政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

見えてきた“彼女”

8

「調子はどう。」

ゆっくりと病室のドアを開けながら、そう言うと。

瑞紀は、俺が来た事を喜ぶようにベットから身を乗り出してこちらを見ながら。

「…大丈夫です。」

そんな瑞紀に笑いながら、ベットの隣にある椅子に腰を下ろして。

ふと、ベットの上に視線を投げると。

…

俺は、ベットの上に落ちてた指輪をそれを持ち上げる自分の手が震えない様にしながら。

「…落ちてる。大事な物だから、無くさないでよ。」

そう言いながら、落ちていた指輪をはめてやろうと瑞紀の左手を取ると。

思わず、眉を寄せてしまう。

「…」

いつから。

こんなに細くなったんだ。

だから。

指輪が？

何で？

この前は。

つい最近は。

ここまでじゃなかったはず。

…

抗がん剤だって。

きちんと。

「…知哉さん？」

その声にハッとして。

必死で笑いながら。

「…ネックレスにしよう。また、どこかで指輪を通す物を買ってくるから。」

瑞紀は、そう言いながら瑞紀の指輪をポケットにしまった俺の異変に気づいたのか気づいてないのか。

笑って、はい、と言った。








それから、二時間ぐらい瑞紀と話して。

離れがたい衝動を感じながらも、面会時間の終わりを考えて腰を上げる。

「…じゃあ、帰るから」

俺のその言葉と仕草に。

「…」

眉を下げる瑞紀の頭を撫でて。

「…また、明日も来る。」

そう言ってから。

瑞紀の方をみない様にして。

病室を出て。

…

瑞紀の病室のすぐそばにあるベンチで考え込んでいると。

瑞紀の担当医が向こう側からやって来て。

俺に気づいて、頭を下げてから。

「…ちょうど良かった。知哉さん、少し、お時間ありますか？」