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第三部 トゥー・ワールド・ウォーズ
マイケル・ヤングの恋
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その後はマリアとエンマを連れ、地中へーーー本陣へと戻って行く。
「終わったのかよ、ヴィトッ!」
二人の元に駆けつけたマルロの言葉にヴィトは首を縦に振る。
「そうさ、エドワードは倒れ、エルフどもは撤退した。おれ達の勝ちは決まったんだ……」
その言葉に全員がざわめきたつ。
「やったァァァァ~!ギシュタルリア帝国は完全に滅んだんだァァァァ~!おれ達の勝利だァァァァァァァ~!」
王国の兵士の一人が剣を宙に上げて叫ぶと、それに応じて他の兵士やファミリーの構成員もそれぞれの武器を宙に掲げる。
「良かったわね、ヴィト……」
マリアはヴィトの手に寄り添いながら言った。
それを見て、声を上げたのはマイケルだった。
「あっ、ヴィト !お前……」
「オレの相手は決まったんだよ」
ヴィトの言葉にマイケルは発狂するかのように叫ぶ。
「ふざけんなァァァァァァァ~!ドン・カヴァリエーレ……ルーシーの気持ちを考えた事はあんのかよォォォォォォ~!」
その時に、マイケルの肩にモナリザのように美しい手が置かれる。
「いいのよ、わたしはあれで……わたしの力不足だったんだから、でもね、こんな言葉もあるのよ、マリア……」
ルーシーはかつての恋敵にウィンクしながら言ってみる。
「"ギャングは欲しいものを諦めない"……もし、ヴィトに何かあったら、その時は永遠の二番手の座を放り出して、アンタの元に奪いにいくから……覚えておいてよ !」
ルーシーは勢いよく指を指したが、その表情は満足そうな笑みだった。
「ふふ、お前まだオレを狙う気なのかい?」
ヴィトの問いかけにルーシーは即答した。
「勿論よ、仮にあなたが帝国の皇帝になったら、側室に立候補するわよ !」
ヴィトはその言葉を聞いて、困ったような笑いを浮かべる。
「ははは、お手柔らかに頼むよ……でもな、マイクはその言葉に納得できてないみたいだぜ」
マイケルは今にも発狂しそうだ。
「おい、落ち着けよ、ドン・カヴァリエーレが振り向く時だってあるさ、それまではオレとブランデーでも飲もう……」
パットは宥めるように、ブランデーの話をしたが、今のマイケルには効果がないようだ。
「うわァァァァァァァ~!どうして、アンタばっかりモテるんだよォォォォォォォォォォォォォォ~!オレだって彼女が欲しいんだよォォォォォォォォォ~~!!!」
マイケルは地面をバンバン叩いていた。
「本当にさ、今度はシャンパンも開けようぜ、女一杯の店でパッーとさッ!」
マルロは両手を広げて言ったが、マイケルは相変わらず地面を叩いて泣きわめくばかりだった。
「落ち着けよ、マルロ……マイクが落ち着くまで、どっかのテントに入れてやれ」
ヴィトの指示に従い、マイケルはマルロに連行されて行く。
「アイツも困ったもんね」
マリアは腰に手を当てて呟く。
「しょうがないわよ、彼のナンパの成功率って、百人に声をかけて、百人に失敗なんでしょ?」
ルーシーは過去の事を思い出してクスリと笑う。
「あれは傑作だったな、マイクの奴ナンパの前は『オレはモテモテなんだぜ』とか『ハンサムなオレになびかない女はいない』とか言ってたよな」
「そうそう、その後にあの結果だろ……無残としか言えないぜ」
「アイツってそんなところあったのッ!」
マリアは口元を覆っていたが、目は輝いていた。
「そうさ、それよりも……今晩は勝利を喜ぼう !」
ヴィトは二人の肩を持って城へと急ぐ。
マイケルはフーフーと鼻息を荒くしていたものの、もう怒りはなさそうだった。
「落ち着いたのか、マイク……」
パットは腰に手を当てながら、呆れるようなため息を吐きながら尋ねる。
「まだだよッ!どうして、相談役だけが、女にモテんだよ !オレだってモテたいんだ !オレだって彼女が欲しいんだ !」
マイケルは自分の胸を押さえながら叫ぶ。
「本当にお前の執着は底を知らねえな」
