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第2章 国外追放ありがとう
4話 最強の所有物と新魔法誕生よ!
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部屋に戻ると、例の少年が扉を開けて出迎えてくれた。
「アビー様、おかえりなさいませ」
「ただいま、シルバー」
シルバーと呼ばれた少年は、お人形のように整った顔に微笑みを浮かべた。
艶のある灰色の髪に、陶器のように美しい肌。清潔感のある高価な服。背が伸びてすらりとした体形に、衣服越しにもわかる鍛えられた身体。
この私が、一カ月で仕上げた最高傑作!
私が椅子に座ると、シルバーは慣れた手つきで紅茶を淹れてくれた。
「あなた、下僕時代と比べると、見違えるほど綺麗になったわね。たくさん食べさせたかいがあったわ!」
「おかげさまで、ここまで育ちました。十二神ぶっ倒します」
シルバーはそう言って拳をにぎって見せた。物騒なところも私好み。
「ふふ、あなた最高ね!」
「お褒めに預かり光栄です」
シルバーはうやうやしく一礼した。
彼はオニュクス族という、とても珍しい戦闘民族の生き残りらしい。魔法はほとんど使えないけど、その肉体で十二神を壊滅状態に追いこんだという伝説が残っている。
私は、あの処刑台でのシルバーの活躍を思い出して、小さく笑った。
「そりゃ強いわけよね。あなたを鍛えたら、十二神が束になって襲いかかってきたとしても絶対に勝てるわ」
「はい、当然です」
「私に似て自負心が強めでいいわね!」
オニュクス族は主人に忠実だから、シルバーの大好物である甘い物という報酬さえ切らさなければ、私に従ってくれるはず。
彼は私の一番の戦力だ。
「あ、そうそう、私って王都から追放されるの」
「は?」
近くのカフェに行くかのような気軽さで切り出せば、シルバーはきょとんとした表情をした。
「ちなみに場所は魔術師の墓場よ」
「はあ~~~~?」
シルバーの青い瞳が星のように輝いて、目の下に黒い縞模様が現れた。興奮すると光るこの瞳と、この縞模様がオニュクス族の特徴らしい。
シルバーの唇から、激しい歯ぎしりの音とうなり声か漏れた。
「アビー様、その指示を出したクソ野郎を始末して参ります!」
シルバーはそう息巻いて、部屋を飛び出そうとした。
「待ちなさい、シルバー! 落ち着きなさい」
「しかし……」
シルバーは不満そうな顔をして立ち止まった。
この子、私に似て沸点が低いから、グロウスを殺しちゃうと思って連れていかなかったのよね。
ま、私はあいつをニ回燃やしてやったけどね!
「これは好機よ、シルバー。私はね、私を侮辱する全人類をひざまずかせたいの。これはそのための第一歩なのよ!」
「しかし、魔術師の墓場は危険な場所ですよ」
「それが何よ。あなたを連れていくから問題ないでしょ?」
「え?」
シルバーは目をみはって、それからほんのすこし表情をゆるめた。
「ええ、もちろんです、あなたについていきますよ。地獄の果てまでも」
「重い! けど、そこがいいわ! ついていらっしゃい、立ち止まってはあげないけどね! おーほほほほ!!」
「アビー様、あまり大声を出すと喉を痛めますよ」
「こんなことで痛むほど、やわな喉じゃなくってよ~!」
私は椅子から立ち上がり、十二神殿がある方角に向かって叫んだ。
「今に見てなさいよ、クソヅラ野郎と十二神、あと聖女! これからは私の時代よ! おーほほほほ!!」
「ああ、もう……蜂蜜用意しとくか。もっと自分の身体を大切にしてくださいよ」
シルバーはあきれたようにつぶやいたけど、その表情はちょっと楽しそうに見えた。
わかるわよ。私だって旅立ちが待ち遠しいもの。
その日の夜。私は旅支度を終えて中庭を散歩していた。
「私の魔法や、死に戻りの内容について整理しないとね。重要なのは大きくふたつ」
私の激しい怒りや殺意に反応して、自分を燃やすほどの強力な火属性魔法が発動するということ。
燃えると過去へ死に戻りして、正しい選択をしなければ時が進まないということ。
「うーん、この死に戻りの力って何なのかしら……というか、これは私のもうひとつの魔法なの?」
何度考えても答えは出ない。
私は早々にあきらめて、今ある力に意識を向けることにした。
「王都ベイオリエンスから魔術師の墓場までは五日ほどかかるし、その間に、私自身の武器も磨かないとね」
この死に戻りが発動したその日から、私の魔法は確実に威力を増している。
怒りの感情が高まったことで威力が増したのだとすれば、この感情さえ制御できれば強力な武器にできる。
「そうだわ! 今までは怒りでしか発動しなかったけど、今なら別の感情でも発動するかも!」
私の期待に反応して、私の身体が淡く光り輝いた。指先から魔力の粒子があふれて、花火のようにパチパチと弾ける。
それは、火属性の魔法ではない、新たな力だった。
「アビー様、おかえりなさいませ」
「ただいま、シルバー」
シルバーと呼ばれた少年は、お人形のように整った顔に微笑みを浮かべた。
艶のある灰色の髪に、陶器のように美しい肌。清潔感のある高価な服。背が伸びてすらりとした体形に、衣服越しにもわかる鍛えられた身体。
この私が、一カ月で仕上げた最高傑作!
