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第三部 トゥー・ワールド・ウォーズ

三龍会との決戦ーその⑥

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チェンがリューに向き合った瞬間だった。
突然空間が割れ、ヴィトがチェンに襲い掛かる。
「くっ、アイツめッ!」
チェンはサイを構えたものの、ヴィトの攻撃の方がいくらか早い。
チェンは剣が直撃を受ける事だけを交わせたものの、再び剣とサイが火花を散らす展開となる。ただし、今度はチェンが不利になっていたが……。
「これでお前も終わりだぜ……」
「チクショォォォォ~~!!!」
ヴィトの剣が黄金に輝き、チェンのサイを乱暴に壊す。
(今だッ……)
ヴィトは剣を真上に振りかざす。その時だった……。
「甘いな……」
ヴィトの剣に何か固いものが当たる。いや、これは固いものではない。箸だ。料理を食べる時に使った箸をリューは攻撃に使ったのだ。
「危ないぞ、チェン……お前も今後は気をつける事だな」
ヴィトが呆気に取られている間にリューは倒れた回転テーブルの近くに置いてあった長いパイプを持ってきてから、それを真っ二つに割り、二本のサイを取り出す。
「ほれ、受け取れ」
チェンは二本のサイを受け取り、新たに獲得した武器の先端をヴィトに突きつける。
「ふふふ、お前がこれ程までの男とはな……オレも油断していたよ、だが、もうこれで油断はしない……覚悟してもらおうかな、イタリアンマフィアさんよぉ~」
チェンは不気味に笑う。
(ったく、なんて強い野郎達だ。用心のために町の周りに兵隊たちを配置してたのに、全部水の泡だぜ、奴らのコンビネーションは完璧だ。チェンの奴の強さは言うまでもないが、後ろにはリューの奴が更に控えている……)
ヴィトは血反吐を地面に吐き捨て、再び戦士の目でチェンを睨みつける。
「まだ、やりたいって事か?お前にオレ達が倒せるとでも?三龍会の強さは東洋一とも言われるんだぜ、何故オレ達が日本や韓国に進出しなかったと思う?」
チェンは二本のサイの先端をヴィトに向けて特攻する。
さッ!」
ヴィトは自分の剣でチェンのサイを防ぐが、困った事に打開策が思い浮かばない。
「おいおい、ヴィト・プロテッツオーネさんよぉ~オレがこのまま手加減するとでも思ったのか?」
ヴィトはこの状況を打開するための最大の作戦を思いつこうとする。
(この店で何かできる事はないか……)
ヴィトはふとこの建物がレストランだという事を思い出す。
(レストラン……そうだッ!この店の何処かに厨房がある筈ッ!そしてそこにはもある筈だッ!)
ヴィトは目の前のゾンビを倒すのに人間の叡智を使う事を決意した。
「バケモノ……もう一回来てみな、もう一回オレに襲い掛かるんだ……」
ヴィトは挑発目の前のゾンビを挑発する。
「いいだろうよ、今から、お前の剣を掴んでいるこのサイを引き離す……その後にもう一回突っ込んでやるんだ……お前を確実に始末するためになッ!」
チェンはサイを一旦自分の手に戻すると、後ろに下がりヴィトに突っ込む。
(やはり、オレの予想通りに真っ直ぐ突っ込んできたな、真っ直ぐ突っ込んだ時点で……お前の負けだ)
ヴィトはチェンが自分に向かってジャンプした瞬間に体を咄嗟に左に避け、チェンのサイが壁に突き刺さるのを確認した。
「よし、掛かったな、アホがッ!」
ヴィトは剣でチェンの左脚を斬りつけ、別の厨房への道を探しに特別ルームから飛び出す。
「あっ、あいつ……最初から、この部屋から抜け出す事が目的だったのかッ!」
チェンは悔しそうに拳を握り締めている。
「つまるところ、アヤツめドンを見捨てて、逃げたのか……お前さんも大変な相談役コンシリエーレを持ったのう」
リューは高らかに笑っていたが、ルーシーはくっくっと笑い出す。
「何を言っているのかしら?彼がわたしを見捨てて逃げるような、小物ならとっくにわたしがしていたわ、そんな人間を相談役コンシリエーレに任命する程、わたしの目も腐ってはいないわッ!」
ルーシーの声を聞き、リューはますます楽しそうに笑う。
「ふふふふ、お前さんの期待を打ち砕いてやるぞ、チェンはワシの知っている中でも一番のサイの使い手、それに仮に奴を倒したとしても、後ろにはワシが控えておるんじゃ、この場合は逃げる方とワシらを相手にする方……どちらがアヤツの得になるかは容易に想像できるだろ?」
リューは自分の想像が的を射ているとばかりに笑っていたが、ルーシーはそれに屈する事なく堂々とした表情を浮かべていた。
「いいえ、あなたはヴィトという人間を誤解しているわ、ヴィトはこれまでも色々な敵から、ファミリーを守ってきてくれたわ、今回だってそうよ、わたしはッ!」
全身を震わせるルーシーをリューは尚も嘲笑っている。
「面白いな、お前さんの信頼とやらが、絶望に変わる瞬間とやらを見てみたい」
リューはチェンに目でヴィトを追いかけて、探すように命令した。

チェン・リーは二本のサイを持って、レストランの中を探し回っている。
「くっ、あの野郎めどこに逃げやがった……このままじゃあ、老師に大目玉だぜ……」
チェンが人がいなくなり、無人になったレストランの中で独り言を呟いていると、突然厨房の方から、何か金属品のようなものが落ちる音がした。
(うん……もしかして……)
チェンはある一つの考えに至った。
(アイツは厨房の中に逃げ込んだという訳なのか?ひょっとして中華鍋や或いは中華包丁でも使って、何か作戦を考えているのか……取り敢えず、オレは罠だとわかっていても、向かうぜ、お前さんの隠れている場所が分かったんでな……)
チェンは一歩一歩確実に厨房へと向かって行く。
(ふふふ、厨房に隠れたつもりかは知らんが、そうは問屋がおろさないぜ……例え厨房に逃げようが、或いはお巡りの元に駆け込もうが、オレはお前の首元にコイツを突き刺すだけだぜ)
チェンは自分が持っているリューから渡された二本のサイを眺める。
(このサイはさっきまでのオレのサイとは違う……老師から賜った自慢のサイだ。お前を殺すのには充分過ぎるほどな……)
ここで、ようやくチェンは厨房に到達した。
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