死に戻り悪役令嬢、すぐ燃える~最弱魔術師ですが『燃えると死に戻りする』を乱用して、全人類をひざまずかせます!~

屋根上花火

文字の大きさ
上 下
71 / 73
第13章 鬼神、激突!

4話 この兵器を使う時がきたわね……!

しおりを挟む
「いいよ、何でも聞いて、そして見てくれたまえ」

 目の前には、衣服を脱いで大胸筋を見せつけてくる陛下の姿があった。
 私は状況を確認しようと周囲を見回した。

「昼間に訪れた宮殿の庭まで戻ったのね」
「そうか……放置プレイというわけだね。高まるよ」

 陛下はほんのりと目元を染めた。

「ごめんなさい、陛下。今はそれに反応する時間すら惜しいの」
「何かあったのかい?」
「はい。死んできました」
「そうか」

 陛下は取り乱すこともなく、冷静に周囲を警戒した。
 私は椅子から立ち上がると、背後にシルバーが控えていることを確認してから魔物封印専用ブレスレットに触れた。

「出てきなさい、シュアン」

 ブレスレットが輝いて、目の前にシュアンが現れる。
 彼女はいじけたように三角座りをしていたが、私の存在に気づいてあわてて立ち上がった。

「何じゃ、いきなり! そうかそうか、ようやくワシを解放する気になったか!」

 強気な態度をとるシュアンだけど、私のそばに陛下がいるからか、わずかに頬が引きつっている。
 私はすべてを燃やし尽くしたい衝動を抑えながら、冷たい目でシュアンを見つめて言った。

「ねえ、お前」
「お前!? 人間風情がこのワシをお前呼ばわり……」
「私を出し抜いてこの国の人間すべてをアンデッドにして、シルバーの身体を乗っ取って私を揺さぶろうとか考えてるわよね」

 私がひと息に言うと、シュアンは石のように固まり、それを聞いていた陛下やシルバーは驚いて警戒を強めた。

「お、思ってないよ?」

 シュアンは視線を泳がせて、両手の人差し指同士をちょんちょんと合わせた。
 私はシュアンに向けて右手を突き出し、魔力を高める。

「よし、死になさい」
「待て待て! 思ってない言うたじゃろ!?」
「潔く認めなさい。こっちは全部知ってるのよ」

 シュアンは肩をすくめるような仕種しぐさをして、にやっと笑った。

「バレてしまっては仕方がないのう」

 シュアンはゆっくりと両手を広げた。すると、彼女の身体から赤黒い瘴気が噴き出し、瘴気に触れた庭の花が次々に枯れていく。

「お前を苦しめるためにシルバーを乗っ取ってやろうと思ったが、気が変わった。今すぐこの国を死者の国にしてやる! 命乞いをするなら聞いてやるぞ?」
「そうね。私忙しいから、命乞いをするなら早くして」
「どうしてワシがすることになっとるんじゃ!? あーもう腹が立つ!」

 シュアンは、口からも赤黒い瘴気を吐き出しながら怒鳴った。

「いいか? ワシが全力を出してその半裸王を殺せば、光属性魔法が使えないお前は終わりじゃ! ほれ、犬のように四つん這いになってワシに服従しろ!」
「さっきからごちゃごちゃうるさいわね。さっさとかかってきなさいよ。ぶっ殺してあげるから」
「何じゃとぉぉぉぉ!?」
「ぶっ殺してあげるつってんのよ」
「二回も言うな! ちゃんと聞こえとるわ!!」

 シュアンはムキー! っと地団駄を踏んでわめいた。
 まあ、でも、シュアンの言う通りだわ。私は光属性魔法が使えない。シュアンが何とか頑張って陛下を殺せば、もう打つ手がなくなる。

 とか、思ってるんでしょうね。私はひっそりと笑った。

「仕方ない……これを使う時がきたわね」

 私は、テーブルに置いていた白い箱を両手で持ち上げた。意外と重い。
 それを見たシュアンが、警戒するように身構えた。

「な、何じゃそれは」
「あら、あなた見てなかったの? これは陛下の魂を解放して爆発四散したステラ」
「は? 何て?」

 私が箱のふたを開くと、中にすっぽりと収まっていたステラの生首が、にこにこと笑って言った。

「こんにちはー! やっと外に出してもらえた! アビーさんとお話しできる?」
「ぎゃあぁぁぁぁ!? 生首が、生首がしゃべっておるぞ!?」
「アンデッドクイーンが生首を怖がってんじゃないわよ」
「おっきなお声だねー! ツノ生えてるねー!」

 怖がって叫ぶシュアンと、はしゃぐステラ。緊張感のないやりとりが繰り広げられている隙に、私はステラの状態を確認していた。うん、使用しても問題なさそう。

「ねえ、アビーさん」

 箱の中にいるステラが、存在を主張するようにがたがたと動いた。

「爆発したおかげで言語能力がすこし回復したけど、この姿だとアビーさんとお話しできなくてさびしいよ」
「はいはい、手伝ってくれたらお話ししてあげるから」
「手伝う!!」
「いい子ね」

 陛下にステラの世話を押しつけ……お願いされたので、身体を元に戻すまでは好きに使わせてもらおう。
 シュアンは私の行動が読めないのか、気味悪そうに私を見つめている。

「ふふ、何も知らないあなたに説明してあげるわ。この箱の中にはステラの頭部とコアが入っているの。トキノキズアトでコアを持ち帰ったあと、ステラは陛下の魂を解放して爆発四散したのよ」
「待て待て、普通に説明し始めるな」
「とりあえず、原形をとどめた頭とコアを、比較的ゴーレムの素材に近い武器と融合させることで事無きを得たわ。箱に変形してるけど、元は武器なのよ」
「何を言っておるのかさっぱりわからんのじゃが!?」
「本当に? あなたを殺す武器だって言ったのよ」

 シュアンの目が、すうっと細められた。
 その冷たい表情を見て、身体中がぞくっとした。楽しめそうじゃない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約者に見捨てられた悪役令嬢は世界の終わりにお茶を飲む

めぐめぐ
ファンタジー
魔王によって、世界が終わりを迎えるこの日。 彼女はお茶を飲みながら、青年に語る。 婚約者である王子、異世界の聖女、聖騎士とともに、魔王を倒すために旅立った魔法使いたる彼女が、悪役令嬢となるまでの物語を―― ※終わりは読者の想像にお任せする形です ※頭からっぽで

報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?

小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。 しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。 突然の失恋に、落ち込むペルラ。 そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。 「俺は、放っておけないから来たのです」 初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて―― ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!ー新たなる王室編ー

愚者 (フール)
恋愛
無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! 幼女編、こちらの続編となります。 家族の罪により王から臣下に下った代わりに、他国に暮らしていた母の違う兄がに入れ替わり玉座に座る。 新たな王族たちが、この国エテルネルにやって来た。 その後に、もと王族と荒れ地へ行った家族はどうなるのか? 離れて暮らすプリムローズとは、どんな関係になるのかー。 そんな彼女の成長過程を、ゆっくりお楽しみ下さい。 ☆この小説だけでも、十分に理解できる様にしております。 全75話 全容を知りたい方は、先に書かれた小説をお読み下さると有り難いです。 前編は幼女編、全91話になります。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。

りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。 やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか 勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。 ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。 蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。 そんな生活もううんざりです 今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。 これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

処理中です...