14 / 23
1章:荒涼たる故郷
14.金のない奴ら
しおりを挟む
ドワーフの国へ向かうメンバーが集まるの待つ間、邸に戻って持っていく書類をまとめていると、泣きはらした顔でカレンスが書斎にやって来た。
「小父様。今から取引先の商人ともう一度話をして来ようと思います」
覚悟が決まったのか、彼女の声には力が籠っていた。
この短時間でよくもすぐに立ち直れたものだ。その点ではボルより優秀らしい。
「どこにいるか知っているのかい」
「いえ、ですが必ず見つけて見せます」
商人のザリンはドワーフの国にいると分かり、今からそこへいく事を伝えると彼女もついて来ると言い出した。
「俺達の航路は波が高くて海に落ちることもあるんだよ?」
「だとしても、私が行くべきだと思います」
彼女は知らない。いつも海賊の俺達が航海している海域は軍艦や民間船が通らない危険な海だ。
風が強く波が高いため、あっという間に目的につく分、到着の間に船から一人二人が消えることもよくある話。しかもそれに乗っているのは海の荒くれ者どもだ。とてもじゃないが処女の子が旅できる環境じゃない。
「襲われるから止めておこうよ」
「ノイアも行くので大丈夫です」
後ろで控えているノイアがビックリした顔でカレンスを見つめている。どうやら彼女も初耳らしい。しかし彼女が来たところで状況はより悪くなるだけだ。
「ダメ」
「止められても行きます。もう決めたんです」
彼女の覚悟は決まっているようだが、俺の覚悟が出来ていなかった。
「でもカレンス、聞いて欲しいんだけどさ、領地に統治者がいないのはちょっと問題があると思わないかい?日帰りで行って帰って来られるような距離じゃないんだよ?」
「ですが…」
何が彼女にそれほどの行動力を生ませているのだろう。やはり仕事に対する責任感からだろうか。
「じゃあ、こうしよう。俺はザリンさんをつれてくるだけ。交渉はカレンスに全部任せる。これならどうだろう」
面倒事はコチラに任せて、大事な仕事を彼女に任せる。そうすれば彼女は納得してくれるかもしれないと思いご機嫌を伺う。
「そう言う事なら…」
カレンスは何とか渋々了承してくれた。
「よかった。じゃあザリン君をつれてくるね」
なんとか説得することに成功し、邸をでて船に戻った。
港ではすでにメンバー達は再集結を終えたようだった。声をかけてからまだ三十分ちょっとしかかかっていないのにどういう事だろうか。
「どうしたんだい君達、ヤケに準備が早いじゃないか」
甲板で荷を船に乗せているメンバーを見ながら感心していると、サーティンが後ろから声をかけてきた。
「冬の蓄えを切らしたヤツらが集まったんだ。ダークヘイヴンの色町で全部使っちまったらしい」
そんなバカなと思ったが、ココにいる全員冬が来る前に風俗に金をつぎ込んでしまい無一文らしかった。
「冬越しに渡した一千万シリン、全部風俗に使ってしまったのかい」
そう聞くと船員達は口々に、
「いや…その、船長…。船長は知らんかもですが、嬢とやるだけじゃないですよ」「そうそう!嬢と酒場で飲むにも金がいるんです!」「特に高級娼婦ともなりゃあ連れ出すのに青天井に金がいるんでさぁ!」「船長~金稼がせてくだせぇ~」と言った。
船員達が『うえーん』と泣き真似をするのを見て、こいつらは本当にクソだと思いつつ、一番金がない辛い時に俺を頼って来る可愛い奴らだと思い、全員船に乗せてやることにした。
「ドワーフの国に行く途中に船見つけたら片っ端から襲おうか。秋にはアヘンとか銀を運ぶ船が多いことだし、小遣い稼ぎにはなるだろうさ」
「「「船長俺達一生ついていきます!」」」
「皆さん早く堅気の仕事を出来るようになってくださいね」
「「「…………‥‥」」」
そう言うと聞こえているだろうに誰も返事を返さなかった。
