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二人の間にある距離
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出来上がった食事を目の前に見ながら。
…人に作ってもらった食事を食べるなんて、何年ぶりだろう。
ましてや、女の。
母親以来だ。
苦々しく思いながら。
綺麗に盛り付けられた皿を見て。
「…いただきます。」
何か屈辱だ。
女の料理を食べるなんて。
でも人として、最低の挨拶だ、これは。
そう思い直しながら、箸に手を延ばし料理を口に運ぶ。
そんな俺を向かい側に座った俺を不安そうに見る瑞紀。
「…どうですか。」
…
俺は瑞紀を見ないようにして、箸を動かし続けながら。
「…普通。」
と言った。
その言葉に瑞紀は笑う。
「それなら、良かったです。」
は?
ここは普通、気分を害する所じゃ無いのか。
そう思いながら。
「君さ、iPhone持ってるよね。」
突然の言葉に、瑞紀は少し驚きながらも箸をおいて、はい、と言う。
「…ロック開いて渡して。」
?、というような顔をしながらも瑞紀は制服のポケットからiPhoneを取り出し俺に手渡してきた。
俺は無言でそれを受け取り、素早く操作してから瑞紀に渡す。
瑞紀がiPhoneを受け取りながら、
「どうしたんですか?」
と聞くので。
俺はニュースを見ながら
「三者面談の事で、すぐに連絡取れないのは困るから俺の携帯番号とメールアドレス、いれといたから。」
そう言いながら瑞紀を見ると。
…
瑞紀は大袈裟なくらい嬉しそうな顔をして、元から色付いたピンクの頬をさらにその色を深めながら、
「…ありがとうございます。」
と言った。
そんな瑞紀を見ながら
「あと何分位で学校に行くの?」
瑞紀は壁にかかっている時計を見ながら、30分です、と言う。
「出てから何分ぐらいで学校に着くの。」
「30分ぐらいだと思います。」
「…歩きで行ってるの。」
「はい。」
…
「…じゃあ、45分後、出るから。」
「…え。」
「車で送ってあげるから、学校の場所、案内して。君の行ってる学校の名前知らないから、ナビで調べられないから。」
「…あ、ありがとうございます。」
瑞紀は不安げな顔をしてそう答えた。
…何。
俺の運転に何か不安でも。
俺の視線がそう訴えていたのだろう、瑞紀は慌てたように小さな声で
「…っ違います、ただ、知哉さんが今日は優しいから。」
…は。
俺が優しい?
どこが。
必要な事だからやってるだけだけど。
なんかこの女、自分に良いように解釈しすぎじゃないのか。
俺が眉を寄せると。
瑞紀は、ゆっくりと笑った。
「早く、行くよ。」
「…っはい、ちょっと待って下さ「やだ。それ何回目。好い加減にしなよ。」
家を出る直前に瑞紀は、すぐ済みますから、と言って自分の部屋にこもったまま出てこなくなった。
そんな瑞紀に俺はドアの直ぐ隣にある壁に持たれて外から声をかけ続けてる。
…この女。
何してるんだ。
お前のせいで会社に遅れたらどうしてくれる。
ふざけるな。
腕時計をちらっと見て。
「…もう行く。頑張って走ってけば。」
そう言って革靴に足を通してドアに手をかけると。
「…っきゃ、わ、待って下さい…っ!」
振り返ると、瑞紀がバランスを崩しそうになりながらドアから出て来て。
そんな瑞紀を睨みつけながら。
「…何やってたわけ。ふざけないでよ。」
俺の言葉に瑞紀は茶色のローファーに足を通しながら、すいません、と謝る。
そんな瑞紀を見下ろしながら。
「ねぇ。」
その声に瑞紀が俺を見上げる。
「…っ。」
瑞紀も気づいたようで。
「近い。」
何せ俺と瑞紀は今、狭い玄関に靴をはいたまま立ってるわけで。
体と体が、触れ合ってる。
瑞紀の顔は見下ろした直ぐ真下。
「…っ近い、って言われても…早く、出でくださ…っ」
至近距離で真っ赤になった瑞紀の顔を見て、気づく。
さらに顔を近づけて、確かめる。
「とも、やさ「ねぇ、少し化粧してる?」
いつもより潤ってる唇と長いまつげ、白い肌はいつもより透明感を増して。
それを見ながら。
「…っ」
「それに。」
瑞紀の首筋に鼻を近づけながら。
「…っ」
「香水つけてるでしょ。」
そう言いながら顔を離して。
「…あのさ、色気付くのは勝手だけど、他人が不快にならない程度にしなよ。」
学校で校則違反になって呼び出しでもされたら、俺が不快になる。
そういう意味で言ったのだが、瑞紀は勘違いしたようで、
「…っえ、臭いですか?!」
そう言いながら首筋を押さえる。
何でそうなったんだ。
「そうは言ってないでしょ。」
すると瑞紀は顔を赤くしながら静かに、
「じゃ、良い匂い…ですか?」
その言葉に。
は。
何で俺がそんな事。
そう思いつつ。
もう一度首筋に鼻を近づけて。
「…良いんじゃない。」
香りは。
そう言うと。
瑞紀は嬉しそうに
「…この香水、お気に入りになりました。今。」
は。
だから。
それを俺に言ってどうする。
どうも思わないんだけど。
「あ、そ」
鍵を開けて、ドアを開けた。
…人に作ってもらった食事を食べるなんて、何年ぶりだろう。
ましてや、女の。
母親以来だ。
苦々しく思いながら。
綺麗に盛り付けられた皿を見て。
「…いただきます。」
何か屈辱だ。
女の料理を食べるなんて。
でも人として、最低の挨拶だ、これは。
そう思い直しながら、箸に手を延ばし料理を口に運ぶ。
そんな俺を向かい側に座った俺を不安そうに見る瑞紀。
「…どうですか。」
…
俺は瑞紀を見ないようにして、箸を動かし続けながら。
「…普通。」
と言った。
その言葉に瑞紀は笑う。
「それなら、良かったです。」
は?
