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2章 底辺冒険者の俺をプロデュースしていて楽しいですか?
ep20.大剣使いのカロム
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洞窟の外に出てノビをすると、途端になぜこんなに朝から動いているのかと思った。
(…もう少し寝てもいいよな)
しかしそんな考えはパルモに潰されることになる。
「これ摘んできたから出発する時に持ってね。あと、これが朝ごはんで…これが着替えね」
パルモにそう言われ、寝袋の上に服と食事が乗っかる。
(これじゃあ二度寝は無理そうだな…)
渡された食事を口に運びつつ、外の様子を見た。
洞窟に差し込む光が、目に飛び込み俺の意識をさらに覚醒させていくのを感じる。
「色々して貰ってスマン…ありがとう」
寝ぼけ眼を擦りながら、朝から活発に動く彼女にお礼を言う。なぜ彼女は昨日あれだけ歩いたというのにこんなに元気なのだろう。
しかもご飯も着替えも用意してくれているうえに、依頼の一つである野草採集も代わりにやってくれたらしい。
(仕事が出来る人って俺みたいな無能と比べて時間が倍ぐらいあるように見えるのはなんでなんだろうな…)などと、ボーと考える。
「シャキッとしてね、クルさん。洞窟の外に出たらもう魔物がいるんだからね」
「あぁ…もうちょっとココに居よう?」
そう言ったが、パルモは怠惰な俺を許してはくれなかった。
「もう出ないとヴェオルザークに着かないよ。ねっ、ちゃんと起きて。はい、お水酌んできたから飲んで」
「おぉ…」
満タンになった水筒に口をつけ、喉を潤す。
(この感じだと数時間前には既に起床していたのだろうか?)
チーズのついた手を寝袋になすりつけ、モゾモゾと寝袋の中で替えの服に着替えると、寝袋から出て大きな欠伸をしてから洞窟を後にした。
それからしばらくまた無心で魔物を避けつつ山を下りる時間が続き、足のつま先の方がジンジンと痛み始めた頃。
ようやく下山し、魔物の気配も山中よりずっと減った事にホッと一息つく。
「ふぅー…ようやく地面と足が平行になったな」
「クルさんは草原の方が好き?」
「探索するなら森の方が好きかな。でも魔物と戦うなら平原の方が助かる、かな」
俺の言葉を聞いて、パルモがメモを取る。
どうしてか聞くと、今後依頼の選定をする時に判断材料になるらしかった。
「武器が長い棒だし、どうしても木の事が気になるんだ」
「フムフム…」
「それに比べて平原だとどれだけ振り回しても気にしないでいいだろ?」
そんな話をしながら森の中を歩いていると、草むらの中に子供の足と下半身が見えていた。子供が草むらに埋もれるように入り込んでいる。
パルモに言うと、彼女も気が付いていたようだ。
「変なものには関わらない方がいいよ。クルさん」
「いや…でもこんなところに子供がいたら危ないだろ…」
俺は近づいて草むらに突き刺さった子供の足を引っ張ると、その草むらからロープが伸び、足を取られて転んだ。
「えっ…!?」
そうして俺が驚き隙を作った瞬間に、下半身パンツ一枚の少年が大きな大剣を振りかぶって草むらから飛び出てきた。
「ディ“ヤ”ア“ア”ア“ア”ア!!」
「ウワァああああああ!!!!」
少年の雄たけびと共に振り下ろされる大剣が、無防備に転んだ俺の脳天を切り裂こうとしていた瞬間にパルモが間に立って大剣を蹴り飛ばした。
「ほら、変なモノだったでしょ?」
パルモによって蹴り飛ばされた大剣は森の中へと姿を消し、一瞬の出来事に俺も少年も呆気に取られて彼女の方を見た。
「ちっ…!仲間がいたのか!」
先にハッとした少年はそう言うと、脱兎の如く草むらへと飛び込んだ。
しかし、コチラもやられたままと言うわけにもいかなかったので、背負っていたリュックとパルモを置いて、コンを持って少年を追った。
