ダークヘイヴン

星島新吾

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1章:荒涼たる故郷

14.金のない奴ら

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ドワーフの国へ向かうメンバーが集まるの待つ間、邸に戻って持っていく書類をまとめていると、泣きはらした顔でカレンスが書斎にやって来た。 

「小父様。今から取引先の商人ともう一度話をして来ようと思います」 

覚悟が決まったのか、彼女の声には力が籠っていた。 

この短時間でよくもすぐに立ち直れたものだ。その点ではボルより優秀らしい。 

「どこにいるか知っているのかい」 

「いえ、ですが必ず見つけて見せます」 

商人のザリンはドワーフの国にいると分かり、今からそこへいく事を伝えると彼女もついて来ると言い出した。 

「俺達の航路は波が高くて海に落ちることもあるんだよ?」 

「だとしても、私が行くべきだと思います」 

彼女は知らない。いつも海賊の俺達が航海している海域は軍艦や民間船が通らない危険な海だ。 

風が強く波が高いため、あっという間に目的につく分、到着の間に船から一人二人が消えることもよくある話。しかもそれに乗っているのは海の荒くれ者どもだ。とてもじゃないが処女の子が旅できる環境じゃない。 

「襲われるから止めておこうよ」 

「ノイアも行くので大丈夫です」 

後ろで控えているノイアがビックリした顔でカレンスを見つめている。どうやら彼女も初耳らしい。しかし彼女が来たところで状況はより悪くなるだけだ。 

「ダメ」 

「止められても行きます。もう決めたんです」 

彼女の覚悟は決まっているようだが、俺の覚悟が出来ていなかった。 

「でもカレンス、聞いて欲しいんだけどさ、領地に統治者がいないのはちょっと問題があると思わないかい?日帰りで行って帰って来られるような距離じゃないんだよ?」 

「ですが…」 

何が彼女にそれほどの行動力を生ませているのだろう。やはり仕事に対する責任感からだろうか。 

「じゃあ、こうしよう。俺はザリンさんをつれてくるだけ。交渉はカレンスに全部任せる。これならどうだろう」 

面倒事はコチラに任せて、大事な仕事を彼女に任せる。そうすれば彼女は納得してくれるかもしれないと思いご機嫌を伺う。 

「そう言う事なら…」 

カレンスは何とか渋々了承してくれた。 

「よかった。じゃあザリン君をつれてくるね」 

なんとか説得することに成功し、邸をでて船に戻った。 

港ではすでにメンバー達は再集結を終えたようだった。声をかけてからまだ三十分ちょっとしかかかっていないのにどういう事だろうか。 

「どうしたんだい君達、ヤケに準備が早いじゃないか」 

甲板で荷を船に乗せているメンバーを見ながら感心していると、サーティンが後ろから声をかけてきた。 

「冬の蓄えを切らしたヤツらが集まったんだ。ダークヘイヴンの色町で全部使っちまったらしい」 

そんなバカなと思ったが、ココにいる全員冬が来る前に風俗に金をつぎ込んでしまい無一文らしかった。 

「冬越しに渡した一千万シリン、全部風俗に使ってしまったのかい」 

そう聞くと船員達は口々に、 

「いや…その、船長…。船長は知らんかもですが、嬢とやるだけじゃないですよ」「そうそう!嬢と酒場で飲むにも金がいるんです!」「特に高級娼婦ともなりゃあ連れ出すのに青天井に金がいるんでさぁ!」「船長~金稼がせてくだせぇ~」と言った。 

船員達が『うえーん』と泣き真似をするのを見て、こいつらは本当にクソだと思いつつ、一番金がない辛い時に俺を頼って来る可愛い奴らだと思い、全員船に乗せてやることにした。 

「ドワーフの国に行く途中に船見つけたら片っ端から襲おうか。秋にはアヘンとか銀を運ぶ船が多いことだし、小遣い稼ぎにはなるだろうさ」 

「「「船長俺達一生ついていきます!」」」 

「皆さん早く堅気の仕事を出来るようになってくださいね」 

「「「…………‥‥」」」 

そう言うと聞こえているだろうに誰も返事を返さなかった。 

こいつらはドワーフの国に置いて帰ろうと思う。 
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