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第13章 鬼神、激突!
5話 調教の時間よ!
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「ステラ、元の姿に戻って」
「はーい!」
箱が光って、元の武器の形に変形していく。それは、死神の鎌を思わせる漆黒の武器となった。
シュアンは驚愕し、顔色を変えた。
「そ、その武器は……」
「光属性魔法の力を感じるでしょう? そりゃそうよね、ステラは陛下と同じ力を持つ聖女だもの」
「ぐっ……じゃが、当たらなければどうってことはないぞ! 先にお前をアンデットにしてやる! 出でよ!」
シュアンが叫ぶと、地面の土を押し退けながら大量のアンデッドが出現した。
「ふははは!! 食らえ、食らえ!! その女を食い殺せ!!」
私は、こちらに向かって走ってくるアンデッドたちに向けて、鎌を横薙ぎに振った。
巨大な光の刃が走り、すべてのアンデッドたちを真っ二つに両断する。両断された者たちは、まるで水が蒸発するかのように一瞬で消滅した。
「はあ!?」
「まさかそれがアンデッドクイーンの本気とか言わないわよねぇ? 物足りないんだけど」
私が余裕たっぷりに笑うと、シュアンは満面朱を注いで、ダンッと地面を踏み鳴らした。
「このワシを愚弄するな! 最大の魔力で木端微塵にしてやるわ!!」
「最大の魔力ですって? 案外大したことないんじゃないの?」
「ば、馬鹿にしおってぇぇぇぇ!! 絶対後悔させてやる!!!」
シュアンが体内の魔力を解放すると、彼女を中心に風が吹き荒れ、渦を巻いた。
渦によって瘴気が空に舞い上がり、王都ベイオリエンスが暗闇に覆われる。
「これはさすがにまずいね。僕の魔法で防壁を張ろう」
陛下が光属性魔法で王都全体に防壁を張ってくれたけど、瘴気と接触したところから次々と防壁が崩壊していく。シュアンが本気を出している証拠だった。
でも、私の感情を高ぶらせるにはまだまだ足りない。
「シュアンってば、のじゃ口調で強キャラ感を出してるくせに、大したことないわよね。私を倒すなら、もっと魔力を高めたほうがいいんじゃない? それとも、もうバテバテなのかのう?」
「お前殺す!! 絶対殺すぅぅぅぅ!!!」
シュアンが目を血走らせて、獣のような咆哮を上げた。
放出された魔力で大地が振動し、瘴気に覆われた空から空気を切り裂くような雷鳴が響き渡る。
シュアンが魔法を発動した瞬間、私は確実に死ぬ。
「何よ……ゾクゾクきちゃうじゃない!」
私の声は興奮でうわずっていた。
身体の奥から魔力が沸々と湧き上がり、ふくれ上がった魔力は鎌となったステラに注がれる。
「さあ、本気でいくわよ! 私の魔力をすべて光属性魔法に変換して叩きこんで……いや、おっっも!?」
私は鎌を振りかぶろうとして、そのあまりの重量に悲鳴を上げた。
「な、何よこれ!? 重すぎて持ち上がらないんだけど!?」
「えへへ……魔力が増えると重くなっちゃうみたい!」
「何照れてるのよ! まずいわね、これを振るより先にあいつの魔法が完成しちゃうわ!」
「アビー様!」
シルバーの声に、私ははっと顔を上げた。
シルバーの顔には、「あなたの所有物はここにいる」とでも言いたげな、誇らしげな微笑が浮かんでいた。
「どんな無理難題でもかまいません! 何でも命令してください!」
シルバーの顔に恐れの色はない。私を信じて、命令を待っている。
もう、私ったら本当に馬鹿ね。焦る必要なんてひとつもなかったのに。
私の中から苛立ちが消えて、自然と笑みが浮かんでいた。
「シルバー! 陛下の持ち物を使ってシュアンを妨害して!」
「お任せください!」
シルバーは半裸状態の陛下のもとへ駆け寄ると、腰のあたりにだらりと垂れている衣服をつかんだ。
「ご無礼をお許しください!」
「え?」
シルバーはつかんだ衣服を勢いよくはぎ取った。ビリィィィィ! とこの国でもっとも高価な衣服が残酷な音を響かせる。
「いやぁぁぁぁ~!」
陛下は一瞬で下着姿になり、乙女のような悲鳴を上げた。その顔は心なしか嬉しそうに見えた。
「なんて思い切りがいいの! さすがは私の所有物!」
「わはー、王様ハレンチ!」
シルバーは悲鳴を上げる陛下を放置して、庭にある小さな銅像を引き抜き、陛下からはぎ取った衣服を巻きつけた。
陛下の持ち物には光属性魔法が宿っているから、シュアンは必ず反応するはず。
考えたわね、シルバー!
