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1章 底辺冒険者の俺をプロデュースする理由は何ですか?
ep3.逃走の始まり
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「怪我ないか?」
「それはこっちのセリフ!そういう人なのは調べて知っていたけど、まさか本当に無鉄砲なんて馬鹿なのかな?!」
「なっ…」
言い返す暇もなく彼女の罵倒は続く。
「これからS級冒険者になるって言っても貴方はまだピヨピヨなんだから本当に気を付けてよね!」
パルモは地団太を踏んで怒っている。というか、S級冒険者になるなんて一言も言っていないはずだが…。
「守るぐらい俺にだって…」
「出来ないでしょうが!こっちが大人しく捕まってあげようって思っていたのに!殴っちゃたらクルさんも追われる身になるでしょうが!」
確かに早計だったかも知れない。
だが、また同じような展開になった時に俺は自身の足を止めることが出来るだろうか。
「う~ん…」
「唸ってないで下町に戻るよ!クルさんもついてきて。あーもうゆっくり帝都で頑張ろうと思ってたのに!」
怒るパルモの後ろを追って下町につくと、既に衛兵の数が普段の時よりも増えていることに気づく。
それに伴って下町の連中もこの騒動に表へ出てきており、普段の倍以上人通りが増していた。
「あの役人…こうなる想定はしていたみたいだね。準備に余念がない…!」
「感心しとる場合か。…っても、別に俺は犯罪歴がつくぐらい別に…」
別に問題はない。
学もなくこのままマナダストの清掃員を続けるなら犯罪歴があったところで、何も変わりはしないのだ。
「一生人体実験のモルモットにはなりたくはないでしょ?はぐれないようについて来て」
と、暗に諦めたら許さないと彼女にくぎを刺された。
先ほどから彼女は何かを知っているような口ぶりだが、早朝に宿を出てから昼になるまでに一体彼女は何を見つけたんだ?
「実験ってどういうことだ?」
「質問はあと。今はここを抜けて内陸方面の東の街に移動するよ。どれだけ関所が開いているかもわからないし、ギルドに抜け道があるからソレを使ってこの帝都を出るよ!」
パルモは人の波を猫のように軽やかに縫って進み、ソレを見失わないようについていくのでやっとだった。
そうしてしばらく走った後、息も絶え絶えの中、彼女の後ろを歩き俺達は冒険者ギルドの門を叩いた。
そして中に入ると、一人の女性がパルモに話しかけた。
緑色のショートヘアーと赤い瞳が特徴的な、細身ながら引き締まった体系の優雅なお姉さんだ。
そして武器の腕も並みの騎士より強そうな風格があり、隙があるようでまるでない。
「モッちゃん、あの衛兵達ってまさかあなた達が関係しているのかしら…?」
穏やかな声で女性はパルモに聞いた。
「そうなの。フェイン姉さんは地下通路を歩く用意してくれる?私はクルさんの武器を選ぶから」
「…分かったわ。どこまで行く気?」
フェインと呼ばれた女性は心配そうにパルモに聞いた。
「とりあえず東の街まで行って装備を整えてみる。ゆっくり出来るのは北の山脈を超えた頃かな。あぁでも心配しないで!大丈夫だから!」
「私もついて行こうかしら…」
フェインは腕を組み頬に手を当て悩んでいる。
この人はパルモのことが心配なのだろう。
「大丈夫だから!旅の用意をお願い!」
「ふにゅう…」
強引にパルモはフェインの提案を断ると、俺を引っ張って別室へと連れて行った。俺も一度入ったことがある初級冒険者が訓練を行う部屋だ。
「訓練用の装備だけど無いよりマシだよね」
そう言って彼女は俺に五尺ほどの棒を渡した。
「俺は剣しか使ったことはないぞ」
「でもからっきしダメだった。そうでしょ?」
彼女にそう言われてしまい言葉が詰まる。
確かに宿舎内での俺の剣はお粗末にも剣術と言えるものではなかった。
どのぐらいかと言うと、余りにも酷かったので帯剣も許されていなかったほどだ。
「あ…あぁ」
「だってクルさん剣術の才能皆無ですもん」
「なっ…」
俺の何を知っているんだ、という言葉を飲み込む。
きっと何を言い返しても俺の傷が広がりそうな気がしたからだ。
「今から簡単に使い方を教えるから見ていてね」
そう言って彼女は同じ長い棒をもって練習場に入った。
そして彼女は慣れた手つきで練習用の木製の案山子を棒で叩いて実演して見せ始めた。
高速で手元で音を立て回転する棒が、目標の案山子に当たるたびに、“ゴッ”という鈍い音が練習場に響いた。
