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第三部 トゥー・ワールド・ウォーズ

二大国大戦ーその②

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三人はオリバニアに到着した瞬間に二つの勢力の激突を目撃した。
「くっ、この野郎めッ!」
簡易な塹壕からファミリーの構成員と思われる男がトンプソンを乱射している。
トンプソンの銃弾により、馬に乗った中世の鎧を着た騎士たちが馬から次々と落とされていく。
「調子に乗るなァァァァ~!」
一人の男がそう呟いた瞬間に塹壕に雷の球がぶつかる。
「やられたみたいだ……」
「気づかなかったみたいだ。彼、夢中になって撃ち続けていたから、横で魔法を呟いていた兵士に……」
オウのその言葉を聞いた瞬間にヴィトは剣を握りしめ、浮遊魔法スカイアップ・マジックを使用し、男の側まで来て男を斬り殺す。
「貴様らギシュタルリアにもうこれ以上フランソワ王国の領土を渡しはしねえぜ !」
ヴィトは自分の剣先をトンプソンを撃たれていた塹壕前の兵士たちに向ける。
「コイツは?」
馬に乗っていた兵士はヴィトを見て両眉を上げている。
「あぁ、見覚えがあるな、コイツはフランソワ王国騎士団の騎士だぜ、いつも妙な服を着ていると聞いたが、その通りらしいな」
馬に乗っている男は青の背広とコートに中折れ帽という姿のヴィトを見てせせら笑う。
「そんなにおかしいのか?」
ヴィトはトンプソンの乱射から生き残った二人の兵士を冷たい視線で見つめる。
「いいや、おかしいのは……」
兵士は馬とともにヴィトの元へ突っ込みながら叫んだ。
「お前がオレたちの実力に気づかずにこんな戦場の真っ只中に突っ込んで来たことさッ!」
ヴィトは急いでその場から飛び跳ね、馬に乗っている兵士に斬りかかる。
「おっと、危ない、危ない……オレも国では少し名の知れた剣士でね、一つあんたとは手合わせを願いたいと思うんだが、いいかな?」
男の言葉にヴィトは動じることなくて「好きにしろ」と呟く。
「なら、このままあんたを斬らせてもらうぜ、オレの剣でなァァァァ~!」
男はヴィトへと向けている剣に力を加える。
「やれるもんなら、やってみなッ!」
ヴィトは急いで浮遊魔法スカイアップ・マジックを使って、その場で安定を保つ。
「おっと臨戦態勢というわけか、面白いなッ!」
男はヴィトの元から一旦離れると、すぐに剣の先端を宙に浮いているヴィトに向けた。
(このまま、オレの元に突っ込んで来る気なのか?)
ヴィトの読みは的中した。
「オレの剣を喰らって悶え苦しみなァァァァァァァ~!」
男は馬の尻を叩くと、凄まじいまでの勢いでヴィトの元へと突っ込む。
(あの野郎め……あの剣でオレをそのまま斬り殺すつもりか、いやすれ違いざまにオレの喉を搔き切る気かもしれん、少なくともアイツがどっちの選択肢を選んでも、オレにとってはヤバイ状況だけが残るという事か……)
ヴィトは冷や汗を流したが、次の瞬間にある案を思いつく。
(そうだ……一か八かあの野郎の……)
ヴィトは自分の剣を握り締め、決意を改める。
「おいおい、お前さん震えてるぜ、王国最強の騎士とやらも大したことないならしいな」
男は明らかに自分の元に突っ込んでくるように挑発している。
(アイツの狙いは、オレを自分の剣先に突っ込ませる事だ。それからオレを切り刻む気なんだろうな、だがそうは問屋が卸さんぜ)
ヴィトは腹をくくると、馬に乗っている男の元へと真っ直ぐに突っ込んでいく。
「よし、オレの罠にかかったなッ!お前は終わりだァァァ~!!」
男は真っ直ぐに突っ込んで来るヴィトに剣を突き刺そうとしたが、突き刺そうとした瞬間にヴィトが姿を消したのだ。
「なっ、あの野郎……一体どこに消えやがったんだッ!」
男が慌てて周りを見渡す。
すると、次の瞬間に男の足元が急に崩れ落ち、たちまち自分の馬から投げ出されてしまう。
「なっ、一体何が起こったんだッ!?」
男が地面に放り出されながらでも、周りに確認するように叫ぶと。
「お前の馬の脚を切ったんだ……お前さんはオレが自分の元へと突っ込むのを頼りにしていたようだが、オレはお前さんの懐ではなく……お前さんの馬の下に突っ込んだんだぜッ!」
ヴィトの言葉に男は驚愕の声を上げた。
「クソッタレが、こんな結果はあり得ないッ!オレは帝国でも名の知れた騎士だッ!お前なんかに……」
「なら、馬なんか使わずに正々堂々と勝負しようぜ」
ヴィトは自分の剣の先端を男に向けながら言った。
「上等だ……ぶっ殺してやるッ!」
男は剣を構えてヴィトに向かって突っ込んでくる。
ヴィトもそれに対応するために剣を真っ直ぐに構え、男に向かっていく。
二人はすれ違いざまにお互いに斬り合う。
まさに真剣の勝負だ。そして、永遠とも思えるような時間を経験した後に……。
「うぐっ……」
と、悲鳴を上げて地面に倒れたのは兵士の男の方だった。ヴィトはよろめきながらも地面に足をつけていた。
「やっと勝てたな……お前さんは確かに名の知れた剣士だよ、その点だけは認めてやるよ」
ヴィトは倒れた兵士に敬意を表するように自分の剣を縦に構える。
「くっ、アイツがやられてしまったとは……」
もう片方の兵士は震える手で懐から中世のヨーロッパ風の刺繍が施された魔法の拳銃を取り出す。
「これは、銃だぜ、お前らのような弾の威力は強くはないが、ここにはオレたちの魔法が込められているんだッ!」
ヴィトは話にドメニコの話から聞いた魔法の拳銃かと冷や汗を垂らす。
「お前もこれを見て冷や汗をかいているようだな、この拳銃には水魔法が込めているんだッ!オレの水は協力だぜッ!」
男の言葉にヴィトは引きつった笑いを浮かべながらも、自分の剣の矛先を男に向ける。
「お前はとうとう狂っちまったのか?まぁ、この銃は強力だからな、お前が震えるのも無理はないがな、容赦する気は一つもないがなッ!」
ヴィトは自分自身の剣が黄金に輝くのを感じた。
「ふん、そんな剣如きに震えるオレじゃあないぜ、死になッ!」
男は魔法拳銃から水魔法を放つ。
「そんなもの……オレの剣で押し退けてやるぜッ!」
ヴィトは自分自身の剣でヘンプの時と同様に水流を防ぐ。
「ねえ、なんとかならないの?」
そう金切り声を上げたのは、ルーシーだった。
連戦続きのヴィトが心配なったのだろうか、先ほどまで呆気に取られていたのも忘れ、自分の服を世話しなくいじっている。
「大丈夫さ、ヴィトならできると思うよ」
オウは心配そうな目を浮かべることもなくただヴィトを見つめていた。
「さてと、勝利のカードを引くのはどちらだろうな?」
男はいやらしそうに笑っている。
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