死に戻り悪役令嬢、すぐ燃える~最弱魔術師ですが『燃えると死に戻りする』を乱用して、全人類をひざまずかせます!~

屋根上花火

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第7章 対決! 3人の十二神!

6話 パロットと楽しい地獄の追いかけっこ!

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 僕は初歩的な風属性魔法で両手を拘束する縄を切ると、ベルトに吊り下げていた小さな鳥かご型の魔道具をつかんだ。
 魔法を使ってアビーを始末してやってもいいが、せっかくだし、王都から持ってきたこの魔道具を使ってやる。

「僕を侮辱した罰を与えてやる! そんなに優秀なら解除してみろよ、無能!!」

 アビーの足元に魔道具を放り投げると、魔道具が壊れて、中に封じこめられていた青い炎がアビーや村人たちを包みこんだ。
 村人たちは悲鳴を上げて、炎から逃れようと後ずさりする。

「その青い炎に触れると身体が腐って死ぬぞ! この僕を馬鹿にした天罰を受けろ! あははは!!」

 あの炎の向こうで、アビーがもだえ苦しんでいると思うと、笑いが止まらなかった。
 その時、青い炎の中から何かが飛び出してきた。それは青い炎をまとって、僕の右腕に突き刺さる。
 フォークである。

「ぎゃあ!? な、何でこんなものが!?」

 あわててフォークを引き抜いたが、傷口には青い炎が付着していて、あっという間に皮膚を腐らせていく。

「あ、あ、うわぁぁぁぁ!?」

 腕が腐る痛みと恐怖から、僕はその場から逃げ出していた。
 廊下を走りながら右腕を見ると、傷口を中心として周囲の皮膚が黒く変色していた。
 じわじわと色が広がるたびに、針で刺されたような激痛が走る。

「痛い! めちゃくちゃ痛いよぉ! どうしてこの僕が、こんな目に遭うんだよ!!」

 腕がちぎれてしまいそうな痛みに涙が浮かぶ。腐り落ちてしまったらどうしよう!

「うう、ちくしょう! アビーを始末して、それで終わりだったのに!」

 ひとまずラヴァと合流するか? いや、その前に僕が死ぬ! どうにかして、自力で解除するしかない。

「お待ちになってー!」
「は!?」

 背後から、聞こえるはずのない声が聞こえた。
 視線だけで振り返ると、何か大きな塊がすぐ後ろに迫っていて、勢いよく僕の背中に激突した。肉がえぐられて、その衝撃で呼吸が止まる。

「がはぁっ!?」

 何が起きたのかわからないまま、僕は激しく床に転がった。

「あら、これで死なないなんて、さすがは十二神ねぇ! 見直したわよクソ羽虫野郎!」

 必死に酸素を吸いこみながら顔を上げると、目の前には巨大な岩のようなゴーレムが立っていた。その肩に、アビーと従者の男が座っている。

「ア、アビー!? 何で生きているんだ!?」
「おーほほほほ! あんなガラクタで殺せると思ったの? 甘く見られたものね」
「く、来るな! 離れ飛び立てアポフライ!」

 俺は空を飛ぶ魔法を使い、アビーたちから距離をとった。天井が高くて助かった。
 だが、アビーはにやりと笑って言った。

「飛べ」

 ゴーレムが宙に浮いて、こちらに突進してくる。

「ふ、ふざけるな!! そんなの反則だろ!?」
「逃げても無駄無駄ぁ! 今すぐねじこんであげるわ!!」
「ぐはぁっ!!!」

 突進してきたゴーレムに腹をえぐられ、一瞬視界が真っ白に染まった。腹の奥から何かが逆流してくる。

「げほっ、ごほぉっ!」

 僕は胃の中のものをすべて吐き散らしながら、飛んで逃げた。しかし、アビーはゴーレムを飛ばして執拗しつように追いかけてくる。

「どこに行くつもり? お待ちになって~!」
「ゆ、許してくれぇぇぇぇ!」

 僕は半泣きになりながら、必死に逃げた。

「悪気はなかったんだよ! 僕はグロウスの命令でお前を殺せって言われただけなんだ!信じてくれ!」
「まぁぁ、そうなの? こっちは悪気しかないけどねぇ! とっておきをぶちこんでやるわよ~!!」
「うわぁぁぁぁ! もうやめてくれぇぇぇぇ!!」

 僕が廊下の曲がり角を曲がると、小回りの利かないデカブツゴーレムは、そのまま直進して壁を突き破った。
 壁が崩れて、天井が激しく揺れる。

「も、もしかして、逃げ切った?」

 舞い上がった砂埃のせいで視界が悪いが、アビーたちが追ってくる気配はない。きっとぶつかった衝撃で気絶したか、死んだのかもしれない。

「やった……やったぞ! 本気で僕に勝てると思ってたのかよ、クソ無能! 一生瓦礫がれきに埋まってろ!」
 
 僕が歓喜の叫びを上げると、なぜか背後の壁が崩壊し、崩れた壁の向こうからゴーレムが現れた。その肩に座っていたアビーが、僕を見下ろしてにこにこと微笑んでいる。

「待った?」
「いやぁぁぁぁ!?」
「おーほほほほ!!」

 ゴーレムが突進してくる。その悪夢のような光景が、僕にはコマ送りのようにゆっくりとして見えた。
 僕はこれから訪れる激痛と恐怖に、心の底から絶叫し、絶望した。
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