マルロは頭を抱えていたが、真面目な顔になり、マイケルに向き合う。
「そうだ……お前に会いたいって娘さんがいるって言ってたな、確かさっき番兵が危ないから、帰れと追い返したらしいけど」
その言葉にマイケルはマルロに飛びつく。
「本当か!?その娘さんは!?」
「番兵に聞けよ、そいつが追い返したらしいからさ」
マイケルはそれを聞くなり、門の方へと走って行く。
「しかし、アイツに惚れるなんてよっぽどだろうな……」
マルロは走って行くマイケルを見つめながら呟く。
「だな、どんな娘が来るか賭けてみないか?」
「やめとけ、流石にマイクが可哀想だよ、それにお前も人の事言えんのか?」
マルロの指摘にパットはウッと唸る。
マイケルは自分にお礼を言いに来たという娘がどこに行ったのかを番兵に聞き、その場所を尋ねる。
マイケルにお礼を言いに来た娘の場所は自分たちが守る後ろに立っていた城下町であった。
マイケルは城下町に並んでいるシンプルな白レンガの家の扉を叩く。
「はい、何でしょうか……あら、あなた !」
町娘はマイケルを見かけるなり、いきなりマイケルに飛びつく。
「おっ、おいおい、どうしたんだよ、オレがどうかしたのか?」
「まぁ、覚えていないの?前に道に迷ったあたしを家まで送ってくれたじゃないですか!?」
マイケルは思い出した。確か、町の労働組合の方で問題が起きた時の帰りに、一人の少女がチンピラに絡まれていて、それを助けてあげたのだ。
マイケルはその現場を見た瞬間に、反射的にチンピラに襲い掛かっていたのだ。幸い、チンピラはマイケル一人にボコボコにされた後に、騎士団の名前を出した瞬間にビビって逃亡したが……。
その後に泣いていた少女を不憫に思い、家まで送って行ってあげた事を思い出す。
「そんな事もあったな……」
マイケルは今の今まで忘れていた事を隠すために、自分の右手の人差し指で頰をかく。
「助けてくれたお礼がしたいの !今度町のオススメの食堂を知っているの !そこに行きましょうよ !」
マイケルは初めてのデートの誘いに内心ガッツポーズを挙げた。
「もっ、勿論 !オレでよければ……」
「楽しみにしてるわ」
そう、微笑む彼女は今のマイケルには天使に見えた。
「終わったのかよ、ヴィトッ!」
二人の元に駆けつけたマルロの言葉にヴィトは首を縦に振る。
「そうさ、エドワードは倒れ、エルフどもは撤退した。おれ達の勝ちは決まったんだ……」
その言葉に全員がざわめきたつ。
「やったァァァァ~!ギシュタルリア帝国は完全に滅んだんだァァァァ~!おれ達の勝利だァァァァァァァ~!」
王国の兵士の一人が剣を宙に上げて叫ぶと、それに応じて他の兵士やファミリーの構成員もそれぞれの武器を宙に掲げる。
「良かったわね、ヴィト……」
マリアはヴィトの手に寄り添いながら言った。
それを見て、声を上げたのはマイケルだった。
「あっ、ヴィト !お前……」
「オレの相手は決まったんだよ」
ヴィトの言葉にマイケルは発狂するかのように叫ぶ。
「ふざけんなァァァァァァァ~!ドン・カヴァリエーレ……ルーシーの気持ちを考えた事はあんのかよォォォォォォ~!」
その時に、マイケルの肩にモナリザのように美しい手が置かれる。
「いいのよ、わたしはあれで……わたしの力不足だったんだから、でもね、こんな言葉もあるのよ、マリア……」
ルーシーはかつての恋敵にウィンクしながら言ってみる。
「"ギャングは欲しいものを諦めない"……もし、ヴィトに何かあったら、その時は永遠の二番手の座を放り出して、アンタの元に奪いにいくから……覚えておいてよ !」
ルーシーは勢いよく指を指したが、その表情は満足そうな笑みだった。
「ふふ、お前まだオレを狙う気なのかい?」
ヴィトの問いかけにルーシーは即答した。
「勿論よ、仮にあなたが帝国の皇帝になったら、側室に立候補するわよ !」
ヴィトはその言葉を聞いて、困ったような笑いを浮かべる。
「ははは、お手柔らかに頼むよ……でもな、マイクはその言葉に納得できてないみたいだぜ」
マイケルは今にも発狂しそうだ。
「おい、落ち着けよ、ドン・カヴァリエーレが振り向く時だってあるさ、それまではオレとブランデーでも飲もう……」
