政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅

文字の大きさ
上 下
74 / 125
すれ違う二人

16

しおりを挟む
*瑞紀side*
脱衣所のドアを後ろ手に閉めてから。

何のためにこんなに頑張ったのかと考えると涙が出てくる。

脱衣所の奥へと進んで、トレンチコートを脱いでコートを置く場所にかけて。

目の前にあった洗面所についている大きな鏡を見ながら、ひどい顔だとため息をついてワンピースの後ろについているファスナーを下げた時。

バタンっ

勢い良くドアが開いて。

その先には思いっきり眉を寄せて怒ってる、知哉さん。

何で。

怒ってるの?

怒りたいのは、むしろ私。

泣いてる顔を見られまいと、必死で、伏せた顔の代わりに開いてる背中を向けて前を向くと。

知哉さんは、反対方向を向く私に一歩一歩近づいて来て。

それに対応するように、私も一歩一歩前に進むけど。

私の前は。

壁。

私が壁にひっついて、知哉さんが近づいてくる距離をどうにも出来なくなった時。

知哉さんは俯く私の顔の横に手を置いて。

知哉さんの声が頭上で響く。

「…こっち、向きなよ。」

「やです…」

「瑞紀。」

「…や。」

知哉さんのため息が聞こえて。

「何で急に行かないとか君が決めてるの。俺が行くって言ったら行くんだよ。」



何で、私なの?

広瀬先生と

一緒にいたじゃない。

私じゃなきゃいけない理由なんて

きっと無い。

広瀬先生と、

行けば良いじゃない。

「…行きません…っ」

私が絞り出した声でそう言うと。

知哉さんは。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

【完】あなたから、目が離せない。

ツチノカヲリ
恋愛
入社して3年目、デザイン設計会社で膨大な仕事に追われる金目杏里(かなめあんり)は今日も徹夜で図面を引いていた。共に徹夜で仕事をしていた現場監理の松山一成(まつやまひとなり)は、12歳年上の頼れる男性。直属の上司ではないが金目の入社当時からとても世話になっている。お互い「人として」の好感は持っているものの、あくまで普通の会社の仲間、という間柄だった。ところがある夏、金目の30歳の誕生日をきっかけに、だんだんと二人の距離が縮まってきて、、、。 ・全18話、エピソードによってヒーローとヒロインの視点で書かれています。

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

初恋の呪縛

泉南佳那
恋愛
久保朱利(くぼ あかり)27歳 アパレルメーカーのプランナー × 都築 匡(つづき きょう)27歳 デザイナー ふたりは同じ専門学校の出身。 現在も同じアパレルメーカーで働いている。 朱利と都築は男女を超えた親友同士。 回りだけでなく、本人たちもそう思っていた。 いや、思いこもうとしていた。 互いに本心を隠して。

じれったい夜の残像

ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、 ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。 そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。 再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。 再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、 美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

処理中です...