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本心

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 運転手に自宅の位置を告げて窓の外を見ていた。佳華を探すためだ。学校から帰るのに学生がタクシーを使うなど異様な光景だ。タクシーを拾ったときは運転手も驚いていたがそれでも乗せてくれる辺りこの人は善人なのだろう。いやこういう行いを注意しないのはむしろ悪人か?まあどうでもことだが。

 しばらく走っていると美しく長い髪が見えた。間違いないあいつだ。僕は運転手にお金を渡してタクシーを降り彼女のもとへ向かう。

「佳華」

 僕が呼びかけると彼女は振り向いた。

「悠斗君。何で――」

「お前に話したいことがあってな」

「何も話すことなんてないわ」

 彼女の声音はいつもより厳しかった。

「僕にはあるんだ。神ノ原から色々と聞いたぜ」

「……」

 こう言えば彼女は逃げようとしなくなる。そう確信していた。

 この前別れ際が下手な男にはなりたくないと言った。そう。そんな惨めな男にはなりたくない。だから嘘つきな自分とここでお別れだ。

「お前消えるのが怖いんだろう?でもそうするしかなかった。そうでもしないと地球は滅亡するし組織はお前をモルモットにする。だから地球を守る選択を取った。それで僕に気を遣って距離を置いた。そうだろう?」

「違う。あなたは何も分かっていない。気を遣ったわけじゃない。私って駄目な女なの。そんな気なんてまわらない。私は……ただ……、あなたと別れるのが寂しかった。あのままあなたと一緒にいたら決心が鈍ってしまう。あなたに甘えてしまう。だから。だからよ。私はあなたが好きなの」

 彼女はそう言いながらだんだんと近づいてくるその瞳には涙が溜まっており今にも流れ出しそうだ。

「分かっているよ。そんなこと。だが心配いらない。なぜなら僕がお前と地球の両方を助けるのだからな」

「そんなことできるわけ――」 

「できる。今は無理でもいつかは絶対。僕はヒーローだから。お前を絶対に消させない」

 なんの説得力も発言だ。だが彼女はそれを聞いて泣いていた。僕はポケットに手を伸ばしあいつからもらったハンカチを彼女に渡す。

「ほら。これで涙なんてふいてしまえ」

 さて彼女は僕に本音をぶつけてくれただろう。だがまだだ。まだ僕は言っていない。これじゃあフェアではない。

「だから…だから…」

 僕は彼女の腰に手を回しこちらに手繰り寄せる。そして

「お前はずっと僕の傍にいろ。僕も離れたくない。絶対に助けるから。お前の傍にいさせてくれ」

と本心を言った。

「じゃあ私からも、あなたのすべてを私にください」

 重い。

 僕の想い人は重い人なのか。なんてな。そんなくだらないギャグはどうでもいい。今はそんなことどうでも――。


 二章完
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