パットは宥めるように、ブランデーの話をしたが、今のマイケルには効果がないようだ。
「うわァァァァァァァ~!どうして、アンタばっかりモテるんだよォォォォォォォォォォォォォォ~!オレだって彼女が欲しいんだよォォォォォォォォォ~~!!!」
マイケルは地面をバンバン叩いていた。
「本当にさ、今度はシャンパンも開けようぜ、女一杯の店でパッーとさッ!」
マルロは両手を広げて言ったが、マイケルは相変わらず地面を叩いて泣きわめくばかりだった。
「落ち着けよ、マルロ……マイクが落ち着くまで、どっかのテントに入れてやれ」
ヴィトの指示に従い、マイケルはマルロに連行されて行く。
「アイツも困ったもんね」
マリアは腰に手を当てて呟く。
「しょうがないわよ、彼のナンパの成功率って、百人に声をかけて、百人に失敗なんでしょ?」
ルーシーは過去の事を思い出してクスリと笑う。
「あれは傑作だったな、マイクの奴ナンパの前は『オレはモテモテなんだぜ』とか『ハンサムなオレになびかない女はいない』とか言ってたよな」
「そうそう、その後にあの結果だろ……無残としか言えないぜ」
「アイツってそんなところあったのッ!」
マリアは口元を覆っていたが、目は輝いていた。
「そうさ、それよりも……今晩は勝利を喜ぼう !」
ヴィトは二人の肩を持って城へと急ぐ。
マイケルはフーフーと鼻息を荒くしていたものの、もう怒りはなさそうだった。
「落ち着いたのか、マイク……」
パットは腰に手を当てながら、呆れるようなため息を吐きながら尋ねる。
「まだだよッ!どうして、相談役だけが、女にモテんだよ !オレだってモテたいんだ !オレだって彼女が欲しいんだ !」
マイケルは自分の胸を押さえながら叫ぶ。
「本当にお前の執着は底を知らねえな」
マルロは頭を抱えていたが、真面目な顔になり、マイケルに向き合う。
「そうだ……お前に会いたいって娘さんがいるって言ってたな、確かさっき番兵が危ないから、帰れと追い返したらしいけど」
その言葉にマイケルはマルロに飛びつく。
「本当か!?その娘さんは!?」
「番兵に聞けよ、そいつが追い返したらしいからさ」
マイケルはそれを聞くなり、門の方へと走って行く。
「しかし、アイツに惚れるなんてよっぽどだろうな……」
マルロは走って行くマイケルを見つめながら呟く。
「だな、どんな娘が来るか賭けてみないか?」
「やめとけ、流石にマイクが可哀想だよ、それにお前も人の事言えんのか?」
マルロの指摘にパットはウッと唸る。
マイケルは自分にお礼を言いに来たという娘がどこに行ったのかを番兵に聞き、その場所を尋ねる。
マイケルにお礼を言いに来た娘の場所は自分たちが守る後ろに立っていた城下町であった。
マイケルは城下町に並んでいるシンプルな白レンガの家の扉を叩く。
「はい、何でしょうか……あら、あなた !」
町娘はマイケルを見かけるなり、いきなりマイケルに飛びつく。
「おっ、おいおい、どうしたんだよ、オレがどうかしたのか?」
「まぁ、覚えていないの?前に道に迷ったあたしを家まで送ってくれたじゃないですか!?」
マイケルは思い出した。確か、町の労働組合の方で問題が起きた時の帰りに、一人の少女がチンピラに絡まれていて、それを助けてあげたのだ。
マイケルはその現場を見た瞬間に、反射的にチンピラに襲い掛かっていたのだ。幸い、チンピラはマイケル一人にボコボコにされた後に、騎士団の名前を出した瞬間にビビって逃亡したが……。
その後に泣いていた少女を不憫に思い、家まで送って行ってあげた事を思い出す。
「そんな事もあったな……」
マイケルは今の今まで忘れていた事を隠すために、自分の右手の人差し指で頰をかく。
「助けてくれたお礼がしたいの !今度町のオススメの食堂を知っているの !そこに行きましょうよ !」
マイケルは初めてのデートの誘いに内心ガッツポーズを挙げた。
「もっ、勿論 !オレでよければ……」
「楽しみにしてるわ」
そう、微笑む彼女は今のマイケルには天使に見えた。
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