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第12章 対決、神官長アリーズ!
4話 退いてくれないか? そこは僕の場所だ
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「さて、これでアリーズは無力化できたわけだけど」
私は全裸で床に這いつくばるアリーズから、宣言の座にしがみついているテンペスタに視線を向けた。
こいつをどうしようかしら、と思案していると、廊下のほうから靴音が近づいてきた。
「身も心も必要以上に痛めつけて屈服させる。プレイも派手であきさせないところは、さすが女王様と言ったところだね」
ぼろぼろになった会議室に、ひとりの美男子が現れた。彼は私を見て、楽しそうに微笑んでいる。
「え!? へ、陛下!?」
「やあ、ヘリオス。相変わらず禁欲的なファッションだね。セクシーを感じるよ」
「本物だー!」
ヘリオス様は歓喜し、テンペスタは幽霊でも見たように青ざめた。
「あ、兄上!?」
「やあ、テンペスタ、元気そうだね」
「どういうことだ、アリーズ! 兄上は死んだと、そう言っていたじゃないか!!」
「馬鹿な……そんなはずは……」
アリーズは身体をがくがくと震わせて、浅い呼吸を繰り返した。
陛下はアリーズを無視して、テンペスタに微笑みかけた。
「見ての通り僕は生きている。だから退いてくれないか? そこは僕の場所だ」
テンペスタは声にならない悲鳴を上げた。
陛下は微笑んでいるけれど、その目はひどく冷たい。
「連れていけ」
神官たちは、戦意喪失して抜け殻のようになったテンペスタを、会議室の外へと連れていった。
陛下はその背中を見送ってから、宣言の座に腰を下ろした。
ただそれだけのことなのに、場の空気がすっと引き締まる。
「では話を聞こうか、アリーズ。僕を殺害したのはきみだね。対策していなかったら本当に死んでいたよ」
アリーズは全裸のまま、あわてて陛下の前にひざまずいた。
「陛下、此度の計画を企てたのはテンペスタ様でございます! 私は家族を人質にとられて、従うほかなく……」
「首謀者はきみではないと?」
「ええ、誓って、そのようなことは!! 陛下を手にかけたのもテンペスタ様でございます!!」
自分は被害者だと必死に訴えるアリーズに、私は心底うんざりした。
王を殺したことを認めれば、死んだほうがましと言われている極刑「ナラカの裁き」を受けることになる。さすがのアリーズも、その刑だけは免れたいと考えているらしい。
「何を言ったって無駄よ。さっさと認めて、裁きを受けなさいよ」
アリーズは息を吹き返したように、鋭く私をにらみつけた。
何だこいつ、全裸のくせに。
「証拠はどこにあるのだ? 私が陛下を手にかけたという証拠は!」
「何とここにございます」
壊れた壁の向こうからシャリスが現れた。
彼は白い布で包まれた何かを抱えている。それを見たアリーズは、さっと顔色を変えた。
「そ、それは!」
「アリーズ邸で見つけました。アリーズさんの指紋と陛下の血痕がべったりとついた魔剣です」
シャリスが白い布をめくると、そこには乾いた血で汚れた短剣があった。
「強力な魔剣のため、自然治癒能力が高い相手でも殺害できます。ただ、強力な魔剣ゆえに簡単に処分することができず、屋敷内に隠すしかなかったようですね」
「ぐっ……くそ……」
アリーズが悔しげに歯噛みをした。
ヘリオス様は安堵したように表情をゆるめる。
「シャリス、間に合ったか!」
「ええ、何とか。ということでアリーズを逮捕します。って、どうしてこの人全裸なんですか?」
ヘリオス様は複雑な表情を浮かべて、視線をそらした。
「それは、その、色々あってな」
「はあ、そうですか」
シャリスは興味なさそうに、アリーズを後ろ手に拘束した。
「それはそうと、また会いましたね、アビゲイルさん」
シャリスは、私の隣にいたシルバーやフロストたちの存在を完全に無視して、私に声をかけてきた。
「ええ、そうね。私がアリーズを裁いてやろうと思ったのに、あなたに美味しいところを持っていかれたわ」
「ほら、やっぱり死んでない」
「ん? 何の話?」
「いえ、こちらの話です」
シャリスはなぜか満足そうに目を細めた。それを見たシルバーが苛立った様子ですかさず言った。
「アビー様に話しかけないでください」
「はあ? わざわざあなたの許可が必要だとでも?」
お互いの殺気をぶつけ合いながら、ふたりはにらみ合った。
このふたり、いつか本気で戦わせてみたいわね。
「くそ、くそ! こんなはずではなかったのに! この女さえ殺していれば!」
拘束されたアリーズは往生際悪く叫んだ。
私は余裕たっぷりに微笑みながら、アリーズの顔を覗きこんで言った。
「檻の中はさぞ退屈でしょうね。たまには私がオモチャで遊んであげてもいいわよ? おーほほほほ!!」
