ダークヘイヴン

星島新吾

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1章:荒涼たる故郷

13.ザリンの行方

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店名をさらに調べると偶然にも知人の経営している店だった。彼女はドワーフの国で営業しているためここからだと随分と遠い。

こういう時に連絡を取るため彼女から通信用に魔道具を受け取っているのを思い出した。俺は港に泊めてある船に向かった。

「繋がると良いけど…」

錨の降りた船の船長室に飛び込むと、短点と長点で信号を送ることが出来る魔道具に手を置いた。

信号を送れる先が同じ魔道具を持っていないと駄目なのと、尚且つ今日その魔道具が使われているかどうかも条件にあるが、物は試しと信号を送った。

『交信求む、交信求む。こちらナグルファル号船長室』

交信を送り続けること五分後、諦めようかと思っていると魔道具から音の信号による返答があった。

『ナグルファル号船長室。ナグルファル号船長室。どうも。どうも。こんにちは。コチラ、ドワーフ国妖精局、ドワーフ国妖精局。御機嫌よう』

玩具だと思っていたので繋がったことに驚きつつ用件を述べた。

『魔道具店のオーナーに繋いでください。名前はカプ、名前はカプ』

信号で会話をするのは頭を使うと思いながら返答を待つ。するとまたすぐに返事が帰って来た。

『ナグルファル号船長室、ナグルファル号船長室、お相手が見つかったので扉の鍵をお渡しします。 番号を開始します。99・297・999・2223・2728・4879』

『ありがとう。ありがとう』

一度通信が切れ、渡された鍵番号を魔道具に入力し再度通信を開始する。

『コチラ、ナグルファル号船長室。ナグルファル号船長室』

『オリョール ですか。オリョール ですか』

しばらく会っていないがどうやら相手も憶えていてくれたようで、船の名前だけで俺からだと分かったようだった。

『そうです。お久しぶりです。カプ。お元気していましたか』

『はい。私は元気です。通信ありがとうございます。嬉しいです』

コチラが一分かけて文を送るのに対して、信号を送り慣れているのか、その半分の速度で瞬時に送り返してくる。

『うちの者がそちらで街灯を買ったらしいのですが合っていますか』

単刀直入とはまさにこのこと。余裕がなさそうに思われただろうか。

『はい。もしかして二十七万本を購入された方ですか?』

相手の感情は信号では分からないが、事態の把握は向こう側でもされているようだった。

『はい。そうです』

どうやら彼女の店で間違いないようだとホッとする。もし別の店だったら交渉も難しかっただろう。

『オリョールならお会計しても大丈夫ですね』

『そこをお値引きしてください』

『どうかされたのですか?』

『コチラの貨幣で五十四億シリンにもなってしまいまして。このままでは海外の土地をいくら

か売らなければならなくなります』

『売ればよろしいのでは?』

彼女は海賊をしていた頃の俺の収入を知っているため、痛くも痒くもないと思っているようだった。

しかし今の俺は貴族となったことで収入が激減した身。減らせる出費は減らしたかった。

『そこを何とか』

彼女は何かを察したのか融通を利かせてくれた。

『では用心棒代を減らして下さるならお値引きさせていただきます』

そんなことで値引きしてくれるなら安いものだ。

『分かりました。部下に言っておきます』

『嬉しいです。では半額にさせて頂きます。来訪の日時が決まり次第またご連絡下さい。国を挙げてお迎えします』

は、半額?信号の打ち間違えだろうか。

しかし再度信号を送るように信号を送っても、同じ回答が帰ってくるだけだった。

そんなに用心棒代を貰っているつもりはなかったが、もしかすると現地の部下が勝手に値段を上げている可能性もある。少し相談する必要がありそうだ。

『ありがとう。ありがとう。ところでザリンという商人について何か知っていますか』

『はい、ドワーフの国では名のしれた商人です。そう言えば今回の案件も彼が受注してきましたね』

『そうですか。彼の居場所が分かったら伝書バトで教えて下さい』

『彼なら今ドワーフの国にいますが何かしたのですか?』

カプの情報により、思ったよりも早くザリンの居場所を突き止めることが出来た。

『彼は身内に詐欺を働きました』

そう送ると、『そうなんですか』と少し時間を空けて返事が帰って来た。

『ザリン君の仕事は受けないようドワーフの商人達に通達しておいてください。我々が今からそちらへ向かいます。それからザリン君にはソコにいるようにお伝えください』

そう信号を送り通信を切った。

「そうかザリン君、君は…ドワーフの国にいるんだね」

ドワーフの国にいるという商人ザリンに会うために仲間を再終結させることにした。
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