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12*雫サイド*
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お昼休みの鐘が鳴った。
先ほどまでパソコンの音と小さな話し声しかしなかったのが嘘のように、フロアが一気に賑やかになる。
私の足元には、ランチバックに入ったいつもより量の多いお弁当。
ちら、と隣に座る松永さんをみるとお昼休みの鐘がなったことにまるで気付いていないかのように平然とパソコンを打ち続けている。
お弁当作ってきたのになぁ…
そもそも松永さんが作ってきてって言ったんだから、誘ってくれたらいいのに…
楽しみに、してたのになぁ…
足元を見ながら、モゾモゾとしていると松永さんがその様子に気付いて私に声をかけてきた。
「…立石さん、お弁当「つ、作ってきました!」
念願の言葉につい食い気味で反応してしまう。
「っす、すみません…っ」
わー恥ずかしい…っ!!
おそらく真っ赤になってるであろう顔を思わず下に向けてしまう。
すると、松永さんがやんわりと笑った、気がした。
「嬉しいな」
その言葉に思わず顔を上げると、松永さんは優しい顔で笑っていた。
「ありがとう、立石さん」
…っ
その言葉とか
雰囲気で
わかってしまった。
挨拶を一方的にされ続ける理由や
その中に親しみが込められてる理由や
これから、私がどうなってしまうかとか。
「…こ、こんなところ使ってもいいんでしょうか…」
「いいんだよ、人がいないんだから。」
松永さんに連れられてきたのは、一番奥の会議室だった。
社長の、いい会議をするためには社員の気持ちづくりから、どの言葉によりふかふかのソファやふわふわの絨毯が敷かれた会議室はとても居心地の良いものになっている。
大きな窓ガラスから見える景色は最高。
だけど。
「こ、こんな場所でお昼食べてもいいんでしょうか…」
「大丈夫、鍵、かけたし。」
それが、怖かったりして…。
私が扉の方をちらちら見ていると、松永さんは、お腹すいたな、と言った。
「あ、あの、もしかしたらお口に合わないかもしれないし…」
「作ってきてもらえただけで嬉しいよ」
「そんなにたいしたものじゃないし…」
「手作りってだけでたいしたものだよ」
「お、お弁当箱もパックで…」
「急だったからね」
私の小さな小さな言い訳が全て松永さんによって集約されてしまったので、私は緊張しながらもランチバックから紙コップを出した。
「なに、これ」
松永さんがそのコップを指差しながらそう聞いてきた。
私はランチバックに入っていた小さな水筒を開けながら
「お味噌汁入れようと思って。いつもはスープジャーに入れるんですけど、それも一つしかないから…」
と話す。
…少し熱めにしておいたけど、さめてないかなぁ
私が出したコップの中に味噌汁を入れるのを松永さんはじっと見ている。
そんな松永さんに、どうぞ、と言いながら割り箸を渡して、問題のお弁当箱を机に出した。
松永さんのはパックに入れてあるので、上からすでに中身は見えている。
「豚の…生姜焼きです…」
そう言った私になにも言わずに、松永さんはじっと差し出されたお弁当箱を見ていた。
先ほどまでパソコンの音と小さな話し声しかしなかったのが嘘のように、フロアが一気に賑やかになる。
私の足元には、ランチバックに入ったいつもより量の多いお弁当。
ちら、と隣に座る松永さんをみるとお昼休みの鐘がなったことにまるで気付いていないかのように平然とパソコンを打ち続けている。
お弁当作ってきたのになぁ…
そもそも松永さんが作ってきてって言ったんだから、誘ってくれたらいいのに…
楽しみに、してたのになぁ…
足元を見ながら、モゾモゾとしていると松永さんがその様子に気付いて私に声をかけてきた。
「…立石さん、お弁当「つ、作ってきました!」
念願の言葉につい食い気味で反応してしまう。
「っす、すみません…っ」
わー恥ずかしい…っ!!
おそらく真っ赤になってるであろう顔を思わず下に向けてしまう。
すると、松永さんがやんわりと笑った、気がした。
「嬉しいな」
その言葉に思わず顔を上げると、松永さんは優しい顔で笑っていた。
「ありがとう、立石さん」
…っ
その言葉とか
雰囲気で
わかってしまった。
挨拶を一方的にされ続ける理由や
その中に親しみが込められてる理由や
これから、私がどうなってしまうかとか。
「…こ、こんなところ使ってもいいんでしょうか…」
「いいんだよ、人がいないんだから。」
松永さんに連れられてきたのは、一番奥の会議室だった。
社長の、いい会議をするためには社員の気持ちづくりから、どの言葉によりふかふかのソファやふわふわの絨毯が敷かれた会議室はとても居心地の良いものになっている。
大きな窓ガラスから見える景色は最高。
だけど。
「こ、こんな場所でお昼食べてもいいんでしょうか…」
「大丈夫、鍵、かけたし。」
それが、怖かったりして…。
私が扉の方をちらちら見ていると、松永さんは、お腹すいたな、と言った。
「あ、あの、もしかしたらお口に合わないかもしれないし…」
「作ってきてもらえただけで嬉しいよ」
「そんなにたいしたものじゃないし…」
「手作りってだけでたいしたものだよ」
「お、お弁当箱もパックで…」
「急だったからね」
私の小さな小さな言い訳が全て松永さんによって集約されてしまったので、私は緊張しながらもランチバックから紙コップを出した。
「なに、これ」
松永さんがそのコップを指差しながらそう聞いてきた。
私はランチバックに入っていた小さな水筒を開けながら
「お味噌汁入れようと思って。いつもはスープジャーに入れるんですけど、それも一つしかないから…」
と話す。
…少し熱めにしておいたけど、さめてないかなぁ
私が出したコップの中に味噌汁を入れるのを松永さんはじっと見ている。
そんな松永さんに、どうぞ、と言いながら割り箸を渡して、問題のお弁当箱を机に出した。
松永さんのはパックに入れてあるので、上からすでに中身は見えている。
「豚の…生姜焼きです…」
そう言った私になにも言わずに、松永さんはじっと差し出されたお弁当箱を見ていた。
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