社内で秘密の恋が始まる

美桜羅

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4*雫サイド*

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「おはようございます…」

誰もいないだろう、早朝の秘書課のフロアに少し小さめの声で挨拶をした。

…もしかしたら誰かいるかもしれないし…

今日から、松永さん専属の秘書になるということで、秘書課にある私の荷物を松永さんの横に配置されてるだろう机に全て移動させねばならない。



コートを着たまま、なぜか秘書課にだけある制服にも着替えずに自分の机に向かって歩き机の上をゆっくりとなぞる。

結構、気に入ってたなぁ。

ここの人達も
ここの場所も
ここの席も

これからも同じ会社にいるはずなのに
秘書になるとその人にかかりきりになるため、ここにいる仲の良い人とも多分あんまり会えなくなる。

松永さんはあくまで仕事上の関係しか持ってくれなそうだし、一緒にお昼とかいってくれるだろうか。

ご飯も一人で食べるのだろうか。

…できれば、誰かと話しながら食べたいのになぁ。

そう考えながら、秘書課が専属秘書になる時荷物を移動させるために用意されている大きめの収納ボックスみたいなものに荷物を入れて行く。



だんだんと、自分の中が空っぽになる気がした。










こんなに朝も早ければきっと誰もいないだろうと、制服に着替えずそのまま昨日松永さんに挨拶をするために緊張しながら通ったフロアを通る。

目に映ったのは今まで私がいた職場とは比べ物にならないくらい、時間が早く動き人々が自分の思いを発散する活発なところだった。

なぜか、秘書課の自分がこの場にいるのが恥ずかしくなって思わず俯いて足早に松永さんの元に向かったのを覚えている。

『期待してるから』

あの時の、優しく少し笑った松永さんの顔と声を思い出す。

その表情にすごく安心した。

…けど、やっぱりうまくやれる気はしない。

そんなことを考えながら、松永さんのデスクのすぐ隣の角をまがり、デスクの正面に行こうとすると。

ガラガラと台車を押してきた私にも気づかず、一心不乱にパソコンと向き合っている松永さんがいた。

…え?

この人何時から仕事してるんだろう。

こんな早くから、まだ誰もきていない時間からたった一人で仕事をしているのだろうか。

松永さんは思わず立ち止まった私に気づいたのか、ふっと手を止めてゆっくりと私を見据える。

そんな私に対して松永さんは
「…おはよう。
早いね。」
と言った。


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