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二人の間にある距離
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ポケットから鍵を出して、それを鍵穴にさしてゆっくりと回す。
それからドアを開けて。
廊下の電気がついていなかったので、ドアのすぐ横にあったスイッチを押す。
パッと明かりがついて。
靴を脱ごうとふっと足元を見ると。
…
リビングのドアをちらりと見ると。
リビングの明かりもついていない。
「…」
いつも通り靴を脱いで静かな廊下を進んで自室に荷物も置かずにそのままの足で、リビングに向かいドアを開ける。
そこから手を延ばして電気のスイッチを押す。
明るくなったリビングの中を余すところなく歩き回る。
…
ドアも閉めずにリビングから出て寝室を開ける。
またすぐに電気を付けてさっきとは違い、一通り部屋を見回して、書斎へと足を運ぶ。
ドアを開け中を進みながら電気を順番に付けていく。
頭が痛い。
早く寝たいのに。
あの女。
そう思いながらも一面の窓が見えた突き当たりの所まで急ぎ足で歩いて。
また引き返す。
…ふざけてる。
もう一度靴箱を確認する。
ため息をついて。
もしかしてと思いながら自室を開けるも一昨日俺が触った以来、変化は無いようで。
ぱっと廊下を見ると。
リビングのドアも
書斎のドアも
靴箱も。
全て、開けっ放しで。
電気だって付きっぱなしで。
また電気を消してドアを閉める、という作業を考えただけでうんざりする。
このままシャワーは朝で良いから、寝たい。
この頭痛をなんとかしたい。
はぁ。
嘘泣きした女のせいで。
それから、また体の向きを変えて隣の部屋を二回ノックする。
しん、と静まり返ったマンション。
「…瑞紀。」
寝てるのかもしれない、と声をかける。
何で返事をしない。
「瑞紀、返事ぐらいしなよ。」
しょうがない。
「…入るよ。」
そう声をかけながらドアを開けて明かりをつけると。
その部屋中は、白とピンクを基調とした華奢な部屋で。
この部屋、こんな風にされたのか。
最悪だな。
そんな事を思いながら。
部屋全体を見回すも。
やっぱり。
「…いない。」
瑞紀が。
いない。
遅くに帰ってきて毎日顔を見なくても、玄関の隅に丁寧に揃えられている茶色のローファーが置いてある事で家にいる事は確認出来た。
ポケットからiPhoneを取り出してホームボタンを押して時刻を確認する。
9時半。
補導の時間って何時だ?
あの女の安全とかそんなのはどうでも良い。
こんな時間に外に出ているあの女が悪い。
自己責任だ。
俺がこんなに必死に探すのはそうじゃない。
この一週間や二週間、家に遅く帰るようになったのは籍を入れた事で変更や書かなきゃならない書類を、一人でやっていたのも原因の一つだった。
本当は相手と一緒にやるんだろうけど。
俺の場合、未成年だし。
だからだ。
自分でも、何であんなに早く片付けてしまったのか、悔やんでる。
今。
あの女が補導されたとして。
警察が連絡するのは。
あの女の母親でも
父親でも
親戚でもなく。
書類上、旦那である、俺だ。
瑞紀の部屋の電気を消してドアを閉めてから。
ため息を付いて。
「最悪。」
あの女を嫁にして良い事なんて何も無い。
手間が増えただけだ。
…もう良い。
どうでも。
勝手にすれば良い。
さっき付けっぱなしだった電気を消したり、開きっぱなしだったドアを閉めて回って。
家に帰ってきたく無いなら、俺だってその方が好都合だ。
持っていた鞄を自室の机に置いてコートを壁に掛けてスーツのボタンに手をかける。
部屋着に着替えて、ワイシャツとシャツを洗濯機に放り込んで。
さっさと布団に潜る。
補導でも何でもされて、朝まで保護されとけばいい。
そっちの方が家にいるより全然安全だろう。
多分。
知らないけど。
学校には行かせてもらえるだろうし。
そしたら、俺には連絡は来ないだろう。