「ハァ…ハァ…おいクソガキ…!お前、なんか俺を殺す理由でもあったのか?」
そう言って逃げる少年の後ろから棒を振りかざす俺の姿はさながら悪漢のようだった。
思い切り少年の頭にコンを叩きつけ、コンを少年に噛みつかせた。
「いだだだだ!」
少年は目に涙を浮かべ、コンに咥えられている。
「確保…完了」
コンによって咥えられた状態で、もがくその少年の姿は見ていて笑みが零れる。
「話せ!底辺冒険者!」
少年の言葉にプッツーンとしても良かったのだが、俺も大人だ。たとえ事実を陳列されたところで耐えるだけのメンタルぐらい備わっている。
「貧弱!貧相!無能!」
「なんでテメェはそう人を苛立たせるのが上手いんだよ!!」
俺はコンを高く掲げ、少年が怖がるように揺さぶる。
今回に限っては俺の器以前にコイツの悪口が強すぎたのが問題だった。
「大人気無いぞ!チクショー!」
少年にそう言われ、ハッとなったが、とりあえず自分だけでは抱えられそうになかったのでパルモの所に連れて戻った。
「…ただいま」
そう言うと、パルモは明らかに面倒くさそうな顔をして出迎えてくれた。
「連れて帰ってきちゃった…」
パルモは腕を組んで、
「どうするの?」
と、聞いた。一応次のヴェオルザークまで送って行こうかと思っていると話すと少年がまた暴れた。
「余計なお世話だ!僕は冒険者なんだ!」
冒険者ギルドに加入するのは一応成人が条件だった気がする。二桁やっと行きましたって年齢の少年が冒険者になんてなれるわけがない。
しかし、この年頃の少年の言葉を頭から否定するのも気が引ける。
少年が冒険者だというならば、冒険者という体で話をしてやるのが優しさだろう。
「おぉ、そうかい。じゃあ、俺達を町まで護衛してくれるかい。小さな冒険者さんよ」
「え?」
少年はコチラの提案にキョトンとした顔で聞き返した。俺もこの山を登る前に冒険者達に簡単な依頼を受けて支度金のようなモノを貰った。彼らがしたことは手本にするべきだろう。
「どうした?お前冒険者なんだろ?やるのか?やらないのか?」
コンの先で宙ぶらりんになりながら少年は考えたようだが、ついに答えを出した。
「でも…剣も無いし…」
「あぁ。パルモが蹴っ飛ばしたヤツな…ちょっとココで待ってな」
パルモに少年を任せて、剣についたパルモの匂いを追うとすぐに剣を見つけることが出来た。
そして戻ると、パルモと少年は何やら話をしているようだった。それと少年は先ほどまで下半身パンツ一枚だったが、俺を罠に嵌めるために使ったズボンと靴を身に着け、ちゃんとした格好の少年になっていた。
「で?どうしてクルさんを狙ったの?」
パルモの声がいつもより低い。
「僕より弱そうだったし、リュックも大きかったから依頼の帰りかなって…」
少年はしっかり獲物に狙いを定めて狩りをするタイプらしい。
パルモがいなければ俺は少年に狩られていただろう。
「今回はクルさんに免じて彼方の命は取らないであげるけど、町に着くまでタダ働きだからね」
「ヒッ…」
年齢が二桁になったばかりのような少年にどんな脅しだと思ったが、コチラも刃物で切り殺されるところだったため、今回ばかりはパルモに任せた。
俺は草むらから顔を出して二人の前に出ると、少年の大剣を返却した。
「ほら、君のだろ」
大剣を受け取った少年はソレを抱きかかえるように持った。
「名前はなんていうんだ?」
「カロム。カロム・スターマイン」
ボサボサの赤い髪に小麦色に焼けた肌の少年はそう名乗った。
そして彼の翡翠色の瞳は、正しく少年が持つに相応しい輝きを宿していた。
「カロムか。俺はクル・メディオだ。彼女はパルモ。歳はいくつだ?」
「…十三歳」
(若い!俺と十一歳も離れているのかこの子。…しっかりしているなぁ…)
「そか。じゃあ、カロム。護衛を頼まれてくれるかな」
「うん、分かった。パルモさんにもお願いされたし。クルは弱いしね」
