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お店経営編
第二章 38話『『元』究極メイド、消えない足跡を宿す』
しおりを挟む「アミナさん……ここは……?」
ライラが不安そうに呟く。
先頭を歩くアミナは「とりあえずついて来て下さい」と笑顔で言う。
今、アミナを先頭にライラ、ネレ、ジグ、メイの順番で地下通路の最後の階段を下っている。
ネレは1番手前の部屋で遊んだ事はあれどそれ以外は全くの無知だった事もあり、一段と不安そうだ。
それを父親であるジグが後ろに立つ事で安心感を少しでも高めようとし、不安がるジグを守るように、なんとも思っていなそうなメイが歩いている。
「さぁ、到着致しました。こちらです」
階段を下り終わったアミナは前方にある半球体状の部屋に3人を招いた。
もちろんだったが、誰もその部屋に見覚えがある様子は無い。
全員が部屋の中を物珍しそうに見渡している。
「アミナさん、ここって何の部屋なんですか?」
部屋にある物がなんなのか全く理解出来ていないネレがアミナに疑問を投げる。
それに対してアミナは微笑みかけ、彼女の手に持っている木箱に目を向けた。
「ネレさん。懐中時計は持ってきましたか?」
「え?あ、はい。アミナさんがこの木箱を持って来いって言ったので……」
ネレは木箱の蓋を開け、手袋をはめた方の手で木箱の中に手を突っ込んで中身を取りだした。
彼女の手には銀の懐中時計が握られている。
それを見たアミナは「ついて来て下さい」とネレに言った。
他の3人は少しだけ離れた所で待たせている。
そしてアミナは、部屋の中央部分にある丸い穴の空いた台座にネレを案内した。
「これって貴女が言うからには必要だったんですよね?どう使うんですか?」
ネレのその問いかけにアミナは彼女の方を振り返った。
そして、彼女の手の上に乗っている懐中時計を素手で握った。
「これはッ――」
アミナは懐中時計を鷲掴みにして持ち上げた。
彼女の突然の行動にメイ以外の全員が唖然とした表情をしていた。
リューズをカチッと押して今度は振り下ろす。
「――こう使うんです!!」
そして勢い良く部屋の中央にある台座に空いた穴にそれを押し込んだ。
時計の大きさにピッタリのその穴に懐中時計がハマった瞬間、その穴が光り輝き始めた。
「なんだ……!?」
ジグがあまりの光に目を塞いだ。
それを見ていたメイ以外の全員も目を覆って光を防いでいる。
すると今度は部屋全体が光り輝き、逆に穴から出る光が弱くなった。
そして、針が無いハズの懐中時計に、魔力によって形成された長針と短針が、反時計回りに回転し始めた。
その速度は徐々に速くなり、遂には目で追えない速度まで加速していた。
回転し続ける針に連動するように部屋全体が変形していき、凹凸の全く無い半球体状の部屋へと一変させた。
次には部屋全体の光も完全に消え、残ったのは光り輝く魔力で形成された長針と短針の光だけだった。
回転する針の光は風防を通り抜けて部屋全体に広がる。
まるで光を反射する鏡のように風防が針の光を反射し、部屋全体にとある一枚の画像を映し出した。
「これは……お祖父ちゃん?」
次の瞬間、最初に映し出された画像に続いて数千枚では収まるかどうか怪しい量の画像が大量に溢れ出した。
最初は天井を覆っていたが、次第に地面にまでその絵は広がる。
「その通りです。この画像は貴女のお祖父様です。そしてこちらはライラさんと、貴女のご両親ですね」
アミナの差した方向には、先程ライラ自身が言った人物と、大人の女性が木で出来た馬にまたがって遊んでいた。
すると今度はネレが驚きの口を開けた。
「もしかしてあれ……私?」
彼女の視線の先には、自身の父と母に囲まれ、笑顔で椅子に座っている少女の姿があった。
その少女は、それはそれは大事そうにドラゴンのぬいぐるみを抱いている。
「懐かしいわね……あのぬいぐるみ」
「あぁ、ネレがどうしても銅像のドラゴンと同じドラゴンのぬいぐるみが欲しいって言って、方々探しまわったな」
「そ、そうだったっけ……?」
3人はその画像を見て思い出に浸っている。
その事からもう既に分かるように、ここにある数千枚の写真は全て、彼女達に関係する人間の思い出が詰まった物なのだ。
「……それにしてもこれらは一体……」
ジグが小さく頷く。
思い出に浸っていたライラとネレも「確かに……」と目の前の不思議な光景に疑問を抱いた。
するとアミナが口を開く。
「それを説明するのなら……まずこれをご覧下さい」
そう言ってアミナは自身のメモ帳を取り出した。
そして地下通路の道を記した数ページを、他の4人に見せた。
一枚一枚ページをめくってみせる。
「これは……この地下通路の全体ですか?よく描けていますが……これが何か?」
「確かに、これだけではよく分からないでしょう。そこで、新しく線を引こうと思います」
アミナはベルトのポケットから黒いインクの他に赤いインクを取り出した。
それをペンに付け、黙々と地下通路の全体が描かれたページに新たな線を引いていく。
その様子を全員が目で追っている。
最後のページの最後の線を引き終わり、アミナは「出来た」と呟いて、またしても全員にその結果を見せた。
「さぁ、これでどうですか?」
アミナが自信満々に言うが誰にも伝わっている様子が無く、全員首を傾かせた。
「道に……赤い線が引かれましたけど……」
「お前遂に頭がイカれたか」
ジグの言葉に続いてメイがアミナを罵倒する。
しかしその言葉を気にしていないようにアミナは話を続ける為にメモ帳のページを一番上まで戻した。
「これでもまだ無理そうですね。さぁ、ではでは――これでどうでしょう!」
地下通路のルートが描かれたページだけを掴み、メモ帳からそこだけをちぎり取った。
ビリビリと鳴る音を聞いてメイが「あ~あ、貴重な紙なのによ」と呟いた。
そしてすべての紙を同じ方向に揃え、魔力の火にかざしてみせた。
その時、全員が目に写った光景に目を見開いた。
「これは……!!」
火にかざされた全てのページが重なり合い、一つの模様を生み出した。
円の中にある様々な直線によって生み出された模様。
不規則に広がる階層ごとの真っ直ぐな道が織り成す、規則的な模様。
それは紛れもなく――魔法陣だった。
「ご覧の通りです。――この巨大なお屋敷全体がこの映像達を映し出す為の、巨大な魔法陣だったのです」
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