布団に入った途端、耐えきれない体の重さに瞼が閉じてゆく。
その感覚に身を任せ、久々の長い眠りにつけるような気がした。
それからドアを開けて。
廊下の電気がついていなかったので、ドアのすぐ横にあったスイッチを押す。
パッと明かりがついて。
靴を脱ごうとふっと足元を見ると。
…
リビングのドアをちらりと見ると。
リビングの明かりもついていない。
「…」
いつも通り靴を脱いで静かな廊下を進んで自室に荷物も置かずにそのままの足で、リビングに向かいドアを開ける。
そこから手を延ばして電気のスイッチを押す。
明るくなったリビングの中を余すところなく歩き回る。
…
ドアも閉めずにリビングから出て寝室を開ける。
またすぐに電気を付けてさっきとは違い、一通り部屋を見回して、書斎へと足を運ぶ。
ドアを開け中を進みながら電気を順番に付けていく。
頭が痛い。
早く寝たいのに。
あの女。
そう思いながらも一面の窓が見えた突き当たりの所まで急ぎ足で歩いて。
また引き返す。
…ふざけてる。
もう一度靴箱を確認する。
ため息をついて。
もしかしてと思いながら自室を開けるも一昨日俺が触った以来、変化は無いようで。
ぱっと廊下を見ると。
リビングのドアも
書斎のドアも
靴箱も。
全て、開けっ放しで。
電気だって付きっぱなしで。
また電気を消してドアを閉める、という作業を考えただけでうんざりする。
このままシャワーは朝で良いから、寝たい。
この頭痛をなんとかしたい。
はぁ。
嘘泣きした女のせいで。
それから、また体の向きを変えて隣の部屋を二回ノックする。
しん、と静まり返ったマンション。
「…瑞紀。」
寝てるのかもしれない、と声をかける。
何で返事をしない。
「瑞紀、返事ぐらいしなよ。」
しょうがない。
「…入るよ。」
そう声をかけながらドアを開けて明かりをつけると。
その部屋中は、白とピンクを基調とした華奢な部屋で。
この部屋、こんな風にされたのか。
最悪だな。
そんな事を思いながら。
部屋全体を見回すも。
やっぱり。
「…いない。」
瑞紀が。
いない。
遅くに帰ってきて毎日顔を見なくても、玄関の隅に丁寧に揃えられている茶色のローファーが置いてある事で家にいる事は確認出来た。
ポケットからiPhoneを取り出してホームボタンを押して時刻を確認する。
9時半。
補導の時間って何時だ?
あの女の安全とかそんなのはどうでも良い。
こんな時間に外に出ているあの女が悪い。
自己責任だ。
俺がこんなに必死に探すのはそうじゃない。
この一週間や二週間、家に遅く帰るようになったのは籍を入れた事で変更や書かなきゃならない書類を、一人でやっていたのも原因の一つだった。
本当は相手と一緒にやるんだろうけど。
俺の場合、未成年だし。
だからだ。
自分でも、何であんなに早く片付けてしまったのか、悔やんでる。
今。
あの女が補導されたとして。
警察が連絡するのは。
あの女の母親でも
父親でも
親戚でもなく。
書類上、旦那である、俺だ。
瑞紀の部屋の電気を消してドアを閉めてから。
ため息を付いて。
「最悪。」
あの女を嫁にして良い事なんて何も無い。
手間が増えただけだ。
…もう良い。
どうでも。
勝手にすれば良い。
さっき付けっぱなしだった電気を消したり、開きっぱなしだったドアを閉めて回って。
家に帰ってきたく無いなら、俺だってその方が好都合だ。
持っていた鞄を自室の机に置いてコートを壁に掛けてスーツのボタンに手をかける。
部屋着に着替えて、ワイシャツとシャツを洗濯機に放り込んで。
さっさと布団に潜る。
補導でも何でもされて、朝まで保護されとけばいい。
そっちの方が家にいるより全然安全だろう。
多分。
知らないけど。
学校には行かせてもらえるだろうし。
そしたら、俺には連絡は来ないだろう。
布団に入った途端、耐えきれない体の重さに瞼が閉じてゆく。
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