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第三部 トゥー・ワールド・ウォーズ

三龍会との決戦ーその⑦

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チェンは厨房に着くやいなや、大声でヴィトに向かって挑発とも言える言葉を叫ぶ。
「おい、出てきやがれ、この卑怯なイタ公めがッ!汚いアメリカのギャングどもめッ オレのサイの餌食になりやがれッ!」
すると、チェンの挑発が聞いたのか、ヴィトの中折れ帽がキッチンの裏から姿を現した。
「やっとこさっとこ、姿を現したのか、面を貸しな、今ならリュー老師も怒っちゃあいねえよ、今ならお前らのファミリーを寛大にも傘下に加えてやってもいいぜ」
そんなチェンの言葉にヴィトは罵声で対抗する。
「ふん、オレがそんな言葉に騙されるとでも思ってるのか?お前は確かにオレやルーシーと同年齢くらいの年齢らしいが、お前のオツムは小学生みたいだな」
ヴィトの言葉にチェンは顔を赤くする。
「なんだと、老師が手加減していると思っていると、いい気に乗りやがって !半殺しにしてやるぜッ!」
チェンはサイをヴィトの青色の中折れ帽子に投げつけたが、ヴィトの悲鳴は聞こえない。
「いっ、一体どうなんってんだッ!」
チェンの狼狽する声を嘲笑うように背後からヴィトが笑う声が響く。
「まっ、まさか……」
チェンが背後を振り返ると、そこには扉に背を預けて立っているヴィトの姿が見えた。
「あんたは終わりだぜ、ゾンビさん……この部屋に足を踏み入れた瞬間にあんたの勝敗は決した」
ヴィトはそこから、チェンの手の甲に中華包丁を投げつける。
「うっ……」
チェンに痛覚は感じなかったが、投げつけられ当たった時の衝撃はいくら、彼でも感じていた。
思わず、リューのサイのうちの一本を地面に落としてしまう。
「しっ、しまったァァァァ~!」
「ついでにもう一本……」
ヴィトは無慈悲なまでにリューのもう片方の手に中華包丁を投げつけ、サイを落とさせる。
「くっ、オレの武器が……」
チェンは慌てて拾い上げようとするが、ヴィトはすかさずチェンの懐に突っ込み、チェンに深い傷を与えた後に、ガスボンベの近くにまで蹴り上げる。
「おい、オレに傷を与えてこの部屋に閉じ込めようって魂胆なんだろ?あいにくだが、確かにこの傷はデカイが、本の数分で解決するのさ、無駄なんだよ」
チェンは腹の傷を左手で抑えながら言ったが、ヴィトは冷静に穴が開いた中折れ帽を回収し、部屋を跡にする。
「へん、あの野郎め、リュー老師との戦いが終わるまでにオレを拘束しておく気だな……残念だな、オレの傷はほんの数分で回復すんだ……」
チェンは満面の笑みを浮かべたが、すぐにそれを引っ込め、顔を絶望に変えた。
「なっ、まさか……ギイャァァァァァァァァァァァァ~~!!!」
叫んだ瞬間に厨房が爆発した。小規模な爆発だったが、部屋を丸ごと燃やすには充分な量であった。
「お前さんの敗因は自分の腕の良さと不死身の度合いに頼り過ぎたって事かな?お前さんの頭なら、オレがこの部屋にあるガスボンベを爆発させるのは充分に予測できた筈だ。それを予測できなかったのは、あんたが過信し過ぎた……それだけ言っておこうか」
ヴィトはサイで穴を開けられた中折れ帽をポンと叩きながら、リューの元へと歩みを進める。

リュー・ダントウの勝利の笑みはいつまで経っても消える事はない。
ゾンビの不死身さは皇帝のエドワードが保証してくれている。それに彼はサイの達人だ。あんな剣を数ヶ月触ったているだけの素人に負けはしないだろう。
恐らくさっきの爆発音はチェンがヴィトを爆弾か何かで始末した音なのだろう。
「おい、お前さんの相棒は死んだようだな、さっきの爆発はきっとワシの可愛い弟子の仕業だぜ」
リューは唐剣の先端をルーシーに突きつけながら言った。
「残念な、あれは恐らくヴィトがチェンを始末した音なんだわ、ヴィトはいつも追い詰められても、あっと驚く秘策を考えるのよ、今回もそうよ !」
「はっはっはっ、大した信頼だな、まぁ、今回は相手が悪かったよ、だからこそ……ワシが、お前さんをヴィトの小僧とあの世で再開させてやるよッ!」
リューがルーシーの元へと突っ込もうとした時だ。
リューの唐剣と何かがぶつかる音がした。
「まっ、まさか……貴様……」
リューは思わぬ出来事に下唇を思いっきり噛み締めている。
「そうさ、あんたのお仲間のチェンさんじゃなくて悪かったな、アイツは今頃焼け焦がれた部屋の中で寝転がっているよ」
ヴィトの言葉にリューは全身を震わせている。
「つまり、チェンは……」
「鈍い野郎だな、チェン・リーはあの世できついお仕置きをされているだろうぜ」
ヴィトの言葉にリューは鼻の穴を思いっきり膨らませている。
「完全に殺してしまったのか!?」
「そうだよ !」
ヴィトは剣の一撃を強め、リューの唐剣を初めて弾き返す。
「もう、チェンはゾンビで蘇らせる事もできんのか……」
リューは一瞬残念そうな顔を浮かべたが、すぐにヴィトに憎悪を念を向ける。
「許さぬぞ !お前だけは地獄に叩き落としてやるッ!」
「お前さぁ……チェンが撃たれた時は何も反論しなかったのに、オレがゾンビ状態の奴を殺したら、怒るのかい?」
ヴィトは笑う事なく言ったが、リューは聞く耳を持っていない。
「黙れェェェェェェ~~!!」
リューは唐剣の強めの一撃をヴィトの剣に当てる。ここからでも、剣の振動が伝わるくらいの強い一撃だ。
「中国経済界と政治界を牛耳る怪老も、どうやら、オレの一本の剣には勝てようだな」
ヴィトの言葉は更にリューの神経を逆撫でしていた。
「そうか?なら、ワシの最終奥義を見せてやろう……」
リューが何やら、呪文を唱え始めると、体を中国に出てくるヘビ型の竜に姿を変えた。
化け物変身魔法モンスター・トランスフォメーションか……」
そのヴィトの言葉をリューは店中に響き渡る大きな声で否定する。
「いいや、そんなチャチなものではないぞ、これはワシが中国4000年の歴史を歩む中で、仙人たちが身につけていた奥義さ……」
ヴィトは剣を構えながら考えた。恐らく、あれはポワカこと、メアリー・クイーンズが使っていた呪術のようにエルフの先住魔法だと。
(問題は、ポワカの場合とは違い、あのドラゴンには自我があるって事だな)
ヴィトはレストランの天井を破り、レストランの外へと突き出たドラゴンを見つめながら考えていた。
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