底辺冒険者の俺をプロデュースしてS級冒険者にするって何が楽しいんですか?

星島新吾

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2章 底辺冒険者の俺をプロデュースしていて楽しいですか?

ep27.冒険者業初日~やっと冒険者としての道を歩み始めた者達~

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「完治するのに約七時間…止血にかかる時間は約二分…驚異的な修復力だね。帝国が隠していたのはこういう事か…」

翌朝、眠りから覚めた俺は腕に当たる冷たい手の感触に意識を覚醒させた。声はパルモのモノだ。しかし一人事なのかボソボソと言っている。

布団から体を起こすと部屋が少し熱く感じた。

「…おはようございます」

「おはよう。クルさん」

「…………なんでパルモが俺の部屋にいるんだ?」

「傷が気になって」

そう言われてモゾッと切り付けられた腕を触ると傷痕の感触すらなかった。

一晩寝たら傷一つない体になる。

冒険者で仕事をしていくなら都合の良い体で間違いなかった。

なぜいつと考えて分かる頭ではないことは俺が一番分かっている。俺が知らなければならないこと、ソレは今日何をするか、それだけだ。

「今日から俺は何をするんだ?」

俺はパルモにそう聞いた。

実質今日から本格的にS級冒険者を目指して活動していくのだ。そのために必要なことは色々あるだろう。

基礎能力を上げるための訓練だろうか?それともE級依頼を受けてこいと言われるだろうか。どちらにせよこの町で暮らすのに必要になって来る初めての仕事だ。気を引き締めて頑張ろう。

「そうだね。今日のお仕事は…!」

「お仕事は…?」

「ご近所に挨拶をしてきて貰います!」

心の中で(ウワァ…)とため息が漏れた。

ヴェオルザークだと変なヤツも多いだろう(これは偏見だが)。

この町に居られないぐらい町の人間と関係が悪くなったらどうしようと、少し身震いする。

「…もっと冒険者らしい基礎訓練とかしないのか?」

「クランで依頼を受けるのが殆どなんだよ?個人で依頼を受けようってことなんだから顔を覚えて貰うために足を使うのは当たり前。ほらっ、一番初めが一番大変なんだから。準備して」

そうして町を巡回することになった俺は、パルモに連れられて魔法屋から挨拶周りをすることになった。

魔法屋に出向きナーミスラを探したがどこにもなく、代わりにカウンターには“店の裏手にある畑にいます”と紙に書かれ置いてあった。

鍵もかけずに不用心だな…と思いつつ、魔法屋を出て裏手の畑にお邪魔すると、ナーミスラが畑仕事をしているのが見えた。

「「おはようございますー!」」

パルモと二人で遠くに見えるナーミスラに声をかけ、近づいた。

「あらあら!おはようございます。昨日のカロムのお友達ね」

ナーミスラおばあさんはニコニコしながら今日の畑について話をしてくれた。それからしばらくおばあさんの話に付き合い、ようやくコチラも自己紹介ができると、早速パルモが営業をかけた。

「もし、何かご依頼があれば私達を頼って下さい。薬草取りから魔物退治まで、ウチのクルが承りますから」

「まあ。だったら一つお願いしたいことがあるのよ」

「はい!」

パルモは営業するときだけサングラスを取ってその奥に輝く黄金の瞳を見せる。

当然その場を離れたらまたサングラスをかけてしまうのだが、仕事をしている時の彼女はナイフで人の腕に傷をつけなさそうな誠実そうな見た目で、上手におばあさんを欺いていた。

そうして受けた依頼は、近くの森にある泉の水を回収してくることだった。

少量というワケにもいかないらしく、用意されたのは十七ガロンが入る牛乳を入れる用の大きな容器で、それを持って森の泉まで向かい汲んで持って帰って来るというものだった。

俺達はそれを了承すると、「入り口に容器が置いてあるから持っていって頂戴」、と言われたので挨拶が終わり次第泉に水を汲みに行く依頼を手に入れた。

「幸先いいね!」

「確かに。きっとカロムの友達ってことで優先して依頼をくれたんだろう…感謝しないとなぁ」

そして次はヴェオルザークに複数ある武器屋のうち、最も新しい小さな武器屋を町の人間から聞きこみ、向かった。

「一番大きな武器屋じゃなくていいのか?」

「大きなところに営業かけても依頼なんて出してくれないからねぇ。そう言うところは後で私が挨拶に行くだけでいいから。顔を覚えて貰うのは小さな武器屋さんだよ」

パルモは道中そう言ってまたサングラスを外して到着した武器屋の扉を開けた。

「チョワッ!どえらいベッピンさんやなぁ!どないしたん?」

武器屋のお兄さんがパルモをみて大げさに驚く。陽気で面白そうな人だ。

「おはようございます。今日からココを活動拠点にすることにした冒険者の、クルとそのマネージャーの私パルモと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

「よろしくお願いします」

俺もパルモに続いて挨拶をする。武器屋のお兄さんは俺を見て特にという感じだったが、パルモの方は好印象だったようで好意的な対応をしてくれた。

「よろしゅう!新人冒険者さんやんなぁ?今は依頼ないけど、コッチでもなんか頼みたいことあったらパルモちゃんの所にお願いさせて貰いますよ!」

「ありがとうございます!」

パルモの魅力は凄まじく、こんな感じで小さな武器屋を巡っては相手に好感触を待たせつつ、彼らからの依頼の約束も取り付けることができた。

そうして朝から昼まで目標としていた小さな武器屋を全て回り、最後の武器屋の扉から出た。

「ふぅ…さてと、次は雑貨屋ね。その次は鍵屋で、その次は冒険者専門の道具屋ね…」

「パルモ?」

「なに?」

昼食に入ったレストランでパルモに聞く。

「一体何件回るつもりなんだ?今もう五件ぐらい回っただろ?」

俺は新しい人間と出会い過ぎて吐き気がしてきていた。

パルモは平気なのだろうか?

「あと二十軒ぐらいかな…大丈夫、日は股がないから」

そう言ってパルモはニンニクベースの濃いソースがかかったアスパラガスをフォークで刺した。

「今日はずっと挨拶周りなのか?」

「そうだよ」

心の中で(嫌だぁ~)と言いつつ俺は蒸かされた辛い味付けの芋を口に運んだ。

今日やるべきことだと彼女が決めたのならソレについて行くしかないだろう。

「ヨシッ…!午後からも頑張るぞ…!」

気合を入れるため、追加の皿を注文した。昔は「ガリガリなのによく食べますね」と嫌味を言われたのを思い出したが、その思い出ごと次の皿も飲み込んだ。

「ふふふっ」

「どうかしたか?」

「ううん。こういう地道なやり方って嫌いな人が多いから。クルさん、文句も言わずについてくるんだなぁ~って。おかしくなったの」

「パルモだってこういう営業活動?みたいなの初めてなんじゃないのか?」

「ううん。私はそういうのも学園でやっていたの。ウチの学科は法律の勉強がメインだったんだけど、他にも自分たちで立ち上げたイベントを地域の武器屋さんだとか道具屋さんと連携してやる…みたいなこともしていたの。その時に飛び込みで色んな所に声をかけに行ったことがあったんだ」

「ほぉ~…なんだか凄いな」

パルモの話を全く共感できない俺は、やはり彼女とは全然違う環境で生きてきた別の人間なのだと思わされるのだった。

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