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揺れ動く心
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あの男が出て行った後のバルコニーで。
ゆっくりと後ろを振り返ると、そこには涙を流してる瑞紀。
俺が握った手を一生懸命に握り返してる。
…
「…っきゃ、」
そんな瑞紀の手を強く引っ張って、バルコニーの入り口のすぐ横にある壁に瑞紀の背中をトン、と付けて驚く瑞紀の正面に立つ。
それから、スーツの胸ポケットにいれてあった、三角に折ってあった白色のハンカチをシュッと出して。
驚く瑞紀の、綺麗に整えられた髪を台無しにしない様に右手で抱えて、手に持ってるハンカチで瑞紀の唇をキュッキュッと拭いた。
「…や、と、」
あんな。
男に。
くそ。
むかつく。
キュッキュッ
ハンカチを持つ手の力が、考えれば考えるほど強くなっていく。
本当に。
あいつ。
ただじゃおかない。
そう思いつつ、ハンカチをパッと離してくちゃくちゃのまま胸ポケットじゃなく普通のポケットにしまい込んだ。
「あ、の、知哉さん…」
うるさい。
その口で。
あいつに
キスされた
その口で
話すな。
ハンカチを入れ終わった手を、瑞紀のすぐ横にある壁について瑞紀の細い足の間に自分の右足を入れて体勢を固定して。
「え、あの、」
うるさい事を言う瑞紀のその口に。
自分の顔を近づけて。
甘い香りが漂う、瑞紀に。
キスをする。
「…っ、」
話しかけてたせいで、瑞紀は口を開けてて。
そのおかげで簡単に瑞紀の唇に口を被せる事が出来た。
「…っ、…、とも」
話し出そうとする瑞紀に、角度を変えて何回もキスする。
俺と瑞紀以外には誰もいないバルコニーには、キスの音しかしなくて。
段々と瑞紀の俺のスーツを掴む力が緩まれていく。
その代わり瑞紀は、拙いながらも俺のキスに応えようとする。
瑞紀の頭にあった手を、崩れかけてる瑞紀を支えるために肩に置いて壁に押し付ける。
あんな。
男の。
キスの感触なんて。
全て。
忘れさせてやる。
ゆっくりと後ろを振り返ると、そこには涙を流してる瑞紀。
俺が握った手を一生懸命に握り返してる。
…
「…っきゃ、」
そんな瑞紀の手を強く引っ張って、バルコニーの入り口のすぐ横にある壁に瑞紀の背中をトン、と付けて驚く瑞紀の正面に立つ。
それから、スーツの胸ポケットにいれてあった、三角に折ってあった白色のハンカチをシュッと出して。
驚く瑞紀の、綺麗に整えられた髪を台無しにしない様に右手で抱えて、手に持ってるハンカチで瑞紀の唇をキュッキュッと拭いた。
「…や、と、」
あんな。
男に。
くそ。
むかつく。
キュッキュッ
ハンカチを持つ手の力が、考えれば考えるほど強くなっていく。
本当に。
あいつ。
ただじゃおかない。
そう思いつつ、ハンカチをパッと離してくちゃくちゃのまま胸ポケットじゃなく普通のポケットにしまい込んだ。
「あ、の、知哉さん…」
うるさい。
その口で。
あいつに
キスされた
その口で
話すな。
ハンカチを入れ終わった手を、瑞紀のすぐ横にある壁について瑞紀の細い足の間に自分の右足を入れて体勢を固定して。
「え、あの、」
うるさい事を言う瑞紀のその口に。
自分の顔を近づけて。
甘い香りが漂う、瑞紀に。
キスをする。
「…っ、」
話しかけてたせいで、瑞紀は口を開けてて。
そのおかげで簡単に瑞紀の唇に口を被せる事が出来た。
「…っ、…、とも」
話し出そうとする瑞紀に、角度を変えて何回もキスする。
俺と瑞紀以外には誰もいないバルコニーには、キスの音しかしなくて。
段々と瑞紀の俺のスーツを掴む力が緩まれていく。
その代わり瑞紀は、拙いながらも俺のキスに応えようとする。
瑞紀の頭にあった手を、崩れかけてる瑞紀を支えるために肩に置いて壁に押し付ける。
あんな。
男の。
キスの感触なんて。
全て。
忘れさせてやる。
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