「こっちだ! アンデッドクイーン!」
「何!?」
シルバーはシュアンに向けて銅像を投げつけた。
シュアンは光属性魔法に反応し、銅像に向けて闇属性魔法の槍を放って砕いた。
「あ、しまった!!」
シュアンは自身の失敗に気づいて、顔をゆがませた。
そのわずかな時間を使って、私はシュアンに向けて鎌を振りかぶった。
死ぬほど重くて腕がぷるぷる震えるけど、これを今から全力でシュアンに叩きこめると思えば、どうしようもなく感情が高ぶった。
「アビーさん、準備万端だよー!」
「命乞いのセリフは考えた?」
「やっ、ま、待て!」
シュアンがうろたえた様子で、激しく首を横に振った。
私は鎌を振り下ろしながら、ステラと一緒に呪文を唱えた。
「不屈の光!」
シュアン目掛けて巨大なレーザーのような光が走る。シュアンはとっさに闇属性魔法の壁を発動させて相殺しようとしたが、光は壁を貫いて進んでいく。
「な、何じゃこの力は!? お前の魔力は確実に弱まっておったはずじゃろ!?」
「おーほほほほ!! さっさとくたばりなさーい!!」
「うぎゃあぁぁぁぁぁ!?」
シュアンは光の波にのまれて、爆発した。
その爆風で空を覆っていた瘴気は消え去り、青空が戻ってきた。
「はーい!」
箱が光って、元の武器の形に変形していく。それは、死神の鎌を思わせる漆黒の武器となった。
シュアンは驚愕し、顔色を変えた。
「そ、その武器は……」
「光属性魔法の力を感じるでしょう? そりゃそうよね、ステラは陛下と同じ力を持つ聖女だもの」
「ぐっ……じゃが、当たらなければどうってことはないぞ! 先にお前をアンデットにしてやる! 出でよ!」
シュアンが叫ぶと、地面の土を押し退けながら大量のアンデッドが出現した。
「ふははは!! 食らえ、食らえ!! その女を食い殺せ!!」
私は、こちらに向かって走ってくるアンデッドたちに向けて、鎌を横薙ぎに振った。
巨大な光の刃が走り、すべてのアンデッドたちを真っ二つに両断する。両断された者たちは、まるで水が蒸発するかのように一瞬で消滅した。
「はあ!?」
「まさかそれがアンデッドクイーンの本気とか言わないわよねぇ? 物足りないんだけど」
私が余裕たっぷりに笑うと、シュアンは満面朱を注いで、ダンッと地面を踏み鳴らした。
「このワシを愚弄するな! 最大の魔力で木端微塵にしてやるわ!!」
「最大の魔力ですって? 案外大したことないんじゃないの?」
「ば、馬鹿にしおってぇぇぇぇ!! 絶対後悔させてやる!!!」
シュアンが体内の魔力を解放すると、彼女を中心に風が吹き荒れ、渦を巻いた。
渦によって瘴気が空に舞い上がり、王都ベイオリエンスが暗闇に覆われる。
「これはさすがにまずいね。僕の魔法で防壁を張ろう」
陛下が光属性魔法で王都全体に防壁を張ってくれたけど、瘴気と接触したところから次々と防壁が崩壊していく。シュアンが本気を出している証拠だった。
でも、私の感情を高ぶらせるにはまだまだ足りない。
「シュアンってば、のじゃ口調で強キャラ感を出してるくせに、大したことないわよね。私を倒すなら、もっと魔力を高めたほうがいいんじゃない? それとも、もうバテバテなのかのう?」
「お前殺す!! 絶対殺すぅぅぅぅ!!!」
シュアンが目を血走らせて、獣のような咆哮を上げた。
放出された魔力で大地が振動し、瘴気に覆われた空から空気を切り裂くような雷鳴が響き渡る。