踊るように振り回される棒が最後の一撃を案山子に加えた時、木製の案山子は棒で叩かれた衝撃でバラバラになった。
「こんな感じだよ!」
「出来るかっ!」
練習場に声が響く。
緊急事態だとしても教える才能の片鱗ぐらいは見せてほしかった。
全く参考にならない動きを前に俺は頭を掻く。
「試しにそれっぽく動いてみてよ」
「あぁ?…ンなもん出来るわけ…」
試しにパルモがしたように手首で棒を回しながら両手を使い、案山子に殴りかかる。すると案外簡単に案山子に棒は命中した。
「あれ、意外といけるのか…?」
「うんうん!やっぱりクルさんには棒の方が合っていそうだね」
「なんで俺が棒を使えるってわかったんだ?」
自分でも分からなかったのに何で彼女にはソレが分かったのだろう。
「それはもちろん冒険者プロデューサーを名乗るんですから、それぐらい人の素質を見抜く目はありますとも」
パルモはそう言ってどや顔で胸を叩いた。
「すげぇ…なんか何となくどう動かせばいいか分かるぞ…」
「単純にクルさんは刃物が苦手なんだよ。無意識に体が引けていたから」
騎士団にいた癖に俺は刃物が苦手なのか…。
自分について全く知らないのだと思い知らされる。
「後は山を越えた後に教えてあげるね。そろそろ姉さんの方も準備出来た頃だろうし」
「あぁ、分かった」
訓練場を出てフロントの受付まで戻ってくるとフェインがリュックを二つ持って待っていた。巻かれた状態の寝袋や小物の入ったポーチまで備えられている。
あの短時間にここまで準備をして貰って申し訳ないと思う気持ち半分、ありがたい気持ち半分で礼をフェインに言った。
「ありがとうございます。フェインさん」
「彼方がパルモの言っていた例の人ね」
フェインはパルモから視線を俺に上げ、そして顔を見てホホホと笑った。
「おそらくそのクル・メディオです。あの…何か面白いことでも?」
「噂通り幸薄そうな顔だなぁって、オホホ。モッちゃんが気に入ったのも頷けます」
「なっ…」
(荷物の手配をしてくれた手前悪くは言えない…がっ、失礼な人だ!)
「さあお行きなさい。ココも時期に衛兵達が押し寄せてきます」
「姉さん、お元気で」
パルモは別れを惜しむようにフェインに抱き着いた。
フェインもまた彼女を受け止め、別れの挨拶が終わる。
「モッちゃんも。体に気を付けて」
冒険者ギルドの受付に招かれ、裏手にある部屋に通されると、そこは何もない空っぽの部屋だった。
騙されたのかと思い気や、パルモは何も目印のない壁の一カ所を指で押した。すると”ズズズゥ…”と音を立てて地下へと続く階段が現れた。
「マジかよ…」
「ここから用水路を渡って帝都の外まで行くよ。道中低級の魔物も出るから気を引き締めてね」
そう言って彼女はその暗く続く階段を下り始めた。
「それはこっちのセリフ!そういう人なのは調べて知っていたけど、まさか本当に無鉄砲なんて馬鹿なのかな?!」
「なっ…」
言い返す暇もなく彼女の罵倒は続く。
「これからS級冒険者になるって言っても貴方はまだピヨピヨなんだから本当に気を付けてよね!」
パルモは地団太を踏んで怒っている。というか、S級冒険者になるなんて一言も言っていないはずだが…。
「守るぐらい俺にだって…」
「出来ないでしょうが!こっちが大人しく捕まってあげようって思っていたのに!殴っちゃたらクルさんも追われる身になるでしょうが!」
確かに早計だったかも知れない。
だが、また同じような展開になった時に俺は自身の足を止めることが出来るだろうか。
「う~ん…」
「唸ってないで下町に戻るよ!クルさんもついてきて。あーもうゆっくり帝都で頑張ろうと思ってたのに!」
怒るパルモの後ろを追って下町につくと、既に衛兵の数が普段の時よりも増えていることに気づく。
それに伴って下町の連中もこの騒動に表へ出てきており、普段の倍以上人通りが増していた。
「あの役人…こうなる想定はしていたみたいだね。準備に余念がない…!」
「感心しとる場合か。…っても、別に俺は犯罪歴がつくぐらい別に…」
別に問題はない。
学もなくこのままマナダストの清掃員を続けるなら犯罪歴があったところで、何も変わりはしないのだ。
「一生人体実験のモルモットにはなりたくはないでしょ?はぐれないようについて来て」
と、暗に諦めたら許さないと彼女にくぎを刺された。
先ほどから彼女は何かを知っているような口ぶりだが、早朝に宿を出てから昼になるまでに一体彼女は何を見つけたんだ?
