政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅

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二人の間にある距離

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*瑞紀side*
夢を見た。

今はもう。

見るはずのない

そんな、儚い夢。

こんな夢を見ても、寂しくなるだけ。

見たくなかった夢のはずなのに。

離れていく夢に、私は泣きながら手を伸ばす。

“待って”

“行かないで”

バカみたい。

私は。





「…っやだ!」

そこで目が覚めた。

目の前には、そんな私を冷たく見下ろしながら壁に持たれてる知哉さんがいて。

は、は、と荒い呼吸を繰り返す。

「…は、はっ、はー…」

私は少し汗をかいた自分の顔を両手で覆い隠して荒い呼吸をどうにか押さえ込む。

すると。

目の前に立っていた、少しシャンプーの香りがする知哉さんは。

いつもと同じ様なその冷たい声色で。

「…唸ってた。」

その声には、心配の二文字よりむしろ迷惑の二文字が表立っていて。

「…すみません」

「…。寝るなら自分の部屋で寝てくれる。このソファで寝られても迷惑だよ。」

その言葉に。

確かにそうだとまだ少しおぼつかない足を懸命に動かして立ち上がる。

知哉さんはそんな私を見ると無言で、ドアの方へと身を翻して行って。

…。

寝よう。

そう考えて、私も知哉さんと同じ様にそばにあった角を曲がって歩いて行くと。

「…え…」

な、んで。

止まったはずの涙が、また流れてくる。

「…何で、泣くの。」

足を止めた私に、箸を持ったままの知哉さんはそんな私を不可解そうに見る。

知哉さんが、ご飯を。

「…っ」

涙が止まらないどころか益々流れてる私を見て、知哉さんはため息をついて箸を動かし始めた。

「…な、んで、急に…」

「…は?」

「だって、…っ今までは、食べてくれなかったじゃないですか…っ!」

私が泣きながらそう言うと。

知哉さんはこちらを見ずに。

「何それ。俺を責めてるわけ。」

「…そうじゃなくて「それに。」

そこで知哉さんは箸を止めてゆっくりと私を睨みつける。

「いつから、用意してたの、夕飯。」

…え。

「…あの「知らなかったんだけど。」
 
“知らなかった”?

「俺はいつも帰ってきたらシャワー浴びて寝て、起きて着替えて出るの繰り返しだからリビングなんてこないんだよ。」

…あ。

そうなんだ。

「私、知らなくて…」

「で?いつから?」

「…最初の日から…「それ、どうしてたの。」

「…え?」

知哉さんは呆れた様にため息をつきながら。

「だから。俺が食べてないんだからご飯は置いたままだったでしょ。それ、どうしてたの。」



俯きながら。

「朝、食べてました。」

「…なら良いけど。食べ物をそのまま捨てるなんて勿体無い事、してないだろうね。」

知哉さんはそんな私を椅子に座りながら、見上げる。

「…してません。」

私がそう言うと、知哉さんはため息をついて。

「勘違いして欲しくないから言っとくけど。俺がこれを食べるのも食料が勿体無いからだから。」

そう言いながらも、私が作った食べ物を口に運ぶ知哉さんを見て笑う。


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