートナーはまだ解放されそうにない」
「え?」
「ほら、お礼のかわりに」
気づくとほぼ抱えられる様にしてダンスに参加していた。
(あれぇ?イルミオってこんなに押しが強かったっけ?)
流されるままダンスを終える。
「お付き合いありがとう」
イルミオの声に、自分以外の言葉が返す。
「こちらこそ、礼を言います。ボクのパートナーの相手をしてくれて有難う。もう片付いたから、行こう、ユリア」
「タイラン?あ、えっと、失礼します」
お辞儀をして、なんとなく不機嫌そうなタイランの後を追った。
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