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第13章 鬼神、激突!
4話 この兵器を使う時がきたわね……!
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「いいよ、何でも聞いて、そして見てくれたまえ」
目の前には、衣服を脱いで大胸筋を見せつけてくる陛下の姿があった。
私は状況を確認しようと周囲を見回した。
「昼間に訪れた宮殿の庭まで戻ったのね」
「そうか……放置プレイというわけだね。高まるよ」
陛下はほんのりと目元を染めた。
「ごめんなさい、陛下。今はそれに反応する時間すら惜しいの」
「何かあったのかい?」
「はい。死んできました」
「そうか」
陛下は取り乱すこともなく、冷静に周囲を警戒した。
私は椅子から立ち上がると、背後にシルバーが控えていることを確認してから魔物封印専用ブレスレットに触れた。
「出てきなさい、シュアン」
ブレスレットが輝いて、目の前にシュアンが現れる。
彼女はいじけたように三角座りをしていたが、私の存在に気づいてあわてて立ち上がった。
「何じゃ、いきなり! そうかそうか、ようやくワシを解放する気になったか!」
強気な態度をとるシュアンだけど、私のそばに陛下がいるからか、わずかに頬が引きつっている。
私はすべてを燃やし尽くしたい衝動を抑えながら、冷たい目でシュアンを見つめて言った。
「ねえ、お前」
「お前!? 人間風情がこのワシをお前呼ばわり……」
「私を出し抜いてこの国の人間すべてをアンデッドにして、シルバーの身体を乗っ取って私を揺さぶろうとか考えてるわよね」
私がひと息に言うと、シュアンは石のように固まり、それを聞いていた陛下やシルバーは驚いて警戒を強めた。
「お、思ってないよ?」
シュアンは視線を泳がせて、両手の人差し指同士をちょんちょんと合わせた。
私はシュアンに向けて右手を突き出し、魔力を高める。
「よし、死になさい」
「待て待て! 思ってない言うたじゃろ!?」
「潔く認めなさい。こっちは全部知ってるのよ」
シュアンは肩をすくめるような仕種をして、にやっと笑った。
「バレてしまっては仕方がないのう」
シュアンはゆっくりと両手を広げた。すると、彼女の身体から赤黒い瘴気が噴き出し、瘴気に触れた庭の花が次々に枯れていく。
「お前を苦しめるためにシルバーを乗っ取ってやろうと思ったが、気が変わった。今すぐこの国を死者の国にしてやる! 命乞いをするなら聞いてやるぞ?」
「そうね。私忙しいから、命乞いをするなら早くして」
「どうしてワシがすることになっとるんじゃ!? あーもう腹が立つ!」
シュアンは、口からも赤黒い瘴気を吐き出しながら怒鳴った。
「いいか? ワシが全力を出してその半裸王を殺せば、光属性魔法が使えないお前は終わりじゃ! ほれ、犬のように四つん這いになってワシに服従しろ!」
「さっきからごちゃごちゃうるさいわね。さっさとかかってきなさいよ。ぶっ殺してあげるから」
「何じゃとぉぉぉぉ!?」
「ぶっ殺してあげるつってんのよ」
「二回も言うな! ちゃんと聞こえとるわ!!」
シュアンはムキー! っと地団駄を踏んでわめいた。
まあ、でも、シュアンの言う通りだわ。私は光属性魔法が使えない。シュアンが何とか頑張って陛下を殺せば、もう打つ手がなくなる。
とか、思ってるんでしょうね。私はひっそりと笑った。
「仕方ない……これを使う時がきたわね」
私は、テーブルに置いていた白い箱を両手で持ち上げた。意外と重い。
それを見たシュアンが、警戒するように身構えた。
「な、何じゃそれは」
「あら、あなた見てなかったの? これは陛下の魂を解放して爆発四散したステラ」
「は? 何て?」
私が箱のふたを開くと、中にすっぽりと収まっていたステラの生首が、にこにこと笑って言った。
「こんにちはー! やっと外に出してもらえた! アビーさんとお話しできる?」
「ぎゃあぁぁぁぁ!? 生首が、生首がしゃべっておるぞ!?」
「アンデッドクイーンが生首を怖がってんじゃないわよ」
「おっきなお声だねー! ツノ生えてるねー!」
怖がって叫ぶシュアンと、はしゃぐステラ。緊張感のないやりとりが繰り広げられている隙に、私はステラの状態を確認していた。うん、使用しても問題なさそう。
「ねえ、アビーさん」
箱の中にいるステラが、存在を主張するようにがたがたと動いた。
「爆発したおかげで言語能力がすこし回復したけど、この姿だとアビーさんとお話しできなくてさびしいよ」
「はいはい、手伝ってくれたらお話ししてあげるから」
「手伝う!!」
「いい子ね」
陛下にステラの世話を押しつけ……お願いされたので、身体を元に戻すまでは好きに使わせてもらおう。
シュアンは私の行動が読めないのか、気味悪そうに私を見つめている。
「ふふ、何も知らないあなたに説明してあげるわ。この箱の中にはステラの頭部とコアが入っているの。トキノキズアトでコアを持ち帰ったあと、ステラは陛下の魂を解放して爆発四散したのよ」
「待て待て、普通に説明し始めるな」
「とりあえず、原形をとどめた頭とコアを、比較的ゴーレムの素材に近い武器と融合させることで事無きを得たわ。箱に変形してるけど、元は武器なのよ」
「何を言っておるのかさっぱりわからんのじゃが!?」
「本当に? あなたを殺す武器だって言ったのよ」
