虎は獲物を逃がさない

美桜羅

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出会い

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「えー、小川おがわゆあ、です。
大学2年生です、経済学部です。
よ、ろしくおねがいします…」

私の前に挨拶した玲にならって、自己紹介をする。

目の前にいる3人の男性は笑顔を浮かべながら、静かに拍手した。

「みんな大学生だし、何か気になることあったら遠慮なく聞いてね!
俺らに関してじゃなくても全然ウェルカムだから!」

合コンを開いた友人と親しげに話していた男性がそう言うと、友人達は普段話す時より一段高いトーンで、ありがとうございまーすっ、嬉しい~、何から聞こうかなぁ~、と次々に口にした。

…なんだこの茶番は。
一周回って面白い。

隣でニコニコ笑って、男性の言葉に相槌を打っている玲の腕をこついて
「なんで私の前の席あいてんの?」
と聞いた。

そうすると、玲は呆れたように笑って
「あんた全然話聞いてないね…
遅れてくるって言ってたじゃん!」
と口早に言ってすぐ男性達の会話へと戻っていった。

へー、遅れてくるのか。
そりゃそうか、こっち女の子4人に対して男の人3人って変か。

なんて呑気に考えながら、男性達と友人の会話をラジオ感覚で聞く。

みんなが行ってる大学偏差値結構高いよねー
いやいや全然ですよ~
俺らなんてみんなからしたらおじさんだもんなー
えー、そんなことないです!私たち21でみなさん27ですよね?6歳差なんてすごい理想的ですよ
お、嬉しいこと言ってくれるじゃんかんぱーい!

そこまで聞いたところで、私の隣に座っていた玲の前に座っていた男性に声をかけられた。

「…大丈夫?気分悪い?」

「あ、いや、大丈夫です。ただちょっとどうすればいいかわかんなくて。」

そういうと、男性は横で繰り広げられている会話を横目で見て言った。

「あー、そうだよね、なんかごめんね」

「いやいや、本当に、大丈夫なんで…
こちらこそ変に気を使わせてしまってすみません。」

何か話さないと…
気を使わせてしまう。
どうしよう。

そう考えているとその男性がゆっくりと、俺もさこういうところ初めてだからどうしていいかわかんないんだよね、と言った。

「え、すごいなれてるように見えました…」

「ほんと?それだったら嬉しいなぁ。
大人として体裁が保ててるよ。」

そう言って柔らかく笑うその人を見て、初めてと言ったのが嘘か本当かわからないけどそのおかげで緊張が少しほぐれたのを感じる。

それに対して私も笑い返すと、彼は「せっかくだから美味しい料理しっかり食べて帰ろうよ」と言った。

「そうですね、料理の味しっかり感じて帰ります。」
と私が笑って返すと、あいつらの分も食べちゃおうよ、と笑って返された。

隣では相変わらず、合コン定番であろう話が展開されている。

この中だったら誰が一番タイプ?もー正直に言っちゃお!
えー、いいんですか、正直に言って!泣かないでくださいよー
泣かないよ!でも願ってる!

その場に出てきた料理は本当に美味しくて、話してばっかで料理に目がいってないなんてアホだなぁ、と話した男の人に笑いながら、ほんとですね、なんて返す。

…優しいなぁ
いいひとだなぁ

そんなことを考えていると。


「こちらになります。」


店員さんに連れられて1人の男の人が歩いてきた。

長身で、顔が綺麗で、ストライプのスーツがよく似合っている。

髪型は前髪をかきあげるようにセットされていて、自分の顔立ちに似合う髪型がよくわかっているようだった。

その男の人は、合コンスタイルに座られたテーブルの状況を見るなり、なにこれ、と言った。

その声に、先ほどまで会話に大忙しになっていた2人の男の人が勢いよく立って、彼の肩にガッと腕を回す。

「何って合コンだよ合コン!」

「いや、聞いてないけど。」

その腕を振り払うようにして、ひたいに眉を寄せながらその男の人は静かに言った。

友人達は急に料理に向き直って、きゃーおいしそー、と口にする。

「久しぶりにご飯食べようって言うから来たんだけど」

「だから、ご飯食べよ?」

本当にこれおいしー見た目も可愛いし!
と言う友人達を一切見ず、その男の人はため息をつく。

「帰る」

「え!」

「無駄だから帰る。」

「いやいや、待て待て待て!」

2人の男性はそう言いながら、無理やり腕を引っ張り肩に手を置いてぐっと押し込むようにして私の前に着席させた。

「ちょっと…」

私の前で、ボソボソとその2人が言う。

私は少し気まずくなって料理を口に運ぼうかと目を落とそうとすると。













その
綺麗な目が
私の目を
ゆっくりと
見た。

1、
2、
3、
4、
5

ほんの五秒間ほどだったと思うが、実際はそれより長く感じられた。






彼の目が
私を離さない
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