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第三部 トゥー・ワールド・ウォーズ
世界審判教の乱心ーその④
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ルーシーは一か八か世界審判教の仕業である事を四人に伝えてみる。
「バカな、確かに奴らは怪しい奴らだけどな、それでもホワイトハウスの門を爆発させるなんて……」
ジョージは信じられないと言う顔でルーシーを見つめる。
「可能性がないわけではないでしょ?実際にライター・ヘンプの失踪事件でうやむやにされたけれど、彼の教団が怪しいのは夜暗い中で焚き火をしていたら、その中にハエや蛾が飛び込んでくるのと同じくらい確実な事だわ」
ルーシーの言葉に全員が顔を見合わせる。
「確かに教祖のライター・ヘンプは明らかに信者から布施という名目で大量の収入を得ているし、失踪前には弁護士に教団の悪事を暴こうとしていたよ、それは間違いがない事実なんだ」
ジムの言葉にオスカーは反論してみせる。
「だかな、その弁護士はヘンプの失踪前にもコミッションやらクレメンテ・ファミリーなんかも批判していたぜ、確かにヘンプは怪しいが、犯人候補の一人に過ぎないんだ。言うのならば、ギャングの親玉たちはこの事件の有力な犯人候補なんだぜ」
オスカーの言葉にルーシーは反論を試みた。
「それだけでわたしを捕まえたの?バカバカしいわね、それだけの理由で証拠もなしに捕まえたの?人権侵害だと思わなくて?アメリカ政府は怪しいという理由だけで逮捕を支持するの?」
ルーシーの言葉に三人は言い返せなかったが、唯一オスカーだけはこの中で反論をした。
「いいや、お前らが怪しいことは疑いようがない事実なんだッ!そもそも怪しいのはお前なんだぜッ!」
オスカーはルーシーに人差し指を指す。
「どうしてよ?」
「いいか、お前は建設会社の社長だと言ったな、それにしちゃあ不審な点がいくつもあるんだよ」
オスカーはジムに書類を持ってくるように言った。それから、ジムはルーシーについてのファイルから一枚の書類を手渡す。
「これはお前の履歴書とでも言っておこうか、お前の最終学歴は市立オートムダイジュニアハイスクールだったな、おかしいとは思わんか?この街やサウス・スターアイランドシティーにまで足を伸ばしている一大建設会社なのに最終学歴は中卒だぜッ!お前らは変に思わんのか?」
オスカーはとうとう感情論、つまり、ルーシーを学歴で攻撃する事を試みた。
「あなた最低ね、人を学歴で判断するの?確かにあなたよりはいい立場ではないと思うけれど、そんな事で人を攻撃するなんて最低だわ」
ルーシーの言葉にオスカーは動じなかったが、他の仲間は良心の呵責に襲われたのか、オスカーを窘めにかかった。
「確かにお前も言い過ぎだぜ、いくらなんでも人を学歴で判断するなんて……」
「うむ、今のはオレも言い過ぎだと思うよ、まるで重箱の隅を突くようだ……」
「そうだよ、それに彼女には一切の容疑がかかっていないんだ。税金もチャンと払っているし、何より他のファミリーのボスと同様にホワイトハウス爆発事件に関与した証拠もないんだ。何より無実の人間を人格攻撃するような事はやめるべきだと……」
ジムの言葉にオスカーは反応し、思わずジムの背広の裾を引っ張り上げる。
「無実の人間!?無実の人間だとッ!いいか、コイツはあのドメニコ・カヴァリエーレの娘で、この街を牛耳る犯罪組織のボスだというのはコイツの言うように夜暗い中で火をおこしたら、その中にハエや蛾が飛び込むのと同じくらい確実な事なんだよッ!」
オスカーの凄まじいまでの剣幕にジムとジョージは怯え、ブルーノは自分の額に手を当てていたが、その中で唯一ルーシーだけは、余裕の表情で腕を組んでいた。
「おい、何がおかしいんだッ!」
オスカーは感情に任せ、自分の拳を勢いよく机に叩きつける。
「いえいえ、ごめんなさい、あなたの考えがあまりにも先入観に満ちているんだもの」
ルーシーは満面の笑みだった。
「なんだと?」
