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くだらない会話

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 放課後、彼女との待ち合わせの場所に行くため急いで帰りの支度を整えていた。昨日あったことが嘘でないことを確かめるために、彼女がいることを確かめるために。すると声をかけられた。最近ずっと聞いてきた美しく透き通った声だ。

「悠斗君。何をやっているの?早く帰るわよ」 

 今日は始めて教室から一緒に帰ることになった。三ヶ月かかってやっとだ。お互い面倒くさいと色々と厄介である。

「で、今日はどこへ行く予定なんだ。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」

「よくないわよ。何事もはじめにネタバラシをしてしまうと面白みがなくなるじゃない。それともあなた買ったばかりの本を最後のページから見るタイプの人なの?」

 どうせ今日わかることなので詮索する気はないがそこまで露骨に隠されると気にならないわけがない。

「そこまで言うなら詮索はやめよう。楽しみにしておくよ」

 嘘だ。この後もところどころ探りを入れてやる。

「それにしても夜空の下で告白とか憧れるわよね」

「お前ってそんなロマンチストだったのか?」

 噓偽りなく驚いた。この女にはそういう感性はないと思っていたがどうやら見当違いだったらしい。

「失礼なこと言わないで女の子はみんなロマンチストよ」

「みんなってみんなか?」

 お前を除くみんなではないのか?と言おうとしたがやめた。理由は言うまでもないだろう。

「そう。みんなよ。私が嫌いな女の子から私が大嫌いな女の子までみんなよ」

「好きな女の子はいないのか?」

 僕が心配するようなことではないだろうし心配する権利すら持ち合わせていないだろうが、人間関係大丈夫か?

「いないわ。でも好きな男の子だったらいるわよ」

 佳華は薄っすら笑みを浮かべてこちらを一瞥する。

「神ノ原のことか?」

 蹴りだ。蹴りがはいった。

「冗談だ」

「そう。これからはくだらない冗談は言わないことね」 

 善処しようと答えた。嘘だけど。

「それに嫌ってはいるけれど友達になれないわけではないわ。だから心配しなくて大丈夫よ」

 だとすれば本当に心配されなくてはいけないのは僕だけらしい。

「あなたのことも心配いらないわよ。私がいるから。私はあなたの傍にいなきゃ駄目みたいだから」

「嫌ならいなくていいんだぞ」

「嫌ではないから離れないわ」

 彼女は笑顔でそう言った。屈託のきれいな笑顔だ。だが佳華。それで勝ったつもりか?

「そりゃあ離れられないよ。僕は僕の全てをお前に捧げなきゃいけないからな」

「嫌ならいいのよ」

「嫌じゃないから全部くれてやる」

 そう言って笑ってやった。屈託はあっただろうがな。

「ばか」

「お互い様だ。あほ」

 くだらないやりとりだ。だがこのやりとりを出来る事ならこの先も続けていきたいと思った……のかもしれない。こんな言葉を後ろに付けると全部台無しにしてしまう気もするが僕は僕だ。彼女のことをどう想おうがそれは変わらない。だからこそ必ず彼女を助ける。
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