虎は獲物を逃がさない

美桜羅

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出会い

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佐伯さんと目があって、思わず逸らして下を向く。

なんで?

意味がわからない

あの人が何を考えてるのか全然わからない

そんなことを考えている間に、私の方へと近づく靴音がする。

「…っ」

私の落とした視線の中に、茶色の革靴が入ってきた。

彼は何も話さない。

どういうつもり?
何がしたいの?

私が上を向こうとした瞬間。

「~…っ」

彼の
細い指先が
私の頬をなぞった

「嬉しそうな顔、しちゃって」

私の頬を顎先から上へなぞり、目尻の下まできたところで今度は下がる。

「や、」

「わかってやってるんだろう」

彼の指が、私の顎先で止まる。

「男があんな顔されたらどうなるか」

彼の指先で
ゆっくりと
上へと視線を上げさせられる。

「俺に見せたかったんだろう」

私の目の前には
全て見透かしたような
余裕の笑みを携える人

「…っ、ちが」

「ゆあ」

ちがう、そう言おうとしたのに、急に名前を呼ばれて思わず黙ってしまう。

「さっきも言ったけど無理矢理なのは趣味じゃないんだ」

「…え、」

「俺はこの後の飲み会には行かないよ」

彼の指先がもう一度私の頬を撫でて
そっと離れていく。

「無駄なことに時間をかけるのも好きじゃないんだ」

「…」

彼はポケットに手を入れて、じっと私を見る。 


私の出方を伺っている

さっきも感じた感覚だ

お前から、手を伸ばせ

そう言われている


彼の目に耐えられず、思わず下を向く。


なんでこんな思いをしなきゃならないの
私はただ誘われてきただけで
出会ったばかりの人に
なんでこんなことされなきゃならないの 


そんなことをグルグル考えて、何も言葉を発することができない。

彼のため息が聞こえる。

思わず体が震えてしまう。


しばらくして彼は、私の背後に向かって歩き出した。

振り返って、遠ざかっていこうとする彼の背中を見る。

彼の足取りに迷いはない。

だんだんと、遠くなっていく。

「…っ、」

あんなひと、ほかっとけばいいじゃない
時間が経てば忘れていく
明日になれば、きっと忘れる

反対に向き直って、玲たちの集団に戻ろうと一歩踏み出す。






ほんとうに?


















考えるより先に足が動いていた。

彼のスーツの裾を引っ張る。

「待っ、て…」

彼はゆっくりと振り返り
私の顔を見て
得意げに微笑んだ

















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