そんなルーシーの表情と対照的だったのは、オスカーだった。彼は怒りに満ちた顔をルーシーに見せていた。
「だって、そうでしょう?わたしはドメニコ・カヴァリエーレの娘だから、悪い奴……そんな考えに満ちているわ、あなたの顔ってそう映るもの」
ルーシーの半ば嘲笑うような言葉にオスカーは我慢できずに殴りかかろうとする。
「テメェ!この野郎ッ!」
「よせ、相手はまだ容疑者の段階なんだぞ 不用意に殴りかかれば、こちらの身が……」
ブルーノに抑えらても、オスカーは殴ろうとするのをやめない。
「とっ、とにかく……リーダーを落ち着けようぜ、ルーシーの取り調べにはジム……キミが当たってくれるかね?」
ブルーノはオスカーを必死に抑えながらも、今後のことだけは忘れまいとこの中で一番落ち着いて取り調べができそうなジムを指名する。
「おっ、オレ?」
ジムは信じられないという表情で自分の人差し指で自分を指差している。
「そうだ !カリーナ・ルーシー・カヴァリエーレの取り調べはお前に任せるよ」
ブルーノは暴れるオスカーを抑えながら、取調室を跡にする。
「仕方ないな、あのカヴァリエーレさん」
ジムはオスカーの代わりに取り調べ室の簡素な木製の椅子に座り、ルーシーに向き合う。
「今回はウチのリーダーがあなたを侮辱するような事を言って申し訳ございませんでした……」
ジムは深く頭を下げる。
「いいえ、いいんです !誰だって感情的になる事はよくありますわ」
ルーシーの言葉にジムは安心からか、口元を緩める。
「それは良かった。それよりもあなたは本当にハリウッドでも主演を張れそうなくらい美しいな……」
「あら、わたしをお誘いに?」
ジムは慌てて両手を左右に振る。
「いいえ、ただの世間話で……」
ジムはそれから、真剣な表情でルーシーを見つめる。
「それよりもあなたは先ほどライター・ヘンプと世界審判教が、怪しいと仰っておられましたね」
「そうよ、彼らの犯行が一番濃厚だと思うわ、少なくとも血の掟のためにワザワザ爆破なんて大げさなことをするかしら?血の掟を政府に示すのなら、政府の要人をエイブラハム・リンカーンの像にでも括りつければいい話だわ」
ルーシーは不敵な笑みを浮かべてみせた。
「バカな、確かに奴らは怪しい奴らだけどな、それでもホワイトハウスの門を爆発させるなんて……」
ジョージは信じられないと言う顔でルーシーを見つめる。
「可能性がないわけではないでしょ?実際にライター・ヘンプの失踪事件でうやむやにされたけれど、彼の教団が怪しいのは夜暗い中で焚き火をしていたら、その中にハエや蛾が飛び込んでくるのと同じくらい確実な事だわ」
ルーシーの言葉に全員が顔を見合わせる。
「確かに教祖のライター・ヘンプは明らかに信者から布施という名目で大量の収入を得ているし、失踪前には弁護士に教団の悪事を暴こうとしていたよ、それは間違いがない事実なんだ」
ジムの言葉にオスカーは反論してみせる。
「だかな、その弁護士はヘンプの失踪前にもコミッションやらクレメンテ・ファミリーなんかも批判していたぜ、確かにヘンプは怪しいが、犯人候補の一人に過ぎないんだ。言うのならば、ギャングの親玉たちはこの事件の有力な犯人候補なんだぜ」
オスカーの言葉にルーシーは反論を試みた。
「それだけでわたしを捕まえたの?バカバカしいわね、それだけの理由で証拠もなしに捕まえたの?人権侵害だと思わなくて?アメリカ政府は怪しいという理由だけで逮捕を支持するの?」
ルーシーの言葉に三人は言い返せなかったが、唯一オスカーだけはこの中で反論をした。
「いいや、お前らが怪しいことは疑いようがない事実なんだッ!そもそも怪しいのはお前なんだぜッ!」
オスカーはルーシーに人差し指を指す。
「どうしてよ?」
「いいか、お前は建設会社の社長だと言ったな、それにしちゃあ不審な点がいくつもあるんだよ」
オスカーはジムに書類を持ってくるように言った。それから、ジムはルーシーについてのファイルから一枚の書類を手渡す。