アリーズは屈辱に顔をゆがめながら、全裸のままシャリスに連行されていった。
私は全裸で床に這いつくばるアリーズから、宣言の座にしがみついているテンペスタに視線を向けた。
こいつをどうしようかしら、と思案していると、廊下のほうから靴音が近づいてきた。
「身も心も必要以上に痛めつけて屈服させる。プレイも派手であきさせないところは、さすが女王様と言ったところだね」
ぼろぼろになった会議室に、ひとりの美男子が現れた。彼は私を見て、楽しそうに微笑んでいる。
「え!? へ、陛下!?」
「やあ、ヘリオス。相変わらず禁欲的なファッションだね。セクシーを感じるよ」
「本物だー!」
ヘリオス様は歓喜し、テンペスタは幽霊でも見たように青ざめた。
「あ、兄上!?」
「やあ、テンペスタ、元気そうだね」
「どういうことだ、アリーズ! 兄上は死んだと、そう言っていたじゃないか!!」
「馬鹿な……そんなはずは……」
アリーズは身体をがくがくと震わせて、浅い呼吸を繰り返した。
陛下はアリーズを無視して、テンペスタに微笑みかけた。
「見ての通り僕は生きている。だから退いてくれないか? そこは僕の場所だ」
テンペスタは声にならない悲鳴を上げた。
陛下は微笑んでいるけれど、その目はひどく冷たい。
「連れていけ」
神官たちは、戦意喪失して抜け殻のようになったテンペスタを、会議室の外へと連れていった。
陛下はその背中を見送ってから、宣言の座に腰を下ろした。
ただそれだけのことなのに、場の空気がすっと引き締まる。
「では話を聞こうか、アリーズ。僕を殺害したのはきみだね。対策していなかったら本当に死んでいたよ」
アリーズは全裸のまま、あわてて陛下の前にひざまずいた。
「陛下、此度の計画を企てたのはテンペスタ様でございます! 私は家族を人質にとられて、従うほかなく……」
「首謀者はきみではないと?」
「ええ、誓って、そのようなことは!! 陛下を手にかけたのもテンペスタ様でございます!!」
自分は被害者だと必死に訴えるアリーズに、私は心底うんざりした。
王を殺したことを認めれば、死んだほうがましと言われている極刑「ナラカの裁き」を受けることになる。さすがのアリーズも、その刑だけは免れたいと考えているらしい。
「何を言ったって無駄よ。さっさと認めて、裁きを受けなさいよ」
アリーズは息を吹き返したように、鋭く私をにらみつけた。
何だこいつ、全裸のくせに。
「証拠はどこにあるのだ? 私が陛下を手にかけたという証拠は!」
「何とここにございます」
壊れた壁の向こうからシャリスが現れた。
彼は白い布で包まれた何かを抱えている。それを見たアリーズは、さっと顔色を変えた。
「そ、それは!」
「アリーズ邸で見つけました。アリーズさんの指紋と陛下の血痕がべったりとついた魔剣です」
シャリスが白い布をめくると、そこには乾いた血で汚れた短剣があった。
「強力な魔剣のため、自然治癒能力が高い相手でも殺害できます。ただ、強力な魔剣ゆえに簡単に処分することができず、屋敷内に隠すしかなかったようですね」
「ぐっ……くそ……」
アリーズが悔しげに歯噛みをした。
ヘリオス様は安堵したように表情をゆるめる。
「シャリス、間に合ったか!」
「ええ、何とか。ということでアリーズを逮捕します。って、どうしてこの人全裸なんですか?」
ヘリオス様は複雑な表情を浮かべて、視線をそらした。
「それは、その、色々あってな」
「はあ、そうですか」
シャリスは興味なさそうに、アリーズを後ろ手に拘束した。
「それはそうと、また会いましたね、アビゲイルさん」
シャリスは、私の隣にいたシルバーやフロストたちの存在を完全に無視して、私に声をかけてきた。
「ええ、そうね。私がアリーズを裁いてやろうと思ったのに、あなたに美味しいところを持っていかれたわ」
「ほら、やっぱり死んでない」
「ん? 何の話?」
「いえ、こちらの話です」
シャリスはなぜか満足そうに目を細めた。それを見たシルバーが苛立った様子ですかさず言った。
「アビー様に話しかけないでください」
「はあ? わざわざあなたの許可が必要だとでも?」
お互いの殺気をぶつけ合いながら、ふたりはにらみ合った。
このふたり、いつか本気で戦わせてみたいわね。
「くそ、くそ! こんなはずではなかったのに! この女さえ殺していれば!」
拘束されたアリーズは往生際悪く叫んだ。
私は余裕たっぷりに微笑みながら、アリーズの顔を覗きこんで言った。
「檻の中はさぞ退屈でしょうね。たまには私がオモチャで遊んであげてもいいわよ? おーほほほほ!!」
アリーズは屈辱に顔をゆがめながら、全裸のままシャリスに連行されていった。
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