こいつらはドワーフの国に置いて帰ろうと思う。
「小父様。今から取引先の商人ともう一度話をして来ようと思います」
覚悟が決まったのか、彼女の声には力が籠っていた。
この短時間でよくもすぐに立ち直れたものだ。その点ではボルより優秀らしい。
「どこにいるか知っているのかい」
「いえ、ですが必ず見つけて見せます」
商人のザリンはドワーフの国にいると分かり、今からそこへいく事を伝えると彼女もついて来ると言い出した。
「俺達の航路は波が高くて海に落ちることもあるんだよ?」
「だとしても、私が行くべきだと思います」
彼女は知らない。いつも海賊の俺達が航海している海域は軍艦や民間船が通らない危険な海だ。
風が強く波が高いため、あっという間に目的につく分、到着の間に船から一人二人が消えることもよくある話。しかもそれに乗っているのは海の荒くれ者どもだ。とてもじゃないが処女の子が旅できる環境じゃない。
「襲われるから止めておこうよ」
「ノイアも行くので大丈夫です」
後ろで控えているノイアがビックリした顔でカレンスを見つめている。どうやら彼女も初耳らしい。しかし彼女が来たところで状況はより悪くなるだけだ。
「ダメ」
「止められても行きます。もう決めたんです」
彼女の覚悟は決まっているようだが、俺の覚悟が出来ていなかった。
「でもカレンス、聞いて欲しいんだけどさ、領地に統治者がいないのはちょっと問題があると思わないかい?日帰りで行って帰って来られるような距離じゃないんだよ?」
「ですが…」
何が彼女にそれほどの行動力を生ませているのだろう。やはり仕事に対する責任感からだろうか。
「じゃあ、こうしよう。俺はザリンさんをつれてくるだけ。交渉はカレンスに全部任せる。これならどうだろう」
面倒事はコチラに任せて、大事な仕事を彼女に任せる。そうすれば彼女は納得してくれるかもしれないと思いご機嫌を伺う。
「そう言う事なら…」
カレンスは何とか渋々了承してくれた。
「よかった。じゃあザリン君をつれてくるね」
なんとか説得することに成功し、邸をでて船に戻った。
港ではすでにメンバー達は再集結を終えたようだった。声をかけてからまだ三十分ちょっとしかかかっていないのにどういう事だろうか。
「どうしたんだい君達、ヤケに準備が早いじゃないか」
甲板で荷を船に乗せているメンバーを見ながら感心していると、サーティンが後ろから声をかけてきた。
「冬の蓄えを切らしたヤツらが集まったんだ。ダークヘイヴンの色町で全部使っちまったらしい」
そんなバカなと思ったが、ココにいる全員冬が来る前に風俗に金をつぎ込んでしまい無一文らしかった。
「冬越しに渡した一千万シリン、全部風俗に使ってしまったのかい」
そう聞くと船員達は口々に、
「いや…その、船長…。船長は知らんかもですが、嬢とやるだけじゃないですよ」「そうそう!嬢と酒場で飲むにも金がいるんです!」「特に高級娼婦ともなりゃあ連れ出すのに青天井に金がいるんでさぁ!」「船長~金稼がせてくだせぇ~」と言った。
船員達が『うえーん』と泣き真似をするのを見て、こいつらは本当にクソだと思いつつ、一番金がない辛い時に俺を頼って来る可愛い奴らだと思い、全員船に乗せてやることにした。
「ドワーフの国に行く途中に船見つけたら片っ端から襲おうか。秋にはアヘンとか銀を運ぶ船が多いことだし、小遣い稼ぎにはなるだろうさ」
「「「船長俺達一生ついていきます!」」」
「皆さん早く堅気の仕事を出来るようになってくださいね」
「「「…………‥‥」」」
そう言うと聞こえているだろうに誰も返事を返さなかった。
こいつらはドワーフの国に置いて帰ろうと思う。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる