吾輩はハーヴグゥーヴァ

星島新吾

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4.様子がおかしい。

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こうして、ピオーネという若者が孤島で生活するのを眺めながら三か月が経とうとしていた。

「にしてもしぶといな……吾輩飽きてきたぞ」

吾輩はピオーネが普通に生きているので飽きてしまっていた。

たまにヤツが葉っぱと木の枝で家を作ったりしようとした時には、水を吹きかけて破壊した利して遊んだが、それ以来ピオーネは家を作ることをやめて洞窟で生活するようになってしまい、その遊びも出来なくなった。

そしてピオーネは吾輩が危害を加えないことが分かったのか、釣りの道具を作ったり森の中で狩りをするための罠を作ったりして、餓死するどころか快適に生活できるほどに文明を築くようにもなった。

「いつ死ぬか分からないから爆睡も出来ないし……かといって死ぬ気配もなしか」

吾輩は結局孤島から離れて、また海の近くの町でも破壊して周ろうかと思った矢先、仲間の鯨から通信が入った。

「長、また人間の船です! 」

懲りないねぇ、と思いながら吾輩も丁度暇を持て余していたためちょっかいをかけにお人間さんの元へと向かった。

船には女性が一人立っており、その女性をよく見ると前にピオーネの乗っていた船を見て泣いていた漁港の女だと分かった。

「おっ、ピオーネの女らしきメスじゃん。どうしたの」

鯨語で船の上に立つ女に言った。

「お前は……漁港に魚を持ってきたバケモノ……」

水面から顔を覗かせた吾輩に対して女は無礼な態度を取った。

普通ならばここで船を破壊して、女は他の仲間の餌にするのだが今回は違う。吾輩は多頭飼いに挑戦したくなっていたのだ。

だから貴様の無礼は貴様の町を破壊することで赦してやることにする。

「それでなんだ、娘。よもや吾輩を愚弄しに来ただけではあるまい」

何となく察しはつくが、吾輩は女が聞こえるように鳴いた。

「私の命をくれてやる。あの人にしたように私も食らうがいい。ただ、またあの時のように魚をこの船に乗せろ」

女の無礼な態度はとどまるところを知らず、周りに鯨がいれば問答無用で噛み殺されていてもおかしくはなかった。

しかし運が良いことに吾輩だけしか回りにはいない。彼女はどうやら運が良かったらしい。

「本当に行儀の悪い子だな……ピオーネは一体この子のどこが良いんだ? 」

吾輩はピオーネに与えた時よりも少なめに魚の雨を降らせると、女を口の中に入れた。

そして三か月前と同じように船を押してワザワザ港まで魚を運んで行ってやると、今度は人々が港に立って大勢待機しているのが目に見えた。

「……すごい数のギャラリーだね」

吾輩が湾内に入ると、小舟の集団が吾輩の押してきた船を取り囲んで、船の中にある魚を我先にと自分の小舟へと運んでいく。

吾輩の持ってきた魚がなくなるまで、数刻と立たなかった。

空になった船を見て、もういいかと思いながら去ろうとしたら、変な恰好をした婆さんが白い服を着て踊っている。

挑発かと思い、婆さんに向けて水を吹きかけた。

するとなぜか婆さんは喜んで踊り続けた。

吾輩は少し婆さんが気味悪く思い、すぐにその場から立ち去った。

ピオーネの元に向かうまでの間、口内がチクチクすると思いながら孤島につくと、吾輩は女を吐き出した。

すると女が短刀を握っているのが見え、口内がチクチクするのはアレのせいだということが分かった。

「お前次やったら足の骨折るからな」

鯨語で忠告すると、女は吾輩のことをギロリと睨んで孤島の中へと消えていった。

そしてしばらく経った後、ピオーネと女は再開出来たのか二人で生活を始めたようだった。

吾輩はそんな二人を見ながら、彼らが火を起こせば水を吹きかけ、木に登って木の実を取ろうとすれば木の実を水で吹き飛ばした。

そして海の中で腹を抱えて笑っていたのだが、二人ともそれに腹を立てるといった様子もなく、なにか作戦でもあるのか吾輩の目が届かない孤島の中央付近の森に生活圏を移動させた。

また家でも作っているようなら破壊してやろう。

吾輩はそう思いつつ、脳の半分を眠らせながら二人の動向を観察した。
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