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二人の間にある距離

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*瑞紀side*
知哉さんと一緒に暮らし始めて、約一週間目の朝。

んー、と伸びをしてからトイレへ行って、リビングへと歩いて行く。

…今日は、どうかな。

でも。

きっと。

かちゃり。

静かにリビングのドアを開けて、キッチンの向こう側にあるダイニングテーブルの上を見ると。



チクン。

胸が、痛んだ気がした。

ダイニングテーブルの上には、昨日余分に作っておいた知哉さんの晩御飯。

それが、作って私が置いたまま、放置されている。

すっかり冷めて、乾燥してしまったご飯や、冷たくなったスープ、しんなりしてしまったサラダ。

今日だけじゃない。

昨日も、その前も、そのまた前も。

ずっと。

知哉さんのために作った料理は私が置いた時のままで。

触られた形跡もない。

「…も、やだ。」

少し笑いながら。

毎日洗濯機には着た跡があるワイシャツやシャツが新しく入ってるから帰って来てるのは間違いないのに。

ラップをかけてあったサラダ以外の料理を手に取って、ラップを取ってから電子レンジに入れてボタンを押す。

クルクルと回る料理を眺めながら。

誰かのために作った料理を食べてもらえずに、自分で食べるほど虚しい事なんてない。







ずっと見てた。

あの人は、私の視線には決して気づいてなかったけれど。

ずっと。

ずっと。

小さな時から。

私には、あの人だけが。

輝いて見えたから。

この色あせた世界から浮いてるように見えた。

ずっと。

想いを馳せて。

叶えば良い、と。

伝えるだけでも良い、と。

そう思っていたのに。

やっと。

近づけたのに。

どうしたら良いの。

どうしたら振り向いてもらえるの。

ねぇ。

ねぇ。

ずっと。

あなただけしか見えてないの。

ずっと。

好きなの。

『俺は、君に愛情を注ぐ気など無いって言ったはずだけど。』




冷めたから温めたはずのご飯は、頬を流れる涙のせいか、ひどく冷たく感じた。


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