私が椅子に座ると、シルバーは慣れた手つきで紅茶を淹れてくれた。
「あなた、下僕時代と比べると、見違えるほど綺麗になったわね。たくさん食べさせたかいがあったわ!」
「おかげさまで、ここまで育ちました。十二神ぶっ倒します」
シルバーはそう言って拳をにぎって見せた。物騒なところも私好み。
「ふふ、あなた最高ね!」
「お褒めに預かり光栄です」
シルバーはうやうやしく一礼した。
彼はオニュクス族という、とても珍しい戦闘民族の生き残りらしい。魔法はほとんど使えないけど、その肉体で十二神を壊滅状態に追いこんだという伝説が残っている。
私は、あの処刑台でのシルバーの活躍を思い出して、小さく笑った。
「そりゃ強いわけよね。あなたを鍛えたら、十二神が束になって襲いかかってきたとしても絶対に勝てるわ」
「はい、当然です」
「私に似て自負心が強めでいいわね!」
オニュクス族は主人に忠実だから、シルバーの大好物である甘い物という報酬さえ切らさなければ、私に従ってくれるはず。
彼は私の一番の戦力だ。
「あ、そうそう、私って王都から追放されるの」
「は?」
近くのカフェに行くかのような気軽さで切り出せば、シルバーはきょとんとした表情をした。
「ちなみに場所は魔術師の墓場よ」
「はあ~~~~?」
シルバーの青い瞳が星のように輝いて、目の下に黒い縞模様が現れた。興奮すると光るこの瞳と、この縞模様がオニュクス族の特徴らしい。
シルバーの唇から、激しい歯ぎしりの音とうなり声か漏れた。
「アビー様、その指示を出したクソ野郎を始末して参ります!」
シルバーはそう息巻いて、部屋を飛び出そうとした。
「待ちなさい、シルバー! 落ち着きなさい」
「しかし……」
シルバーは不満そうな顔をして立ち止まった。
この子、私に似て沸点が低いから、グロウスを殺しちゃうと思って連れていかなかったのよね。
ま、私はあいつをニ回燃やしてやったけどね!
「これは好機よ、シルバー。私はね、私を侮辱する全人類をひざまずかせたいの。これはそのための第一歩なのよ!」
「しかし、魔術師の墓場は危険な場所ですよ」
「それが何よ。あなたを連れていくから問題ないでしょ?」
「え?」
シルバーは目をみはって、それからほんのすこし表情をゆるめた。
「ええ、もちろんです、あなたについていきますよ。地獄の果てまでも」
「重い! けど、そこがいいわ! ついていらっしゃい、立ち止まってはあげないけどね! おーほほほほ!!」
「アビー様、あまり大声を出すと喉を痛めますよ」
「こんなことで痛むほど、やわな喉じゃなくってよ~!」
私は椅子から立ち上がり、十二神殿がある方角に向かって叫んだ。
「今に見てなさいよ、クソヅラ野郎と十二神、あと聖女! これからは私の時代よ! おーほほほほ!!」
「ああ、もう……蜂蜜用意しとくか。もっと自分の身体を大切にしてくださいよ」
シルバーはあきれたようにつぶやいたけど、その表情はちょっと楽しそうに見えた。
わかるわよ。私だって旅立ちが待ち遠しいもの。
その日の夜。私は旅支度を終えて中庭を散歩していた。
「私の魔法や、死に戻りの内容について整理しないとね。重要なのは大きくふたつ」
私の激しい怒りや殺意に反応して、自分を燃やすほどの強力な火属性魔法が発動するということ。
燃えると過去へ死に戻りして、正しい選択をしなければ時が進まないということ。
「うーん、この死に戻りの力って何なのかしら……というか、これは私のもうひとつの魔法なの?」
何度考えても答えは出ない。
私は早々にあきらめて、今ある力に意識を向けることにした。
「王都ベイオリエンスから魔術師の墓場までは五日ほどかかるし、その間に、私自身の武器も磨かないとね」
この死に戻りが発動したその日から、私の魔法は確実に威力を増している。
怒りの感情が高まったことで威力が増したのだとすれば、この感情さえ制御できれば強力な武器にできる。
「そうだわ! 今までは怒りでしか発動しなかったけど、今なら別の感情でも発動するかも!」
私の期待に反応して、私の身体が淡く光り輝いた。指先から魔力の粒子があふれて、花火のようにパチパチと弾ける。
それは、火属性の魔法ではない、新たな力だった。
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