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第5章 十二神襲撃!

5話 フロストを飼いましょう!

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「あらあら、どーしたのかしら? ぷるぷる震えちゃってお可哀想」

 私が哀れむような視線を向けると、フロストは顔を真っ赤にして地団駄を踏んだ。

「だ、黙れ! お、俺をだまそうとしても無駄だ!!」
「真実から目を背けないでいただきたいわねぇ。腐っても十二神でしょう?」
「き、貴様っ」

 その時、シルバーが動いた。
 完全に不意打ちだったはずだけど、そこはさすがの十二神。フロストは素早く氷属性魔法を発動させていた。

青き毒花の氷柱カルコスアイシクル!」

 シルバーの頭上に巨大な氷柱つららが無数に出現し、行く手をはばむように落下する。

「シルバー! その氷は……」
「毒でしょう。においでわかります」

 氷の雨を避けたシルバーは、砕けた毒の氷の欠片かけらを手に取って、フロストに投げつけた。
 手袋をしてるからって無茶するわね!? 見ているこっちが冷や冷やする。

「なっ!?」

 フロストは毒の氷を間一髪でかわした。
 シルバーはその隙を見逃さず、獲物を狙う狩人かりゅうどのように接近し、フロストの顔面に回し蹴りをお見舞いした。

「があっ!!」

 フロストが宙を舞っている間、シルバーは呆然と空を見上げているフロストの部下たちを殴って、蹴って、踏みつけて、一方的な暴力で制圧した。瞬殺だった。

「やだ、私の所有物超つよーい!!」

 シルバーが私に向き直り、うやうやしく一礼する。その背後で、フロストが地面に落下した。

「シルバー、よくやったわ!」

 私が屋根から飛び降りると、待ち構えていたシルバーに抱き留められた。そっと地面に降ろされる。

「アビー様があの男の動揺を誘ってくれましたからね」
「ふふ、あれはただの嫌がらせ。すべてあなたの実力よ。褒めてあげる!」
「光栄です」

 シルバーが嬉しそうに目を細めた。あとでいっぱいご褒美をあげないと。

「さて、この水晶玉の出番かしらね」

 右手に水晶玉を持ちながら、わざと靴音を立ててフロストに近づく。フロストは倒れたままひどく怯えた顔をした。

「や、やめてくれアビー! 全身が痛くて動けないんだ、助けてくれ」
「私を始末すると息巻いていたあの勢いはどうしたの? 無能で頭の悪い女に助けを求めるなんて、恥ずかしくないの~?」
「そ、それは……すまない、どうか許して……謝罪するから……」

 フロストは、口ではそんなことを言いながら、すこしずつ魔力を高めていた。

「あきれた。こいつ、魔法で反撃する気満々じゃない」
 
 気づいてないとでも思っていたのか、フロストはびくっと身体を震わせて、視線を泳がせた。
 私はにこにこと微笑みながら、水晶玉を持った右手を振り上げる。

「反省する気ゼロのお馬鹿さん! その無駄に綺麗な顔をボッコボコにしてさしあげるわねぇぇぇぇ!!」
「え、ちょ、待っ」

 私はその水晶玉を、ありったけの怒りと力をこめてフロストの顔面に叩きこんだ。
 メキョドゴォッ! とすごい音を立てて、フロストの顔がぺしゃんこに潰れた。

「ぐがっ!!」
「おーほほほほ!! 無様、無様ぁ!! もっと男前にしてさしあげるわよ!! ほらっ、ほら~~!!」
「うげっ、うごっ」
「さすがアビー様。もっとリズムカルに」
「いいわよ! それっ、それ~~!!」
「ふがっ、ふごっ」

 何だか楽しくなってきて、何度も何度も叩きつけていると、血で汚れた水晶玉が星のように輝き始めた。
 その光に引き寄せられるように、フロストの身体がすーっと水晶玉の中に吸いこまれて消えた。

「あ、吸いこまれちゃった。ああ、なるほど、何となく操作がわかるわ。水晶玉で捕まえた十二神は自由に出し入れして使役(しえき)させることができるのね。これがあれば、十二神を思いのままに操れるわ!」

 私が水晶玉を掲げてはしゃいでいると、シルバーが首をかしげた。

「アビー様、それは何ですか? というか、いつの間にそんなものを……」
「いいでしょ、これ。私の新しい武器よ!」
「なるほど?」
「武器にするのはいいけど、持ち運びが不便ね。ウーちゃん、持ち運びしやすい形にできないかしら?」
「誰ですか」

 ダメ元で話しかけると、水晶玉がぱっと細かく砕けて、私の右手に吸いこまれた。すると、右手の甲に牛頭を思わせる紋章が浮かび上がった。

「何これ、強そうでかっこいいじゃない!」

 素直に喜んでいると、目の前に光る文字が現れた。
 シルバーがぎょっと目を見開く。

『ありがとー(≧∀≦) 十二神の名前を唱えると、十二神が召喚できるよ♪』

 めっちゃ機嫌良さそう。ウーちゃんって呼ばれるのが嬉しいのかも。

「わかった、それっぽく名前を唱えればいいのね。出でよ、第九の守護者フロスト!」

 右手を突き出して名前を唱えると、紋章が光って、そこからカードが出現した。カードには剣を掲げたフロストが描かれている。
 カードが燃えると、地面に倒れた状態のフロストが現れた。顔がボコボコにれて、気を失っている。

「なるほど、こんな感じか。戻っていいわよ」

 フロストの身体は、私の紋章に吸いこまれるようにして消えた。

「何これ、ものすごく楽しいわ! これがあれば、これから襲撃してくる十二神を捕まえることができるわね!」
「他の十二神も襲撃してくるのですか?」
「多分ね。フロストが帰らないと知ったら、他の十二神が差し向けられるはずよ」

 私はワクワクしながら右手の紋章をなでた。

「さあ、おいで十二神。私が大切に飼ってあげるわよ!」
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