ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太

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お店経営編

第二章 69話『『元』究極メイド、避難民を治療する』

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 戦地へ赴くメイとベルリオとイーリルとフィーを見送ったアミナとカイドウとカルム。
 3人はザストルクの役場であり町長の家でもある本庁舎に残り、避難してきた住人の手当や身の回りの世話など、出来る事をそれぞれが熟していた。

「こちら回復薬です。どうぞ」

 アミナはそう言って青緑色に淡く光る液体の入った瓶を住人の1人に差し出す。それを受け取った住人は「ありがとうございます」と呟いて、擦り傷ができてしまっていた足首にそれをかけた。次に後ろを振り向いて、手首に大きな傷を抱えてしまっている住人にも同じ物を差し出した。その住人も「すまない……」と力なくお礼を言って回復薬を手首にかけた。
 そんな避難民が何十人、何百人、何千人と未だ待機している。本庁舎や総合倉庫、他の避難所に向かう途中でそうなってしまったのは、言うまでもない。

「死者が出ていないのは幸いとして……これだけの人数の怪我人がいるとは……」

 町長室で手持ちのリヴァルハーブをスキルで回復薬にしながら、アミナは呟く。それを聞いていたカイドウがアミナに言葉を返す。

「死人が出るより怪我人が出た方が治さなきゃいけないっていう手間があるから、敵の人員と戦意を削ぎやすい。魔人会は人の嫌がる事をするのが相当上手らしいね」

 アミナの作った回復薬を瓶に移し替えて蓋をする。その瓶は本庁舎の中にあった物で、タットは「こんな状況ですから」と快く使わせてくれた。
 明らかにアミナの手持ちのリヴァルハーブで作った回復薬では足りないのだが、幸いな事にここは流通の街と交通ザストルクだ。想像倉庫に普通の回復薬や上回復薬なんかはあった為、アミナの手持ちのリヴァルハーブが切れそうな今、怪我人を助けられないという心配はなさそうだ。

「失礼します。アミナ様、お願いしたい事があります」

 部屋に入ってきて早々、カルムがアミナに声をかけた。彼女の手には血まみれのタオルが握られており、表情は普段と変わらず冷静なままだったが、力んだ手やかいた汗で彼女が焦っているのを察した。

「なんですか?」

「実は――」

 カルムの話を聞き、アミナはすぐさま1階の広場へ向かう。
 階段を何十段と駆け下り、カルムの言っていた少年の元に辿り着いた。

「酷い……」

 アミナは少年を見下ろす。彼女の目には、膝より下の足を欠損し、あまりの痛みに気絶してしまっている少年の姿が映っていた。床は血で汚れ、欠損した部位は綺麗に切り取られていた。
 カルムの話では、足が瓦礫に押しつぶされて原型をとどめておらず、その状態で本庁舎まで来たらしい。このままでは壊死してしまうとして、潰れた足を切り、回復薬をかけて応急処置をしたそうだ。
 だが市販の回復薬では血を止めるのが関の山で、失血死してもおかしくない為、応急処置を行った直後にアミナを呼んだのだろう。

「今助けてあげますからね」

 アミナは手に持っていた、濃度99%の回復薬を少年の足へと垂らした。避難してきた住人に配っていた回復薬は、基本的には水で薄めてなるべく大勢に配れるようにしていたが、今回ばかりは部位が欠損してしまっている。それを治すには、濃度99%の回復薬である最上回復薬アルテマポーションしかなかった。

 回復薬を垂らした少年の足は、みるみる再生し、骨、神経、筋肉など、様々な部位が伸び始め、最終的には普通の足へと戻った。縫合や清潔を必要としないのが回復薬の凄い所だ。
 足の治った少年は穏やかな顔になり、悪かった顔色も良くなっていった。大事には至らなかったようで心底安心した。

「ありがとうございます。アミナ様。私ではどうする事も出来ず……」

「いえ、彼が助かったのは適切な処置をして私に知らせてくれたカルムさんのお陰ですよ」

 アミナは笑顔でそう返した。しかしカルムは何故だか浮かないような顔をしている気がした。
 そして決心したような顔をしてからアミナに向かった。

「……何があっても、ここをお守りすると誓います。例え、この命に変えたとしても」

「きゅ、急にどうしたんですか?縁起でもない」

 彼女の唐突な発言に、アミナは訊き返した。しかしカルムの考えと顔に変化した様子は無かった。

「私は……戦闘以外ではあまりお役に立てていません。確かに家事は出来ますが、今ここで必要なのは治癒と盾です。治癒は言わずもがな、アミナ様のやっていらっしゃる回復薬の生産とその使用。カイドウ様も回復薬の特性をよくご理解されており、私の出る幕ではありません。……そう考えた時、ここに今足りないのは盾なのだと、私は思いました。だから私は、皆様の命が二度と脅かされないように盾としてここに立とうと思います」

 カルムの目はまっすぐアミナを捉えていた。アミナはその目の事をよく知っていた。
「そんな事……」と、出かかっていた言葉が喉で止まる。
 それは、確固たる決意を現した人の目。
 それは、揺るぎない信念と心を持った強い人の目。
 この目になった人をもう止められない事、その目の人物はとても優しい事、それらを考慮して、アミナは一言「分かりました」と呟いた。

「貴女が心に定めたのなら、私が言う事は何もありません。第一、私も人の事言えませんしね……」

 アミナは少し自虐気味に言って微笑んだ後に、カルムの方を再び向く。
 彼女の顔は嬉しそうだが、やはりいつもと同じ様な表情だった。

「貴女は、貴女にしか出来ない何かを探して下さい。私には出来ない何か、貴女ではならない何か。それらを全力で熟して下さい。背中は任せました。ですので――背中は任せて下さい」

 アミナのその言葉にカルムは「はい……!」と静かに返事をし、愛刀であるダムネスの柄頭に手を置いて、本庁舎の入口付近に立つ。
 彼女の立ち姿は、何人も通さないという意思を感じさせたのと同時に、がら空きになった背中は、後ろで起こる事全てをアミナやカイドウを信じて任せ、自身は前方に全神経を集中させているとも感じ取れた。

 彼女の背中を見て、なんだか少し嬉しくなったアミナは、再び回復薬を作って持ってくる為に、本庁舎の町長室へと戻っていった。
 そんな中、背を向けているカルムに嫌な視線が送られている事に、その場にいる誰も気がついていなかったのだった。

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