ここは普通、気分を害する所じゃ無いのか。
そう思いながら。
「君さ、iPhone持ってるよね。」
突然の言葉に、瑞紀は少し驚きながらも箸をおいて、はい、と言う。
「…ロック開いて渡して。」
?、というような顔をしながらも瑞紀は制服のポケットからiPhoneを取り出し俺に手渡してきた。
俺は無言でそれを受け取り、素早く操作してから瑞紀に渡す。
瑞紀がiPhoneを受け取りながら、
「どうしたんですか?」
と聞くので。
俺はニュースを見ながら
「三者面談の事で、すぐに連絡取れないのは困るから俺の携帯番号とメールアドレス、いれといたから。」
そう言いながら瑞紀を見ると。
…
瑞紀は大袈裟なくらい嬉しそうな顔をして、元から色付いたピンクの頬をさらにその色を深めながら、
「…ありがとうございます。」
と言った。
そんな瑞紀を見ながら
「あと何分位で学校に行くの?」
瑞紀は壁にかかっている時計を見ながら、30分です、と言う。
「出てから何分ぐらいで学校に着くの。」
「30分ぐらいだと思います。」
「…歩きで行ってるの。」
「はい。」
…
「…じゃあ、45分後、出るから。」
「…え。」
「車で送ってあげるから、学校の場所、案内して。君の行ってる学校の名前知らないから、ナビで調べられないから。」
「…あ、ありがとうございます。」
瑞紀は不安げな顔をしてそう答えた。
…何。
俺の運転に何か不安でも。
俺の視線がそう訴えていたのだろう、瑞紀は慌てたように小さな声で
「…っ違います、ただ、知哉さんが今日は優しいから。」
…は。
俺が優しい?
どこが。
必要な事だからやってるだけだけど。
なんかこの女、自分に良いように解釈しすぎじゃないのか。
俺が眉を寄せると。
瑞紀は、ゆっくりと笑った。
「早く、行くよ。」
「…っはい、ちょっと待って下さ「やだ。それ何回目。好い加減にしなよ。」
家を出る直前に瑞紀は、すぐ済みますから、と言って自分の部屋にこもったまま出てこなくなった。
そんな瑞紀に俺はドアの直ぐ隣にある壁に持たれて外から声をかけ続けてる。
…この女。
何してるんだ。
お前のせいで会社に遅れたらどうしてくれる。
ふざけるな。
腕時計をちらっと見て。
「…もう行く。頑張って走ってけば。」
そう言って革靴に足を通してドアに手をかけると。
「…っきゃ、わ、待って下さい…っ!」
振り返ると、瑞紀がバランスを崩しそうになりながらドアから出て来て。
そんな瑞紀を睨みつけながら。
「…何やってたわけ。ふざけないでよ。」
俺の言葉に瑞紀は茶色のローファーに足を通しながら、すいません、と謝る。
そんな瑞紀を見下ろしながら。
「ねぇ。」
その声に瑞紀が俺を見上げる。
「…っ。」
瑞紀も気づいたようで。
「近い。」
何せ俺と瑞紀は今、狭い玄関に靴をはいたまま立ってるわけで。
体と体が、触れ合ってる。
瑞紀の顔は見下ろした直ぐ真下。
「…っ近い、って言われても…早く、出でくださ…っ」
至近距離で真っ赤になった瑞紀の顔を見て、気づく。
さらに顔を近づけて、確かめる。
「とも、やさ「ねぇ、少し化粧してる?」
いつもより潤ってる唇と長いまつげ、白い肌はいつもより透明感を増して。
それを見ながら。
「…っ」
「それに。」
瑞紀の首筋に鼻を近づけながら。
「…っ」
「香水つけてるでしょ。」
そう言いながら顔を離して。
「…あのさ、色気付くのは勝手だけど、他人が不快にならない程度にしなよ。」
学校で校則違反になって呼び出しでもされたら、俺が不快になる。
そういう意味で言ったのだが、瑞紀は勘違いしたようで、
「…っえ、臭いですか?!」
そう言いながら首筋を押さえる。
何でそうなったんだ。
「そうは言ってないでしょ。」
すると瑞紀は顔を赤くしながら静かに、
「じゃ、良い匂い…ですか?」
その言葉に。
は。
何で俺がそんな事。
そう思いつつ。
もう一度首筋に鼻を近づけて。
「…良いんじゃない。」
香りは。
そう言うと。
瑞紀は嬉しそうに
「…この香水、お気に入りになりました。今。」
は。
だから。
それを俺に言ってどうする。
どうも思わないんだけど。
「あ、そ」
鍵を開けて、ドアを開けた。
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