ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太

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お店開店編

第一章 25話『『元』究極メイド、巡り会う』

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4つの魔法の属性を連想させる部屋の謎を解いた後も、アミナとエルミナは様々なトラップを掻い潜り、様々な謎を解いて道を切り開いて行った。
落とし穴に落ちそうになったり、通路の両側から槍や矢が無数に突き出してきたり、巨大な石の球体に潰されそうになったり、正しい順序で障害物を押さないと出口に出れない部屋があったり、背もたれにした壁が隠し通路だったり、変にうねった通路があったり、妙に細い道があったり、対応する石像同士を向かい合わせる部屋では、石像が一体壊れていたがアミナのスキルにより事なきを得たり。
まぁ……とにかく色々あって、2人共とても疲れた。

しかし、探索員が広過ぎて匙を投げたと言う割にはまだそこまで広さを実感出来ていない。
それに罠はまだしも、謎解きは子供騙しのような内容のものばかりだった。
けれど実行する事自体は子供には不可能な事ばかり。
子供に石像は動かせないし、障害物を押す事も出来ない。
それなのに内容が簡単過ぎる。
ここまで来といてなんだが、おかしな所が多いダンジョンだ。

「今度はこの先の通路を右から2番目の方へ行ってみましょう」

今行った道が行き止まりで間違いだった為、アミナとエルミナは構造をメモしつつ道を戻っていた。
そこまでの道中で壁が隠し通路になっていた事があった為一応壁を調べたが、特に何も無かった。
2人はこの動作を既に数十回は確実に繰り返している。
アミナの手に持っているノートはページがほとんどこのダンジョンの構造で埋め尽くされており、紙が尽きそうだった。

そして、起点となっている、通路の選択肢が4つに別れていた通路まで戻ってきた。
そして言葉通りアミナとエルミナは右から2番目の通路へと歩みを進めた。

「ダンジョンに入ると時間感覚が無くなりますね。一体どれくらいの時間この中にいるのでしょうか」

「そうだな……少なくとも丸一日は潜っているだろうな」

「え」

エルミナはアミナの想像を超える言葉を発してきた。
アミナは長くても四半日程度だろう、と考えていた。
しかしそれの4倍の時間をアミナは過ごしていると言われた。

その割にはお腹は減っていない、ただ体力は消耗している。
変に謎解きや罠に集中していたせいで空腹感を気にしている暇なんて無かった。
だとしても丸一日あれから経過しているとは、太陽の光が無いだけでこんなにも時間感覚が狂うなんて。

アミナがそう考えながらエルミナ
後ろを着いて歩いていると、エルミナがバッと、手をアミナの前に出てきた。

「止まって」

小声で言う為、アミナも「どうしたんですか」と小声で聞き返す。
するとエルミナは顎だけで通路の先を示した。
その方向へ視線を向けると、揺らめく光のようなものが見えた。

……!!光が明らかに人為的な動きをしている。
まさかギーラさんとケイさん?
ならフィーちゃんもいるハズ。

アミナは声を抑えてエルミナに耳打ちをする。

「お2人でしょうか……?」

「そう考えるのは少し軽率かもしれない。このダンジョンには他のギルドからも冒険者が来ている可能性がある。今まで出会わなかったのはこのダンジョンの広さ故だろう」

同じクエストに挑んでいる冒険者同士が遭遇した時に起こりうる可能性は複数あるが、最も多いのが、冒険者同士の手柄の取り合いだ。
殺し合いとまではいかないが、それでも戦闘は不可避である事が多い。
相手に一歩でも遅れを取らないように、先制攻撃を仕掛けるしかない。

アミナは数歩後ろに下がって壁に手をついた。
そしてそこでスキルを発動し、壁の石から鈍器を作り出した。
エルミナにそれを手渡すと、全てを察したように彼女は頷いた。

光が次第に近づいてくる。
ゆらゆら揺らめきながら、アミナ達がいる曲がり角の方へと向かってくる。
あと少し、あと数歩。
そして、光がこちらへ曲がってきた時、エルミナはアミナの作った石の棍棒を片手で振り抜いた。

「へぶっ!!!」

鈍い音と共に、低い声が響く。
そして殴られた相手は後方へ吹き飛ばされていき、エルミナの腕力の強さが伺える。

当たった!