「実験ってどういうことだ?」
「質問はあと。今はここを抜けて内陸方面の東の街に移動するよ。どれだけ関所が開いているかもわからないし、ギルドに抜け道があるからソレを使ってこの帝都を出るよ!」
パルモは人の波を猫のように軽やかに縫って進み、ソレを見失わないようについていくのでやっとだった。
そうしてしばらく走った後、息も絶え絶えの中、彼女の後ろを歩き俺達は冒険者ギルドの門を叩いた。
そして中に入ると、一人の女性がパルモに話しかけた。
緑色のショートヘアーと赤い瞳が特徴的な、細身ながら引き締まった体系の優雅なお姉さんだ。
そして武器の腕も並みの騎士より強そうな風格があり、隙があるようでまるでない。
「モッちゃん、あの衛兵達ってまさかあなた達が関係しているのかしら…?」
穏やかな声で女性はパルモに聞いた。
「そうなの。フェイン姉さんは地下通路を歩く用意してくれる?私はクルさんの武器を選ぶから」
「…分かったわ。どこまで行く気?」
フェインと呼ばれた女性は心配そうにパルモに聞いた。
「とりあえず東の街まで行って装備を整えてみる。ゆっくり出来るのは北の山脈を超えた頃かな。あぁでも心配しないで!大丈夫だから!」
「私もついて行こうかしら…」
フェインは腕を組み頬に手を当て悩んでいる。
この人はパルモのことが心配なのだろう。
「大丈夫だから!旅の用意をお願い!」
「ふにゅう…」
強引にパルモはフェインの提案を断ると、俺を引っ張って別室へと連れて行った。俺も一度入ったことがある初級冒険者が訓練を行う部屋だ。
「訓練用の装備だけど無いよりマシだよね」
そう言って彼女は俺に五尺ほどの棒を渡した。
「俺は剣しか使ったことはないぞ」
「でもからっきしダメだった。そうでしょ?」
彼女にそう言われてしまい言葉が詰まる。
確かに宿舎内での俺の剣はお粗末にも剣術と言えるものではなかった。
どのぐらいかと言うと、余りにも酷かったので帯剣も許されていなかったほどだ。
「あ…あぁ」
「だってクルさん剣術の才能皆無ですもん」
「なっ…」
俺の何を知っているんだ、という言葉を飲み込む。
きっと何を言い返しても俺の傷が広がりそうな気がしたからだ。
「今から簡単に使い方を教えるから見ていてね」
そう言って彼女は同じ長い棒をもって練習場に入った。
そして彼女は慣れた手つきで練習用の木製の案山子を棒で叩いて実演して見せ始めた。
高速で手元で音を立て回転する棒が、目標の案山子に当たるたびに、“ゴッ”という鈍い音が練習場に響いた。
踊るように振り回される棒が最後の一撃を案山子に加えた時、木製の案山子は棒で叩かれた衝撃でバラバラになった。
「こんな感じだよ!」
「出来るかっ!」
練習場に声が響く。
緊急事態だとしても教える才能の片鱗ぐらいは見せてほしかった。
全く参考にならない動きを前に俺は頭を掻く。
「試しにそれっぽく動いてみてよ」
「あぁ?…ンなもん出来るわけ…」
試しにパルモがしたように手首で棒を回しながら両手を使い、案山子に殴りかかる。すると案外簡単に案山子に棒は命中した。
「あれ、意外といけるのか…?」
「うんうん!やっぱりクルさんには棒の方が合っていそうだね」
「なんで俺が棒を使えるってわかったんだ?」
自分でも分からなかったのに何で彼女にはソレが分かったのだろう。
「それはもちろん冒険者プロデューサーを名乗るんですから、それぐらい人の素質を見抜く目はありますとも」
パルモはそう言ってどや顔で胸を叩いた。
「すげぇ…なんか何となくどう動かせばいいか分かるぞ…」
「単純にクルさんは刃物が苦手なんだよ。無意識に体が引けていたから」
騎士団にいた癖に俺は刃物が苦手なのか…。
自分について全く知らないのだと思い知らされる。
「後は山を越えた後に教えてあげるね。そろそろ姉さんの方も準備出来た頃だろうし」
「あぁ、分かった」
訓練場を出てフロントの受付まで戻ってくるとフェインがリュックを二つ持って待っていた。巻かれた状態の寝袋や小物の入ったポーチまで備えられている。
あの短時間にここまで準備をして貰って申し訳ないと思う気持ち半分、ありがたい気持ち半分で礼をフェインに言った。
「ありがとうございます。フェインさん」
「彼方がパルモの言っていた例の人ね」
フェインはパルモから視線を俺に上げ、そして顔を見てホホホと笑った。
「おそらくそのクル・メディオです。あの…何か面白いことでも?」
「噂通り幸薄そうな顔だなぁって、オホホ。モッちゃんが気に入ったのも頷けます」
「なっ…」
(荷物の手配をしてくれた手前悪くは言えない…がっ、失礼な人だ!)
「さあお行きなさい。ココも時期に衛兵達が押し寄せてきます」
「姉さん、お元気で」
パルモは別れを惜しむようにフェインに抱き着いた。
フェインもまた彼女を受け止め、別れの挨拶が終わる。
「モッちゃんも。体に気を付けて」
冒険者ギルドの受付に招かれ、裏手にある部屋に通されると、そこは何もない空っぽの部屋だった。
騙されたのかと思い気や、パルモは何も目印のない壁の一カ所を指で押した。すると”ズズズゥ…”と音を立てて地下へと続く階段が現れた。
「マジかよ…」
「ここから用水路を渡って帝都の外まで行くよ。道中低級の魔物も出るから気を引き締めてね」
そう言って彼女はその暗く続く階段を下り始めた。
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