シュアンの目が、すうっと細められた。
その冷たい表情を見て、身体中がぞくっとした。楽しめそうじゃない。
目の前には、衣服を脱いで大胸筋を見せつけてくる陛下の姿があった。
私は状況を確認しようと周囲を見回した。
「昼間に訪れた宮殿の庭まで戻ったのね」
「そうか……放置プレイというわけだね。高まるよ」
陛下はほんのりと目元を染めた。
「ごめんなさい、陛下。今はそれに反応する時間すら惜しいの」
「何かあったのかい?」
「はい。死んできました」
「そうか」
陛下は取り乱すこともなく、冷静に周囲を警戒した。
私は椅子から立ち上がると、背後にシルバーが控えていることを確認してから魔物封印専用ブレスレットに触れた。
「出てきなさい、シュアン」
ブレスレットが輝いて、目の前にシュアンが現れる。
彼女はいじけたように三角座りをしていたが、私の存在に気づいてあわてて立ち上がった。
「何じゃ、いきなり! そうかそうか、ようやくワシを解放する気になったか!」
強気な態度をとるシュアンだけど、私のそばに陛下がいるからか、わずかに頬が引きつっている。
私はすべてを燃やし尽くしたい衝動を抑えながら、冷たい目でシュアンを見つめて言った。
「ねえ、お前」
「お前!? 人間風情がこのワシをお前呼ばわり……」
「私を出し抜いてこの国の人間すべてをアンデッドにして、シルバーの身体を乗っ取って私を揺さぶろうとか考えてるわよね」
私がひと息に言うと、シュアンは石のように固まり、それを聞いていた陛下やシルバーは驚いて警戒を強めた。
「お、思ってないよ?」
シュアンは視線を泳がせて、両手の人差し指同士をちょんちょんと合わせた。
私はシュアンに向けて右手を突き出し、魔力を高める。
「よし、死になさい」
「待て待て! 思ってない言うたじゃろ!?」
「潔く認めなさい。こっちは全部知ってるのよ」
シュアンは肩をすくめるような仕種をして、にやっと笑った。
「バレてしまっては仕方がないのう」
シュアンはゆっくりと両手を広げた。すると、彼女の身体から赤黒い瘴気が噴き出し、瘴気に触れた庭の花が次々に枯れていく。
「お前を苦しめるためにシルバーを乗っ取ってやろうと思ったが、気が変わった。今すぐこの国を死者の国にしてやる! 命乞いをするなら聞いてやるぞ?」
「そうね。私忙しいから、命乞いをするなら早くして」
「どうしてワシがすることになっとるんじゃ!? あーもう腹が立つ!」
シュアンは、口からも赤黒い瘴気を吐き出しながら怒鳴った。
「いいか? ワシが全力を出してその半裸王を殺せば、光属性魔法が使えないお前は終わりじゃ! ほれ、犬のように四つん這いになってワシに服従しろ!」
「さっきからごちゃごちゃうるさいわね。さっさとかかってきなさいよ。ぶっ殺してあげるから」
「何じゃとぉぉぉぉ!?」
「ぶっ殺してあげるつってんのよ」
「二回も言うな! ちゃんと聞こえとるわ!!」
シュアンはムキー! っと地団駄を踏んでわめいた。
まあ、でも、シュアンの言う通りだわ。私は光属性魔法が使えない。シュアンが何とか頑張って陛下を殺せば、もう打つ手がなくなる。
とか、思ってるんでしょうね。私はひっそりと笑った。
「仕方ない……これを使う時がきたわね」
私は、テーブルに置いていた白い箱を両手で持ち上げた。意外と重い。
それを見たシュアンが、警戒するように身構えた。
「な、何じゃそれは」
「あら、あなた見てなかったの? これは陛下の魂を解放して爆発四散したステラ」
「は? 何て?」
私が箱のふたを開くと、中にすっぽりと収まっていたステラの生首が、にこにこと笑って言った。
「こんにちはー! やっと外に出してもらえた! アビーさんとお話しできる?」
「ぎゃあぁぁぁぁ!? 生首が、生首がしゃべっておるぞ!?」
「アンデッドクイーンが生首を怖がってんじゃないわよ」
「おっきなお声だねー! ツノ生えてるねー!」
怖がって叫ぶシュアンと、はしゃぐステラ。緊張感のないやりとりが繰り広げられている隙に、私はステラの状態を確認していた。うん、使用しても問題なさそう。
「ねえ、アビーさん」
箱の中にいるステラが、存在を主張するようにがたがたと動いた。
「爆発したおかげで言語能力がすこし回復したけど、この姿だとアビーさんとお話しできなくてさびしいよ」
「はいはい、手伝ってくれたらお話ししてあげるから」
「手伝う!!」
「いい子ね」
陛下にステラの世話を押しつけ……お願いされたので、身体を元に戻すまでは好きに使わせてもらおう。
シュアンは私の行動が読めないのか、気味悪そうに私を見つめている。
「ふふ、何も知らないあなたに説明してあげるわ。この箱の中にはステラの頭部とコアが入っているの。トキノキズアトでコアを持ち帰ったあと、ステラは陛下の魂を解放して爆発四散したのよ」
「待て待て、普通に説明し始めるな」
「とりあえず、原形をとどめた頭とコアを、比較的ゴーレムの素材に近い武器と融合させることで事無きを得たわ。箱に変形してるけど、元は武器なのよ」
「何を言っておるのかさっぱりわからんのじゃが!?」
「本当に? あなたを殺す武器だって言ったのよ」
シュアンの目が、すうっと細められた。
その冷たい表情を見て、身体中がぞくっとした。楽しめそうじゃない。
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