エルミナが内心ガッツポーズを取ると「ちょっとどうしたの!?」というなんだか最近聞き馴染んだ声が聞こえてきた。

「あ!アミナさんにエルミナ!!」

それはエルミナの仲間で魔法使いのケイの声に間違いは無く、その顔も服装も、ケイその人だった。

「ケイさん!それに……」

アミナは足に何か柔らかいものが擦り付けられる感覚がして見下ろすと、そこには案の定柔らかい毛玉の魔物、フィーがいた。

「フィーちゃん!」

アミナはフィーを抱き上げて顔を埋めた。
実感が無いとはいえ、丸一日ぶりに猫を吸った気分は最高だった。

「なんだお前達か」

エルミナは冷ややかな様子で言うと、吹き飛ばされた男は体を起こしてこちらへ向かって怒鳴ってきた。

「なんだお前達か、じゃねぇよ!!一体どんなモン食ったら出会い頭に人ぶん殴るんだよ!」
「しょうがないだろ、他の冒険者だと思ったんだから」
「しょうがなくねぇよ!この脳筋女!」
「なっ……!お前に脳筋呼ばわりされる覚えはないぞ!この筋肉ダルマが!」
「何よぉ!?」
「何だよ!?」

2人は額を擦り付けながら睨み合っている。
体格的に言えばギーラが勝つのだろうけど、きっとギーラは勝てないんだろうな……と思いつつ、アミナはケイにその光景を指差して訊いた。

「あれ、止めなくていいんですか?」

「え?あぁいいのいいの!いつもの事だから」

「そ、そうですか……」

喧嘩をしている2人に再び目を向けると、エルミナがギーラの首を絞めて地面に足がつかないように持ち上げている。
やはりギーラでは勝てないようだった。

「そういえば、お2人はどうやってここまで……?偶然出会うには広過ぎると思っていたのですが……」

アミナは、角から現れたのが2人だと分かってから頭に思い浮かんでいた疑問を投げかけた。
すると、ケイがフィーを抱き上げてアミナに見せつけた。

「実はね、この猫ちゃんのお陰なの!」

「フィーちゃんが?」

ケイに抱き上げられてアミナの眼前に持ってこられたフィーは、誇らしげに胸を張っている様子で「にゃあ」と鳴いた。

「私とギーラが落とし穴に落ちた後、この猫ちゃんも落ちてきてね。2人でどうしようか、って悩んでた時に猫ちゃんが「ついてこい!」みたいな仕草をするから、ついて行ってみたの。道中謎解きとか魔物とかいっぱいあったけど、全部この猫ちゃんが上手いことやっちゃったの!それで、今度は猫ちゃんの嗅覚を信じて進んでみたらなんと!2人と合流できたって訳!」

なんと。
フィーちゃんにそこまでの能力があったとは。
賢いとは思っていたが、私の想像の遥か上を行っている。
流石私の初めてのお友達で家族のフィーちゃんだ。
自分の事のように鼻が高い。

「じゃあもしかして、猫殿がいればこのダンジョンの攻略が円滑に進むのではないか?」

未だギーラの首を絞めているエルミナが顔だけをこちらに向けて言った。
ギーラはタップをしているが、エルミナはそんな事気にしない。
殴られたのに可哀想な人だ。

「そうそれ!だからこれからは猫ちゃんに先導してもらおうと思うんだけど……アミナさん、いいかな?」

ケイがアミナに了承を取ってきた。
アミナからすれば、フィーが良ければそれでいいのだが、先程から皆が猫殿だの猫ちゃんだの言っているのが気になった。
意地悪がてら一つだけ条件を出してやる事にした。

「私はフィーちゃんが良ければそれでいいです。ですが、私からも条件を出させて頂きます!」

一同はゴクリと喉を鳴らした。
首が締められている為、例外の筋肉ダルマが一人いたが。

「これからはフィーちゃんの事を名前で呼んでもらいます!」

「猫殿の名前?アミナさんが言っているフィーと呼べば?」

「いいえ!フィーちゃんの本名は『フィアレーヌ・ラピセリア・グランシエル・ノヴァリス・エテルナ』です!」

「なっげぇよ!!」

ようやくエルミナの絞首から解放されたギーラがあまりの長さに驚いた。

「皆さんこれからはフィーちゃんの事を名前で呼んでくださいね」

3人は顔を見合せて少し考えたようにした後、アミナに向き直った。

「それじゃあ私はフィー殿と呼ばせてもらうことにする」

「私はフィーちゃん!アミナさんの呼び方が気に入っちゃった!」

「じゃ、じゃあ俺はフィーってそのままで呼ぶことにするぜ。妙ちくりんな名前全部呼ばれるよか、こっちの方がいいだろ」

各々がフィーの呼び方を言い、アミナはフィーの方を見た。
するとフィーは、認めよう、と言わんばかりに「にゃあ」と鳴いて、3人の呼び方を受け入れた。

「それじゃあ猫殿改め、フィー殿。このダンジョンの先導、頼まれてくれるか?」

エルミナは丁寧に膝をついてフィーに了承を得ようとした。
フィーは嫌がる様子もなく、4人の前に出て、一番先頭を歩き出した。

予想外の適性を持っていたフィーにより、この迷宮の攻略は思いの外早く終わるかもしれない。
そんな期待を抱きつつ、一同はフィーに続いて、再びダンジョンの奥へと足を進めた。
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