コイツの中の序列がどんな風になっているか知らないが、パルモと同列に扱われていないのは分かった。
「よろしくな」
ヴェオルザークにつくまでの間、大剣使いのカロムが仲間になった。
(…もう少し寝てもいいよな)
しかしそんな考えはパルモに潰されることになる。
「これ摘んできたから出発する時に持ってね。あと、これが朝ごはんで…これが着替えね」
パルモにそう言われ、寝袋の上に服と食事が乗っかる。
(これじゃあ二度寝は無理そうだな…)
渡された食事を口に運びつつ、外の様子を見た。
洞窟に差し込む光が、目に飛び込み俺の意識をさらに覚醒させていくのを感じる。
「色々して貰ってスマン…ありがとう」
寝ぼけ眼を擦りながら、朝から活発に動く彼女にお礼を言う。なぜ彼女は昨日あれだけ歩いたというのにこんなに元気なのだろう。
しかもご飯も着替えも用意してくれているうえに、依頼の一つである野草採集も代わりにやってくれたらしい。
(仕事が出来る人って俺みたいな無能と比べて時間が倍ぐらいあるように見えるのはなんでなんだろうな…)などと、ボーと考える。
「シャキッとしてね、クルさん。洞窟の外に出たらもう魔物がいるんだからね」
「あぁ…もうちょっとココに居よう?」
そう言ったが、パルモは怠惰な俺を許してはくれなかった。
「もう出ないとヴェオルザークに着かないよ。ねっ、ちゃんと起きて。はい、お水酌んできたから飲んで」
「おぉ…」
満タンになった水筒に口をつけ、喉を潤す。
(この感じだと数時間前には既に起床していたのだろうか?)
チーズのついた手を寝袋になすりつけ、モゾモゾと寝袋の中で替えの服に着替えると、寝袋から出て大きな欠伸をしてから洞窟を後にした。
それからしばらくまた無心で魔物を避けつつ山を下りる時間が続き、足のつま先の方がジンジンと痛み始めた頃。
ようやく下山し、魔物の気配も山中よりずっと減った事にホッと一息つく。
「ふぅー…ようやく地面と足が平行になったな」
「クルさんは草原の方が好き?」
「探索するなら森の方が好きかな。でも魔物と戦うなら平原の方が助かる、かな」
俺の言葉を聞いて、パルモがメモを取る。
どうしてか聞くと、今後依頼の選定をする時に判断材料になるらしかった。
「武器が長い棒だし、どうしても木の事が気になるんだ」
「フムフム…」
「それに比べて平原だとどれだけ振り回しても気にしないでいいだろ?」
そんな話をしながら森の中を歩いていると、草むらの中に子供の足と下半身が見えていた。子供が草むらに埋もれるように入り込んでいる。
パルモに言うと、彼女も気が付いていたようだ。
「変なものには関わらない方がいいよ。クルさん」
「いや…でもこんなところに子供がいたら危ないだろ…」
俺は近づいて草むらに突き刺さった子供の足を引っ張ると、その草むらからロープが伸び、足を取られて転んだ。
「えっ…!?」
そうして俺が驚き隙を作った瞬間に、下半身パンツ一枚の少年が大きな大剣を振りかぶって草むらから飛び出てきた。
「ディ“ヤ”ア“ア”ア“ア”ア!!」
「ウワァああああああ!!!!」
少年の雄たけびと共に振り下ろされる大剣が、無防備に転んだ俺の脳天を切り裂こうとしていた瞬間にパルモが間に立って大剣を蹴り飛ばした。
「ほら、変なモノだったでしょ?」
パルモによって蹴り飛ばされた大剣は森の中へと姿を消し、一瞬の出来事に俺も少年も呆気に取られて彼女の方を見た。
「ちっ…!仲間がいたのか!」
先にハッとした少年はそう言うと、脱兎の如く草むらへと飛び込んだ。
しかし、コチラもやられたままと言うわけにもいかなかったので、背負っていたリュックとパルモを置いて、コンを持って少年を追った。
「ハァ…ハァ…おいクソガキ…!お前、なんか俺を殺す理由でもあったのか?」
そう言って逃げる少年の後ろから棒を振りかざす俺の姿はさながら悪漢のようだった。
思い切り少年の頭にコンを叩きつけ、コンを少年に噛みつかせた。
