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出会い
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私の頬を軽く撫でた男の人の手が、少し彷徨ってからもう一度しっかり私の頬を触ろうとする様子をどうすることもせず、目で追いかけていると、おーい坂木、という声がした。
目の前の男の人はどうやら坂木というらしく、彼は私の背後にいる今の呼びかけに対して、今いく、と伝えてから
「ちょっと、待ってて」
と私に言った。
私がその言葉に曖昧に笑うと、坂木さんは少し微笑んでから呼ばれた方へ駆け足で向かった。
私も振り返り、坂木さんの背中越しに佐伯さんの背中を見る。
坂木さんは彼の背中を軽く小突いてから、話の中へと入っていった。
彼は、私を一切振り返らない。
私がぼんやり背中を見ていると、彼と話をしていた中の1人が
もう一軒いきたい人!
と手を挙げながら声を上げた。
「…え、」
予想していなかった展開に驚いたのはどうやら私だけだったようで、玲を始め私の友達は、キャーキャー言いながら、
行きまーす
やったー!
と口にした。
え、どうしよう…
私が考えていると、玲が近寄ってきて私の腕に自分の腕を絡めて
「ゆあもいっきまーす!」
と言った。
男の人たちの、いえーい最高の金曜日、という返事が聞こえる。
「ちょ、」
「良いじゃーん、どうせこういう場にゆあはもう来ないって言うんだから、今日は最初で最後、思いっきり楽しもうよ!」
「いや、でも、私は「明日はゆあ、休みでしょ?」
有無を言わせない玲に半ば無理矢理引っ張られそうになるところを、私はやんわり腕を解いてから、わかったよ、と言った。
玲は私のその返事に満足したようで、おそらく次の店に向かって歩き出したみんなの先頭へと向かっていく。
私が中々歩き出せずにいると、坂木さんが私に近づいてきて
「2人だけでのご飯はまた日を改めてってことにしたいんだけど…
連絡先の交換、良いかな」
とポケットから携帯を出しながら言った。
一瞬戸惑いはしたものの、私も素直にその言葉に従い、連絡先を交換する。
「また連絡するね」
坂木さんの言葉にうなづく。
すると、前方から、おーい坂木置いていくぞ~、という声がした。
坂木さんは、あいつら本当空気読めよな、って呟いてから、顔の前で手を立てて謝るようなポーズをした後、お前らが待っててくれれば良いだろーが、と言いながら向かっていった。
私はたった今交換したばかりの、坂木さんの電話番号が表示された画面を見る。
いい人、そうだしな
付き合うとかそういうこと関係なく、いい人そう
あんな
人より
ずっと
そこまで考えて、玲達の声が段々と遠ざかっていることに気づき、
行かなきゃ
と顔をあげると。
彼が私のことをじっと見ていた。
目の前の男の人はどうやら坂木というらしく、彼は私の背後にいる今の呼びかけに対して、今いく、と伝えてから
「ちょっと、待ってて」
と私に言った。
私がその言葉に曖昧に笑うと、坂木さんは少し微笑んでから呼ばれた方へ駆け足で向かった。
私も振り返り、坂木さんの背中越しに佐伯さんの背中を見る。
坂木さんは彼の背中を軽く小突いてから、話の中へと入っていった。
彼は、私を一切振り返らない。
私がぼんやり背中を見ていると、彼と話をしていた中の1人が
もう一軒いきたい人!
と手を挙げながら声を上げた。
「…え、」
予想していなかった展開に驚いたのはどうやら私だけだったようで、玲を始め私の友達は、キャーキャー言いながら、
行きまーす
やったー!
と口にした。
え、どうしよう…
私が考えていると、玲が近寄ってきて私の腕に自分の腕を絡めて
「ゆあもいっきまーす!」
と言った。
男の人たちの、いえーい最高の金曜日、という返事が聞こえる。
「ちょ、」
「良いじゃーん、どうせこういう場にゆあはもう来ないって言うんだから、今日は最初で最後、思いっきり楽しもうよ!」
「いや、でも、私は「明日はゆあ、休みでしょ?」
有無を言わせない玲に半ば無理矢理引っ張られそうになるところを、私はやんわり腕を解いてから、わかったよ、と言った。
玲は私のその返事に満足したようで、おそらく次の店に向かって歩き出したみんなの先頭へと向かっていく。
私が中々歩き出せずにいると、坂木さんが私に近づいてきて
「2人だけでのご飯はまた日を改めてってことにしたいんだけど…
連絡先の交換、良いかな」
とポケットから携帯を出しながら言った。
一瞬戸惑いはしたものの、私も素直にその言葉に従い、連絡先を交換する。
「また連絡するね」
坂木さんの言葉にうなづく。
すると、前方から、おーい坂木置いていくぞ~、という声がした。
坂木さんは、あいつら本当空気読めよな、って呟いてから、顔の前で手を立てて謝るようなポーズをした後、お前らが待っててくれれば良いだろーが、と言いながら向かっていった。
私はたった今交換したばかりの、坂木さんの電話番号が表示された画面を見る。
いい人、そうだしな
付き合うとかそういうこと関係なく、いい人そう
あんな
人より
ずっと
そこまで考えて、玲達の声が段々と遠ざかっていることに気づき、
行かなきゃ
と顔をあげると。
彼が私のことをじっと見ていた。
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