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第三部 トゥー・ワールド・ウォーズ

二大国大戦ーその⑦

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そして、フランソワ王国軍とギシュタルリア帝国軍との戦いは、それから三日間も続いた。
戦況はギシュタルリア優勢かと思われたが、フランソワ王国軍側もギシュタルリア帝国の兵器に魔法で対応したり、迫ってくる兵士には自分たちのトンプソン機関銃やら散弾銃と言った武器で対抗していた。
「よし、前線第一班は続けて銃を発砲 !エルフたちに魔法を撃たせないように !第二班はエルフたちの兵器に雷魔法を撃ち続けるのよ !」
この処置で王国軍は少ない犠牲で帝国に防御戦で勝ち進めていた。
攻撃戦では……。
「よし、行くぞ !マリア・ド・フランソワ女王陛下に続けッ!」
ヴィトは王家に受け継がれる宝剣を宙に上げた後に矛先をそのまま自分たちの前に迫っているギシュタルリア帝国軍に向ける。
兵士たちはヴィトの号令に続き、魔法が発射できる単発式の原始的な拳銃や主な武器である剣を宙に上げる。
「おれ達の敵はギシュタルリア帝国だッ!」
ヴィトのその宣言に兵士たちも続き、ギシュタルリア帝国の兵士たちとぶつかり合う。
ヴィトは鬼神のような奮闘ぶりを敵軍に突撃するたびに見せつける。
「ウォォォォォォ~!」
ヴィトの振り回す剣は正に鬼神の剣だ。ギシュタルリアの兵士たちは次々に斬られていく。
「くっ、流石は伝説の騎士だぜ、あんなに強いとはな、だがコイツはどうかな……」
一人の兵士が王国の兵士が持っているのと同様の魔法の銃を懐から取り出す。
「これであの世に逝きな……」
兵士が戦場の音に紛れ、銃を用意していると途端にどこからか、ものすごい轟音が男に耳に響いた。
いや、響いたのではない、音が聞こえる範囲は男のすぐ側だ。
男はどこかなと辺りを見渡そうとしたのだが、首が言うことを聞かずにその場で倒れしまう。
そう、男は轟音を「聞いた」のではない、男は轟音を「喰らった」のだ。
正確には男の額に銃弾が命中したと表現するべきなのだろうが。
「言っておくが、拳銃というのは弾を先に込めておくべきだぜ、おれのようにな……」
ヴィトはあらかじめ懐に仕込んでいたのであろう45口径のオート拳銃の銃口から白い煙をフッと吹く。
「左手で銃……それから、右手に剣だと……あの男め、どのくらいの強さを誇っているんだッ!」
倒れた男の近くにいたギシュタルリアの兵士は震える声で叫ぶ。
「言っておくが、おれの拳銃はまだまだ本陣の方にあるんだぜ、お前らを撃ち殺す事はできるんだ」
ヴィトの言葉にギシュタルリアの兵士たちは震えあがっているようだ。
「よし、今だッ!全員攻勢に転じろッ!」
ヴィトの命令にフランソワの兵士たちやファミリーの構成員たちが命令に従い、ギシュタルリアの軍勢を崩す。
「くっ、まずい引けッ!引けッ!」
ギシュタルリア軍の長官と思われる男が退却命令を出し撤退する。
ヴィトはそれを見届けると、近くのファミリーの構成員にタバコを持っていないかを尋ねる。男はヴィトの期待に応え懐からタバコの箱を取り出す。
「ふむ、マレーシア産か」
「お嫌いですか?」
男はファミリーの相談役コンシリエーレであり、同時に騎士団の前線でのまとめ役であるヴィトの機嫌を損ねたのかと髪をかき上げようとしたが、ヴィトは心配するなと言わんばかりに笑って答えた。
「いいや、吸った事がない産地のタバコだったからな、少し驚いただけさ」
そして、これから吸おうとするヴィトに男はライターを差し出す。
ヴィトはライターを受け取ると、タバコに火をつけてゆっくりと吸う。

エドワード・デューダレア三世の不興はますます不快になるばかりだった。
この三日間の間で戦況は好転するばかりか、悪化するばかりであったからだ。
「能無しの役立たずめッ!」
エドワードは机を思いっきり叩くと、大声でエンマを呼びつける。
「どうなさいましたか、陛下?」
エンマは中断していた仕事を中断し、自分の主人の元へと向かう。
「お前から前線に立っている無能どもに言ってやってほしいんだ。『次に負けたら、重い処分は覚悟しておけと』……いいな?」
エドワードの命令に平均より少し上の顔をした白のシンプルなドレスの女性はしかめ面を浮かべている。
「どうしたのだ?余の命令はそんなにも効力がないのか?」
明らかに不機嫌なエドワードに弁明するためにエンマは慌てて両手を左右に振る。
「そういうわけではありませんわ、ただわたくしとしましては、原因は現場の兵士ではなく、向こうの人材だと思われますの」
エンマの言葉にエドワードは眉をしかめている。
「と言うと?」
「簡単な話です。フランソワ王国軍の騎士であるヴィト・プロテッツオーネなる男と騎士団長のカリーナ・ルーシー・カヴァリエーレなる女の力が強過ぎるのですわ、更にマリアも自ら前線に立ち自分の身を危険を晒し、王国の兵士たちを鼓舞しております。わたしとしてはこの三人さえ消せれば、我々の勝利は確定するのではと……」
エンマの言葉にエドワードは納得がいくように思った。
実際にからの報告によれば、この三人が倒れればフランソワ王国は有力な指導者を失い、崩壊するというらしい。
「よし、奴らの始末は誰がする?」
エンマはここで困ったような顔をする。
「どうしたのだ?」とエドワードが尋ねると、エンマは口を籠らせるように答えた。
「彼らは強過ぎます。既に何人もの帝国自慢の騎士たちが倒されましたし、親衛隊でさえ勝てる可能性は低いと思われます」
エドワードはその言葉が自分に戦場に出ろと誘導しているように聞こえた。
エドワードは普段なら、そんな誘導には引っかからないのだが、今回ばかりは相手が強過ぎるのだ。
自分がやらねば誰がやるのだ。そんな思いに駆られ、エドワードは無言で棚の横にかけてある一本の見事な剣を掴む。
「陛下……」
「お前の期待している通りの答えを出してやろう……次の戦闘には余が直々に出る。それから、エルフの傭兵部隊にも連絡しておけ、親衛隊の代わりに奴らを連れて行く」
エドワードの言葉を聞き終えると、エンマは部屋を跡にする。
その後にエドワードはルカから献上された後は仕舞いっぱなしになっていた高価なスーツに目をやる。
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