「いだだだだ!」
少年は目に涙を浮かべ、コンに咥えられている。
「確保…完了」
コンによって咥えられた状態で、もがくその少年の姿は見ていて笑みが零れる。
「話せ!底辺冒険者!」
少年の言葉にプッツーンとしても良かったのだが、俺も大人だ。たとえ事実を陳列されたところで耐えるだけのメンタルぐらい備わっている。
「貧弱!貧相!無能!」
「なんでテメェはそう人を苛立たせるのが上手いんだよ!!」
俺はコンを高く掲げ、少年が怖がるように揺さぶる。
今回に限っては俺の器以前にコイツの悪口が強すぎたのが問題だった。
「大人気無いぞ!チクショー!」
少年にそう言われ、ハッとなったが、とりあえず自分だけでは抱えられそうになかったのでパルモの所に連れて戻った。
「…ただいま」
そう言うと、パルモは明らかに面倒くさそうな顔をして出迎えてくれた。
「連れて帰ってきちゃった…」
パルモは腕を組んで、
「どうするの?」
と、聞いた。一応次のヴェオルザークまで送って行こうかと思っていると話すと少年がまた暴れた。
「余計なお世話だ!僕は冒険者なんだ!」
冒険者ギルドに加入するのは一応成人が条件だった気がする。二桁やっと行きましたって年齢の少年が冒険者になんてなれるわけがない。
しかし、この年頃の少年の言葉を頭から否定するのも気が引ける。
少年が冒険者だというならば、冒険者という体で話をしてやるのが優しさだろう。
「おぉ、そうかい。じゃあ、俺達を町まで護衛してくれるかい。小さな冒険者さんよ」
「え?」
少年はコチラの提案にキョトンとした顔で聞き返した。俺もこの山を登る前に冒険者達に簡単な依頼を受けて支度金のようなモノを貰った。彼らがしたことは手本にするべきだろう。
「どうした?お前冒険者なんだろ?やるのか?やらないのか?」
コンの先で宙ぶらりんになりながら少年は考えたようだが、ついに答えを出した。
「でも…剣も無いし…」
「あぁ。パルモが蹴っ飛ばしたヤツな…ちょっとココで待ってな」
パルモに少年を任せて、剣についたパルモの匂いを追うとすぐに剣を見つけることが出来た。
そして戻ると、パルモと少年は何やら話をしているようだった。それと少年は先ほどまで下半身パンツ一枚だったが、俺を罠に嵌めるために使ったズボンと靴を身に着け、ちゃんとした格好の少年になっていた。
「で?どうしてクルさんを狙ったの?」
パルモの声がいつもより低い。
「僕より弱そうだったし、リュックも大きかったから依頼の帰りかなって…」
少年はしっかり獲物に狙いを定めて狩りをするタイプらしい。
パルモがいなければ俺は少年に狩られていただろう。
「今回はクルさんに免じて彼方の命は取らないであげるけど、町に着くまでタダ働きだからね」
「ヒッ…」
年齢が二桁になったばかりのような少年にどんな脅しだと思ったが、コチラも刃物で切り殺されるところだったため、今回ばかりはパルモに任せた。
俺は草むらから顔を出して二人の前に出ると、少年の大剣を返却した。
「ほら、君のだろ」
大剣を受け取った少年はソレを抱きかかえるように持った。
「名前はなんていうんだ?」
「カロム。カロム・スターマイン」
ボサボサの赤い髪に小麦色に焼けた肌の少年はそう名乗った。
そして彼の翡翠色の瞳は、正しく少年が持つに相応しい輝きを宿していた。
「カロムか。俺はクル・メディオだ。彼女はパルモ。歳はいくつだ?」
「…十三歳」
(若い!俺と十一歳も離れているのかこの子。…しっかりしているなぁ…)
「そか。じゃあ、カロム。護衛を頼まれてくれるかな」
「うん、分かった。パルモさんにもお願いされたし。クルは弱いしね」
コイツの中の序列がどんな風になっているか知らないが、パルモと同列に扱われていないのは分かった。
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