シュアンが魔法を発動した瞬間、私は確実に死ぬ。
「何よ……ゾクゾクきちゃうじゃない!」
私の声は興奮でうわずっていた。
身体の奥から魔力が沸々と湧き上がり、ふくれ上がった魔力は鎌となったステラに注がれる。
「さあ、本気でいくわよ! 私の魔力をすべて光属性魔法に変換して叩きこんで……いや、おっっも!?」
私は鎌を振りかぶろうとして、そのあまりの重量に悲鳴を上げた。
「な、何よこれ!? 重すぎて持ち上がらないんだけど!?」
「えへへ……魔力が増えると重くなっちゃうみたい!」
「何照れてるのよ! まずいわね、これを振るより先にあいつの魔法が完成しちゃうわ!」
「アビー様!」
シルバーの声に、私ははっと顔を上げた。
シルバーの顔には、「あなたの所有物はここにいる」とでも言いたげな、誇らしげな微笑が浮かんでいた。
「どんな無理難題でもかまいません! 何でも命令してください!」
シルバーの顔に恐れの色はない。私を信じて、命令を待っている。
もう、私ったら本当に馬鹿ね。焦る必要なんてひとつもなかったのに。
私の中から苛立ちが消えて、自然と笑みが浮かんでいた。
「シルバー! 陛下の持ち物を使ってシュアンを妨害して!」
「お任せください!」
シルバーは半裸状態の陛下のもとへ駆け寄ると、腰のあたりにだらりと垂れている衣服をつかんだ。
「ご無礼をお許しください!」
「え?」
シルバーはつかんだ衣服を勢いよくはぎ取った。ビリィィィィ! とこの国でもっとも高価な衣服が残酷な音を響かせる。
「いやぁぁぁぁ~!」
陛下は一瞬で下着姿になり、乙女のような悲鳴を上げた。その顔は心なしか嬉しそうに見えた。
「なんて思い切りがいいの! さすがは私の所有物!」
「わはー、王様ハレンチ!」
シルバーは悲鳴を上げる陛下を放置して、庭にある小さな銅像を引き抜き、陛下からはぎ取った衣服を巻きつけた。
陛下の持ち物には光属性魔法が宿っているから、シュアンは必ず反応するはず。
考えたわね、シルバー!
「こっちだ! アンデッドクイーン!」
「何!?」
シルバーはシュアンに向けて銅像を投げつけた。
シュアンは光属性魔法に反応し、銅像に向けて闇属性魔法の槍を放って砕いた。
「あ、しまった!!」
シュアンは自身の失敗に気づいて、顔をゆがませた。
そのわずかな時間を使って、私はシュアンに向けて鎌を振りかぶった。
死ぬほど重くて腕がぷるぷる震えるけど、これを今から全力でシュアンに叩きこめると思えば、どうしようもなく感情が高ぶった。
「アビーさん、準備万端だよー!」
「命乞いのセリフは考えた?」
「やっ、ま、待て!」
シュアンがうろたえた様子で、激しく首を横に振った。
私は鎌を振り下ろしながら、ステラと一緒に呪文を唱えた。
「不屈の光!」
シュアン目掛けて巨大なレーザーのような光が走る。シュアンはとっさに闇属性魔法の壁を発動させて相殺しようとしたが、光は壁を貫いて進んでいく。
「な、何じゃこの力は!? お前の魔力は確実に弱まっておったはずじゃろ!?」
「おーほほほほ!! さっさとくたばりなさーい!!」
「うぎゃあぁぁぁぁぁ!?」
シュアンは光の波にのまれて、爆発した。
その爆風で空を覆っていた瘴気は消え去り、青空が戻ってきた。
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