「これはお前の履歴書とでも言っておこうか、お前の最終学歴は市立オートムダイジュニアハイスクールだったな、おかしいとは思わんか?この街やサウス・スターアイランドシティーにまで足を伸ばしている一大建設会社なのに最終学歴は中卒だぜッ!お前らは変に思わんのか?」
オスカーはとうとう感情論、つまり、ルーシーを学歴で攻撃する事を試みた。
「あなた最低ね、人を学歴で判断するの?確かにあなたよりはいい立場ではないと思うけれど、そんな事で人を攻撃するなんて最低だわ」
ルーシーの言葉にオスカーは動じなかったが、他の仲間は良心の呵責に襲われたのか、オスカーを窘めにかかった。
「確かにお前も言い過ぎだぜ、いくらなんでも人を学歴で判断するなんて……」
「うむ、今のはオレも言い過ぎだと思うよ、まるで重箱の隅を突くようだ……」
「そうだよ、それに彼女には一切の容疑がかかっていないんだ。税金もチャンと払っているし、何より他のファミリーのボスと同様にホワイトハウス爆発事件に関与した証拠もないんだ。何より無実の人間を人格攻撃するような事はやめるべきだと……」
ジムの言葉にオスカーは反応し、思わずジムの背広の裾を引っ張り上げる。
「無実の人間!?無実の人間だとッ!いいか、コイツはあのドメニコ・カヴァリエーレの娘で、この街を牛耳る犯罪組織のボスだというのはコイツの言うように夜暗い中で火をおこしたら、その中にハエや蛾が飛び込むのと同じくらい確実な事なんだよッ!」
オスカーの凄まじいまでの剣幕にジムとジョージは怯え、ブルーノは自分の額に手を当てていたが、その中で唯一ルーシーだけは、余裕の表情で腕を組んでいた。
「おい、何がおかしいんだッ!」
オスカーは感情に任せ、自分の拳を勢いよく机に叩きつける。
「いえいえ、ごめんなさい、あなたの考えがあまりにも先入観に満ちているんだもの」
ルーシーは満面の笑みだった。
「なんだと?」
そんなルーシーの表情と対照的だったのは、オスカーだった。彼は怒りに満ちた顔をルーシーに見せていた。
「だって、そうでしょう?わたしはドメニコ・カヴァリエーレの娘だから、悪い奴……そんな考えに満ちているわ、あなたの顔ってそう映るもの」
ルーシーの半ば嘲笑うような言葉にオスカーは我慢できずに殴りかかろうとする。
「テメェ!この野郎ッ!」
「よせ、相手はまだ容疑者の段階なんだぞ 不用意に殴りかかれば、こちらの身が……」
ブルーノに抑えらても、オスカーは殴ろうとするのをやめない。
「とっ、とにかく……リーダーを落ち着けようぜ、ルーシーの取り調べにはジム……キミが当たってくれるかね?」
ブルーノはオスカーを必死に抑えながらも、今後のことだけは忘れまいとこの中で一番落ち着いて取り調べができそうなジムを指名する。
「おっ、オレ?」
ジムは信じられないという表情で自分の人差し指で自分を指差している。
「そうだ !カリーナ・ルーシー・カヴァリエーレの取り調べはお前に任せるよ」
ブルーノは暴れるオスカーを抑えながら、取調室を跡にする。
「仕方ないな、あのカヴァリエーレさん」
ジムはオスカーの代わりに取り調べ室の簡素な木製の椅子に座り、ルーシーに向き合う。
「今回はウチのリーダーがあなたを侮辱するような事を言って申し訳ございませんでした……」
ジムは深く頭を下げる。
「いいえ、いいんです !誰だって感情的になる事はよくありますわ」
ルーシーの言葉にジムは安心からか、口元を緩める。
「それは良かった。それよりもあなたは本当にハリウッドでも主演を張れそうなくらい美しいな……」
「あら、わたしをお誘いに?」
ジムは慌てて両手を左右に振る。
「いいえ、ただの世間話で……」
ジムはそれから、真剣な表情でルーシーを見つめる。
「それよりもあなたは先ほどライター・ヘンプと世界審判教が、怪しいと仰っておられましたね」
「そうよ、彼らの犯行が一番濃厚だと思うわ、少なくとも血の掟のためにワザワザ爆破なんて大げさなことをするかしら?血の掟を政府に示すのなら、政府の要人をエイブラハム・リンカーンの像にでも括りつければいい話だわ」
ルーシーは不敵な笑みを浮かべてみせた。
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